『ゼンディカーの夜明け』後のモダン環境

宇都宮 巧

MMM Finals 2020に向けて

お久しぶりです。Hareruya Hopesの宇都宮 巧です。

来たる12月5日にMMM Finals 2020が晴れる屋 トーナメントセンター 東京で開催されます。そのフォーマットであるモダンは、『ゼンディカーの夜明け』により大きく環境が変わりました。この記事では、『ゼンディカーの夜明け』の新戦力とそれを使ったデッキを中心に、今のモダンを掘り下げていこうと思います。

新たな環境の王者

まずは『ゼンディカーの夜明け』の新戦力を手に、環境の王者に上り詰めた2つのデッキを紹介しようと思います。

1. オムナス原野

死者の原野自然の怒りのタイタン、ウーロ

最初に紹介するのは、環境の王者である《死者の原野》デッキです。海外では「ウーロ・パイル」と呼ばれ、土地を伸ばしながらカウンターで相手を妨害し、《死者の原野》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》で勝つというデッキです。

『ゼンディカーの夜明け』が登場するまでは3色に留まり、バント・ティムール・スゥルタイの3色から好きなものを選ぶ形でした。

それらのデッキを依然として使用するプレイヤーもいますが、新カードである《創造の座、オムナス》を採用した4色原野が現在の主流になっています。

創造の座、オムナス

スタンダードでも圧倒的な力を発揮していた《創造の座、オムナス》ですが、その能力を最大限に活かせるのはモダン以下のフォーマットになります。フェッチランドと組み合わせることで簡単にライフを8点得ることができますし、4マナを生む能力でマナを起こしてカウンターを構えたまま《精神を刻む者、ジェイス》《約束の刻》といったフィニッシャーをプレイすることが可能です。もともと強かったデッキですが、より硬く、より隙のない構成になりつつあり、間違いなく環境を定義するデッキといえるでしょう。

2. ラクドスデスシャドウ

《死の影》デッキはフェッチからショックインを積極的に行うため、多色化が容易で通常3色以上で構成されていました。しかし、『ゼンディカーの夜明け』からの新規クリーチャーにより、《死者の原野》デッキとは逆に色が減った形が主流になりました。

スカイクレイブの災い魔

《スカイクレイブの災い魔》《死の影》デッキが求めていた黒い第2のフィニッシャーです。このカードの登場により今まで緑を足して《タルモゴイフ》を採用したり、青を足して《思考掃き》から《グルマグのアンコウ》を早期にプレイする戦略をとる必要がなくなりました。

《スカイクレイブの災い魔》自分だけでなく相手のライフも削る必要があるので、相方は速攻クリーチャーや火力を持つ赤になっています。超高打点のクリーチャーが増えたことで、重いデッキの土俵に持ち込まれる前に相手を倒すことがより容易になりました。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《創造の座、オムナス》といったアグロキラーが蔓延する環境でのアグロ界の希望の星といえます。

環境の定番デッキ

ここからは以前から存在しており、大きくリストが変わらないものの引き続き環境で活躍しているデッキを紹介します。

3. ヘリオッドカンパニー

スパイクの飼育係太陽冠のヘリオッド歩行バリスタ

《太陽冠のヘリオッド》《スパイクの飼育係》=無限ライフ、《太陽冠のヘリオッド》《歩行バリスタ》=無限ダメージという2種のコンボを軸とした緑白のコンボデッキです。

集合した中隊

《集合した中隊》から突然無限ライフが成立するようになり、今までの同じようなデッキと比べてはるかにコンボの敷居が下がったことで、デッキの強さが底上げされました。無限ライフへの回答が存在しないデッキも多く、仮に存在していても《太陽冠のヘリオッド》は対処されにくいパーマネントなので、負ける前に《歩行バリスタ》さえ見つければ問題ありません。

イーオスのレインジャー長スカイクレイブの亡霊

もともと《イーオスのレインジャー長》がいたので相手の妨害への対抗策があるデッキでしたが、新戦力である《スカイクレイブの亡霊》で盤面への干渉力も手にしたのでより強力になっています。環境随一のコンボデッキです。

4. 《原始のタイタン》デッキ

原始のタイタン

《死者の原野》を使いながらも4色原野などとは異なるアプローチをとっているのが、これから紹介する2種の《原始のタイタン》デッキです。まずは昔から根強い人気を誇るアミュレットタイタンです。

