優勝者デッキテク:ミウラ リュウジのジェスカイエンソウル
晴れる屋メディアチーム
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By Tsutomu Date
『パイオニア東海王決定戦』、2期目となる今回は9/6(日)に行われた。第1期はマジックフェスト・名古屋2020直前の1月末の開催であったことから、実に8か月ぶりのパイオニア東海王決定戦となる。
The Last Sun 2020本戦への参加資格として「2020年開催の東海王決定戦優勝者」が追加されたこともあり、定員である51名は受付終了時間前に早々に満たされ、その盛況ぶりはマジックフェスト名古屋直前を思い出させるほどであった。
その中で決勝に駒を進めたのは、第8期レガシー東海王の荒川 友洋と、モダンの親和を使わせれば東海でトップレベルのプレイヤーであるミウラ リュウジである。
荒川のジェスカイファイアーズ対ミウラのジェスカイエンソウルの激戦はミウラが2-1で勝利し、見事“第2期パイオニア東海王”の座に就いた。ミウラは『インベイジョン』からマジックを始め、一時は活動を休止していたものの『イニストラード』で復帰。『戦乱のゼンディカー』で競技マジックに入り、以降はプレミアイベントに合わせて多くのフォーマットを股にかけてプレイしている。フォーマットを問わず大会上位入賞の多いミウラだが、テーブルトップの競技マジックが減少してからはMTGアリーナにその活動拠点を移し、リミテッドを主にプレイしているとのこと。
そのミウラに使用デッキ「ジェスカイエンソウル」についてインタビューをお願いした。
――優勝おめでとうございます。まずは本大会にあたってこのデッキを選ばれた理由を教えてください。
ミウラ「元々モダンの親和が好きだったので、タイプが似たデッキとして選んでいます。パイオニアが制定されてすぐ、今年初めのマジックフェスト名古屋でもこれを使っていました。最近はずっと紙のマジックをやれていなかったので、久しぶりに大会に出るか!と思って、調整したのは今日の朝でしたね」
――確かにジェスカイエンソウルは親和に通じるところがありますね。どちらのデッキも、ダメージ計算やリスク管理が非常に難しい印象がありますが、ずっとプレイしていないとは思えない優勝劇でした。
ミウラ「難しい、とはよく聞きますがあまりそう感じたことはありませんね。確かにハサミ(《アーティファクトの魂込め》)で確実にダメージを与えるのに頭は使いますが(笑)。相手に除去を使わせた後に付けたり、非クリーチャーアーティファクトに付けたり、と工夫するところはありますね」
――では、デッキの基本的な動きを教えてください。
ミウラ「これはキープ基準でもあるのですが、1マナクリーチャーでスタートするのが基本ですね。アドバンテージが取れる《ボーマットの急使》でスタートしたいマッチが多いですが、相手によって展開する優先順位は変わってきます。例えば、メイン戦の5色ニヴ=ミゼット相手なら《石とぐろの海蛇》から入ります」
――それはどうしてですか?
ミウラ「除去のほとんどが多色呪文なので、ほぼ死なないクリーチャーになるからです。《アーティファクトの魂込め》をつけるのが勝ちパターンで、6/6になれば《破滅の刻》にも耐えられます」
――《アーティファクトの魂込め》の判断は特にプレイスキルが出そうですね。
ミウラ「そんなに難しく考える必要はないですが(笑)。先手2ターン目で、相手が除去を構えていなければハサミは付けますよ」
――一度でも攻撃が通せれば、除去されても十分な仕事をしていますものね。
ミウラ「2回殴れば大体《爆片破》の射程圏内ですからね」
――ではデッキの調整結果や、採用カードで工夫しているところを教えてください。
ミウラ「今回は全体除去で対処されづらい構成にしています。《搭載歩行機械》を採用して、《鋼の監視者》を増やしているんです。これらのおかげで、あまり横に並べなくともクロックを維持するプランを取ることができます。普通のリストでは《搭載歩行機械》は入っていませんね」
ミウラ「あとはメインからの《魂標ランタン》ですね。これは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》対策で採用していますが、使い勝手がいいです。黒単にも効きます」
――《アーティファクトの魂込め》をつけることもできますよね。《幽霊火の刃》は4枚ではなく、3枚なんですね。
ミウラ「《影槍》を1枚採用していますからね。回避能力を持っているクリーチャーは多くないので、ダメージを通す手段としてはこちらのほうが手っ取り早いです。赤単にも強いですし。あとは《金属の叱責》ですね」
――最近はあまり見ないカードですね。
ミウラ「青1マナを構えていると、対戦相手は《神秘の論争》を警戒して、青ではない呪文をプレイしてきます。そこに刺さりますね」
