今年を振り返ったとき、思い出すことは楽しいことだけではない。悔しい思い出が、先行する人もいるだろう。
それは、プロプレイヤーも同じく、だ。
山本 賢太郎
【Team Cygames】に所属するトッププロプレイヤー。今年は、【グランプリ・メルボルン2016】、【グランプリ・北京2016】、【グランプリ・広州2016】でトップ8、【グランプリ・京都2016】で準優勝、そして【グランプリ・千葉】では見事に優勝を果たし、輝かしい成績を残している。
「今年の思い出は？」と筆者が問うと、二つの答えが返ってきた。それはまるで、光と影。相反する思い出が、山本の心中にはあった。
山本「グランプリで優勝したこと。そして、ゴールド・レベルに落ちたこと」
2016年の思い出を、山本が語る。
■ 山本 賢太郎の2016年
――「まずはグランプリ優勝についてお伺いしたいと思います。優勝した当時の心境をお聞かせ願えますか？」
山本「優勝が決まったときは実感が湧かなかったですね。もちろん嬉しかったのですが、ドローに助けられたことが脳裏に焼きついていたので『運が良かったな』と。でも、その後に様々な人にお祝いしてもらって、じわじわと実感が湧いたような状態でしたね」
【緊急告知】9割越せる年末生放送2016配信決定のお知らせ！
— Team Cygames (@Team_Cygames) 2016年11月29日
12月7日(水)20時よりスタート。GP千葉・2016優勝の山本さんを祝した企画『クイズ山本賢太郎』なども準備中ですのでご期待ください！https://t.co/QLsnwCTWAO #teamcygames pic.twitter.com/P7A0uLgykV
――「直後には、『9割越せる年末生放送2016』も配信されましたよね。改めて、おめでとうございます。普段、レガシーはプレイされるのですか？」
山本「いや、まったくしないですね。今回も練習に費やしたのは、【グランプリ・クアラルンプール2016】からの1ヶ月ほどでした。これまでも、【グランプリ・京都2015】と、優勝した【The Last Sun 2013】の前、それと、MOCSのフォーマットがレガシーだったとき。大会に合わせて練習する程度です」
――「なるほど。短い時間のなかで、効果的な練習をした結果、というわけですね」
山本「そんなに大したものではなかったと思いますが、結果を残せて良かったです。グランプリ優勝は、良い思い出ですね」
■ 「もっとマジックに集中しなければ」
――「では、もう一つの思い出。ゴールド・レベルに落ちたことについてもお聞かせください」
山本「これは、明確な反省点ですね。少し振り返ってみると、僕はレベル・プロではない状態からプラチナになったんですよ」
――「今確認しましたが、【グランプリ・北九州2013】、【プロツアー『テーロス』】、【グランプリ・京都2013】と連続で入賞されていますね」
山本「そうなんです。その結果プラチナになり、どうにか次のシーズンも維持できて、少し慢心してしまったところがあったのかな、というのが正直な気持ちです。反省して、気持ちを入れ直さなければ、と今は強く思っています。この悔しさは、グランプリ優勝と同じくらい脳裏に焼きついていますね」
――「他の輝かしい成績よりも、山本さんにとっては大きかったのですね」
山本「そうですね……Cygamesさんからスポンサードもしてもらっていますし、もっとマジックに集中しなければ、と思います。そのための環境は整っていますからね」
■ 僕と覚前君が0.5ずつ
――「Cygamesさんと言えば、【Team Cygamesの9割勝てるマジック講座】が大人気ですよね。第1回は2015年でしたが、今年は渡辺 雄也さんも加わって、さらにパワーアップした印象があります」
山本「ありがとうございます。まあ、あの番組は瀬畑(市川 ユウキ)が9割ですから。当初はナベ(渡辺 雄也)がいなかったので、僕と覚前君(覚前 輝也)が0.5ずつ、でやってましたね」
――「な、なるほど。確かに市川さんの無双っぷりが際立つ番組ですよね。渡辺さんが加わって、その数値バランスはどうなりましたか？」
山本「ナベは3割くらいありますね。瀬畑6、ナベ3、僕と覚前君が0.5ずつ」
」
――「……お二人は変わらないんですね。あの動画は本当に人気がありますよね。4名の人柄が上手く出ていると思います」
山本「Cygamesさんが力を入れてくれているので、編集も手厚いですからね。その他の面でも支えてもらっているので、本当にありがたいです。”Cygames”という名前も広く知られているので、他業種の人から声をかけてもらうことや、マジックとは何の関係もない高校の同級生に『Cygamesは知ってるよ』と言われることもありましたから、プロプレイヤーとして、少し変化があった年でもありましたね」
■ 二つの目標、そしてその先へ
――「その変化の年もあと少しで終わりますが、来年の目標をお聞かせ願えますか？」
山本「目標は、プラチナ・レベルに復帰すること。そして、グランプリで優勝すること。プロツアー優勝は、その先にある目標です。そこに到達するためには、まだまだ実力をつけなければと思っているので、実力をつける一年にもしたいですね」
インタビューの最後、筆者は少しプライベートな質問を投げかけてみた。
「山本さん、年末年始の予定は決まっているんですか？」
山本さんは静かに答えた。
山本「今回のThe Last Sun 2016は、モダンの成績が振るわなくてすごく悔しい思いをしているので、2月のグランプリ・ブリスベン2017に向けて練習をしようと思います。『霊気紛争』のプレビューが出揃うとプロツアーに向けた練習が始まるので、それまではモダンの練習をしようかな、と……」
筆者が少しだけ呆気に取られていると、山本さんは微笑みながら続けた。そしてその言葉は、「2016年、もっとも心に残ったプロプレイヤーの言葉」として、深く刻み込まれた。
山本「2016年は終わりますが、プロツアーのシーズンはまだまだ序盤です。僕の1年の基準は、やはりそこにあるんですよね」
来年の、そして今シーズンの山本 賢太郎の活躍に期待しつつ、筆を置くことにしよう。
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