強者たちが数多く集まったこのThe Last Sun。2日間14ラウンドにも及ぶ長き戦いの末、ようやくTop8が確定した。
宇都宮 巧(埼玉)。
彼はモダンでドレッジ、スタンダードでは《無謀な奇襲隊》を4枚搭載した殺意の高いマルドゥ「機体」でここまで勝ち上がってきた。自分の調整チームを持ち、この大舞台で3位抜けしてみせた。スイスラウンド8位の河野 融も彼と一緒の調整チームだそうだ。
そんな若いプレイヤーを倒さんとするのは、先日行われた【RPTQ】にて見事プロツアー『霊気紛争』の権利を勝ち取り、過去にもプロツアーやグランプリなどで何度もTop8経験のある清水 直樹(神奈川)だ。今回持ち込んだデッキはスタンダードがティムール霊気池、モダンがなんと宇都宮と同じドレッジである。
宇都宮はこの大物を討ち取り前に進むことができるのか、はたまた経験の差を見せつけて清水が勝利を掴むのか、見ものである。
この決勝ラウンドでは3本先取でメインボード戦が2回行われる。そしてスイスラウンド上位のプレイヤーがスタンダードかモダンかどちらか好きなフォーマットを選べるのである。フォーマットを選ぶのはスイスラウンド上位の宇都宮だ。
だが、清水のデッキリストをみるなり唸る宇都宮。彼にはどうしてもモダンを選びたくない理由があった。そう、清水のドレッジにはサイドボードに4枚の《虚空の力線》が搭載されていたのだ。
自分だけかなり不利なマッチアップになってしまうと判断した宇都宮は、消去法でスタンダードを選択するのであった。
Game 1
先攻はダイスロールに勝利した清水。いよいよ準々決勝が開戦する。
お互い初手を見るなりすぐさまマリガンを宣言。続く手札に清水はキープ、宇都宮は再度マリガンで開始される。
清水は《霊気拠点》から《霊気との調和》、これに対して宇都宮は《模範的な造り手》、《密輸人の回転翼機》からスタート。お互い好調な滑り出しだ。
ここに宇都宮が《発明者の見習い》、さらに2機目の《密輸人の回転翼機》と攻め手を緩めない。
対する清水は《導路の召使い》で《模範的な造り手》をブロックし、次のターンには《蓄霊稲妻》で《密輸人の回転翼機》を処理、《織木師の組細工》でライフをゲインしひたすら耐えてゆく。エネルギーも十分たまってはいるが大きなアクションはない。メインフェイズに《天才の片鱗》で《霊気池の驚異》を探しにいくが、なかなかたどり着くことができない。
続く清水のターンは《サヒーリ・ライ》で《織木師の組細工》をコピー、さらなるライフとエネルギーを獲得し耐える。
宇都宮 巧 |
宇都宮はただ攻め続けるのみ。《霊気池の驚異》を引かれる前に相手を倒す、ただそれだけだ。《屑鉄場のたかり屋》を戦線に追加しターンを返す。清水は《サヒーリ・ライ》で占術し《反逆の先導者、チャンドラ》をプレイ。《屑鉄場のたかり屋》を除去し、宇都宮の戦線を少しでも押し返す。
宇都宮は《サヒーリ・ライ》で《織木師の組細工》をコピーされさらにゲインされることを嫌い、《反逆の先導者、チャンドラ》を残し《サヒーリ・ライ》を攻撃によって落とす。
ターンが回ってきた清水は墓地を確認する。土地を置き《反逆の先導者、チャンドラ》の能力で赤2マナを得る。有り余るマナから《織木師の組細工》を起動し、墓地のカードタイプが7種類に到達する。
そこから繰り出されるのはもちろん《約束された終末、エムラクール》!
《霊気池の驚異》などなくても出せてしまうのがこのデッキの強みである。これには宇都宮も渋い表情だ。
ターンを奪われ《密輸人の回転翼機》が無情にも《約束された終末、エムラクール》に突撃する。十分な攻め手を失ってしまった宇都宮は相手のライフを少しでも詰めるため無理に攻撃し削りきろうとするが、清水の《反逆の先導者、チャンドラ》の能力で《墓後家蜘蛛、イシュカナ》がめくれそのままプレイ。その攻めを許さない。
その間に《約束された終末、エムラクール》がたった2回の攻撃で清水に勝利をもたらした。
宇都宮 0-1 清水
メインボードの戦いはまだ続く。なんとしても1-1で折り返したい宇都宮。
攻めきれるのか、それとも清水が耐えるのか。お互い7枚でキープを宣言し、2戦目が始まる。
Game 2
先攻は宇都宮。《スレイベンの検査官》、《経験豊富な操縦者》と動きテンポよくクリーチャーを展開してゆく。
それに対し清水も《霊気との調和》、《導路の召使い》と着々と準備を始める。
しかしここからが速かった。
《発明者の見習い》、《屑鉄場のたかり屋》と展開した宇都宮は、次のターンに《密輸人の回転翼機》をプレイしてから、「怒濤」コストで《無謀な奇襲隊》!!
