はじめに
みなさんこんにちは。
社会情勢の変化に伴い、日本国内のテーブルトップイベントすべてが延期になりました。しかし、MMM Finals 2020 東京は予定通り開催され、強豪ぞろいで見ごたえのあるプレイオフとなりました。
さて、今回の連載ではMMM Finals 2020 東京とModern Showcase Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
MMM Finals 2020 東京
頂点に立ったのは赤単
2020年12月5日
- 1位 Mono Red Prowess
- 2位 Jeskai Ascendency Combo
- 3位 Mono Red Prowess
- 4位 Izzet Prowess
- 5位 Tron
- 6位 Uro Omnath
- 7位 Ad Grace
- 8位 Saheeli Combo
人見 将亮
トップ8のデッキリストはこちら
カバレージページはこちら
146名のプレイヤーが参加し、大盛況のうちに幕を閉じたMMM Finals 2020 東京。
定番の4C Uro OmnathやIzzet Prowessに加えて、今大会で優勝を果たしたMono Red ProwessやJeskai Ascendency Comboなどモダンらしく多種多様なデッキが結果を残していました。
デッキ紹介
Mono Red Prowess
今大会を優勝した人見 将亮選手はモダンで開催されたグランプリ・シンガポール2015でも優勝経験がある強豪プレイヤーであり、アグロデッキを得意としています。彼が選択したデッキは2020 Magic Online Championship Showcaseを制したMono Red Prowessでした。
多数の軽スペルにバックアップされた果敢クリーチャーによって、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《原始のタイタン》がプランを整える前に押し切ることができます。《ボーマットの急使》や《砕骨の巨人》《歴戦の紅蓮術士》などのアドバンテージが取れるカードが多数採用されているため、ロングゲームも戦える粘り強さを持ち合わせています。
このデッキは単色でフェッチランドを採用していないため安価に組むことができるので、これからモダンを始めたいプレイヤーにもおすすめです。
☆注目ポイント
《獲物貫き、オボシュ》を「相棒」にするために構築に制限がかかりますが、もともと《魔力変》など一部を除いて1マナと3マナ域が中心のデッキだったので、条件を満たすのは比較的容易です。
メインから4枚採用された《血染めの月》は4C Uro Omnathや《原始のタイタン》デッキなど、環境に存在する多くのデッキを機能不全に追い込みます。特殊地形を多用しないデッキとのマッチアップでは《歴戦の紅蓮術士》の能力で有効牌に変換しつつクロックを増量できるため、無駄になりません。
軽いスペルが多く、手札を使い切れるデッキでは《歴戦の紅蓮術士》は優秀なアドバンテージ源となります。《炎の斬りつけ》は赤いデッキにとって厄介な《創造の座、オムナス》や《イリーシア木立のドライアド》といったタフネス4のクリーチャーに対する解答です。
土地には《焦熱島嶼域》や《灼陽大峡谷》があるので息切れを起こしにくい構成となっています。
サイドに採用された《爆発域》は、《霊気の薬瓶》を使用するDeath and Taxesのような低マナ域のクリーチャーや置物を展開してくる相手に対してサイドインします。《破壊放題》は装備品や《霊気の薬瓶》、《ワームとぐろエンジン》だけではなく、「複製」することで《虚空の杯》対策となります。
Jeskai Ascendency Combo
1 《島》
1 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《蒸気孔》
1 《踏み鳴らされる地》
1 《寺院の庭》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《霧深い雨林》
1 《吹きさらしの荒野》
2 《宝石鉱山》
1 《植物の聖域》
