はじめに
みなさんこんにちは。
今週末には『ゼンディカーの夜明け』がリリースとなりますが、みなさんはどのカードに注目していますか?各フォーマットにはどのような変化があるのでしょうか?
MOではテーブルトップに先行して、すでに『ゼンディカーの夜明け』が実装されています。
そこで今回の連載では、先週末に新環境で開催されたModern Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Challenge #12208829
新環境初のモダンイベントを制したのは切削デッキ
2020年9月19日
- 1位 Dimir Mill
- 2位 Selesnya Valakut
- 3位 Gruul Midrange
- 4位 Death&Taxes
- 5位 Gruul Midrange
- 6位 Jund
- 7位 Temur Uro
- 8位 Azorius Midrange
トップ8のデッキリストはこちら
『ゼンディカーの夜明け』リリース後、最初に開催されたModern Challengeを制したのは、なんとDimir Millでした。今回の結果は、さまざまなアーキタイプが活躍できるモダンらしい大会結果といえるでしょう。
新カードも早速使われており、環境に影響を与えています。
デッキ紹介
Dimir Mill
今回優勝したDimir Millは、デッキ内のほとんどが《催眠の宝珠》や《不可思の一瞥》のような「切削」するためのカードで占められています。
Prowessをはじめとした速攻でライフを攻めてくるデッキには不利ですが、クロックが遅いコントロールに対して軸をずらしたライブラリーアウト戦略は強力です。第13期モダン神決定戦において、神・林 政孝選手は対戦相手がコントロールを持ち込むことを想定し、同デッキを選択したという例もあります。
Dimir Millというアーキタイプ自体は長い間モダンに存在していましたが、このデッキがトーナメントレベルで結果を残すにはやや力不足な印象でした。しかし、『ゼンディカーの夜明け』から《遺跡ガニ》が登場したことで、Modern Challengeを優勝するまで強化されたのです。
☆注目ポイント
『ゼンディカーの夜明け』で登場した《遺跡ガニ》は《面晶体のカニ》の追加であり、これにより1マナの「切削」クリーチャーが8枚に増えて安定性が大きく向上しました。《遺跡ガニ》のもっとも注目すべきポイントは『プレイヤーを対象に取らないこと』であり、《神聖の力線》を張られたとしても相手を「切削」し続けることができます。タフネスが3のため、《溶岩の投げ矢》1枚では除去されないのも地味に嬉しい点です。
《血の長の渇き》は追加の《致命的な一押し》として機能します。このデッキが苦手とするProwessなどの軽いクリーチャーを使ったアグロデッキに対して、ライブラリーアウトするまでの時間を稼いでくれます。
「切削」することによって必然的に相手の墓地にカードが溜まっていくので、現環境のトップメタである《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を対策する必要があります。メインから採用されている墓地対策の《塵へのしがみつき》や《外科的摘出》は、コントロールやDredgeとのマッチアップを想定したものでしょう。
Modern Challenge #12208833
新カード多数、優勝はHeliod Combo
2020年9月20日
- 1位 Heliod Company
- 2位 Azorius Spirits
- 3位 Humans
- 4位 Humans
- 5位 Jund Death’s Shadow
- 6位 4C Uro Piles
- 7位 Gruul Midrange
- 8位 Jund Death’s Shadow
トップ8のデッキリストはこちら
今大会を制したHeliod Companyを筆頭に、SpiritsやHumansといった種族デッキ、Death’s ShadowやUro Pilesなどさまざまなアーキタイプが入賞していました。
デッキ紹介
Heliod Company
2 《平地》
1 《虹色の眺望》
4 《寺院の庭》
4 《吹きさらしの荒野》
3 《地平線の梢》
1 《ガヴォニーの居住区》
-土地 (20)- 2 《歩行バリスタ》
4 《東屋のエルフ》
4 《議事会の導師》
3 《漁る軟泥》
2 《オーリオックのチャンピオン》
4 《太陽冠のヘリオッド》
4 《イーオスのレインジャー長》
4 《スパイクの飼育係》
-クリーチャー (27)-
2 《流刑への道》
2 《夏の帳》
2 《減衰球》
2 《窒息》
1 《ブレンタンの炉の世話人》
1 《ガドック・ティーグ》
1 《エイヴンの思考検閲者》
1 《弁論の幻霊》
1 《大祖始の遺産》
-サイドボード (15)-
《太陽冠のヘリオッド》と《スパイクの飼育係》による無限ライフを軸に、《集合した中隊》のアドバンテージを活かしたミッドレンジプランや《硬化した鱗》と+1/+1カウンターを乗せるシナジーを活かしたアグロプランなど、多角的な勝ち筋が特徴のHeliod Company。
相手はこのデッキの無限コンボを常に意識する必要があり、クリーチャーを対処するためにタップアウトしにくくなります。対戦難易度の高さがこのデッキの強みであり、選択肢が豊富なデッキを使うのが好きな方に特におすすめできるデッキです。
☆注目ポイント
このタイプのデッキはマナクリーチャーを用いて高速で展開しコンボ達成を目指しているため、軽量除去やスイーパーを使うコントロールを苦手としている印象があります。しかし、このデッキではマナ加速の一部に《楽園の拡散》を使用することで、スイーパーで場が壊滅しないように工夫されています。
《イーオスのレインジャー長》や《集合した中隊》といったアドバンテージを得る手段が多く用意されているため、相手がコンボを警戒して積極的に動かない場合にはロングレンジで戦うこともできます。
+1/+1カウンターとシナジーを形成してビートダウンプランを支える《硬化した鱗》ですが、《太陽冠のヘリオッド》と《スパイクの飼育係》の無限ライフと組み合わせることによって好きなだけクリーチャーを強化することができます。《スパイクの飼育係》の起動型能力によって+1/+1カウンターをほかのクリーチャーに移動させることもできるため、場にあるすべてのクリーチャーが脅威となります。
