先週末の勝ち組は!?
近年、MTGアリーナが導入されたことで、Magic: The Gatheringのオンラインイベントはかつてないほどの隆盛をみせています。自宅にいながらグランプリと同様のハイレベルなプレイと緊張感、達成感を味わえるものです。
プレイヤーズツアーファイナルの決勝トーナメントをはじめ、SCG Tour Online Championship Qualifier #1やヒストリックによるアリーナオープンとハイレベルな大会が開催された先週末。大会結果を振り返っていきます。
まずは先週末の勝ち組デッキを確認していきましょう!
4 《ロークスワイン城》
2 《総動員地区》
-土地 (25)- 4 《どぶ骨》
4 《漆黒軍の騎士》
4 《帆凧の掠め盗り》
2 《黒槍の模範》
2 《死より選ばれしティマレット》
4 《狩り立てられた悪夢》
1 《残忍な騎士》
4 《騒乱の落とし子》
3 《悪ふざけの名人、ランクル》
-クリーチャー (28)-
先週の勝ち組はプレイヤーズツアーファイナルのファイナリスト、熊谷 陸選手の黒単アグロです。Kristof Prinz選手との対戦こそ競った末の敗北となりましたが、ほかの対戦すべてを2-0のストレート勝ちと素晴らしい戦績を残しました。
1ターン目からマナカーブに沿ってクリーチャーを展開していくアグロデッキですが、低いマナカーブにしては25枚と土地の枚数は多めです。これは安定して3ターン目にパワー4の《狩り立てられた悪夢》と《騒乱の落とし子》をキャストできるようになっているだけではなく、土地の引き過ぎ(マナフラッド)を緩和するカードが多数用意されているためです。
余剰マナを使うことで《漆黒軍の騎士》の打撃は上がり、《死より選ばれしティマレット》は《自然の怒りのタイタン、ウーロ》へとにらみを利かせます。《ロークスワイン城》は土地でありながらカードアドバンテージ源であり、《総動員地区》はソーサリータイミングでは除去されないダメージソースです。序盤に土地が引けない(マナスクリュー)確立を下げつつ、中盤以降もマナを有効活用できるように構築されたデッキですね。
クリーチャーと妨害呪文(手札破壊)のバランスが難しいところですが、《帆凧の掠め盗り》の加入により一気に解消されています。サイドボード後は手札破壊が10枚まで増えますがクリーチャーも25枚前後残せるため、速やかにビートダウンしていきます。クリーチャー対策が薄いメタゲームには最適なデッキといえるでしょう。
プレイヤーズツアーファイナル
スイス順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Kristof Prinz | 4色再生 |
準優勝 | 熊谷 陸 | 黒単アグロ |
3位 | Michael Jacob | マルドゥウィノータ |
4位 | Allen Wu | ティムール再生 |
5位 | Christoffer Larsen | ジャンドサクリファイス |
6位 | Patrick Fernandes | ティムール再生 |
7位 | Benjamin Weitz | 4色再生 |
8位 | Raphael Levy | アゾリウスヨーリオン |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者145名の頂点に立ったのはKristof Prinz選手の4色再生となりました。マナベースを考慮しての《ドビンの拒否権》、《否認》の分割などメインボードの1枚挿しは目を引きますが、《発展/発破》を3枚に抑えて《帰還した王、ケンリス》を採用していることに注目です。
《否認》や《霊気の疾風》に引っかからないのはもちろん、青1マナで構えた《神秘の論争》の裏をかけるカードです。一撃必殺とはいかないものの、《荒野の再生》のバックアップがあれば数ターンであらゆるアドバンテージを稼ぎ、勝負を決めてくれる1枚。クリーチャー戦にも強く、サイドボードを含めて3枚採用されています。
トップ8デッキリストはこちら。
- 2020/7/20
- プレイヤーズツアーファイナルってなんだろう?
- 晴れる屋メディアチーム
SCG Tour Online Championship Qualifier #1
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Eli Kassis | ティムール再生 |
準優勝 | Paul Woo | 赤単アグロ |
トップ4 | Tim Milner | ラクドスサクリファイス |
トップ4 | Joseph Sanchez | ジャンドサクリファイス |
トップ8 | Wataru Ueda | 黒単アグロ |
トップ8 | Alexander Gordon-Brown | マルドゥウィノータ |
トップ8 | Adrian Casabo | 4色再生 |
トップ8 | Nicolas King | 4色再生 |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者133名で開催されたSCG Tour Online Championship Qualifier #1ですが、ライバルズ・リーグ(MRL)に所属するEli Kassis選手が制しました。上位にはアグロやミッドレンジが残りましたが、プレイオフを見越したかのように優勝者のサイドボードには全体除去が多めに採用されていました。
トップ8デッキリストはこちら。
大会放送リンク:こちら
ティムール再生
2 《森》
1 《山》
3 《寓話の小道》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《繁殖池》
3 《蒸気孔》
3 《踏み鳴らされる地》
1 《神秘の神殿》
4 《ヴァントレス城》
2 《爆発域》
-土地 (29)- 2 《厚かましい借り手》
2 《夜群れの伏兵》
2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (6)-
2 《本質の散乱》
2 《炎の一掃》
2 《嵐の怒り》
1 《幽体の船乗り》
1 《砕骨の巨人》
1 《厚かましい借り手》
1 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《ナーセットの逆転》
1 《否認》
1 《焦熱の竜火》
-サイドボード (15)-
Eli Kassis選手のティムール再生ですが、メインボードはミラーマッチを強く意識した構成となっています。《夜群れの伏兵》や《終局の始まり》といった相手のターンに仕掛けるカードだけでなく、“《サメ台風》ゲー”を想定して《厚かましい借り手》が2枚採用されているのです。
サイドボードでは各種単体除去と2種4枚採用された全体除去が目立ちます。流行の白単アグロやマルドゥウィノータは、軽いクリーチャーを横展開していくデッキなので《炎の一掃》は非常に効果的です。《嵐の怒り》は緑単アグロからミッドレンジまで幅広く対応できる1枚であり、《本質の散乱》と合わせて上手くコントロールできそうです。
メインボードからミラーマッチを意識しているため、サイドボードには《幽体の船乗り》や《厚かましい借り手》、《否認》と少な目です。ただし、3枚目の《厚かましい借り手》はインパクトが強く、《荒野の再生》を置かずに《サメ台風》によるビートダウンでゲームを決める狙いがありそうです。
このデッキのオススメ!