1 《焦熱島嶼域》
1 《燃え柳の木立ち》
-土地 (17)- 4 《極楽鳥》
1 《貴族の教主》
4 《森の女人像》
2 《命運縫い》
-クリーチャー (11)-
2 《たなびく紺碧》
2 《選択》
2 《手練》
1 《消し去りの才覚》
1 《白鳥の歌》
1 《夏の帳》
1 《撤廃》
4 《きらめく願い》
1 《魔力変》
1 《腹背/面従》
2 《豊かな成長》
2 《死の国からの脱出》
3 《ジェスカイの隆盛》
1 《崇拝》
2 《ミシュラのガラクタ》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《レンと六番》
-呪文 (32)-
1 《冠雪の森》
1 《儀礼的拒否》
1 《突然の衰微》
1 《傷鱗の儀式》
1 《焦熱の裁き》
1 《漂流自我》
1 《発展/発破》
1 《ジェスカイの隆盛》
1 《崇拝》
1 《真髄の針》
1 《時を解す者、テフェリー》
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-サイドボード (15)-
アーキタイプの種類が多いモダンでも特にレアなコンボデッキのひとつ、Jeskai Ascendancy Combo。基本的な動きは《森の女人像》などのマナクリーチャーとデッキ名にもなっている《ジェスカイの隆盛》を場に出して、その後1マナのキャントリップスペルを連打してライブラリーを掘り進んでいきます。
最終的に《ジェスカイの隆盛》の能力で強化された《極楽鳥》や《命運縫い》による攻撃か、《きらめく願い》からサーチされた《発展/発破》によってゲームを決めます。爆発力のあるデッキであり、回れば最速2ターンキルも可能です。
☆注目ポイント
「願い」スペルの《きらめく願い》は状況に応じてさまざまなマルチカラースペルをサーチしてきます。コンボの露払いとなる相手のカウンターを無効化する《時を解す者、テフェリー》やキーカードの《ジェスカイの隆盛》、場合によっては《突然の衰微》と必要なカードに早変わりします。欠点としてサイドボードが《きらめく願い》のサーチ先で埋まってしまいがちですが、柔軟性とコンボ達成には不可欠なカードです。
また、Death’s Shadowのようなハンデスによる干渉手段対策に《夏の帳》が3枚と多めに採用されています。
戦場に《ジェスカイの隆盛》とマナクリーチャーがそろえば、《魔力変》や《たなびく紺碧》はキャントリップ付きのマナ加速として機能します。この際、マナクリーチャーは除去耐性のある《森の女人像》が理想です。
《ジェスカイの隆盛》が動き始めれば自然と墓地にカードが溜まってくるので《死の国からの脱出》と相性も良く、「脱出」コストには困りません。《死の国からの脱出》が加わったことでコンボが途中で止まりにくくなったのです。
対象のパーマネントをアンタップする起動型能力を持つ《命運縫い》は疑似的なマナクリーチャーであり、《ジェスカイの隆盛》との相性も抜群です。「蘇生」コストが1マナと軽いので、コンボ中に「蘇生」することで使えるマナをさらに増やせます。
Modern Challenge #12235616
沸騰する環境
2020年12月5日
- 1位 Eladamri’s Toolbox
- 2位 Tron
- 3位 Gifts Storm
- 4位 Heliod Company
- 5位 Boros Heliod Combo
- 6位 Temur Uro
- 7位 4C Uro Omnath
- 8位 4C Uro Omnath
トップ8のデッキリストはこちら
優勝は《原始のタイタン》デッキのバリエーションであるEladamri’s Toolbox。《エラダムリーの呼び声》と《エルフの開墾者》の2大サーチスペルをフル活用した構築であり、最近活躍が目覚ましいデッキのひとつです。
今大会では、《謎めいた命令》や《神秘の聖域》要するトップメタデッキのUro Omnathに対抗するため、サイドボードに《沸騰》を忍ばせたデッキが多く見られました。
デッキ紹介
Eladamri’s Toolbox
1 《平地》
2 《冠雪の森》
1 《冠雪の平地》
4 《吹きさらしの荒野》
3 《樹木茂る山麓》
