はじめに
みなさんこんにちは。
先週末に『ゼンディカーの夜明け』がリリースされましたが、どのカードに注目していますか?
Magic Online(以下MO)ではテーブルトップに先行して『ゼンディカーの夜明け』が実装されていたため、環境の研究が進んでいます。今回の連載では、先週末に開催されたPioneer Challengeの入賞デッキを見ながら、新環境を解析していきたいと思います。
Pioneer Challenge #12211161
Sram Auraが優勝
2020年9月26日
- 1位 Sram Aura
- 2位 Rakdos Aggro
- 3位 Sram Aura
- 4位 Esper Control
- 5位 Mono Black Aggro
- 6位 Mono Black Aggro
- 7位 Rakdos Aggro
- 8位 Gruul Aggro
トップ8のデッキリストはこちら
定番のMono Black Aggroをはじめ、Rakdos Aggroや《炎樹族の使者》の爆発力が特徴的なGruul Aggroなど、攻撃的なデッキが多数入賞していました。
そのなかで優勝を果たしたのは、除去耐性のある《林間隠れの斥候》を《きらきらするすべて》や《天上の鎧》などのオーラで強化していくシナジーベースのアグロデッキ、Sram Auraでした。
デッキ紹介
Sram Aura
4 《寺院の庭》
4 《マナの合流点》
4 《枝重なる小道》
-土地 (19)- 4 《命の恵みのアルセイド》
4 《林間隠れの斥候》
4 《上級建設官、スラム》
1 《アダントの先兵》
-クリーチャー (13)-
Sram Auraは《夢の巣のルールス》を「相棒」として使ったデッキのなかで、もっとも成功したデッキの1つです。
今まではOrzhovカラーが主流でしたが、コンボの衰退によりハンデスの重要性が以前よりも薄れ、さらに『ゼンディカーの夜明け』から登場した小道サイクルによってマナ基盤が安定したSelesnyaバージョンに注目が集まっています。
☆注目ポイント
このデッキではオーラの対象先となるクリーチャーを除去されて、アドバンテージを失うことは致命的です。モダンのSelesnya Auraと同様に、《林間隠れの斥候》は呪禁のおかげで相手の単体除去を気にせずにオーラを付けて強化することができます。これこそがSelesnya Auraを選択する理由となります。
《成長の季節》はオーラを多用するこのデッキと相性の良いエンチャントです。マナフラッドを回避してドローの質が上がるだけではなく、クリーチャーとオーラのどちらか一方にドローが偏ってしまうという負けパターンを防ぐことに貢献します。
これまでは多色地形の選択肢が限られていたことで、友好色のアグロデッキは序盤の安定性に難がありました。しかし、《枝重なる小道》が入ったことでマナ基盤が改善され、今回のパフォーマンスに繋がっています。アンタップインでプレイできる2色地形は、序盤の動きが重要なアグロデッキにとってまさに求めていた1枚なのです。
Pioneer Challenge #12211165
Sram Auraが連覇
2020年9月27日
- 1位 Sram Aura
- 2位 Esper Control
- 3位 4C Omnath
- 4位 Mono Black Aggro
- 5位 Dimir Control
- 6位 Sultai Spy
- 7位 4C Spy
- 8位 Naya Midrange
トップ8のデッキリストはこちら
土曜日に開催されたPioneer Challengeに続き、見事Sram Auraが連覇!今回はお馴染みのOrzhovバージョンとなっていました。
Esper Controlや《創造の座、オムナス》を搭載した多色ミッドレンジ、両面カードの特性を利用したパイオニア版のSpyコンボなど、『ゼンディカーの夜明け』のカードを活かした多種多様なデッキが結果を残しています。
デッキ紹介
Esper Control
2 《島》
1 《沼》
4 《寓話の小道》
4 《神無き祭殿》
4 《神聖なる泉》
4 《湿った墓》
4 《氷河の城砦》
3 《水没した地下墓地》
3 《孤立した礼拝堂》
1 《アーデンベイル城》
2 《廃墟の地》
