Round 8: 木村 憲太(東京) vs. 加藤 健介(東京)

晴れる屋

By Genki Moriyasu


 ”着席のゲン担ぎ”があるらしく、正面右に座る加藤。これまで左に座ったマッチで負け、右に座ったマッチでは勝ち続けているのだという。同じく奥(ビデオカバレージ席)に座る瀧村 和幸が「俺もそう(笑)」と笑うと木村が「じゃあここ嫌だな(笑)」と笑う。

 もちろん席の座り位置で決まるものではないが、”天命を待つ”ために尽くす人事にこうした方向からのアプローチも含まれるのだろうか。

 【BIGs】の1人として活躍する加藤はオールマイティなプレイヤーだ。特徴的なデッキリストではなく、強いリストを強く使うことで知られている。

 今日のモダンデッキも”ジャンド”であり、シークレットテクニックではなく地力で勝つ意欲を以て挑んできている。

 現地点でスタンダード3勝1敗/モダン2勝1敗と安定した成績でここまで残っている木村が対峙する。後に「初回しだ」と語る”感染”を持ち込んだプレイヤーだ。

 ”感染”はいわゆるオールイン系のデッキの筆頭として勢力を増してきているが、それだけ簡単に勝ちやすいデッキという意味でもある。






Game 1


 ダイス振り直しが続き、10 対 9で木村が先手。見える”運量”の差はダイスには現れなかったようだ

 木村の先手1T目は《墨蛾の生息地》セット、エンド。

加藤「”感染”か―……」

 メタデッキのうちで《墨蛾の生息地》を使用するのは”親和”と”感染”の2つだが、1T目にアクションのない”親和”よりはよほど”感染”を意識した方が正しいのだろう。加藤は自らの疑問を確信にすべく、《コジレックの審問》で木村のハンドをのぞき込む。

《顕在的防御》
《巨森の蔦》
《巨森の蔦》
《変異原性の成長》
《ギタクシア派の調査》
《墨蛾の生息地》

 自らの予想を的中させながらも、強烈なカードばかりだ。

加藤「緑マナないんですね。リスキーですけど、”あり”ですよね」

木村「ですね」

 緑マナと感染クリーチャーと呪文を改めて求めてマリガンするよりも、足りない緑マナを求めるドローに賭けた木村の胆力に加藤が頷く。

 その緑マナを生み出す土地へのアクセス回数を減らすべく、《ギタクシア派の調査》を抜いた。

 豪腕を見せる木村の返しのドローは、緑マナを引き込んだ。但し、少しばかり不完全な。

 《ドライアドの東屋》セット。


ドライアドの東屋


 クリーチャーとしてカウント出来る代わりに”召喚酔い”の影響を受ける土地カード。そのために《墨蛾の生息地》を起動せずに終わらざるを得ない木村。

 加藤は《タルモゴイフ》をタップアウトでプレイして木村の挙動を見守った。

 その木村は新たな《墨蛾の生息地》セットから《ドライアドの東屋》を立たせ、《墨蛾の生息地》起動から《変異原性の成長》のみでパンプして攻撃宣言。3毒。緑マナを立たせることで呪禁カード3枚を”盾”にしてゆく。

 加藤、《思考囲い》で木村のハンドを再確認する。1マナで盾もパンプも担う《顕在的防御》を抜き、残るは《巨森の蔦》2枚。そのまま2体目の《タルモゴイフ》を追加して、ダメージレースを挑んだ。

 木村は2体起動した《墨蛾の生息地》アタックで5毒。がら空きのボディを殴り合う展開となった。



木村 憲太


 加藤、《タルモゴイフ》2体アタックで木村のライフ9。

 木村、《墨蛾の生息地》1体アタック。加藤のブロック宣言なしを確認してから、《顕在的防御》プレイ。

 加藤、対応して《終止》をプレイ。《稲妻》のような火力と違い、P/T修整では乗り越えられない除去だ。

 無色1マナだけが浮くなか、木村のハンドにこれへの回答はあるのか―……?


使徒の祝福


 あった。

 《使徒の祝福》プレイ。ライフペイ2。

 《終止》を乗り越えアタックに成功し、加藤は8毒。次の一押しで決まるというところだ。

 しかし、アタックを通し続けた代償は大きく、木村のライフは7にまで削られている。2体の《タルモゴイフ》のサイズは3/4で見た目耐えているのだが―……

 加藤はライフを確認したあと、木村の《ドライアドの東屋》《終止》をプレイ。土地とともにクリーチャーとして墓地へ落ちると、《タルモゴイフ》がカウント・アップして4/5に成長した。アタック、8点。

 わずかに攻めきれなかった木村が、せめぎ合いに負けた。加藤が本当にギリギリを制する形となった。


木村 0-1 加藤


 木村が手にした緑マナが《ドライアドの東屋》であったことが、最初と途中と最後でそれぞれネックとなった。フェッチランドから探せるクリーチャーは奇襲性にも優れ、非常に強力なカードであることは間違いないのだが、かみ合わなかった。

 セットした最初のターンは《墨蛾の生息地》起動ができず、途中《変異原性の成長》だけで《墨蛾の生息地》アタックしたターンに《顕在的防御》を打たずにマナを残したのは《ドライアドの東屋》を守るためでもあり、最後も《終止》しかないのであればライフは守られていたはずであった。

 厳密にプレイングのところではないところで、たられば。の話をしても詮無いことだが、紙一重の差であったことは間違いない。


Game 2


 加藤の《コジレックの審問》がゲームスタートの合図をかけるGame 2。《繁殖池》タップイン・スタートの木村のハンドを晒す。

《強大化》
《古きクローサの力》
《顕在的防御》
《四肢切断》
《荒廃の工作員》
《森》

 ディスカードはもちろん、ハンド唯一のクリーチャーである《荒廃の工作員》だ。リーチ状態であった木村のハンドが、聴牌から大きく後退する。

 しかし返しのトップ・デック。《呪文滑り》を引き込んで置いた木村。

 加藤、Game 1同様に《タルモゴイフ》をプレイするが3枚目の土地がない。木村、3枚目の土地を置くもまだ「感染」クリーチャーには到達しない。互いに不完全な状態でゲームが進むが、どちらかの戦線が爆発するのは時間の問題だろう。

 加藤、少し立ち上がりが遅れたが《闇の腹心》をプレイ。このマッチアップにおいて、殆どタダとも言えるコストでカードを引ける”ボブ”には木村は即座に《四肢切断》を合わせる。

 加藤が不完全ななかで、ようやく《荒廃の工作員》に辿りついて先に準備を整い始める木村。

 未だ土地が伸びない加藤は《思考囲い》で木村のスピードを落としていくしかない。

《古きクローサの力》
《強大化》
《顕在的防御》

 の3枚からこの時点では最もマナ効率の良い《古きクローサの力》を落とす。

 木村の返しのドローは《台所の嫌がらせ屋》だ。「感染」という能力こそ持たないものの、失われたライフを取り戻しつつ《タルモゴイフ》の猛攻を食い止める二役だ。《タルモゴイフ》を止めている間に、《荒廃の工作員》がゆっくり着実に毒を与え続ける戦法を取れる。《呪文滑り》という囮も未だ処理されておらず、盤面は一気に木村に傾いた。



加藤 健介


 ―……かのように見えた加藤、返しのターンで《コラガンの命令》を撃ち込む。《呪文滑り》を破壊し、ディスカードで《顕在的防御》を撃墜する。


 木村は「探査」で5枚追放からの《強大化》プレイで《荒廃の工作員》を成長させ、毒を8つ貯めさせる。

 残る2マナでプレイしたドローカードは、《荒廃の工作員》。これで加藤のハンドに除去がなければ木村がゲームを取れる算段が一気に高まった。

 果たして、加藤のハンドには除去があるのか―……?


稲妻稲妻


 《荒廃の工作員》1体目へ、《稲妻》《荒廃の工作員》2体目へ、《稲妻》

 《呪文滑り》によって牽制されていた赤最古の火力が、文字通り火を吹いた。

 そして、事実上ゲームの趨勢が決した。

 アタッカーを喪失した木村は《台所の嫌がらせ屋》《タルモゴイフ》を食い止め時間を稼ぐものの、「頑強」も消耗したところでアタックを受けると、ライフが一気に致死に至ってしまった。


木村 0-2 加藤



 これでモダンラウンド全勝だと話す加藤。比較的土地には恵まれない展開となったなかで、ダメージコントロールをしきってみせた。ジャンドという安定感のあるデッキを、加藤という安定したプレイヤーが操縦した結果だ。

 2日目もこの緻密なプレイングの腕前を見せつけることになるのか。

 対し、友人との感想戦のなかで「初回しにしては良くできた」と謙遜していた木村だが、実際にいずれのゲームでもギリギリを差し切られた展開であり、こちらも実力を十分に見せつけていた。

 木村もまたTOP8進出の芽を残しながら、2日目への意欲を高めていく。

 全8ラウンド。1日目のThe Last Sunが終わったが、全体としてみれば”折り返し”だ。いずれのプレイヤーもこの後、体力と気力をしっかりと養い、Round 9に挑むことだろう。



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