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Hareruya Pros専属プロプレイヤーの高橋 優太がPWCチャンピオンシップのトップ8に臨む。
高橋が昨年PWCに参加した回数はわずかに1回。それもPPTQとして参加したものである。ただ、そのたった1回でPPTQを突破して、RPTQの権利も得ているのだから見事なものである。
そう、見事なものであるが……。かつて高橋がまだ今のようにプロとして活躍していなかった頃、毎週のように、ここPWCで研鑚を積んでいたことを思うと、1年を通して1回の参加という数字からはやや物悲しさも感じる。
ところで高橋は現在のスタンダードにかなり自信を持っているようだ。なんと来週は遥かパリの地まで赴いてグランプリに参加するとのこと。そんな高橋が自信満々に持ち込んだデッキは、”ベストデッキ”と称して使い込んでいる「4色ラリー」だ。
対する伊藤 洵のデッキは「マルドゥグリーン」。いわゆる”除去コン”なので、コンボデッキの側面も見せる「4色ラリー」相手には分が悪い。ただ、サイドボードにはきっちりと対策カードを用意しており、一筋縄ではいかせない姿勢を見せている。
Game 1
スイス予選ラウンドの順位が上位の伊藤が先手を取り、早々と《森の代言者》を重ねてみせる。
高橋も負けじと《エルフの幻想家》から《地下墓地の選別者》と繋ぎ、お互い立ち上がりは上々といったところだろうか。
だが。その後の伊藤の動きが悪い。
デッキに入っている大量の除去を全く引かず、土地ばかりを引き続けているのだ。
加えて、そんな不調時に限って高橋の動きは絶好調。《集合した中隊》を2発重ねてからの《先祖の結集》で伊藤を圧倒した。
伊藤 0-1 高橋
注目のサイドボードだが、高橋は《残忍な切断》と《強迫》をサイドイン。
伊藤はおなじみの《神聖なる月光》に加え、墓地対策の秘策をサイドインした。
Game 2
Game 2は再び後手となった高橋の《エルフの幻想家》で幕が上がった。手札には《ヴリンの神童、ジェイス》も持っているが、そこは然るもの。伊藤のデッキに除去が大量に入っていることはわかりきっているので、そうやすやすとプレイはしない。手札に抱えた《強迫》と絡めての好機を窺っている。
ゆったりと4ターン目を迎えた伊藤は、《包囲サイ》ではなく、《焦熱の衝動》と《強迫》のプレイを優先した。
明らかにされた高橋の手札には、2枚の《強迫》と共に《集合した中隊》があった。強力な4ターン目の《集合した中隊》を察した伊藤の好判断が光る。伊藤はしめしめと目当てのカードをきっちり抜き取った。
伊藤 洵 |
貴重な4ターン目の切り札を失った高橋は、返す刀で2枚の《強迫》を放つと、負けじと《衰滅》に《炎呼び、チャンドラ》を抜き去る。お互いにサイドボードカードをうまく使い、キーカードを交換する運びとなった。
しかし、上手だったのは伊藤だったようだ。なんと次に伊藤がプレイしたのは墓地対策の秘策こと《頭蓋書庫》!
これには高橋も驚きの声を上げる。なんと高橋は前のターンに《先祖の結集》を引いてしまっていたのだ。
《強迫》合戦で消耗した二人はしばらく静かにカードを展開しあった。ここで一度状況を整理しよう。
伊藤:ライフ14。《包囲サイ》、《乱脈な気孔》、《頭蓋書庫》。
高橋:ライフ10。《ナントゥーコの鞘虫》、《反射魔道士》、《不気味な腸卜師》。(手札には《先祖の結集》)
伊藤としては、高橋の潜在的なアドバンテージ源である《不気味な腸卜師》を早く除去したい。そんな戦場だ。
除去を願った伊藤のドローは、2体目の《包囲サイ》。これも悪くない。高橋のライフを削り取るべく、1体目の《包囲サイ》を攻撃に向かわせる。
この攻撃に対して、高橋は長考する……。
その思案の末、驚くことに《先祖の結集》をX=3でプレイしたのだ。
しかし、戦場には高橋の墓地を一掃できる《頭蓋書庫》がある。当然ながら、大量のクリーチャーに戻ってこられては困ると、伊藤は《頭蓋書庫》を起動する。
そこまでは高橋の読み通りだったようだ。《頭蓋書庫》の解決を見届けると、《先祖の結集》が解決される前に、《反射魔道士》と《ナントゥーコの鞘虫》を生贄に捧げたのだ。これで一度は空になった墓地に2体のクリーチャーが放り込まれる。
《不気味な腸卜師》の誘発効果で2枚のカードが与えられ、《先祖の結集》が解決される。《反射魔道士》と《ナントゥーコの鞘虫》が再び戦場に戻ると、それらで《包囲サイ》をブロックする。この2体が墓地におちて、高橋は最終的に《頭蓋書庫》の被害を最小限に抑えつつ4枚のドローを得た!
高橋 優太 |
効果的なプレイで厳しい局面を乗り切った高橋は次なる策を練る。
つまり、今手に入れたクリーチャーをどこまでプレイするか。《強迫》で落とした《炎呼び、チャンドラ》や《衰滅》といった全体除去が頭にあるのだろう。慎重に最適手を探す。
結果、高橋は《地下墓地の選別者》《ヴリンの神童、ジェイス》《ズーラポートの殺し屋》の全てをプレイした。たとえ全体除去をプレイされても被害は小さいという判断だ。
苦しい伊藤だが、引いていた《炎呼び、チャンドラ》のマイナス能力によりなんとか戦場を一掃する。しかし、高橋の《不気味な腸卜師》と《地下墓地の選別者》の誘発効果が伊藤に安息を許さない。
ここで墓地に落ちたときの誘発能力を好きな順番にスタックに積める高橋は、”《地下墓地の選別者》の占術”の間に”《不気味な腸卜師》のドロー”をうまく挟み、より多くの有効牌を手に入れようとする。ここでスタックした順番はしっかりメモし、伊藤と共に「2スクライ、1ドロー、1スクライ……」と呪文を呟きながら一つ一つ丁寧に解決していく。
ここまでアドバンテージ差が付いてしまうと、あとは詰将棋だ。
この「スクライ、ドロー、スクライ」の呪文で手に入れた2枚目の《先祖の結集》で、さらなるドローと占術を重ねると、《ズーラポートの殺し屋》で伊藤のライフを削り切った。
伊藤 0-2 高橋
世間では複雑で時間のかかるデッキと言われている「4色ラリー」を高橋は見事に使いこなしていた。プレイの速さ、所作の速さ共に素晴らしく、彼の自信の裏付けであろう練習量が垣間見えた。
高橋優太、準決勝進出!