1 《ガイアー岬の療養所》
-土地 (35)- 2 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-クリーチャー (2)-
4 《思考囲い》
4 《思考消去》
4 《至高の評決》
4 《海の神のお告げ》
4 《野望の試練》
4 《ケイヤの誓い》
1 《太陽の神のお告げ》
3 《エルズペス、死に打ち勝つ》
4 《覆いを割く者、ナーセット》
4 《時を解す者、テフェリー》
2 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
1 《悪夢の詩神、アショク》
-呪文 (43)-
3 《ドビンの拒否権》
2 《霊気の疾風》
2 《影の評決》
1 《取り除き》
1 《空の粉砕》
1 《太陽の神のお告げ》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-サイドボード (15)-
パイオニアの定番デッキの1つである青白系のコントロールですが、最近は質の高い除去とハンデスを採用できる黒を足したEsperが主流となっています。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」としたコントロールであり、アドバンテージを取る手段が豊富なデッキです。苦手なマッチアップが少なく、事故りにくく動きが安定しているため、コントロールデッキが好きな方にはおすすめです。
☆注目ポイント
フィニッシャーの《空を放浪するもの、ヨーリオン》は《ケイヤの誓い》や《海の神のお告げ》を「明滅」させることで、相手に圧倒的なアドバンテージ差をつけます。《覆いを割く者、ナーセット》のように、プラス能力を持たないプレインズウォーカーの忠誠値をリセットすることもできます。
コンボデッキは衰退したものの、《思考囲い》や《思考消去》といったハンデスは相手のゲームプランを妨害したり、コントロールとのマッチアップでプレインズウォーカーや《空を放浪するもの、ヨーリオン》を安全に通し、定着させることに貢献します。
青白の2色のバージョンと比べると、Esperバージョンは《致命的な一押し》や《野望の試練》、《取り除き》など除去が豊富です。《ケイヤの誓い》はBoros Burnといった速攻でライフを攻めてくるデッキとのマッチアップで有効であり、プレインズウォーカーも対象にできるためコントロール相手でも無駄になりません。
新カードが早速採用されています。《影の評決》は5マナと重いカードですが、破壊ではなく追放するため、「脱出」を持つクリーチャーやクリーチャーを墓地から復活させる手段を持つRakdos Aggroとのマッチアップで活躍します。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を追放できるので、ミッドレンジとのマッチアップでも使えますね。
4C Omnath
4 《森》
1 《平地》
1 《山》
4 《寓話の小道》
4 《ラウグリンのトライオーム》
2 《ケトリアのトライオーム》
3 《寺院の庭》
2 《繁殖池》
2 《踏み鳴らされる地》
3 《内陸の湾港》
-土地 (30)- 4 《水蓮のコブラ》
2 《サテュロスの道探し》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《創造の座、オムナス》
-クリーチャー (14)-
リリース早々にスタンダードの環境を支配している《創造の座、オムナス》ですが、パイオニアでも多色のコントロールやミッドレンジで採用され活躍しています。
今大会で入賞を果たした4C Omnathはスタンダードに近い構成ですが、ショックランドやチェックランドのおかげでマナ基盤が大幅に強化されており、さらに《時を解す者、テフェリー》や《成長のらせん》といった強力なカードとセットで使用されています。
デッキの基本的な動きはスタンダードと同様に、《水蓮のコブラ》《創造の座、オムナス》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》によって大量のマナを生み出し、《僻境への脱出》や《発生の根本原理》で大量のアドバンテージを稼いでいきます。フィニッシャーは《フェリダーの撤退》となっており、多重「上陸」により大量のトークンを生成してゲームを終わらせます。
