決勝戦:石黒 聡志(イゼット果敢) vs. 中村 賢太(ドルイドコンボ)
晴れる屋メディアチーム
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晴れる屋名古屋店の看板大会である『東海王決定戦』、なかでも『モダン東海王決定戦』は今期でついに10期目となる。本大会は盆の最終日で、今年1番の猛暑となり気温は39℃。にもかかわらずモダンに自信を持つ猛者たちの参加は51名を数えた。
かくして、記念すべき10期目の東海王を決める最後の戦いに残ったのは、イゼット果敢を使う石黒 聡志とドルイドコンボの中村 賢太だ。
スイスラウンドを2位で通過した石黒は、『アラーラの断片』からマジックを始め、そのプレイ歴は12年。その活躍を知る者は東海圏に留まらない。プロツアー『ラヴニカへの回帰』『カラデシュ』への出場を初め、数々のプレミアイベントでの実績を持つ。
プレミアイベントに参加するプレイヤーの例に漏れず、石黒はシーズンに合わせどんなフォーマットもプレイするとのことだが、最近ではモダンにも力を入れているとのこと。
石黒「以前は特に好きなデッキというのはなかったのですが、プロツアー『カラデシュ』で機体デッキを使ってからは、アグロが好きになりました」
との言葉通り、今回使用しているのはイゼット果敢。
石黒「調整は主にMagic Onlineでおこなっています。『基本セット2021』で《嵐翼の精体》が出てからイゼット果敢を使い始めて、それからブラッシュアップし続けていますね」
石黒「スイスラウンドではトロンとバーン、荒野の再生コントロールとドレッジに2回当たったのですが、ドレッジ戦はどちらもサイドボードの《虚空の力線》が引けたのが良かったです」
決勝戦に向けて、デッキもフルスロットルのようだ。
12年のキャリアを持つ石黒とは対照的に、中村のマジック歴はおよそ2年。ネット配信での対戦動画からマジックに触れ、『ラヴニカのギルド』からテーブルトップの世界に入った。
当初はスタンダードを主戦場としていたが、イゼットフェニックスを使っていたことからそのままモダンに移行。およそ1年前に《信仰無き物あさり》がモダン環境で禁止カードに指定されてからはドルイドコンボに乗り換え、メタゲームに応じて常に調整を行ってきた。
その結果、中村の勝利は驚くべき数に及ぶ。“Nakamura Kenta”の名前で晴れる屋のデッキ検索を行うと、8月16日時点でなんと58件も中村のデッキが登録されていることがわかる。
そう、中村は“晴れる屋名古屋店で最も入賞数の多いプレイヤー”なのだ。
その中村が手塩にかけて育て上げたデッキが、今回のドルイドコンボだ。
中村「ツールボックス系のなんでもできるデッキが好きなので、調整しながらずっと使っています」
ドルイドコンボと一口にいっても、コンボ特化型や《大いなる創造者、カーン》からサイドボードにアクセスするシルバードルイドなど、そのチューニング幅は広い。多くのタイプのドルイドコンボを使いこなしてきた中村だが、今回はオーソドックスなタイプに回帰している。
プロツアーに複数回参加する強豪と、2年足らずでその頭角を現す若武者の対決。雌雄を決する最後の戦いが始まった。
先手はスイスラウンド2位の石黒。両者ともに初手の判断は早く、マリガン。そして再度確認した7枚も…奇しくもともにダブルマリガンで決勝戦は開幕した。以下が両者のキープした5枚となる。
2枚のハンドを失っても、ともにデッキの主軸は揺るがない。石黒は攻め手となる飛行クリーチャー2体と《稲妻》。
中村は妨害がなければそのまま3ターン目にコンボが完成する、ダブルマリガンを思わせないハンド。
石黒が《沸騰する小湖》から《蒸気孔》をショックインし、《僧院の速槍》を走らせ、続いて《スプライトのドラゴン》とのダブルアタック。上々の展開だ。
一方の中村は、《貴族の教主》と《献身のドルイド》を展開しマナベースを確保する。手札に控える《療治の侍臣》から《歩行バリスタ》に繋げることができれば無限ダメージを実現できるが…。
この布陣に対し、3ターン目が回ってきた石黒は《乱撃斬》を《献身のドルイド》に撃ち込んで無限マナの生成を阻止しつつ、攻撃を継続する。コンボパーツの1つを潰された中村だが、まだ手はある。続けて《破滅の終焉》をキャストし、2体目の《献身のドルイド》を呼び出す。
石黒も中村の青写真が見えているのか、しばし黙考した後、初手から温存していた《稲妻》を《献身のドルイド》に。これで石黒の火力は尽きたが《スプライトのドラゴン》はすでに3/3。地上はともかく、空中からの攻撃を止める術を持たないドルイドコンボに対するクロックとして、非常に頼りになる存在だ。《僧院の速槍》とのアタックで、中村のライフは早くも6まで落ち込む。
ターンが返った中村は《歩行バリスタ》をX=2でプレイし、そのまま《僧院の速槍》に2点を撃ち込み落としていく。