出たときの能力誘発にスタックして「搭乗」すると、この苛烈な攻撃にたまらず清水は投了した。
宇都宮 1-1 清水
宇都宮が電撃的な速さで4ターンキルを決めた2戦目。このまま駆け抜けることが出来るか。
次のゲームは3本目。いよいよサイドボードが始まる。お互いデッキリストを確認し、サイドプランがもうすでに決まっているのか、素早くサイドボーディングを終わらせる。
清水は相手の攻勢に耐えるよう《コジレックの帰還》、《否認》をサイドインする。対する宇都宮は《約束された終末、エムラクール》を処理すべく《停滞の罠》などの追放除去を入れる。
先に王手をかけるのは一体どちらのプレイヤーか。
Game 3
先攻は清水。宇都宮の2ターン目にプレイした《密輸人の回転翼機》に《否認》を合わせるところからゲームは始まる。
その後は宇都宮が《発明者の見習い》、《経験豊富な操縦者》、《スレイベンの検査官》を展開し攻める。
一方の清水は動きがあまり良くない。《織木師の組細工》、《霊気との調和》などで準備しつつ耐え忍ぶ姿勢だ。4ターン目にも《霊気池の驚異》はまたしても登場せず、苦しい展開となる。《つむじ風の巨匠》をプレイするが《石の宣告》で処理されてしまう。スタックで飛行機械トークンをだす清水。
宇都宮は手札に《無謀な奇襲隊》を「怒濤」コストで唱えれる状態にあり、一気に攻めたいところだがそうしない。脳裏によぎるのは《コジレックの帰還》の存在。ここで盤面を更地にされるわけにはいかない。手札に《抗戦》もあり、これを構え続けて攻撃を行う。
少しずつライフを削られてゆく清水。土地をプレイしターンを返す。宇都宮も4枚目の土地を引くことができず、数ターンなにも起きぬまま続いたが、ここで清水が動き出す。
プレイしたのは《約束された終末、エムラクール》!
なんとストレートで土地を伸ばし、またしても手札からのプレイとなった。これにより構え続けていた手札が露わになる。《抗戦》を構えていたこともばれてしまった。盤面の少ないクリーチャーを処理され、またも失速する。
清水はライフを2まで追い詰められたが、これを《織木師の組細工》と《墓後家蜘蛛、イシュカナ》で耐えきり、《約束された終末、エムラクール》があっという間に宇都宮のライフを削り取った。
宇都宮 1-2 清水
先に王手をかけたのは清水。宇都宮はここから巻き返すことができるのか。
ビートとコンボ、やるかやられるか。緊迫した試合は続く。
Game 4
初手を見るたび表情が曇る宇都宮、相手をすぐさま倒さなければ自分が倒されてしまうため、ここで甘いキープは許されない。マリガン後の手札を見つめ再度マリガンする。ダブルマリガン後にようやくキープを宣言。4戦目が始まる。
宇都宮は《模範的な造り手》、《スレイベンの検査官》とダブルマリガンを感じさせない攻めを開始する。清水は《霊気との調和》からスタートで、今のうちにと攻める宇都宮。しかし《コジレックの帰還》を打ち込まれ盤面が更地となる。一気に攻め手を失った宇都宮は土地を置いてターンを返す。
こうなればもう清水のペースである。《織木師の組細工》で態勢を整えると、宇都宮は後続に《屑鉄場のたかり屋》をプレイするのみ。
対する清水は大本命の《霊気池の驚異》を4戦目にしていよいよプレイし起動、ここでめくれたのは2枚目の《霊気池の驚異》。これもすぐさま起動し《墓後家蜘蛛、イシュカナ》にたどり着くが、これに《無許可の分解》が飛ぶと。さらに蜘蛛トークンを一掃するべく《石の宣告》が迫る。
だが、対応して清水が《蓄霊稲妻》を自分の蜘蛛に放つと、対象不適正によって《石の宣告》は打ち消される。宇都宮は《屑鉄場のたかり屋》で攻撃するが、2体の蜘蛛に阻まれる。
清水 直樹 |
そして清水のターン。手札から三度目となる《約束された終末、エムラクール》をプレイ。
ターンを奪われる宇都宮。手札の《停滞の罠》を見た清水は、すぐさま《墓後家蜘蛛、イシュカナ》で生成された最後の蜘蛛トークンに打ち込む。
これにより《約束された終末、エムラクール》を対処する手段を失った宇都宮。攻撃を《密輸人の回転翼機》でブロックし凌ぐのだが、清水がプレイしたのは2体目の《約束された終末、エムラクール》だった。
これにより再度ターンを奪われた宇都宮。清水の手により墓地の《屑鉄場のたかり屋》を場に戻され、《約束された終末、エムラクール》を処理できる《石の宣告》を引いていたのだが無残にも《屑鉄場のたかり屋》にあてがわれ、逆転の目がなくなった宇都宮は奮闘空しく投了した。
約束された終末をもたらし、勝利を手に入れたのは清水だった。
宇都宮 1-3 清水
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