Round 6: 長尾 泰貴(東京) vs. 岡田 尚也(長野)

晴れる屋

By Genki Moriyasu


 モダンラウンド2戦目、Round 6は岡田 尚也が登場。

 The Last Sunがその系譜を継ぐ大会、Finals。最後の【The Finals11】で当時彼謹製の”青黒感染”を用いて優勝を収めたのが岡田 尚也だ。

 最近、長野へ拠点を移したという岡田はモダンの練習場所が減ったと話す。しかし積極的に都内で競技大会には参加しており、事実現地点でスタンダードラウンドも好成績で折り返している。

 長尾もアベレージの高いプレイヤーだ。【プロツアー『カラデシュ』地域予選】ではGP王者、菅谷 裕信と最後の1枠を争う好試合を演じた。

 いわゆるPWC勢としても活躍しており、【昨年のPWC Championshipのカバレージ】にもその名を残している。

 手練れの戦士二人が、モダンを舞台に斬り合う。






Game 1


 先手の岡田が《島》から《血清の幻視》をプレイ。両方を上に残した占術に、長尾が「嫌だなあ」とこぼす。

 長尾は《吹きさらしの荒野》をセットして様子見だ。

 《山》《氷の中の存在》を置いてから、《ギタクシア派の調査》をライフでプレイする岡田。氷カウンターを1つ減らしながら、長尾のハンドを確かめる。


氷の中の存在


 公開は《ヴェールのリリアナ》《密輸人の回転翼機》《残忍な剥ぎ取り》と4枚の土地。長尾は2T目、この中から《残忍な剥ぎ取り》をプレイした。


残忍な剥ぎ取り


 これを意に介さず、《溢れかえる岸辺》《神聖なる泉》ショックインから《僧院の導師》をプレイする岡田。一連のプレイでライフの消費は激しいが、長尾のデッキには、そのカラーリングから直接的にライフを攻めうるカードは少ない。

 長尾、《ヴェールのリリアナ》プレイから「-2」能力を起動。岡田は考慮の余地なく《氷の中の存在》を生け贄に捧げる。

 そして《僧院の導師》が生き残って岡田のターンが始まる―……

   長尾はとめどなく押し寄せる土地カードにハンドが満たされており、ヴィンテージ級のフィニッシャーに対し、無駄に抗うことを選ばず次へと賭けた。


長尾 0-1 岡田


長尾「リリアナ(《ヴェールのリリアナ》)だけだとメンター(《僧院の導師》)さわれないんだよなぁ」

 《僧院の導師》のトークン製造能力と、《ヴェールのリリアナ》の生け贄能力ではどうしても《僧院の導師》に相性的な軍配が上がる。

 それを重々承知していた長尾が、15枚のサイドボードから”対メンター戦線”を組み立てていく。


Game 2


 先手の長尾、1マリガン。岡田は《血清の幻視》を含めた7枚のハンドをキープする。

 長尾が《吹きさらしの荒野》から《草むした墓》を探してタップイン。《霧深い雨林》から《神聖なる泉》ショックインした岡田が、《血清の幻視》で掘り進む。

 長尾は《集団的蛮行》の追加コストで《未練ある魂》を捨てつつ、ハンデスとライフアドバンテージを獲得する。この公開によって岡田のハンドにはデッキのキーパーツ《紅蓮術士の昇天》があることを確認するものの、《集団的蛮行》ではエンチャント・カードが捨てさせられない。


紅蓮術士の昇天


 見えているのに手の届かないもどかしさに呻きながらも、横の《魔力変》を落として岡田の”どぶん”を食い止めてゆく。もちろん岡田は返しの2T目、予定調和的に《紅蓮術士の昇天》をプレイする。

岡田「これ、絶対割られるんだろうなぁ」

 《突然の衰微》、もしくは《クァーサルの群れ魔道士》といった汎用性の高いエンチャント対策の多いアブザン(緑黒白)カラーの長尾のデッキに対し、岡田は割られることを想定した上で《紅蓮術士の昇天》を設置していた。

長尾「それがですねえ―……」

 長尾のターン。

 セットランドはなく、2枚目の《集団的蛮行》をプレイ。再び《未練ある魂》を捨て、モードは再びハンデスと2点ドレイン。《血清の幻視》を抜いて昇天カウンターの成長を遅らせてゆく。


