Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/07/31)
アリーナ・オープンに備えよう
みなさんこんにちは。ファブリツィオ・アンテリ/Fabrizio Anteriです。
ヒストリックによるアリーナ・オープンが今週末に開催されます。スタンダードから離れ、楽しさと強さを兼ね備えたデッキを手に取る絶好のときがやってくるのです。
ヒストリックは新鮮なフォーマットであり、そのメタゲームは固まっていません。さらに喜ばしいことに、2本先取(BO3)と1本先取(BO1)とでは異なる多様性があります。
マッティ・クイスマ/Matti Kuismaとセバスティアン・ポッツォ/Sebastian Pozzoが《死者の原野》デッキに関する記事をすでに公開しています。退屈な選択ではありますが、私もアリーナ・オープンのBO3では彼らのデッキを選ぶつもりです。
- 2020/07/30
- スケープ”ヒスト”デッキガイド ~呪文は土地のためにある~
- セバスティアン・ポッツォ
- 2020/07/31
- 常識を覆すスゥルタイゴロス
- マッティ・クイスマ
BO3向けのおすすめ: ティムール再生
これからご紹介するリストは、これまで私が使い続け、結果を残してきたものです。
1 《島》
1 《山》
2 《寓話の小道》
2 《ケトリアのトライオーム》
1 《ラウグリンのトライオーム》
1 《ゼイゴスのトライオーム》
2 《繁殖池》
1 《蒸気孔》
1 《踏み鳴らされる地》
1 《奔放の神殿》
1 《天啓の神殿》
1 《神秘の神殿》
1 《内陸の湾港》
1 《根縛りの岩山》
1 《硫黄の滝》
1 《Thriving Grove》
1 《Thriving Isle》
1 《茨森の滝》
1 《ヴァントレス城》
1 《忘れられた洞窟》
1 《孤立した砂州》
1 《平穏な茂み》
4 《死者の原野》
1 《オラーズカの拱門》
1 《爆発域》
-土地 (33)- 3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
2 《ムル・ダヤの巫女》
-クリーチャー (5)-
ティムール再生については目が肥えている人も多いかと思いますから、ここでは簡潔にほかのリストとの違いに焦点を絞っていきましょう。
最大の特徴は33枚の土地です。このアーキタイプでは29~30枚が一般的なようですが、これはミスだと考えています。このティムール原野再生は3色のマナ基盤を必要としながらも、6枚の無色土地を採用するデッキです。序盤から安定して呪文を唱えられるようにするには、土地の枚数を大幅に増やさねばなりません。
33枚にした理由はそれだけではありません。このデッキやこれに類するアーキタイプがヒストリックで強力だと考えられているのは、2ターン目のランプ呪文を8枚採用できるからですが、そのマナアドバンテージは4~5ターン目以降も継続して土地を置き続けなければ無に帰してしまいます。《死者の原野》ミラーでは土地を伸ばすことがすべてであり、いずれかのタイミングで土地を置き逃してしまうと、劣勢に立たされやすいのです。
その意味で、《ムル・ダヤの巫女》はミラーマッチのキーカードだと捉えています。1~2ターンもすれば莫大なアドバンテージを発生させます。また、土地33枚という構成だからこそ着地してすぐにライブラリートップから土地を置ける可能性が高く、このデッキは彼女の魅力を最大限に発揮できるものだと言えるでしょう。
このリストには軽量の「サイクリング」やドローが含まれているため、ライブラリートップを操作しやすい特徴があります。《ムル・ダヤの巫女》が生き残った状態でターンを迎えれば、トップから土地を2枚置けないことはめったにありません。
「サイクリング」を持つ7枚の土地は終盤戦のマナフラッド受けとして便利なものであり、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を「脱出」させやすくする強みもあります。《ウーロ》と《アズカンタの探索》は墓地のリソースを争ってしまう点が好きになれず、《アズカンタの探索》は調整を始めて早々に外すことにしました。
全体除去はゴブリン戦で非常に有効ですが、すでに相性のよいマッチアップでした。ここではメインデッキに《溶岩震》を2枚採用するだけにとどめ、《死者の原野》ミラーをより意識した構成にしました。
《暴れ回るフェロキドン》と《鍛冶で鍛えられしアナックス》は厄介な存在になるおそれがあるため、サイドボードには《砕骨の巨人》ではなく《焦熱の竜火》を採るようにしています。
ケシスコンボは非常に高速のデッキですから、《墓掘りの檻》を4枚搭載することにしました。いち早くドローしたいですし、重ねて引いたとしても《時を解す者、テフェリー》にバウンスされてコンボ決められる展開を防ぎやすくなります。
サイドボードに《長老ガーガロス》を採用したリストも見受けられましたが、きっと《スラーグ牙》がカードプールにいることを忘れてしまっているのでしょうね。
このデッキに興味を持たれる方は《荒野の再生》と《発展/発破》のシナジーについては重々承知しているでしょう。ここではその詳細には触れません。
その代わり、BO1向けの変わったデッキをご紹介しようと思います。冒頭で触れましたが、BO3とBO1とではまったく異なるメタゲームが存在しています。カードプールが広く、デッキの選択肢が豊富であり、サイドボードがなければそのすべてに対応するのが困難だからです。こういった経緯から、能動的で攻撃的なデッキがBO1では存在感を強めています。
しかし、もしBO1でもサイドボードが使えるとしたらどうでしょうか?
