ちょっと珍しいスタンダードのデッキたち~GPT東京0227(スタンダード)編~

晴れる屋



 一昔前のスタンダードを席巻したーーとある凶悪なデッキには、無尽蔵のアドバンテージ源が搭載されていた。

 際限のないドロー、尽きることのない除去。その防御の鉄壁さは誰しもに恐れられていた。


霊体の地滑り永遠の証人


 「エターナルスライド」と呼ばれた『サイクリング』をフィーチャーしたボードコントロールである。

 いったい何がエターナルなのか?その答えは《永遠の証人》のカード名と、それが《霊体の地滑り》と共演する姿に隠されている。『サイクリング』するたびに《霊体の地滑り》《永遠の証人》を選ぶことで、《永遠の証人》の効果を毎ターン使用する、という恐ろしいコンビネーションを発揮するのだ。もちろん《永遠の証人》の効果で再び『サイクリング』を回収するため、そのループが途切れることはない。

 一見すると、この恐るべきエンジンの肝は、なんでも回収できる《永遠の証人》のようだが、その実はETB能力を繰り返し使用し、また同時にボードコントロールもこなす《霊体の地滑り》にある。対戦相手のクリーチャーを取り除くことで攻防の調整をし、防御が整えばETB能力もちのクリーチャーを使い倒して素早く勝利に向かう。


修復の天使一瞬の瞬きちらつき鬼火


 たった一度の『明滅』ですら脅威であることは、かつてより一線級のカードとして活躍してきた《修復の天使》《一瞬の瞬き》《ちらつき鬼火》を見れば明らかだ。そんな強力な『明滅』を複数回にわたって使える禁断のカードがスタンダードにあるらしい。


変位エルドラージ


 最近ではモダン環境を荒らしまわっている、『白い悪魔』、こと《変位エルドラージ》である。

 3マナと贅沢にマナを要求するものの、敵味方問わずして繰り返し『明滅』させる、歴史が証明してきた強力無比の能力を持っている。モダン環境すら脅かす《希望を溺れさせるもの》とのコンビなど、これからの活躍が期待される注目株だ。

 そんな《変位エルドラージ》にいち早く注目した意欲作を紹介しよう。



◆ 「アブザン《変位エルドラージ》


「アブザン《変位エルドラージ》

2 《森》
2 《沼》
1 《平地》
1 《荒地》
3 《梢の眺望》
1 《吹きさらしの荒野》
4 《砂草原の城塞》
2 《風切る泥沼》
1 《乱脈な気孔》
1 《崩壊する痕跡》
4 《ラノワールの荒原》
3 《コイロスの洞窟》

-土地(25)-

3 《静寂を担うもの》
3 《壌土の幼生》
3 《森の代言者》
1 《永代巡礼者、アイリ》
4 《変位エルドラージ》
2 《復興の壁》
1 《マラキールの解放者、ドラーナ》
4 《包囲サイ》
4 《血の儀式の司祭》
1 《風番いのロック》
1 《ベイロスの虚身》

-クリーチャー(27)-
3 《アブザンの魔除け》
2 《骨読み》
3 《真面目な訪問者、ソリン》

-呪文(8)-
3 《鞭打つ触手》
3 《無限の抹消》
2 《正義のうねり》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
2 《難題の予見者》
1 《抗戦》
1 《アブザンの魔除け》
1 《巨森の予見者、ニッサ》

-サイドボード(15)-
hareruya


包囲サイ血の儀式の司祭風番いのロック


 ETB能力もちの数だけ組み合わせが存在するともいえる《変位エルドラージ》の居場所は、今回はアブザンのようだ。この色の組み合わせだと《血統の観察者》との『無限コンボ型』がメジャーだが、このデッキでは、そのコンボは廃して《包囲サイ》《血の儀式の司祭》《風番いのロック》といった単体でも強力なカードとの堅実なコンビネーションを狙っている。

 《変位エルドラージ》の強みでも弱みでもあるのは、「3マナを費やしてETB効果を誘発させる」という効果だ。これはすなわち、もしETB能力を再利用できるとしても、その効果が3マナに見合わなければ、そこまで得な行動ではないということだ。だが、逆にその効果が5マナ相当の効果だったならば、それは喜んで3マナ程度は注ぎ込める最高のアクションになる。

 この観点から《包囲サイ》《血の儀式の司祭》のETB能力を評価すると、3マナにしては優秀な効果だ。コンボを除いては見劣りする《血統の観察者》よりも、安定して《変位エルドラージ》の相棒を務められるカードが揃っている。


復興の壁森の代言者


 《包囲サイ》を『明滅』すれば3点ドレインし、《血の儀式の司祭》を『明滅』すると5/5のデーモンが増えるのは明らかだが、《復興の壁》の『明滅』はとんでもないミラクルを呼び寄せることがある。

 それは《森の代言者》とのコンビネーションだ。

 「6つ以上の土地をコントロールしているかぎり、自身と土地・クリーチャーに+2/+2修正」を与える《森の代言者》は、《復興の壁》の善き友だ。《復興の壁》で土地・クリーチャーを量産すると、《森の代言者》がそれらすべてを5/5に成長させる。もし《森の代言者》が2枚あれば、驚くことに7/7である。並みのクリーチャーでは止められないことは当然ながら、それが《変位エルドラージ》で次々と生み出されていく様は圧巻だ。

 クリーチャーだけでなく土地さえも牙剥く「アブザン《変位エルドラージ》」は、対戦相手にとってとても厄介なデッキだ。クリーチャー陣はみなETB能力のおまけ付きなので、簡単には対処できず、それらをやっとの思いで捌いても、そこには《変位エルドラージ》の無尽蔵のプレッシャーが待ち構えている。

 際限のないプレッシャー、尽きることのないリソース。これはまさに新時代の「エターナルスライド」だ。

 《霊体の地滑り》から《修復の天使》、そして、《変位エルドラージ》へと。10年以上も手渡されてきたバトンを受け取った『怪物』のポテンシャルを尊重した素晴らしいデッキに仕上げられている。これからの《変位エルドラージ》に興味がある方は、ぜひ一度お試しあれ。



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