準々決勝: 三宅 恭平(東京) vs. 河野 融(東京)

晴れる屋

By Takeru Onuki


 The Last Sun 2016。

 晴れる屋による1年の締めくくりと共に集大成とも言える大会。
 
 二日間、そして全14回戦にも及ぶスイスラウンドを勝ち抜き、残るところあと3回戦。8名による決勝ラウンドが、いままさに目の前で火蓋が切って落とされようとしている。

 三宅 恭平。

 言わずと知れたミスターPWCであり、しかも第10期、第11期と2連覇している強豪だ。

 対するは河野 融。

 目立った戦績こそないものの、足繁く晴れる屋に通い常に仲間と調整を行うそのマジックへの真摯さが、彼をこの決勝ラウンドまで導いたのだろう。

 まずThe Last Sunにおける決勝ラウンドは最大5回戦の3本先取、そしてここまでスタンダードとモダンで戦ってきたわけだが、決勝ラウンドでどちらのフォーマットを選択するかはスイスラウンド上位が決められるというものになっている。そして開始前には互いのデッキリストが公開され、スイスラウンド上位者がフォーマット選択する時間が与えられる。本ラウンドに関して言えば、スイスラウンド1位通過の三宅に選択権が委ねられる。

 だが、悩む三宅。それもそのはず、奇しくもスタンダードは互いに《査問長官》を軸にしたドレッジのミラーだったのだ。

 三宅は「ミスターPWC」の肩書通り、自分の土俵としてはスタンダードになるのだが、どうやらこのデッキにおけるミラーの経験がなく、下手をすればただ先手後手の差だけでゲームが決まってしまうことを懸念していた。

 一方、モダンでは三宅はブルームーン、対して河野はアブザンジャンク。メインボードに《血染めの月》があるので一見明確に有利に見えるが、モダン環境におけるフェアデッキの対決はどちらも勝ちうる要素が高く、特にBG系デッキの有する《思考囲い》などのハンデスは青系デッキのコントロールデッキに対してかなり辛い部分であり、何もできず負けてしまう可能性も有している。

 フォーマットを決める側の方が圧倒的に優位とも思えてしまうが、裏を返せば明確な有利不利が判別できない限り、先手後手の決定はランダムなので、自分の選択の見極めを誤れば極論その選択そのもので負けうるとも取れる部分であり、ゲームが始まる前にミスをする可能性のあるため、重要な要素だ。

 そして間もなくで開始時刻、決断の時。

 三宅は悩み抜いた末、メインボードに《血染めの月》が入っている分で有利と判断したか、モダンを選択

 いよいよ決勝ラウンド第一回戦が始まる。






Game 1


 先手は河野からのスタート。フェッチランドから《血染めの月》を意識してなのか、《森》を持ってきて《貴族の教主》をプレイし、《貴族の教主》が残ればマナジャンプからロケットスタートできるという流れ。

 三宅は《島》をセットしてターンを返し《貴族の教主》が除去できずに河野のターン。《黄昏のぬかるみ》をセット、ハイブリットランドから黒マナを2つ出し《思考囲い》を2連打。公開されたカードから《瞬唱の魔道士》《血清の幻視》を落とし、三宅の手札は《ピア・ナラーとキラン・ナラー》《呪文嵌め》、そして土地が2枚になった。

 そして三宅は土地を置きターンを返し、3ターン目にプレイされたのは、マナ加速からの「暴力」とも言うべき《包囲サイ》。三宅はこの《包囲サイ》に対抗する術がなく、《電解》《貴族の教主》を除去しながら手札を回転させ、最善を意識してプレイする。

 《包囲サイ》が三宅を襲い残りライフ11。早く対処しなければ、危険なライフになってきた、しかし河野の勢いは止まらず《最後の望み、リリアナ》をプレイする。


包囲サイ最後の望み、リリアナ


 三宅は何とか耐えようと《ピア・ナラーとキラン・ナラー》をプレイしてターンを返すが、《最後の望み、リリアナ》でトークンを除去される。さらに河野は《貴族の教主》をプレイし、賛美の誘発した《包囲サイ》の猛攻が三宅を襲う。三宅のライフは、フェッチを起動した分も合わせて残り5点。