――対戦相手もシビアにダメージ計算してくるでしょうし、そのような状況でプランを狂わすのは有効そうですね。ほかにデッキの構成で悩んでいる部分はありますか?今日の1ラウンド目からやりなおすのならこのカードを使いたかった、というような…。
ミウラ「特にはありませんね。あえて言うなら、環境によるとしか言いようがないのですが、マッチアップによって無駄になってしまうカードがあります。コントロール全般には《乱撃斬》が、クリーチャーデッキには《ドビンの拒否権》がそれにあたります。メインは丸くしておきたいですし、全くの無駄というわけではないのですけどね」
――では想定していたメタゲームについて教えてください。
ミウラ「黒単、緑単信心、あとは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を使ったコントロールデッキが多いと思っていました。実際のマッチアップは、スイスラウンドでオルゾフオーラ、5色ニヴ=ミゼットに2回、バーンに勝って2回IDで4位抜け、シングルエリミネーションに入ってからはバーン、黒単、ジェスカイファイアーズでした。半分は《空を放浪するもの、ヨーリオン》に当たっているので、予想通りでしたね」
――不敗での優勝ですね。お見事でした。では各デッキとの相性や戦い方、サイドボーディングのプランを教えてください。
ミウラ「とても有利なマッチアップです。5色ニヴ=ミゼットはメインに《致命的な一押し》などの軽い単色除去を取っていることは少ないので、《石とぐろの海蛇》に《アーティファクトの魂込め》や装備品をつければ勝ちます。サイドボーディング後は除去をケアして《アーティファクトの魂込め》よりも装備品を優先して展開し、除去を誘っていきます」
ミウラ「先手・後手によってサイドプランを若干変えています。2ターン目の《炎樹族の使者》連打の展開でなければ、速度で優っているので、《ジンジャーブルート》や《石とぐろの海蛇》に《アーティファクトの魂込め》を付けるのが勝ちパターンです。特に《ジンジャーブルート》をブロックできるクリーチャーは4マナ以降なので、安定してダメージを稼いでいけますね」
ミウラ「メイン戦は相手の除去を気にせずにオールインしていきます。サイド後は《自然の怒りのタイタン、ウーロ》にライフを繰り返し得られることのないように《魂標ランタン》を使います。クロックを用意して、サイドインした打ち消し呪文で要所を捌いていく、クロックパーミッション的な戦い方になりますね」
ミウラ「《影槍》もありますし、バーンは比較的楽なマッチアップです。気を付けなければならないのは《損魂魔道士》ですね。《アーティファクトの魂込め》を付けた《ダークスティールの城塞》は破壊不能ですが、《損魂魔道士》との組み合わせでは除去されてしまうので、そこだけは注意です」
ミウラ「黒単は微不利くらいのマッチアップだと思っています。互いに除去を打ち合うので消耗戦になりますが、《悪ふざけの名人、ランクル》を撃ち漏らしてしまうと、こちらの戦場だけ更地になってしまうのがつらいですね」
――優勝されたこのデッキを見て、自分でも使ってみたいと思うプレイヤーも多いと思います。使用するにあたってのアドバイスをお願いします。
ミウラ「ゲームのプランニングで最も重要なのは、“クリーチャーでの打点がどれだけ出せるか”、です」
ミウラ「キープ基準は、序盤からしっかりダメージを与えられるようにクリーチャーと補助系のカードがあること。《ボーマットの急使》はこのデッキでは貴重なカードアドバンテージを稼いでくれるクリーチャーですが、《ボーマットの急使》と《爆片破》のような手札はマリガンします。あまりマリガンは好きではありませんが、ダブルマリガンぐらいなら勝てます」
ミウラ「あとはダメージ計算ですね。こちらは慣れが必要なので使い込みが必要です。対戦相手もこちらのムーブが完璧にわかっているわけではないので、タップアウトを誘って《きらきらするすべて》を通し、それで勝つこともありました。《きらきらするすべて》は想定外のダメージが入るので、引き込んでくることも含めて、しっかりダメージ計算しましょう」
ミウラ「最後に《夢の巣のルールス》ですね。《アーティファクトの魂込め》も墓地から返ってくるので当然相手は警戒してきます。難しいのは3マナ払ってサイドボードから持ってくるか、カウンターを構えるか。こちらもセンスと経験が必要だと思います」
――ありがとうございました。
禁止改定によりパイオニア環境は大きく変化したが、ミウラは改定後にプレイする機会がなく、環境の変化を自身に落とし込むことはできていなかったそうだ。しかしその自己分析にも関わらず、とても大会から離れていたとは思えないほど環境の理解は明確だった。
また、モダンの親和で培ったダメージ計算やリスクマネジメント技術は、パイオニアのジェスカイエンソウルに大きく活かされている。そして遂に『パイオニア東海王決定戦』で優勝するに至った。
本人は謙遜するが、ミウラの優勝は必然と言っていいだろう。
おめでとう!『第2期パイオニア東海王』はミウラ リュウジ!