インタビュー: kuroebi -ゲーム・キャスターが伝える、マジックの魅力-

晴れる屋

By Kazuki Watanabe


 The Last Sun 2016も二日目。錚々たる出場者が繰り広げる熱戦の模様は、【ニコニコ生放送】で配信されている。

 Hareruya Prosの齋藤 友晴と津村 健志が解説しているのだが、その隣に座り、見事な采配で実況を務め、熱戦をさらに盛り上げているのが、彼だ。




 kuroebi

 先日の【バトロコのイベント】で、見事なMC姿を見た方も多いことだろう。そのスキルは、このThe Last Sun 2016でも、遺憾なく発揮されている。

 二日間に渡る熱戦を彩る彼に、早速お話を伺ってみた!



■ インタビュー:kuroebi

――「改めて、自己紹介をお願いできればと思うのですが、kuroebiさんの職業、肩書きは何になるのでしょうか?」

kuroebi「メインになるのは、ゲーム・キャスター、というものになるかと思います。バトロコのイベントのようにMCを担当することもありますが、今回のThe Last Sun 2016での担当は実況解説ですから、ゲーム・キャスターというのが一番しっくり来るかもしれませんね」

――「では、もう少し詳しくゲーム・キャスターというお仕事について、教えていただけますか?」




kuroebi「近年、ゲームを配信する、という文化が徐々に根づいてきました。すると、そのための”伝え方”が求められるようになってきたんですね。これまでテレビが担ってきた”ものを伝える”ということが、インターネットにも求められるわけです。その、伝えるためのカンフル剤になるようなもの。それがゲーム・キャスターです」

――「現在は、様々なサイトでゲーム実況が行われていますよね。今回のThe Last Sun 2016もニコニコ生放送で配信しているわけですが、kuroebiさんが実況をしよう! と思ったきっかけは何ですか?」

kuroebi「もともと、私もストリーマー出身、ゲームの配信をしていたんですよ。その内に、『ゲームにはゲームのための実況、解説というものが必要だ』と私自身も思うようになりましたし、世間でも求められるようになってきました。そして、ゲーム実況という文化が広がってきて、色々な実況者が登場しています。そういった方々の放送を見ていて『自分ならもっと上手くできるんじゃないか』と思い立って、脱サラしたんです

――「な、なんと! それは大きな決断ですね」

kuroebi「そうですね。仕事自体も大きな分岐点に立っていたので、良いきっかけだった、と思っています」



■ 「メリハリをつける」

――「1日目も見事な実況でしたが、kuroebiさんご自身が、実況の際に意識していることはどのようなことですか?」

kuroebi「まずは、ゲームの見せ方ですね。これも、ゲーム実況の文化が進歩したことで、色々と変わってきています。バラエティ寄り、競技寄り、といったように。そうなると、メリハリをつけなければいけません。“このゲームは、どういう風に見られるのか、そして見せるのか”ということを意識することが重要ですね」

――「なるほど。そういった視点は、実況をメインとするkuroebiさんだからこそ持てるものかもしれませんね」

kuroebi「ゲームをすることと、ゲームを実況することは、やはり違ってきますからね。実況解説というものが広まって、視聴者の要求も上がってきています。結果、現在はゲームの有識者を読んでも数字が取れなくなってきているんです。では、何が必要か? それは、差別化です。ただ配信するのではなく、より良い配信技術、見せ方、そして人を起用する、という段階に移ってきているのかな、という印象がありますね」



■ 最終目標は”マジックに戻ること”

――「では続いて、マジックの実況についてお聞かせください。まずは初日を終えて、どのような感想をお持ちですか?」

kuroebi「そうですね……ひとつ、乗り越えたな、という感じです。実は、今週はかなりナイーブになっていました。マジックは歴史のあるゲームですし、私のような実況者を起用するということは、晴れる屋さんの新しいチャレンジですよね。想像以上プレッシャーがありました。ただ、一日終えて……やはりマジックは楽しいな、と思いましたね」


放送中の一幕

kuroebi「津村さん、齋藤さんと一緒に、そしてゲストをお呼びしながら一日やらせてもらったのですが、第一線級で活躍している人でありながら、『もっとマジックを盛り上げよう!』という意識を持つ方たちとお話ができて、本当に勉強になりました。僕自身、マジックが好きなので、なおさらですね」