可能な限りの対応をする中村だが、どうにも《スプライトのドラゴン》の攻撃が止まらない。コンボの完成も叶わなず、Game2に望みをかける。
石黒1-0中村
石黒はドローやパンプアップ系のスペルをアウトし、除去を大量投入する。メインボードの除去は火力がすべてだったが、「プロテクション(赤)」に引っかからない《四肢切断》や、中村がサイドインしてくるであろう《減衰球》への解答となる《削剥》を追加している。
一方の中村は重めのカードやコンボパーツを大幅にオミットし、アグロ対策とイゼット果敢への強力なサイドカードである《減衰球》を投入する。
先手となった中村は1マリガン後、以下の手札をキープ。
石黒も1マリガンし、土地1枚ながら軽快に動ける手札をキープした。
フェッチランドをプレイするのみでターンを返す中村に対し、石黒はまたもや1ターン目から《僧院の速槍》を走らせる。中村の初動は2ターン目の《献身のドルイド》だが、石黒は《稲妻》で即応。先ほどと違いクロックの追加こそ叶わないが、石黒がペースを掴んでいるように見える。
しかし、中村のドルイドコンボはツールボックス…つまりシルバーバレット戦略が可能なデッキだ。石黒のエンドに《エラダムリーの呼び声》で《コーの火歩き》を手札に入れると、続く自分のターンに召喚する。
対処手段はサイドインしている石黒だが、解答は手札にはない。少し考えた後に優先権をパスし、《コーの火歩き》は無事着地を果たす。
盤面上、石黒の唯一のアタッカーである《僧院の速槍》は「プロテクション(赤)」で止まった形だが、迷わずアタック。中村も石黒が持つ解答を予想しているのか、こちらも迷わずに即座にブロックを指定する。解決されれば一方的に《僧院の速槍》が討ち取られる結末だが、もちろん石黒がそのまま待つはずがない。
《魔力変》から赤マナを2つ捻出すると《溶岩の投げ矢》、そして《乱撃斬》を続けて中村に!都合5/6となった《僧院の速槍》が「獰猛」の条件を達成させたことで、「プロテクション(赤)」での軽減ができなくなり、《コーの火歩き》は一方的に討ちとられる…はずだった。
しかし、中村はこの展開を読んでいた。慌てずに《流刑への道》を《僧院の速槍》に撃ち込み、石黒の計画を挫くことに成功する!
ビッグアクションを制した中村は《太陽冠のヘリオッド》、続いて《台所の嫌がらせ屋》と展開し、毎ターン絆魂を付与しながら攻撃へとうつる。増え続ける+1/+1カウンターを前に、今度は石黒が盤面を畳む番となった。
石黒1-1中村
両者とも展開や勝敗に一喜一憂することなく、淡々と事象を受け止めていく静かな対戦もこれが最終ゲーム。
再び先手となった石黒はノーマリガンでキープ。
対する中村は1マリガン。
初動は後手中村の《ブレンタンの炉の世話人》だったが、石黒はアップデートされたイゼット果敢の本領発揮とばかりに2ターン目に《魔力変》から《嵐翼の精体》!!3/3飛行というスタッツだけでも驚異だが、さらに占術によりデッキトップの不要牌をボトムに送り込んでいく。
飛行に対するブロッカーが存在しない中村としては、これを看過することはできない。ターンが返ってくると即座に《流刑への道》で対応する。
Game2では息切れしていた石黒だが、《スプライトのドラゴン》を召喚すると《選択》をキャストし、すぐさま2/2としてレッドゾーンへ送り込む。第2メインには《損魂魔道士》を追加した。
地上は止まっているものの、フライヤーが止まらない。中村としてはなんとか対処したいが、対処手段がないどころか3枚目の土地すらも引けず《献身のドルイド》を展開するのみとなってしまう。
明らかに勝利の天秤は石黒へと傾いている。再び《魔力変》から《嵐翼の精体》を召喚すると、《献身のドルイド》に《稲妻》を撃ち込むことで《ブレンタンの炉の世話人》を間接的に除去。4/4に成長した《スプライトのドラゴン》と《損魂魔道士》で7点ものダメージを与え、中村のライフは11まで落ち込む。
ターンは返ってきたものの、中村がコントロールしているのは2枚の土地と《献身のドルイド》のみ。マナスクリューのこの局面、限られた4マナをいかに活用するか。
今まで判断の早かった中村も、正念場とばかりに長考に入る。選択肢としては《スパイクの飼育係》と《流刑への道》で凌ぐか、《集合した中隊》にかけるかの2択だが、果たして。
前者は延命できるもののジリ貧にしかならないと判断し、中村の決断は《集合した中隊》だった。
意を決してプレイした《集合した中隊》。1枚、2枚とめくられていくライブラリーから中村に応えたクリーチャーは…皮肉にも《コーの火歩き》のみ。
石黒はダメ押しとばかりに《些細な盗み》をプレイして中村の唯一のブロッカーをバウンスすると、イゼットカラーのクリーチャー達が戦場を蹂躙していく。
『第10期モダン東海王』の座は、石黒の手中にあった。
石黒 2-1 中村
『第10期モダン東海王』に輝いたのは石黒 聡志!おめでとう!