Translated by Kohei Kido
(掲載日 2020/09/01)
ソフトかつハードな対抗策
『ゼンディカーの夜明け』で私がプレビューを担当するカードは《当惑させる難題》です。良いデザインのカードで、あまり見かけない効果をマジックにもたらします。リスクが低い土地加速への解答です。
最近の環境に存在していればこれは便利なカードだったはずで、ゼンディカー全体を考えても選択肢として覚えておくと重要なツールになると考えています(もしかすると、ある種の「上陸」やそれを補助するカードがまた戻ってくるのかも?)。
私はこのカードが構築フォーマットで役割を持つことができて、より相互干渉的で面白い試合をもたらしてくれるのではないかと心に思い描いています。
《当惑させる難題》は多くの場合では「ソフトな」対策カードと表現されるようなカードです。このエンチャントが場にあっても、対戦相手の《探検》や《成長のらせん》、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は何もできないということはなく、相手が即座に負けるというものではありません。
一方で《当惑させる難題》を出すとカードを引けるので、ゲーム後半で引いてしまった場合や、必要のないマッチアップで引いてしまった場合でも重い罰を受けるわけではありません。
上に挙げたような場合ではこのカードはどちらのプレイヤーにとっても即座に「ゲームオーバー」を突き付けるわけではなく、カードを場に出せたタイミング次第で片方のプレイヤーが有利になって、もう片方のプレイヤーが不利になるというリスクとリターンの関係を発生させるカードです。マジックの試合に繊細な文脈が存在して、幾重もの判断の末に決着がつくことを好ましいと思っているので、そういったカードデザインになっていることをありがたく思っています。
場合によっては、上の想定よりも「ハードな」対策カードとして機能することもありえます。あるデッキの戦略が土地加速に依存しすぎていて、他の強力な勝利プランを持ち合わせていない場合、《当惑させる難題》と対峙したときに困ったことになるかもしれません。例えば、モダンに存在する《原始のタイタン》を用いたデッキのいくつかの型はこのカテゴリーのデッキに入ってしまうでしょう。直線的で一つのゲームプランに依存したデッキに対して強力な解答を用意できることも、みなさん歓迎できることだと思います。
マリガンと各フォーマットへの影響
- 2020/07/29
- 禁止告知後のヒストリックとデッキ公開制への適応
- ルーカス・エスペル・ベルサウド
私の記事にくり返し登場している話題のひとつは、デッキリスト公開制とロンドン・マリガンがマジックの構築フォーマットに、捉えづらいかもしれませんが確実な影響を及ぼしていることです。この一年の間に、相手のデッキ次第で土地加速カードのない手札は戦略として必ずマリガンしてしまうようなデッキをいくつも使ってきました。そういうタイプのデッキを再び使うことが難しくなってしまったとまでは言いませんが、使うことによるリスクを高めて、決断を少しためらわせるようになったとは言えるでしょう。
私が土地加速を軸とするデッキを使ったとして、もし環境にある他の全てのデッキが《当惑させる難題》をデッキリストに何枚も含めることを選んでしまったら、私のデッキの立ち位置は悪くなるでしょう。私のデッキの戦略が土地加速だということを対戦相手が知っているという状況であれば、《当惑させる難題》を求めてマリガンすることで勝率を高めて、デッキ同士の相性も大きく変わってしまうかもしれません。特に相手が先攻であれば違いは大きいでしょう。こういった事象は全て戦略的で好ましいものです。
最近のスタンダードでは土地加速の力によって試合が決定づけられてしまうことをよく見かけました。《当惑させる難題》はコントロールデッキであればメインデッキから入れられるカードになり、ランプのミラーマッチでは勝利をもぎ取る手段になり、他の戦略を採るデッキにとっては活躍の場を広げるものにもなるでしょう。おまけとして期待できるのは「星座」の誘発能力を持つカードや《意味の渇望》との間のシナジーです。
来たるミシックインビテーショナルの開催フォーマットであるヒストリックで、《運命のきずな》、《荒野の再生》、《死者の原野》が相次いで禁止されるのを目撃しました。これらのデッキに共通していたのは、豊富に使える土地加速カードへの信頼です。土地を伸ばしていくことで勝利できる別の手段が発見されることがあれば、私は《当惑させる難題》という手段があることをありがたく感じるでしょう。
ルーカス・エスペル・ベルサウド (Twitter)