 三宅は土地を置き構えてターンを返すが、状況を好転させる一手は来ない。

 河野はあとは全力で攻めるだけ。《ピア・ナラーとキラン・ナラー》の能力と《稲妻》との合わせ技で《包囲サイ》を失うも、《未練ある魂》を「フラッシュバック」込みでプレイし、トークンを4体残してターンを終える。

 三宅は《反逆の先導者、チャンドラ》《貴族の教主》を除去して何とか耐えようとしたが、フェッチを使って残りライフは4。

 トークン4体の攻撃を《稲妻》でしのいでライフ1で耐えたものの、《最後の望み、リリアナ》の「-2」能力で《包囲サイ》を回収され、ここで三宅は投了。

 絶え間なく強い動きを押し付け、河野がこのゲームを制した。


三宅 0-1 河野



Game 2


 続くGame 2、ここまではメインボードでの戦いになる。

 両者マリガンすることなくキープし、三宅の先手でスタート。

 三宅は《蒸気孔》をタップインしターンを返すが、勢いに乗っている河野はGame 1と同じようにフェッチランドで《森》を持ってきて《貴族の教主》をプレイしターンを返す。

 三宅は返すターンに《炎の斬りつけ》《貴族の教主》にプレイし、このゲームはマナ加速を許さない。しかし河野はこれもまたGame 1を彷彿とさせるかのように《黄昏のぬかるみ》から《コジレックの審問》、そして《思考囲い》をプレイ。

 公開された手札は、

《呪文嵌め》
《謎めいた命令》
《ゴブリンの闇住まい》
《収穫の火》

 そして土地が1枚。

 河野は《コジレックの審問》《収穫の火》を、《思考囲い》《謎めいた命令》を落とす。三宅は土地をセットしターンを返すしかない。

 河野は相手のペースが落ちてるうちに攻めの姿勢を崩すまいと《コジレックの審問》《呪文嵌め》を落とし、《貴族の教主》をプレイする。三宅は続くターンも動かずターンを返すが、しかし河野も続くアクションがなく、《貴族の教主》でアタックしターンを終える。

 続くターン、少し悩みつつも三宅は《ゴブリンの闇住まい》をプレイして《収穫の火》を再利用、《貴族の教主》を除去してターンを終える。

 すると河野も手札が良くないのか、三宅の土地がフルタップのうちに負け筋の目を潰そうとメインで《流刑への道》をプレイし、《ゴブリンの闇住まい》を除去して耐えの姿勢。

 三宅は何もせずターンを返す。河野はここで自分のペースに持ち込もうと《未練ある魂》をフラッシュバック込みでプレイし展開するも、返しに三宅が《神々の憤怒》をプレイされ、一掃されてしまう。

 そして河野は続くターンはドローゴー。

 一方三宅はここで《反逆の先導者、チャンドラ》をプレイし勝利へ一手伸ばして行き、ここから数ターン、河野はドローゴー、三宅は《反逆の先導者、チャンドラ》の「+1」能力を起動するだけを繰り返す。気が付けば《反逆の先導者、チャンドラ》は奥義目前になってしまった。

 ターンを稼ごうと河野は《集団的蛮行》をプレイするも、《呪文嵌め》でカウンターされ、残り10点のライフを《反逆の先導者、チャンドラ》の奥義により吹き飛ばされてしまった。


三宅 1-1 河野


 ここで三宅が星を取り返し1-1となった状態で、ここからサイドボードを使用したGame 3が始まる。



Game 3


 ここからサイドボードを使用できる。互いに互いのリストを見ながら適切なサイドボーディングを行っていく。普段とは違う、対戦相手のリストを見ながらのサイドボーディングに互いに悩みながら最善を考える様は緊張からなのかこちらにも伝わるくらいにピリピリしたような真剣な面持ちであった。