2 《寺院の庭》
1 《聖なる鋳造所》
1 《魂の洞窟》
1 《セレズニアの聖域》
4 《トロウケアの敷石》
3 《ギャレンブリグ城》
2 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
1 《ボジューカの沼》
2 《死者の原野》
1 《爆発域》
1 《幽霊街》
1 《光輝の泉》
1 《ヴェズーヴァ》
-土地 (34)- 4 《エルフの開墾者》
1 《絡みつく花面晶体》
4 《イリーシア木立のドライアド》
1 《スカイクレイブの亡霊》
4 《原始のタイタン》
-クリーチャー (14)-
3 《沸騰》
3 《大祖始の遺産》
1 《溜め込み屋のアウフ》
1 《エイヴンの思考検閲者》
1 《秋の騎士》
1 《静寂の守り手、リンヴァーラ》
1 《仕組まれた爆薬》
-サイドボード (15)-
《原始のタイタン》は《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と並んで現在のモダンを定義するカードの1枚です。現環境にはAmulet Titanなど《原始のタイタン》を軸にしたデッキはいくつかありますが、ここ最近ではEladamri’s Toolboxが結果を残しています。
《原始のタイタン》を対策されたとしても中速デッキとしても振舞うことができるため、カスタマイズしやすいのも特徴です。
☆注目ポイント
《エルフの開墾者》は状況に応じてデッキ内のあらゆる土地をサーチすることができ、《トロウケアの敷石》と組み合わせればマナ加速役にもなるため、マナコスト以上の働きをするクリーチャーです。
《エルフの開墾者》でサーチすることが前提とされているため、《光輝の泉》や《ボジューカの沼》といった特定のマッチアップで活躍する土地がメインから採用されています。採用枚数が1枚だとしても戦場に出せれば、《ヴェズーヴァ》のおかげで複数回使用することも可能です。フィニッシャーも土地であり、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》や《死者の原野》がそれを担っています。
デッキ名にもなっている《エラダムリーの呼び声》はあらゆるクリーチャーを手札に加えることができます。キーカードの《原始のタイタン》や《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》の能力を誘発させるための《イリーシア木立のドライアド》だけでなく、厄介な置物を対策できる《スカイクレイブの亡霊》もサーチ可能なのです。
このバージョンの強みは何といっても《流刑への道》や《スカイクレイブの亡霊》、サイドにフル搭載されている《天界の粛清》といった白い除去スペルが使えることです。これによってほかのバージョンと比べて、アグロデッキに耐性があるのです。
サイドボード後、4C Uro Omnathといった青ベースのコントロールに対しては《沸騰》が刺さります。しかし、《イリーシア木立のドライアド》をコントロールしているときにプレイして、うっかり自分の土地も飛ばしてしまわないように注意していきたいところです。
Boros Heliod
1 《山》
1 《聖なる鋳造所》
4 《乾燥台地》
4 《魂の洞窟》
4 《灼陽大峡谷》
-土地 (23)- 4 《歩行バリスタ》
4 《ルーンの与え手》
4 《オーリオックのチャンピオン》
4 《光輝王の野心家》
4 《太陽冠のヘリオッド》
4 《イーオスのレインジャー長》
4 《スカイクレイブの亡霊》
2 《エメリアのアルコン》
-クリーチャー (30)-
2 《月の大魔術師》
2 《沸騰》
2 《安らかなる眠り》
2 《減衰球》
1 《ブレンタンの炉の世話人》
1 《巨人落とし》
1 《流刑への道》
1 《天界の粛清》
1 《魂標ランタン》
-サイドボード (15)-
モダンのHeliodコンボは前回でも挙げたHeliod Companyが代表的ですがSmdsterはBorosカラーのHeliod Comboで入賞を果たしました。
メインは白単ですが、サイドのカードのために赤をタッチしています。《安らかなる眠り》など特定の戦略に刺さるサイドボードカードの選択肢が豊富なのも白いデッキの特徴です。