BO1向けのおすすめ: 黒単コントロール
3 《肉儀場の叫び》
4 《堕落の触手》
3 《衰滅》
2 《首謀者の収得》
2 《ファイレクシアの闘技場》
4 《守護像》
4 《精神石》
1 《宝物の地図》
4 《大いなる創造者、カーン》
2 《ウルザの後継、カーン》
1 《人知を超えるもの、ウギン》
1 《精霊龍、ウギン》
-呪文 (32)-
先ほどのティムール再生をBO1でも使ってみましたが、全体除去が5枚でも足らないことがあったり、《溶岩震》が飛行クリーチャーの多い白単天使や青単テンポ相手に刺さらなかったりしました。《炎の一掃》もまたグルールの3/3や4/4といったサイズのクリーチャーに触れません。
その点、黒単はこれらの問題の多くを解決する手段を備えています。しかも、マナベースも単色で安定しているのです。
BO1においてサイドボードが道具箱のようになっているのは大きな強みとなります。このデッキでは《大いなる創造者、カーン》と《首謀者の収得》を存分に活かし、その強みを引き出す狙いです。
このデッキで20ゲームほど戦いましたが、ヒストリックでこれほど楽しく、構築のしがいがあるデッキはありません。常に構築を変えていますし、まだまだ改善の余地はあると思います。
8枚採用したマナファクトは単体でも素晴らしく、各種カーン・ウギンとも相性が良好です。《宝物の地図》はやや環境の速度についていけずに枚数を減らしましたが、便利であることに変わりはなく、このカードもまたプレインズウォーカーたちとうまく共存できます。
BO1で人気を博しているアグロですが、そのすべてに《肉儀場の叫び》《衰滅》《堕落の触手》《虐殺のワーム》が刺さります。
サイドボードの《墓掘りの檻》はゴブリンに蓋をするカードです。これだけ全体除去を採用していれば、ゴブリンは脅威的な盤面を作ることは難しく、逆転の目があるとすれば《上流階級のゴブリン、マクサス》で当たりをめくることぐらいですからね。
《漸増爆弾》と《白金の天使》はとても便利なサイドカードです。この天使への解答を持っているデッキは意外にも少なく、出れば勝ちが決まることもあります。
《屍呆症》は《発展/発破》対策です。あのカードを追放すれば、サメやゾンビを溢れんばかりの全体除去でさばける見込みは十分にあります。最終的には《悪性の疫病》や、《世界のるつぼ》で使い回す《廃墟の地》で根本的な解決を図れるでしょう。
《残忍な騎士》《戦慄衆の将軍、リリアナ》《不滅の太陽》はさまざまな場面で私を救ってくれました。サイドボードのすべてのカードには言及しませんが、どれも汎用性が高いものが揃っています。
おわりに
ヒストリックを遊ぶという意味でも、環境の発展を見守るという意味でも今週末は実に楽しみですね。この記事がみなさんの役に立てば幸いです。今回のリストでみなさんが好成績を出せたら最高ですね!
ではまたお会いしましょう。
ファブリツィオ・アンテリ (Twitter)