この2016 Asia Vintage Championshipに参加しているのは日本のプレイヤーだけではない。【インタビューで紹介】したMenendian Stephenはアメリカから参加しにきているし、この第2回戦でフィーチャーマッチに登場したWagner Pascalに至っては、はるばるドイツからの参加となっている。
ヨーロッパのヴィンテージ大会最大手、【Bazaar of Moxen】を主戦場に戦うプレイヤーで、弱冠20歳ながらも既に【プロツアー『タルキール覇王譚』】への参加経験もあるというWagnerは、無類のストーム好きでもある。
対するは長野の小林。長野のヴィンテージコミュニティの中心的存在で、現在の目標は長野でヴィンテージ大会を定期開催するために長野でヴィンテージプレイヤーを8人集めることだという。使用するデッキは王道の「オース」だ。
Wagnerと小林……ドイツと長野。AVCがなければ、ヴィンテージをプレイしていなければ決して邂逅することはなさそうなほどの距離を隔てた2人が、東京の地で激突する。
Game 1
先手マリガンの小林だが、開いた6枚はこれ以上ないと言えるほどの内容だった。
《Mox Ruby》《禁忌の果樹園》から《ドルイドの誓い》という3点セットを、早くも1ターン目に展開したのだ。
この《ドルイドの誓い》は《Force of Will》されることなく着地する。Wagnerに残された時間は1ターンか、2ターンか。いずれにせよ最速で仕掛けるしかない。
セットランドから《Fastbond》、《Mox Jet》、《師範の占い独楽》。さらに追加セット《Underground Sea》から《暗黒の儀式》をプレイし、ライブラリトップの3枚を見る。トップに《噴出》が見つかればここからさらにストームがつながる場面だ。
だが、Wagnerは目的のものを見つけることができなかった。
ということは。
当然《ドルイドの誓い》は、先手2ターン目にして《グリセルブランド》を戦場へと導く。
小手調べに7枚を引いた小林は、残された手札とライブラリーから冷静に勝利へのルートを計算する。そして。
《Black Lotus》、《Mox Sapphire》。《吸血の教示者》。さらに7枚をドロー。
《実物提示教育》から《全知》を着地させ、《引き裂かれし永劫、エムラクール》で追加ターン。
後手2ターン目が回ってこないことを悟ったWagnerは、潔くカードを畳んだ。
小林 1-0 Wagner
Game 2
《Force of Will》はあるが、土地が《禁忌の果樹園》しかない手札を後手の小林がマリガンする立ち上がり。
その手札を、Wagnerが《ギタクシア派の調査》ですぐさま確認しにかかる。明らかになった小林の手札は、
《Force of Will》
《Force of Will》
《ドルイドの誓い》
《定業》
《Mox Pearl》
《霧深い雨林》
というもの。土地ありコンボあり防御ありドローありと、6枚にしては文句のない手札だ。
これを見てターンを返したWagnerに対し、小林はドローした《Mox Sapphire》から《定業》をプレイするが、Wagnerはこの隙を見逃さずにスタックで《Ancestral Recall》をプレイ。小林も《Force of Will》を切っての《Force of Will》で防ごうとするが、《精神的つまづき》を切っての《Force of Will》に阻まれ、Wagnerに3枚ドローを許してしまう。
その後《定業》が解決し、ドローした土地と《Mox Pearl》から《ドルイドの誓い》を通す小林だが、今はただの置き物に過ぎない。
そして返すターン。小林の残り手札が1枚、フルタップになったことを確認したWagnerは、《Mox Jet》を置いてから、
《最後の審判》。
小林 「ストームかと思ってた……」
そう、Wagnerが使用するデッキはストームはストームでもヴィンテージでもプレイ難度がかなり高い部類のデッキとされる「Doomsday」。《最後の審判》を打った際のトップ5枚の積み方は、手札や状況に応じて十数通りかそれ以上にも分岐する。そんなアーキタイプを涼しい顔で使いこなしている時点で、Wagnerの実力は推して知るべしだろう。
Wagner Pascal |
この時点で小林の手札は確定情報で《霧深い雨林》となっているため、Wagnerは無限に存在するPileの積み方から最も簡単なパターンを選択する。
《水蓮の花びら》
《Ancestral Recall》
《Black Lotus》
《ヨーグモスの意志》
《研究室の偏執狂》
という5枚を積んだのち、手札から《噴出》をプレイ。
《水蓮の花びら》から《Ancestral Recall》をプレイ。《Black Lotus》から《ヨーグモスの意志》をプレイ。《水蓮の花びら》《Black Lotus》を墓地からプレイして《研究室の偏執狂》をプレイ。
最後に《Ancestral Recall》を墓地から「対象: 自分」でプレイし、フィニッシュ。
小林 1-1 Wagner
Game 3
サイド後の「オース」は「Doomsday」を相手にどのような手札をキープすべきか?
正解はわからない。だが少なくとも小林は最速を求めた。Game 1のように、《ドルイドの誓い》《禁忌の果樹園》コンボがより早く決まる手札を。
《Black Lotus》
《Mox Sapphire》
《Ancestral Recall》
《Time Walk》
《渦まく知識》
《ヨーグモスの意志》
《グリセルブランド》
この7枚をマリガンし、コンボが揃った手札を求めた小林はしかし、《禁忌の果樹園》のない土地4枚に《実物提示教育》《ドルイドの誓い》という6枚から、《Tropical Island》《全知》《全知》《精神的つまづき》《精神的つまづき》という5枚へ、次々と手札を減らしていく。
そして。
小林 「うん……マリガン!」
トリプルマリガン。ゲーム開始時点で既に《Ancestral Recall》1枚分以上のハンデを背負うこととなってしまう。
小林 智 |
それでも《Timetwister》を抱えていた小林は手札補充からの逆転に望みをかけるが、Wagnerに《商人の巻物》で《Force of Will》をサーチされると、そのわずかな希望さえも潰えてしまう。
やがて、Wagnerが《ギタクシア派の調査》からの《思考囲い》で小林の《Force of Will》をはぎ取ると、満を持して《最後の審判》をプレイ。
手札に《噴出》、確定情報で妨害なし。すなわちそこからは、Game 2の再現だった。
小林 「7枚でキープだったなー……」
小林 1-2 Wagner
Twitterでつぶやく
Facebookでシェアする