晴れる屋劇場 -取消黙示録ケンタ-

大久保 寛



前回のあらすじ


 ある日、侵入者が負ける方に賭けたことで66兆2000億円の負債を追うことになった原根 健太(ケンタ)。金融業者に誘われるまま、ケンタは負債者に借金を一括返済するチャンスを与えるというギャンブル船「オブゼダート」に乗り込む。


取り消し取り消し取り消し
※左からグー、チョキ、パー。


 そこで行われるのは《取り消し》12枚を使った「限定リミテッドジャンケン」。大手金融業者のオルゾフ組が裏で糸を引くそのギャンブルは、勝てばオルゾフ組からの借金は帳消しになるが、負ければ地下労働施設に拉致されるという人食いギャンブルだった――!





ジャンケンと聞いて……



すぐ、ある予感が走った。


この勝負、運否天賦じゃない……






「おそらくは愚図グズが落ちていく……勝つのは知略走り、他人出し抜ける者……!!









ざわ・・・


ざわ・・・





※モデルの顔に加工・編集を加えております。


 ケンタのその読みは正しかった……。「限定リミテッドジャンケン」とは、《取り消し》を使用してジャンケンを行い、胸に貼った《彩色の星》を奪い合うという基本的なルールを除いて何でもアリっ……。すなわち、いかに裏を掻いた斬新な戦略で他者を翻弄……出し抜けるかが勝負の分かれ目っ……!

 そして、それはゲームの天才であるケンタにとって好機っ……! 圧倒的好機っ……!


「まずは……グーを買い占めるっ……!!






 国産TCGで磨かれた鋭い戦況分析とジャンケンへの高い資質、そして確かな態度という武器を持ったケンタが、“特定のカードの買い占め”という戦略……必勝法に辿り着いたことは……ただ必然っ……! 常人には生涯辿り着けない圧倒的必然っ……!


 だが、ケンタの思惑は脆くも崩れ去るっ……! いとも簡単にっ……!








ざわ・・・


ざわ・・・



ざわ・・・


ざわ・・・



ざわ・・・


ざわ・・・






※モデルの顔に加工・編集を加えております。




「下手だなぁ、ケンタくん。へたっぴさ……! 欲望の開放のさせ方が下手……!」






!?






「ケンタくんが本当に出したいのはグー……力いっぱい振りかぶって……ホッカホッカにしてさ……右ストレートでりたい……! だろ……?」






「なっ……なぜそのことをっ……!?







 突如としてケンタの前に現れ、見透かしたように心の内を読む謎の男……“班長”と名乗る彼からは、名うてのギャンブラーとしての風格が漂っていたっ……!

 そして、そんな強敵を前にしてケンタの血が騒ぐ……! 常人には決して理解できない狂気っ……そして、それこそが班長の策略っ……! ケンタ、堕ちて行くっ……奈落っ……!!







「セット……!」






「オープンっ……!!」






ざわ・・・


ざわ・・・








引き裂かれし永劫、エムラクール





「なんだっ……! このカードは……!」






《引き裂かれし永劫、エムラクール》です。手がいっぱいあるのでグーチョキパーです」






「グ、グーチョキパー……!? 通るかっ……! こんなもん……!






通るっ……!






「くそっ!! ……しかし《引き裂かれし永劫、エムラクール》高額なカード・・・・・・……そう何度も出すことはできないはず……!」









 が、敗北っ……!!


 ケンタの思惑は外れ、この後も班長は立て続けに《引き裂かれし永劫、エムラクール》をプレイっ……!

 気がつけば敗北っ……! ケンタ、2回続けての敗北っ……!


 やってしまったっ……! 2回連続敗北は猛省っ……!!








「ケンタくん……恐ろしいなっ……! 本当に博奕は恐ろしいっ……!」






「なんてことだ……もはやここまでなのか……!?」






 窮地に追いやられるケンタ……! が、不意に頭をもたげる疑問……「なぜ、班長は高額な《引き裂かれし永劫、エムラクール》を立て続けにプレイし続けることができるのか?」という圧倒的疑問っ……!!


 そしてその疑問への答え……アンサー……それは……!!



ざわ・・・


ざわ・・・



ざわ・・・


ざわ・・・



ざわ・・・


ざわ・・・








「さあ、さあ、お気を確かに……! がっかりするには及ばない……! まだまだ大当たりの可能性は残されている……! どうぞ存分に夢を追い続けてください……! 我々はその姿を心から応援するものです……!







 帝愛晴れる屋のカード買取……

 すなわち――

 不要・・なカードを売って必要・・なカードを購入……!




「俺もこの大量の《取り消し》を売って……アレを手に入れれば……!」






「何をしようとも無駄なことだっ……!」






「そいつはどうかな……!?」









 トドメを刺そうと一気に畳みかけてくる班長。





 ケンタはそれを確かな態度で静止っ……!!





「First……Comes……Rock――!」






























「なんだっ……! このカードは……! 800LPを支払うことで特殊召喚および特殊召喚を含む効果を無効……! 通るかっ……! こんなもん……!






通るっ……!






「そんな……そんな馬鹿な……! グアアアアアァァァッ!!!















■ 売らせてもらうぜっ……! 限界を超えてっ……!!


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次回予告




 原稿を書き上げない時点で奴らに誠意なんてものはなく……

 結局……

 奴らが頭を下げるのはただ……品性……プライドが劣等……

 ランクの低い人間というだけで……

 決してすまないと思っているわけではないのだ……!


 その証拠に……

 その土下座にちょっとした負荷を加えると、もう連中は満足に謝ることもできなくなる……!!


 本来できるはずなのだ……!

 本当にすまないという気持ちで……

 胸がいっぱいなら……!

 どこであれ土下座ができる……!


 たとえそれが……











-完-




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