 そしてこのラウンドは河野からのスタート。三宅はキープしたものの、河野は痛恨の先手でのダブルマリガンとなってしまった。河野の占術は下、河野に取って芳しくないスタートとなる。

 開幕は互いに土地を置いてターンを終え、続くターンに河野は何もアクションがなかったが、三宅は《祖先の幻視》を「待機」して終える。

 そして互いに冷戦状態のようなまま4ターン目、河野はここまで何もプレイできておらず苦しいところ。悩む河野は《不屈の追跡者》をプレイしフェッチランドを置いてダブルマリガン分のリソースの回復を狙うか、火力除去で処理し難い《包囲サイ》を叩きつけるかの二者択一を考えていた。

 河野の選択は、火力除去が手札で溜まってる可能性を鑑みて《包囲サイ》をプレイ。


包囲サイ対抗変転


 しかし三宅の《対抗変転》により打ち消されてしまう。

 相手の脅威を弾いた三宅は《ピア・ナラーとキラン・ナラー》をプレイし、流れが完全に三宅に傾く。

 河野も負けじと《不屈の追跡者》をプレイ、フェッチランドを置いて起動し手がかり・トークンを2個出して2マナ構えて終了。しかし三宅は《ピア・ナラーとキラン・ナラー》と飛行機械トークン全てでアタック、4点通って河野のライフは14。そして三宅は《不屈の追跡者》《稲妻》をプレイ、対応で《ゴルガリの魔除け》で再生のモードを使用するも、そこに対応で《ピア・ナラーとキラン・ナラー》の能力を起動して《不屈の追跡者》を除去した。

 なんとか流れを返したい河野はメインで手がかりを起動して有効牌を引きにいく。そして《思考囲い》をプレイ。

 公開された手札は、

《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
《呪文嵌め》が2枚

 というもの。河野は《ピア・ナラーとキラン・ナラー》を選択しターンを返す。



三宅 恭平


 だが、ここで三宅の《祖先の幻視》の「待機」が明け、3ドローに加えて通常ドロー。大量に手札を補充し、盤面のクロックでライフを詰めていき河野は残り9。おまけに追加の《祖先の幻視》も「待機」してターンを返す。

 河野も三宅のエンドフェイズに手がかり・トークンを起動して解答を探しにいくも、有効牌が見つからないのか《乱脈な気孔》を構えてターンを返すが、三宅の戦闘に合わせて起動したところに《稲妻》を合わせられてしまう。土地の枚数が減ることを嫌ったのは河野はここで《乱脈な気孔》を対象に《流刑への道》をプレイ、そして戦闘が解決され、河野は残りライフ6。

 追い込まれた河野はここで《ヴェールのリリアナ》をプレイし「+1」能力を起動。その後《集団的蛮行》で除去を狙うも、これには《呪文嵌め》を打たれてしまう。

 それでも続く戦闘で三宅が《ヴェールのリリアナ》に3点いれてターンを返したところで、続くターンに再び《集団的蛮行》をプレイ、《ピア・ナラーとキラン・ナラー》を除去した上に手札から《祖先の幻視》が抜き去る。これにより三宅の手札は《神々の憤怒》のみになった。

 だが、それも《祖先の幻視》の「待機」が明けるまでの話だ。

 やがて《稲妻》を2枚引き込んだ三宅が河野本体に打ち込んで勝利。

 先に準決勝に王手をかけたのは三宅になった。


三宅 2-1 河野



Game 4


 河野にとってはもう落とせない、負けられない戦いが始まる。両者マリガンすることなくキープし、河野の先手でスタート。

 まず手始めとも言わんばかりに開幕《思考囲い》をプレイする河野。公開された手札は……

《血染めの月》
《血清の幻視》
《電解》
《収穫の火》
土地が2枚

 河野は一番の脅威である《血染めの月》を選択。三宅も《血清の幻視》をプレイしてまずまずの滑り出し。

 河野は《タルモゴイフ》をプレイ、サイズは3/4と申し分ないように思えたが、返す三宅のターンに《焙り焼き》の前にあっさり処理されてしまう。

 続くターンに河野は《集団的蛮行》をハンデスモードでプレイし前方確認を行う。《電解》を落としその後、《血染めの月》を対象に《外科的摘出》をプレイして《血染めの月》によって負けることだけを完全に防いだ。

