Round 1: 石川 翔(東京) vs. 中村 肇(神奈川)

晴れる屋

By Yuya Hosokawa

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 年に一度の祭典、PWC Championshipが今年も開幕した。

 強豪ひしめくPWCで上位入賞したプレイヤーやポイントレースで上位につけるプレイヤーのみ参加することの出来るPWCCは、ただのお祭りではなく、強者同士が火花を散らすトーナメントでもあるのだ。

 この第一ラウンドでも早速、腕に覚えのある名手による戦いがあちこちで繰り広げられている。

 そんな中、フィーチャーテーブルに呼ばれた二人。勿論彼らが呼ばれたのには、意味がある。

「新潟で鎬を削った俺たちが (フィーチャーテーブルに) 呼ばれんかねー、とか話してたら呼ばれた(笑)」

 と軽口を飛ばしながら椅子に腰を下ろしたのは、第4期ミスターPWC、中村 肇。プロツアー参戦経験多数、元グレイビーの中村は近頃はマジックから少し離れてはいるものの、その実力に陰りはない。

 そして中村。デッキをシャッフルしながら小首を傾げている。プレイヤーの持つデッキは、剣士の持つ名刀と同じだ。得物を手に、何を疑問に思うことがあるのだろうか?

 そんな中村の対戦相手は石川 翔

 白いビートダウンを愛することで知られている石川。【日本選手権ベスト8】経験もある関東の強豪の一人だが、石川の活躍の場は何も構築だけにとどまらない。中村の言っていた「新潟」とは2009年にリミテッドで行われた【グランプリ・新潟09】の話。なんとグランプリ新潟の準々決勝で、二人は対戦テーブルに着いていたのだ。

 そのときの勝者は中村。無論、石川がそのことを忘れているはずがあるまい。

 PWCCの第一回戦にして【グランプリ・新潟09】の再演。熱戦に期待しつつも、中村の不敵な笑みが気になって仕方がない。

 中村の自嘲気味の笑みはついにゲームに入るそのときまで、消えることはなかった。



Game 1


 フェッチランドの置き合いから始まったゲームだったが、二人の行動は全く異なっていた。石川は《溢れかえる岸辺》から《大草原の川》をサーチして《搭載歩行機械》を唱え、中村は《樹木茂る山麓》《燻る湿地》をタップイン。

 そして《森》で緑マナを生み出すと、呼び出したのは少し珍しい《獣呼びの学者》と――《帆凧の斥候》!?


帆凧の斥候


 面食らう石川。

 だが落ち着いてこの《獣呼びの学者》《絹包み》で退ける。そして動きが芳しくない中村が《血に染まりし勇者》をプレイするのみに対し、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》でトークンを生み出し、続くターンには《徴税の大天使》と絶好調。

 中村がプレイする《血に染まりし勇者》《エイヴンの散兵》など気にならない。

 《徴税の大天使》《残忍な切断》され、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は倒されてしまったものの、死に際に生み出した飛行機械トークンと兵士の攻撃で中村のライフは早くも6。更に石川は《空中生成エルドラージ》で最後の詰めを行う。

 石川にとってこの《空中生成エルドラージ》はダメ押しのつもりだっただろう。逆転されることなど想像もしていなかったはずだ。





 中村が満を持して召喚した《粗暴な軍族長》を見るまでは。思わずテキストを確認する石川。中村、口元を釣り上げる。

 一見意味不明な中村のデッキに恐れる石川は今度は慎重に攻撃を仕掛けるも、中村は自分のターンが来るとノータイムで2枚目の《粗暴な軍族長》を叩きつける。

 合計3回の《粗暴な軍族長》の誘発で、気付けば中村と石川のライフは少しずつ縮まる。慎重に攻撃を選ぶ石川を見やり、またしても中村は静かに口端を上げる。

 そして中村のライブラリーから「疾駆」で飛び出した《マルドゥの影槍》が、クリーチャーの壁に守られる石川のライフを見事に削りきったのだった。

 中村、ニヤリ。


中村 1-0 石川



Game 2


 未だに困惑を隠せない石川だが、オープニングハンドには満足なようで、キープを宣言する。一方中村はテイクマリガン。

 それでも先にアクションを起こしたのは中村。《窪み渓谷》タップインというスタートながら、2ターン目には《帆凧の斥候》《血に染まりし勇者》を並べる。

 だが石川は落ち着いてまずは《空中生成エルドラージ》。そして除去られなければ中村のデッキに効果てきめんの《徴税の大天使》をプレイ。


徴税の大天使


 果たして中村の手札に除去は――なかった。《血に染まりし勇者》《エイヴンの散兵》を並べる中村だが、この《徴税の大天使》を触れない以上、攻撃が出来ない。

 クリーチャーは引くが攻撃が制限されてしまっている中村。思うように攻撃が出来ず、それでもゲーム1の逆転を夢見て静かにターンを返す。



石川 翔


 このゲームの石川は慎重だ。落とし子トークンのみでコツコツと攻撃しながら、「変異」を唱えて《絹包み》《マルドゥの影槍》をリムーブ。そして《領事の鋳造所》を置いてエンド前に即座に起動し、飛行のクロックを増やすと、その飛行と落とし子、《空中生成エルドラージ》のみで攻撃する。

 第一ゲームを決めた《粗暴な軍族長》が中村のコントロール下で出てくるものの、《徴税の大天使》の前ではその力は半減。間違っても下の起動型能力など使用出来そうにない。

 間もなくして石川が《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をプレイすると、中村はやはり笑みを浮かべながら、第三ゲームに移ることを決めた。


中村 1-1 石川



Game 3


 待望の先手を得た中村。だがマリガントラブルに逢い、土地が1枚の手札を笑いながらキープする。

《コイロスの洞窟》から《帆凧の斥候》、そしてファーストドローでお祈りに成功すると、《結束した構築物》を一気に2枚並べる。



中村 肇


 対して石川のアクションは良いとはいえない。1ターン目こそ《アクロスの英雄、キテオン》をプレイ出来たものの、2ターン目にアクションは起こせず。仕方なくこの《アクロスの英雄、キテオン》《結束した構築物》に捧げる。

 中村の手札には《マルドゥの隆盛》。赤マナさえ引ければこのまま押し切ることが出来るかもしれない。《徴税の大天使》さえ出てこなければ、だが。


マルドゥの隆盛


 一度目のドロー。引いたのは《帆凧の斥候》

「違う!」

 これを受けて石川がプレイしたのは《空中生成エルドラージ》。このドローでも土地を引かなかった中村は、殴らずにターンを返す。戦場に増えるのは可愛らしい《エイヴンの散兵》《帆凧の斥候》

 そしてここで攻勢に出てくる《空中生成エルドラージ》が、落とし子トークンと、《風番いのロック》とそのトークンを引き連れて来ると、中村に残された時間は一気に短くなる。

「まだ間に合う!」

 怪しく笑いながら高らかに叫ぶ中村。だがドローは無情にも《マルドゥの影槍》

 石川の手札から、2枚目の《風番いのロック》

「間に合わない!」

 中村は、最後まで笑みを絶やさなかった。


中村 1-2 石川



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