――「kuroebiさんがマジックと出会ったのは、いつ頃なのですか?」

kuroebi「エキスパンションで言うとテンペストの頃、ですね。当時も楽しんではいたのですが、まさか実況する側になるとは思いませんでした・ただ、こういった仕事を始めたとき、最終目標は”マジックに戻ること”だったんです。もし起用していただけるなら、ぜひやりたいと思っていた仕事だったので……」

――「夢を一つ、叶えたわけですね」

kuroebi「はい、叶いました」



■ 「黙る勇気」と「”運”の話」

――「『ゲームにはゲームの実況がある』とのことでしたが、今回マジックの実況をされて、kuroebiさんが気をつけたことはありますか?」

kuroebi喋りすぎない、ということですね」

――「おお……喋ることが必要な実況で、喋りすぎない。ぜひ、詳しくお聞かせください」


津村さんとともに、盤面を見つめる

kuroebi「アナログゲーム、特にカードゲームには、独特の間があります。一つのプレイ、たとえば土地を置くだけでも、高速でプレイする人もいれば、じっくりとプレイする人もいますよね。それ自体が個性であり、魅力なんです。実況側がゲームに注力して喋り続けてしまうと、その間が伝わらない、そして潰してしまう可能性がありますので、注意しなければいけません」

――「実況、というと”喋りを止めないこと”に意識が向いてしまいがちですよね?」

kuroebi「そうですね。だからこそ、黙る勇気、これが必要です。リアルタイムを逐一伝える必要のある、ラジオ的なスポーツ中継とは完全に異なりますからね。見ただけで分かることは、喋る必要がないわけです。それを喋っていたら、視聴者には重くなってしまいます。そのバランスは、私の今後の課題でもありますね」

――「見ただけで伝わるものを意識して、伝わってこないものを伝える、というバランスは、たしかに難しそうですね」

kuroebi「難しいですね。たとえば、今回は天井のカメラから盤面を映すだけでしたが、それでもプレイヤーの意志が伝わってきます。それをどこまで伝えられるか、どこまで肉薄できるかが重要だと思います。それから、“運”の話は絶対にしないように気を付けています

――「カードゲームとは切り離せない要素ですが、これも実況する上で重要なのですか?」

kuroebi「重要ですね。カードゲームは、たしかに運の要素が強いですよね。ドロー1枚で勝敗が逆転することもありますから。ただ、『そのドローが強くて勝った』といったような発言は、マイナスに受け取られてしまいやすいんですよ

――「なるほど。つい言ってしまいがちですよね、『運が良かった、悪かった』と」

kuroebi「優勝した人が『運が良かった』というのは謙遜ですから、マイナスにはなりません。ですが、負けた人の言う『運が悪かった』は、マイナスになってしまいます。同様に他者に対して『運が……』と言うのは、大抵の場合マイナスになります。これも、選手をリスペクトした実況解説をする、という大前提に立った上でのことです。勝者にも敗者にもリスペクトを欠かさないこと。見ている人が、私の言葉を聞いてどのように思うのか。これを突き詰めていきたいですね」



■ この楽しさを、みなさんに

――「では最後に、二日目の放送をご覧になるみなさんに向けて、メッセージをお願いします」




kuroebi「まずは、見ているみなさんの邪魔にならないように気をつけたいと思います。不快感が少しでも出てしまうと「見るのを止めよう」と思われてしまいますからね。目立たないように、だけど盛り上げられるように、というのが実況解説の永遠の課題です。二日目は、さらに緊迫した状況が続くと思いますし、毎ラウンド雰囲気が変わってくるでしょう。決勝ラウンド直前ならば、なおさらですよね。そういった雰囲気を、不快感なくどこまで伝えられるか……チャレンジの連続ですね。大変な仕事ですが、本当に楽しいです」

――「確かな技術を持ち、そして夢を叶えたkuroebiさんだからこそ、楽しめる現場かもしれませんね」

kuroebi本当に楽しい現場ですね。これまで、正直他の仕事に手がつかないくらいプレッシャーを感じていたのですが、実況で重要なのは、やはり自分が楽しめるかどうか、ですからね。この楽しさを、みなさんにお伝えできるようにしたいと思います。それから、マジックの配信に新しい実況者が出てきたな、と思っていただけたら嬉しいですね。これまでやってきたことが、活きる形になって良かった、と本当に思っていますので、精一杯頑張ります!」




 ゲーム・キャスターとしてマジックの魅力を伝える、kuroebi。その言葉は、マジックへの愛と、その愛を実況・解説という形で世界へ配信しようという気持ちに溢れている。

 【ニコニコ生放送】の実況を、お見逃しなく!



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