Deck Tech:上間 善一郎のディミーア変容
晴れる屋メディアチーム
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テーブルトップに先駆けて、MTGアリーナ上では約1週間早く『ゼンディカーの夜明け』はリリースされた。メタゲームの情報解析は素早く、なかでも《創造の座、オムナス》を主軸とした4色オムナスは、突出した強さを見せていた。環境初陣戦が開催されるよりも早く、環境は解き明かされてしまったようにさえ感じられた。
しかし、蓋を開けてみれば『ゼンディカーの夜明け』環境初陣戦には、いくつもの目新しいデッキが存在していた。
上間 善一郎もその1人だ。ディミーア変容を持ち込み、4連勝後に2IDし、スイスラウンド1位の成績でトップ8を決めている。早速、デッキの話を聞いてみよう!
――トップ8進出おめでとうございます。今回のディミーア変容について教えてください。
上間「実は調整自体は以前から行ってきましたが、大会で使用したのは初めてなんです。トーナメント結果をみても同じデッキを使っている人を確認できなかったので、デッキ自体が強いのかそれとも自分が上振れて勝っているだけなのか判別できなくて。以前は大会では《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を使っていました」
――では、『ゼンディカーの夜明け』導入されて満を持して使用したという感じですね?
上間「ローテーション後、MTGアリーナで調整してかなり勝率は良かったんですが、それでも幸運が重なっただけではと疑っていたくらいでした」
――それでも本日の予選ラウンドを4-0-2と素晴らしい成績だと思います。このデッキはどのようなデッキか教えていただけますか?
上間「軽いクリーチャーに『変容』を重ねてビートダウンするアグロデッキになります。除去呪文はありませんが、飛行や盤面干渉できる『変容』クリーチャーを使用して効率よくダメージを与えていきます。」
――このデッキのキーカードどのカードでしょうか?。
上間「キーカード《ゼイゴスのマンバ》ですね。『変容』の起点になりますし、相手の序盤を崩すこともできるので」
上間「例えば自分が先手で4色オムナスを相手にした場合、2ターン目の《水蓮のコブラ》に対して《ゼイゴスのマンバ》→《海駆けダコ》(変容)の動きをすることで、ボードがクリアな状態で3ターン目を迎えられます。相手の隙をみて瞬速クリーチャーで攻めるというよりは、『変容』を使い自分優位な場を築いて相手に押し付けていくデッキですね」
――なるほど。「変容」を持つクリーチャーのなかでは《哀歌コウモリ》が目を引きますね。
上間「このカードは『変容』することもできますが、2ターン目《狡賢い夜眷者》、3ターン目に《哀歌コウモリ》といった風に、自身が『変容』元になることもできます。サイズは3/3で回避能力もあり、『変容』を重ねても十分強力です。」
――「変容」以外のクリーチャーですが、1枚挿しの《メア湖の海蛇》はどのような役割なのでしょうか?
上間「(自分は)このカードのファンなんです。オーバーパワーなカードで、毎回活躍するわけではありませんが、好きなので1枚だけ入れています。よくサイドアウトするんですけどね(笑)」
――ディミーアカラーといえば『ゼンディカーの夜明け』でフィーチャーされているディミーアローグが流行していますが、なぜ「変容」を使われたのでしょうか?
上間「実際にディミーアローグも試しました。軽いならず者を並べて『切削』し、《空飛ぶ思考盗み》によりダメージを加速させていく。大半が瞬速・飛行を持つためダメージレースで優位に立てますが、最後の一押しが難しく感じました」
上間「それに対して『変容』は押し込みの強さが決め手となりました。例えば、相手のエンド・自分のメインと仕掛けることと、『変容』により誘発する能力を多用することで一気に盤面を有利にし、ライフを詰めることができます。《海駆けダコ》は序盤に飛行クリーチャーへ『変容』すれば、かなりアドバンテージを稼いでくれますし、《哀歌コウモリ》や《飛びかかる岸鮫》で相手のガードをこじ開けて、最後の数点をたたき出してくれますね」
――「変容」クリーチャーのなかでは《強欲な血喰い》は珍しい選択肢ですね?
上間「接死があるため戦闘を優位に進められますし、『変容』コストが3マナと軽いのがポイントです。ドレイン能力も最後に相手のライフを削りきるために活きます。デッキ構築で最後の枠でしたが、勝利に何度も貢献してくれたので3枚でも良かったかなと思いました。今日のMVPは《ゼイゴスのマンバ》と《強欲な血喰い》の2枚です」
――このデッキを使うにあたって、キープ基準を教えてください。
上間「キープ基準は1マナ域の有無になります。《ゼイゴスのマンバ》が理想で、《石とぐろの海蛇》でも大丈夫です。これらでスタートできるとマナカーブに沿って『変容』し続けることが可能となります」
――「変容」の特性上除去に弱くなってしまいますが、除去への対策はありますか?
上間「『ゼンディカーの夜明け』から加わった《マラキールの再誕》です。1マナと構えやすく単体/全体除去問わず効果があります。『変容』は1体へと重ねますが、《マラキールの再誕》の効果で戦場へ戻る際はバラけるため、打点が上がることになります。必要に応じて土地にもなるので、無駄になりません」
上間「ほかにも《狡賢い夜眷者》とのシナジーも考えて、《星明かりのマント》や《村の儀式》も検討しました。ただし、効果が限定的すぎるため、《マラキールの再誕》へ軍配が上がりました」
――小型のクリーチャーが必要になる手前、《ショック》や《棘平原の危険》を積んだ赤単アグロなどは不利になりそうですが。
上間「赤単アグロとのマッチではこのデッキの強さ、瞬速を活かして攻めることになります。相手のエンドで仕掛けて相手を動かすことができます。本命を通すために、囮をキャストして『変容』元を定着させますね。攻めたい赤単がマナを残すのと、瞬速を持つクリーチャーのためにマナを残すのでは意味が大きく違いますから」
――逆に4色オムナスのようなデッキ相手はどうでしょうか?
上間「4色オムナス側もクリーチャーなどでコントロールしてくるため、《哀歌コウモリ》と《飛びかかる岸鮫》によりテンポをとり続けて、ビートダウンします。《創造の座、オムナス》は強力なカードですが、多少ライフを回復されてもこちらの押し込みが強いため、削りきることができます。それこそ、相手の場にブロッカーが並んだとしても《強欲な血喰い》で削りきることもできますからね」
――サイドボードには打消し呪文と除去呪文がきれいに採用されていますが、どの「変容」クリーチャーと入れ替えるのでしょうか?
上間「アグロデッキに対しては、ゲームを引きのばすことが重要なので《飛びかかる岸鮫》や《哀歌コウモリ》などの重いクリーチャーを1枚ずつ抜いていきます。ランプに対しては、《ゼイゴスのマンバ》を削りますね」
――ありがとうございました。
瞬速によって極限までリスクを減らし、一度『変容』すれば大きくテンポ面/カード面でアドバンテージ稼ぐことができるディミーア変容。環境は《創造の座、オムナス》や「ならず者」の活躍が目立つが、上間のディミーア変容のように可能性を秘めたデッキは数多く存在している。
始まったばかりの『ゼンディカーの夜明け』環境。是非ともみなさんの手で、新たなスタンダードを体感していただきたい。