☆注目ポイント
ショックランドと《成長のらせん》によって、スタンダードよりも安定性と速度が向上しています。同じターンに複数「上陸」する手段が豊富にあるため、ひとたび《フェリダーの撤退》を設置しようものなら、瞬く間にトークンが並び、突破することは困難を極めます。
《時を解す者、テフェリー》が戦場に出てしまえば、インスタントタイミングで妨害される心配はなくなるため、大量のマナを使って強力なスペルをキャストできます。[+1]能力を使えば相手のターンに《発生の根本原理》をキャストでき、隙も少なくなります。
パイオニアでは優秀なスペルである《霊気の疾風》が健在です。赤か緑のクリーチャーを使うアグロデッキやTemur Reclamation、同型などさまざまなマッチアップで活躍します。
アグロデッキのプレッシャーが厳しいパイオニアでは、序盤を凌ぐことはスタンダード以上に重要です。マナが伸びるまでは無防備になりがちなので、《轟音のクラリオン》のようなスイーパーは必須となります。
Sultai Spy
4 《地底街の密告人》
3 《銀打ちのグール》
2 《ブラックブルームのならず者》
4 《欄干のスパイ》
2 《憑依された死体》
2 《世界棘のワーム》
-クリーチャー (21)-
4 《ベイーンのヴェール》
4 《ジュワー島の撹乱》
3 《思考消去》
4 《ペラッカの捕食》
4 《アガディームの覚醒》
4 《這い寄る恐怖》
4 《ハグラの噛み殺し》
4 《海門修復》
4 《魂標ランタン》
-呪文 (39)-
『ゼンディカーの夜明け』から登場した呪文/土地の両面カード(以下スペルランド)によって生まれた《欄干のスパイ》コンボ。モダンやレガシーと異なり、パイオニアでは《ゴブリンの放火砲》が使えないためこのタイプのコンボは成立しないと思われていましたが、墓地コンボとハイブリットしつつ《タッサの神託者》を採用することで実現に至りました。
スペルランド以外の土地をまったく採用していないので、《欄干のスパイ》によってライブラリーのすべてのカードを墓地に落とすことができます。モダンのDredgeのように《這い寄る恐怖》でライフドレインしつつ、《秘蔵の縫合体》と《憑依された死体》を墓地から戦場へと戻し、ビートダウンしていきます。
登場したばかりですが、Pioneer Challengeで結果を残しており、その実力は折り紙つき。コンボが好きな方はトライしてみてはいかがでしょうか?
☆注目ポイント
神話レアのスペルランドをアンタップインするには3点のライフを支払う必要があり、アグロデッキ相手には決して安くないコストとなりますが、《這い寄る恐怖》によって失ったライフを回復させることができます。
コンボが決まっても攻撃するまでに1ターンのタイムラグが生じるため、ライブラリーアウトを回避する手段として《世界棘のワーム》が採用されています。メインデッキは墓地戦略にオールインしているので、墓地対策が弱点となります。
しかし、サイドボードに追加の勝ち手段として《タッサの神託者》が忍ばせてあるため、サイド後は墓地に頼らないゲームとなります。土地カードを1枚も採用していないので、《欄干のスパイ》や《地底街の密告人》によってライブラリーを空にして、《タッサの神託者》をプレイすることでゲームを終わらせます。
総括
強力なカードが多数収録され、話題となっていた『ゼンディカーの夜明け』。予想通りパイオニアにも大きな影響を与えていました。スタンダード環境の支配者となった《創造の座、オムナス》は、パイオニアでもトップメタに入るポテンシャルがあります。
しかし、今回もっとも環境に影響を与えたのは2色土地である小道サイクルだと思います。これまでに土地に恵まれなかったデッキもこれにより安定性が向上し、対抗色が中心だった2色アグロデッキのなかに、SelesnyaやGruulといった友好色の組み合わせが選択肢として生まれ、結果を残すまでになったのです。
以上、USA Pioneer Express vol.11でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいパイオニアライフを!