ヘッドジャッジインタビュー: 伊東 太郎 -大きな目標と小さな目標-

晴れる屋

By Asako Seo





 今回、2日間にわたりヘッドジャッジを務めたレベル2ジャッジの伊東太郎さんにお話をうかがいました。(取材は1日目の終了時に行っています)

――よろしくお願いします。伊東さんはいつもどこでお仕事をされているんですか?

伊東「出身と住んでいるのは山梨県の甲府なんですが、地元には店舗が1つしかないので、普段はグランプリやWMCQなどのイベントを中心に日本全国に行っています。今年は広州やシドニー、クアラルンプールなど、海外グランプリにもたびたび参加しました。国内グランプリはここ4年くらい皆勤賞なので、主戦場と言えるかと思います」

――グランプリを連戦しているんですね。ちなみに海外グランプリに行くときって、交通費は自腹なんですか?

伊東「基本的には自腹なんですが、ジャッジ報酬などを含めるとぎりぎりプラスになるかならないかくらいですね。でも、わずかな出費で海外に旅行できて、ジャッジ経験を積んだり、観光したり、友達に会えたりすると思えばお得かなと。海外グランプリに参加するたびに友達が増えるんです。プロプレイヤーと密接に過ごすというのは、日本のグランプリだとまずないんですが、海外だと彼らも僕を頼ってくれますし、海外のジャッジの友達もできますし」

――それはすばらしいですね。伊東さんはもともと、どうしてジャッジになろうと思われたんですか?

伊東「山梨にいらした夏目さんというジャッジの方が、仕事で東京に異動になる際、山梨のコミュニティにジャッジがいなくなってしまうと。そのとき、僕はちょっとルールに興味があったので『やってみたいなぁ~』と小さく手を挙げたら、つてで板橋に送り込まれて、ジャッジの梅咲さんたちに厳しく鍛えていただきまして、今に至ります。ジャッジになってちょうど4年くらいですかね」

――「ちょっと興味がある」というところからわずか4年で、海外グランプリを連戦するようになるとはすごい変化ですね。

伊東「おかげさまで楽しくやらせてもらってます」

――来年の目標はありますか?

伊東「今はレベル3がジャッジにおける最上級のレベルになっているんですが、そこを目指して鋭意勉強中です。来年中にはがんばって試験を受けられたらというのが、大きな目標です。いつも僕は遠い未来の大きな目標と、明日明後日にできる小さい目標を作るようにしているんですが、直近の目標としては、『このThe Last Sunをできるだけ早くスムーズに回そう』とかがありますね。そういう小さい目標がたくさん積み重なって、いつかレベル3につながったらいいなと……」



ヘッドジャッジによるアナウンスでThe Last Sunがスタート


――今回は8人ほどを束ねてのヘッドジャッジということですが、ヘッドジャッジというのはそもそもどういうお仕事なんでしょうか?

伊東「まずは、晴れる屋のトーナメントオーガナイザーである望月さんと相談しての、事前準備ですね。起こりそうな問題を先回りして予想して、FAQを作ったりします。例えば今回ですと、デッキリスト登録が紙とオンラインでできるんですが、システムの都合でオンラインの提出期限は10時のところ、紙は10時15分まで受け付けているんです。15分ラグがあるので、オンラインでデッキリストを出した人も、10時15分までは要望に応じて修正を受け付けるとか。実際にそういうことは起きなかったんですが、起こりそうなことをリストアップして事前にジャッジに周知しておいたりします」

――段取りの仕事なんですね。

伊東「そうですね。あとは誰がいつどの仕事をしているか、ひと目でわかるようにマネージャー的なこともします。どのラウンドは誰がデッキチェックをするかといったジャッジのシフト表を作ったり。またジャッジ的な部分の仕事としては、『今日は慣れているプレイヤーが多いので、プレイヤーのルールフォローアップよりも、もっと別な部分にフォーカスして運営していきましょう』と方針を立てたりします。たとえば対戦中のテーブルをぱっと見て、双方のライフメモにもしズレがあったらすぐに注意しようとか、『7点ダメージです』と言いながらアタックしたとき、本当に7点あるかどうかジャッジも脳内で数えよう、とか。そういった注意すべきポイントをまとめた海外の記事がありまして、それを事前にフロアジャッジに渡して、ジャッジ自身もいつもの業務だけでなくプラスアルファにチャレンジしよう、と目標を掲げたりしました」

――ジャッジ教育的な部分も少し入ってくるわけですね。

伊東「まあ、『メンタリング』とかって呼ばれるんですが、テーマを作ってそちらに導くという活動ですね。そういったジャッジ向けの記事を、活動の一環としてボランティアで翻訳したりもしています」

――ジャッジには、そういった裏の仕事もいろいろとあるんですね。

伊東「現場の活動についてはだいぶ慣れてきたので……と言ったらおごりがありますが、これからはなるべく裏方の仕事にも手をつけていこうと、海外を回り始めて思うようになりました」





――なるほど。さて、The Last Sun1日目も終わったところですが、いかがでしたか?

伊東超順調でしたね。事前準備の段階では、1ラウンドだいたい70分回しの予定でプランを立てていたんですけど、めちゃくちゃ巻いて、最終的に予定の時刻より90分も早く終わりました」

――それはすごい。なぜそんなに早くなったんでしょう?

伊東「1つには、先日の【グランプリ・千葉2016】で使ったペアリングのアプリがあると思います。前は『ペアリングが出ました』とアナウンスをしてから、みんなが見に行って、席を探すという流れだったのが、今はラウンドの合間にスマホでツイッターとかを見てると通知がポンと出てくるから、アナウンスよりも先に動き出してくれる。その2、3分の差が、8ラウンドぶん積み重なれば24分とかになって、1日を通して見ると大きなアドバンテージになるわけです。もちろん、スタンダードやモダンの環境による部分もあると思いますが」

――確かに。また、スタンダードとモダンを交互に行なうジグザグフォーマットというのは最近ほぼないやり方だと思うのですが、それに関してはどうでしたか?

伊東「大きなトラブルはなかったですね。2つのデッキで同じカードを使いまわす人がいたので、スタンダードとモダンの間に5分くらい時間を設けて、『これからモダンなので、スリーブの入れ替えやデッキの準備をしてください』としつこくアナウンスしたこともあってか、特に問題はなかったです。皆さんプロプレイヤーだったり、予選を勝ち抜いて来られたりしていて慣れているので、進行の速さも含めて、プレイヤーさんたちに助けられたという面は大いにあります」

――わかりました。それでは、2日目もどうぞよろしくお願いします。



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