 ここから数ターン互いに引いてはターンを返すような状態になり、先に動いたのは三宅だった。《瞬唱の魔道士》から《血清の幻視》をフラッシュバックして手札を整えにいく。

 しかし三宅のエンドフェイズに《瞬唱の魔道士》《突然の衰微》によって除去され、返すターンにマナを寝かしたところを狙われて《包囲サイ》が着地する。

 さすがに放っておけない三宅は《収穫の火》《包囲サイ》を除去し、《祖先の幻視》を「待機」してターンを返す。



河野 融


 そしてここが押しどころと河野は《包囲サイ》を連打していく。

 三宅は《ピア・ナラーとキラン・ナラー》をプレイして耐えようと試みるも苦しい状況である。

 攻める河野、《包囲サイ》でアタックし三宅残りライフ9。そして《最後の望み、リリアナ》をプレイ、「-2」で次弾を装填するかのように《包囲サイ》を回収し、《極楽鳥》をプレイして終了を宣言。三宅はここで河野のエンドフェイズに《イゼットの静電術師》をプレイし《極楽鳥》を除去するが盤面の状況は苦しい。

 返す三宅はソプタートークンで《最後の望み、リリアナ》、残りはプレイヤーへと3点アタックで河野のはライフは16。そして《イゼットの静電術師》《ピア・ナラーとキラン・ナラー》の能力を2回使い、《包囲サイ》をなんとか除去する。

 しかし当然河野はもう一枚の《包囲サイ》をプレイし、ETB能力で残りライフは6。

 続くターン、三宅は動くことなくターンを返す。河野の《包囲サイ》がアタック、《ピア・ナラーとキラン・ナラー》でブロックし、三宅のライフは4。

 だがここで《祖先の幻視》の「待機」が明ける。

 そして三宅がプレイしたのは《反逆の先導者、チャンドラ》


反逆の先導者、チャンドラ


 《反逆の先導者、チャンドラ》の「-3」能力と《イゼットの静電術師》で合計5点を与えようとする。河野は対応して《ゴルガリの魔除け》で再生しようとするが、三宅はそれを《謎めいた命令》でカウンター。《包囲サイ》は除去され、ターンは河野へ。

 河野は《コジレックの審問》をプレイし《血清の幻視》を落とすが、三宅の手札にはもう一枚の《血清の幻視》《神々の憤怒》《ゴブリンの闇住まい》と十分な戦力が残る。

 《大渦の脈動》でなんとか《反逆の先導者、チャンドラ》を対処する河野だが、ターンを返すことしかできない。

 この拮抗した状況で早く勝ち手段を見つけたい三宅は《血清の幻視》をプレイ、占術で見えたカードは《祖先の幻視》《反逆の先導者、チャンドラ》

 そしてドローゴーでターンを返す河野に対し、三宅は先ほどトップに置いた《反逆の先導者、チャンドラ》をプレイすると、「+1」で赤2マナを生み出すことを選択し、《ゴブリンの闇住まい》をもプレイ。《祖先の幻視》の再利用で手札を補充してターンを返す。

 河野は続くターンもドローが芳しくないのか、ドローゴーでターンを返すのみ。

 三宅は攻め切る姿勢でメインで《瞬唱の魔道士》をプレイして《血清の幻視》を「フラッシュバック」。さらに《ゴブリンの闇住まい》でアタックして河野のライフは16。

 そしてまたも河野は何もすることなくターンを返し、三宅に《反逆の先導者、チャンドラ》の「+1」能力で2点、《瞬唱の魔道士》《ゴブリンの闇住まい》でアタックされて残りは8。

 ここで三宅の大量の手札から《稲妻》3枚が叩き付けられ、河野のライフは0に。

 試合終了、The Last Sun 2016準決勝へ駒を進めたのは三宅 恭平に決まった。


三宅 3-1 河野



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