『ゼンディカーの夜明け』の新カードが採用されています。呪文/土地の両面カードである《変わり樹の共生》は序盤はマナ基盤として、中盤以降は強力なサーチスペルとして使えます。安定したマナ基盤と高いデッキパワーを両立できるところが、この両面カードの特徴です。
Azorius Spirits
Spiritsはその名の通り軽量のスピリット・クリーチャーを《ドラグスコルの隊長》や《至高の幻影》といったロードで強化しつつ、《霊廟の放浪者》や《呪文捕らえ》などの妨害能力を持つスピリットでバックアップしながらビートダウンしていくデッキです。
《呪文捕らえ》や《鎖鳴らし》は優秀な瞬速持ちクリーチャーであり、これらを利用することで隙を作らずに脅威を展開できるのがこのデッキの強みです。また、デッキ内のクリーチャーの多くが回避能力持ちであるため攻撃も通しやすく、妨害手段に恵まれているためミッドレンジやコントロール、コンボと相性が良いデッキです。
また、プレビュー段階から注目されていた万能除去能力を持つ《スカイクレイブの亡霊》がフル採用されています。
☆注目ポイント
マナコストの軽いパーマネントが主力とされているモダンでは、《スカイクレイブの亡霊》は万能除去として機能します。《忘却の輪》に代表されるような白のパーマネント除去は自身が戦場から離れたときに除外していたカードが戻ることがほとんどでしたが、《スカイクレイブの亡霊》の場合は除去されても相手の戦場に戻らず、代わりに能力を持たないイリュージョン・トークンを残します。スピリット・クリーチャーであるため、瞬速を与える《鎖鳴らし》と組み合わせて使いたいところです。
《ルーンの与え手》はスピリットではありませんが《霊気の薬瓶》や《霊廟の放浪者》と並ぶ貴重な1マナ域であり、《呪文捕らえ》や《ドラグスコルの隊長》を単体除去から守ってくれます。
Bant Spiritsとの違いは2色であるため土地からのライフロスが少なく、マナ基盤が安定している点になります。
《霊気の薬瓶》があることで戦闘中にロードを出してコンバットトリックのように使用したり、《呪文捕らえ》を構えつつ脅威を展開できるようになったりと、プレイングの幅が広がります。《スカイクレイブの亡霊》という強力な新戦力も加入したことで、《霊気の薬瓶》の上に蓄積カウンターが3個乗っている場合は今まで以上に注意が必要です。
Uro Piles
1 《森》
1 《冠雪の平地》
1 《冠雪の島》
1 《冠雪の山》
1 《冠雪の森》
1 《繁殖池》
1 《ケトリアのトライオーム》
1 《ラウグリンのトライオーム》
1 《神聖なる泉》
1 《蒸気孔》
1 《寺院の庭》
4 《霧深い雨林》
3 《溢れかえる岸辺》
3 《沸騰する小湖》
2 《神秘の聖域》
2 《廃墟の地》
2 《死者の原野》
-土地 (28)- 4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
3 《創造の座、オムナス》
-クリーチャー (7)-
TemurやSultaiなど色の違いはありますが、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を軸に安定した成績を残し続けているミッドレンジです。《レンと六番》や《時を解す者、テフェリー》といったプレインズウォーカーでアドバンテージを稼ぎ、除去とカウンターでコントロールしていき最終的に《死者の原野》でゲームを終わらせます。構築によっては《約束の刻》で《死者の原野》をサーチできるようにしたものもあります。
モダンのミッドレンジやコントロールは最近のセットから恩恵を受け続けており、『ゼンディカーの夜明け』からも新戦力を獲得してさらに強化されました。
☆注目ポイント
今大会においてトップ16に2名入賞したことで、新カードの《創造の座、オムナス》はモダンレベルであることが証明されました。このカードを採用するためにUro Pilesは4色となり、デッキパワーはこれまで以上となっています。10種類以上のフェッチランドが使えるモダンでは同一ターンに「上陸」を複数回誘発させやすく、スタンダード以上に爆発力のあるマナエンジンとなります。
《成長のらせん》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》といったマナ加速を利用しフェッチランドを組み合わせることで、最速4ターン目に「上陸」を誘発させることができます。これによって得たマナを《レンと六番》や《時を解す者、テフェリー》をキャストするために使用できれば、圧倒的な場を構築することも可能です。
《レンと六番》の[+1]能力によって墓地からフェッチランドを拾うことで、毎ターン安定して「上陸」を誘発させることができますね。
両面カードの《海門修復》は終盤に強力なドロースペルとなり、カードアドバンテージを重視するコントロールデッキにフィットしています。7マナに達していないときや土地を置く必要がある場面では、青マナの出る土地としてプレイできるなどフレキシブルさがこのカードの特徴です。アンタップインによるライフ損失も《自然の怒りのタイタン、ウーロ》によって回復できるため、Prowessのように速攻でライフを攻めてくるマッチアップ以外では問題になることはなさそうです。
4色デッキであるためダブルシンボルは思いのほか厳しく、スイーパーには《神々の憤怒》の代わりに《炎渦竜巻》が優先されています。《浄化の野火》はTronにはもちろんのこと、コントロールデッキにとっては厄介な《魂の洞窟》や《死者の原野》といった土地対策になります。
総括
強力なカードが多数収録された新セット『ゼンディカーの夜明け』はモダン環境にも影響を与えています。
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を使ったミッドレンジ/コントロールはコンスタントに結果を残していますが、先週末に開催された2つのModern Challengeの結果をみるに現時点では環境の多様性を脅かす存在ではなさそうです。
USA Modern Express vol.46は以上となります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!