集団的蛮行


長尾「割れないんですよねえ」

 かくして《紅蓮術士の昇天》の脅威が戦場に吹き荒れる―……

 ……はずだったのだが、既に2回のハンデスでスペルを失っている岡田にしても、展開力が著しく削られていた。

 スローダウンしたゲームのなかで長尾がプレイした《タルモゴイフ》が生き残り、岡田のライフを削ってゆく。

 岡田は《氷の中の存在》をプレイ。長尾、なんとか引き込んだ《沼》《ヴェールのリリアナ》《氷の中の存在》を生け贄に捧げさせる。岡田はこの《ヴェールのリリアナ》を浮いているマナから《稲妻のらせん》で退場させ、そのままメインで《思考掃き》で墓地を肥やしていき、タップアウトで《僧院の導師》をプレイ。

 だが、今度は長尾が浮きマナから《流刑への道》で、モンク・トークン製造の前にこれを対処。Game 1の再現とはならないようだ。



長尾 泰貴


 長尾は《未練ある魂》をフラッシュバックでプレイし、《集団的蛮行》で失ったカードアドバンテージを補填しつつ、《タルモゴイフ》が担う前線に後続を送り込んでいく。

 岡田、《血清の幻視》プレイでなんとか《紅蓮術士の昇天》のクエストを達成するが、ハンドは既に枯れ気味だ。

 《ヴェールのリリアナ》と(《思考掃き》で落ちた)《紅蓮術士の昇天》をカウントして6/7にまで成長した《タルモゴイフ》にハンドの火力を全て当てて退場させることには成功したが、《未練ある魂》戦線への回答がなく、決着は3ゲーム目へと持ち越された。


長尾 1-1 岡田



Game 3


 岡田の「《溢れかえる岸辺》からの《蒸気孔》《思考掃き》対象”自分”」がゲームスタートの合図となった。

 後手2T目。長尾は《集団的蛮行》で岡田のハンドに《血染めの月》を見つけるものの、やはり落とせない。


血染めの月


 そして岡田の手元には既に3マナ目となるフェッチランドもある。

岡田「これ(《血染めの月》)、大丈夫?」

長尾「それ(《血染めの月》)、どうしようもないな」

 《乱脈な気孔》《花盛りの湿地》と置いている長尾。既にこの2マナを消費している上で、実質的にゲームを決める《血染めの月》への対抗手はありえるのか。

 長尾は現状では毒にも薬にもならなそうな《彼方の映像》を抜かざるをえず、一旦岡田がハンドを縦に直す。



岡田 尚也


 しかしここで、長尾の続けざまに示した次手に岡田は素直に感嘆した。

 《外科的摘出》プレイ―……対象は墓地の《溢れかえる岸辺》

岡田「天才かよ」

 岡田がハンドに唯一抱えていた土地も、《溢れかえる岸辺》であった。確定的なまでに見えていた「3ターン目、月死」を、噛み合いに恵まれながらもどうにか遠のけた長尾。

長尾「これで土地引かれたら知らない(笑)」

 かくして、岡田のドローは―……土地ではなかった。

 ”生き延びた”。長尾にそう思わせるには未だ少しだけ早く、岡田がトップデッキの《ギタクシア派の調査》をライフで唱える。「3T目、月着地」のために、もう1枚の猶予ができてしまった。

岡田「―……強すぎますね」

 《ギタクシア派の調査》で引いたカードを、そっと戦場に置く。

 岡田、《沸騰する小湖》セットランド。


沸騰する小湖


 《島》を探し、3マナをタップアウト。《血染めの月》プレイ。

 長尾が一度は遠ざけた「3T目、月死」が実現してしまった。

 ハンドの《新緑の地下墓地》が、出番に至らず泣いているようであった。


長尾 1-2 岡田


 長尾は《乱脈な気孔》セットを諦めれば、1T目にフェッチランド(《新緑の地下墓地》)を切るタイミングがあった。《血染めの月》をケアするのであれば、そうすべきであったと話す。

 また、岡田も2T目のセットランドを《尖塔断の運河》ではなく《溢れかえる岸辺》にしていれば、気配のあった《外科的摘出》を確実に回避して3T目《血染めの月》着地ができるはずであったと話す。

 ともに”フェッチランドを置くタイミング”で大きくゲームプランを崩されることとなったGame 3。(岡田は幸運にもドローでリカバリーできているが。)

 これは現状ではモダン以下特有の”ケアすべきポイント”であり、スタンダードには見られない多角的なマナ運用が求められる。

 互いに普段モダンをプレイする機会が少ないと話すなかでも、そのマナ運用に関しては岡田に一日の長があったようだ。

岡田《疑念の影》《血染めの月》は忘れるな、ですね」



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