アミュレットタイタン

基本戦略は一切変わっていません。6マナを捻出して《原始のタイタン》を出し、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》《死者の原野》《ハンウィアーの要塞》の能力を駆使して戦います。

精力の護符グルールの芝地

《精力の護符》が戦場にあると本来タップ状態で出るはずの土地がアンタップするので、《グルールの芝地》などのバウンスランドと組み合わせることで非常に早く《原始のタイタン》をプレイできます。

変わり樹の共生

『ゼンディカーの夜明け』からの新カードとして《変わり樹の共生》が採用されています。土地が必要なデッキなので、土地でありながら《原始のタイタン》にもなれるこのカードはデッキに非常にマッチしています。序盤に土地として置いても、バウンスランドで後々回収できるので相性がいいですね。

もうひとつ最近人気の《原始のタイタン》デッキがあります。セレズニアタイタンです。

セレズニアタイタン

エラダムリーの呼び声

『ゼンディカーの夜明け』発売前から少しづつ活躍し始めたデッキで、ランプからの《原始のタイタン》を基本戦略として、状況に応じて《エラダムリーの呼び声》でバックアップしながら戦います。また、《エラダムリーの呼び声》がフル投入されていることから、「エラダムリー・ツールボックス」とも呼ばれています。《死者の原野》という強い軸と各種ヘイトベアーによる柔軟な対応力が魅力です。

5. The Spy

大量の両面カードの恩恵を受けているのがこのデッキです。デッキに土地になるカードは普通に入っているものの、表面がスペルであるため土地として参照されず、《欄干のスパイ》《地底街の密告人》の能力で必ずデッキをすべてめくることができます。ライブラリーを墓地に落としたあと、墓地で誘発するカードを駆使して勝つコンボデッキです。

欄干のスパイ地底街の密告人

ライブラリーがなくなるという清々しいまでのオールインコンボということで、さまざまな対策が直撃してしまう短所があります。安定してトーナメントを勝ち切ることは多くないかもしれませんが、最速2キルが可能で《否定の力》が効きにくいという長所もあるので注目のアーキタイプです。

6. トロン…?

ウルザの鉱山ウルザの塔ウルザの魔力炉

最後にデッキ単位ではありませんが、『ゼンディカーの夜明け』の中でもっとも環境を変えたといっても過言ではないカードについてご紹介します。

トロンというデッキは長らくモダンを象徴するデッキのひとつであり、フェアデッキが勝ち切れない原因でもありました。土地3枚で7マナを出す理不尽なゲームは、愛好家も多い一方で好意的ではない方も多かったと思います。

そんな、アンチトロンプレイヤーの怨念の結晶ともいえるのが《浄化の野火》です。

浄化の野火

2ターン目にプレイ可能な土地破壊なので、《減衰球》《高山の月》と違って対処されることがありません。このカードをプレイされてしまうと相手は3ターン目にトロンランドをそろえることができないので、後手でもトロンの妨害が可能になりました。

遅いフェアデッキは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を標準搭載していますので、より少ないマナで動けるエルドラージトロンというアプローチをとってもサイズ負けしてしまいます。

また、赤いアグロデッキでは手札を減らさずに果敢と妨害を一挙動で行えることになります。環境の上位勢が《浄化の野火》をプレイしてくる現状では、さすがのトロンデッキも勝ち切ることが難しく、入賞数が大きく落ちているのです。

おわりに

死者の原野創造の座、オムナススカイクレイブの災い魔原始のタイタン

ここまで『ゼンディカーの夜明け』で影響を受けたデッキを中心に紹介させていただきました。もちろん、ここで紹介した以外にもモダンにはさまざまなデッキがあり、大会のたびに新しいデッキが活躍しています。

12月5日のMMM Finalsには僕も参加するので、みなさんの自慢のデッキと戦うことを楽しみにしております。ここまで読んでいただきありがとうございました。

宇都宮 巧 (Twitter)

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宇都宮 巧 Hareruya Hopes所属。Magic Onlineとリアル、2つの世界で日々鍛錬を積む関東の若手プレイヤー。 スタンダードをはじめとした構築フォーマットを得意とし、「The Last Sun 2016」ではトップ8入賞を果たした。 そして2018年2月、Magic Onlineのプロツアー予選を突破し、ついに念願のプロツアー『ドミナリア』への出場権利を獲得。尊敬するHareruya Prosの原根 健太を目指し、ついにプロツアーシーンへ足を踏み入れる。 宇都宮 巧の記事はこちら