《成長のらせん》から《荒野の再生》を設置し、《発展/発破》を重ね撃ちすることでの勝利は理想ですが、ミラーマッチとなればなかなか実現難しいものです。むしろ《夜群れの伏兵》や《サメ台風》による似非クロックパーミッション戦略による決着も少なくありません。
インスタントタイミングでの仕掛けと《爆発域》により、《時を解す者、テフェリー》は以前ほどゲームを決定づけるカードではなくなるかもしれません。マナベースが安定した《荒野の再生》を好む方、アグロデッキを取りこぼしたくない、4色よりもティムール派なあなたにオススメ!
このデッキを使う場合は下記の記事もオススメ!
- 2020/6/25
- ティムール再生デッキガイド ~プレイヤーズツアー・オンライン3 準優勝~
- 増田 勝仁
メタゲームブレイクダウン
デッキタイプ | 使用者数 | トップ16 |
---|---|---|
4色再生 | 26 | 2 |
ティムール再生 | 24 | 3 |
マルドゥウィノータ | 18 | 4 |
バントランプ | 9 | 0 |
黒単アグロ | 8 | 1 |
赤単アグロ | 7 | 2 |
ラクドスサクリファイス | 5 | 1 |
ジャンドサクリファイス | 4 | 1 |
その他 | 32 | 2 |
合計 | 133 | 16 |
プレイヤーズツアーファイナルを経て、メタゲームは大きく変わりました。4色再生がティムール再生を上回り、マルドゥウィノータも3番手につける人気ぶりとなったのです。デッキパワーはもちろんですが、ティムール再生戦をいかに有利に戦うかが争点となったようです。以下、バントランプ、黒単/赤単アグロ、ラクドスサクリファイスと続きます。
トップ16に目を移すと、さらに興味深いことがわかります。トップ16の内使用者数が最多だったのはティムール再生ではなく、マルドゥウィノータだったのです。ミッドレンジデッキでありながらジャンドサクリファイスのようにリソースの拡充と場のコントロールへ焦点を当てるのではなく、ボード強化に特化した攻撃的なデッキこそ再生キラーとなったのでした。
単体除去の多い黒単アグロには不利ですが、ボードへの干渉手段が少なかったり、重い全体除去のみに頼った構成には強いデッキです。《バスリの副官》と《敬慕されるロクソドン》の組み合わせは《空の粉砕》に頼るアゾリウス系のデッキにとっては悪夢でしかないでしょう。
もう1点大きな変化がありました。バントランプはトップ16に1名も残らなかったのです。依然として《荒野の再生》デッキには有利といわれるものの、相手の戦略と構成は刻一刻と変化しています。さらに手札破壊を擁する黒単アグロと全体除去に耐性のあるマルドゥウィノータと対応しなければいけない相手が増えたため、デッキの適正化が図れなかったのも要因と思われます。
今週末の勝ち組を探せ!!
再生キラーとしてPTFに彗星のごとく現れた黒単アグロとマルドゥウィノータ。2つのクリーチャーベースのデッキの登場に、ティムール再生の時代も終焉を迎えたかに思えました。しかし、Eli Kassis選手はサイドボードの除去呪文を適正化することで、見事に対応可能してみせました。
今こそコントロール主体のランプデッキの出番といいたいところですが、クリーチャーデッキとティムール再生のいたちごっこへ割って入るのは難しそうです。あくまでもゲームコントロールを主眼においたデッキは勝ち筋のはっきりした2つに比べてやや悠長であり、ゲームを再構築する時間すらも与えてしまいます。
現在、《荒野の再生》側はアグロデッキに対するガードを上げているため、クリーチャーベースのデッキは良い選択肢とは思えません。そのためメインボードをミラーマッチに強く、サイドボードをクリーチャー対策に割いた《荒野の再生》デッキが勝ち組になるでしょう。
今週末にはRed Bull Untapped International Qualifier IVが控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。