☆注目ポイント
《霊気の薬瓶》と《魂の洞窟》を搭載しているので青ベースのデッキに耐性があります。《イーオスのレインジャー長》はコンボパーツの《歩行バリスタ》や自軍のクリーチャーを相手の除去から守る《ルーンの与え手》をサーチできるだけでなく、能力を起動することによって対戦相手のクリーチャーでないスペルをシャットアウトすることができるので、安全にコンボを決めることが可能になります。
《オーリオックのチャンピオン》は《太陽冠のヘリオッド》とシナジーがあり、クリーチャーが場に出るたびに+1/+1カウンターを乗せて強化することができます。プロテクション(赤)(黒)もMono Red Prowess、Rakdos Death’s Shadow、Burnなどが活躍する現環境のメタと相性がいいこともあり、メインからフル搭載されています。特殊地形を多用する4C Uro Omnathが現環境のトップメタでなので、相手の動きを減速させることができる《エメリアのアルコン》もメインから採用されています。
メインは白単ですが、サイドの《月の大魔術師》と《沸騰》のために赤をタッチしています。《月の大魔術師》は、4C Uro Omnathや各種《原始のタイタン》デッキといった《死者の原野》を採用したデッキやTronなど環境の多くのマッチアップで有用です。
《血染めの月》と比較すると、《月の大魔術師》はクリーチャーなので除去されやすいのがネックとなりますが、《霊気の薬瓶》から出すこともできるので奇襲性もあり、青ベースのデッキとのマッチアップでは重要です。そして、4C Uro Omnathも含めた青コントロールデッキは《神秘の聖域》を活用するために《島》を並べるため、最近は《沸騰》をサイドに採用しているデッキが散見されます。
Gifts Storm
《けちな贈り物》を軸にしたモダンの「ストーム」コンボでドロースペルを多用しているので動きが安定しています。
レガシーと異なり《苦悶の触手》が不在で、マナ加速は《捨て身の儀式》など赤に寄っているのでIzzetカラーが基本となっています。墓地のインスタントとソーサリーに「フラッシュバック」を与える《炎の中の過去》は健在であるため、《けちな贈り物》で儀式スペルや《炎の中の過去》をサーチしてコンボを発動させるための下準備をしつつストームを稼ぎ出して、最終的に《ぶどう弾》で勝利します。
プレイングの選択肢が多く難易度は高めですが、特定の対策カード1枚で完封されにくく、適切なプレイをすることで絶望的なマッチアップは少なくなります。
☆注目ポイント
多くの場合メイン戦は《ぶどう弾》でゲームを決めることになります。《ぶどう弾》の優れた点は《東屋のエルフ》などのマナクリーチャーや小型のクリーチャーを多用するデッキに対してスイーパーのようにも機能するところです。
《巣穴からの総出》は青ベースのコントロールなどフェアデッキとのマッチアップで有用な勝ち手段として機能します。《けちな贈り物》や《炎の中の過去》を通さなくても、ストームを稼いだあとにトークンを並べるプランは単体除去が中心のフェアデッキにとっては対応が難しくなります。
レガシーよりもマナ加速や儀式スペルが少なくなりますが、それを補うのが《遵法長、バラル》と《ゴブリンの電術師》です。これらのクリーチャーが除去されずに生き残れば、《魔力変》はキャントリップ付きのマナ加速のように機能するようになり、《捨て身の儀式》など儀式スペルを1マナでプレイできるようになるので、《炎の中の過去》プランにスムーズに移行することが可能です。
『ゼンディカーの夜明け』から登場した《シルンディの幻視》は、マナが必要なときは土地としてもプレイできるので無駄になりにくく、インスタントスピードで《けちな贈り物》などキーカードをサーチすることができます。さらに、《河川滑りの小道》の登場により《蒸気孔》を採用する必要がなくなったため、デッキ内の《島》の枚数が減りサイドに《沸騰》が採用されるようになりました。インスタントスピードのマストカウンターが増えたことによって、カウンターを多用するコントロールに対してもコンボが決めやすくなったのです。
総括
ほかの構築フォーマットと同様に2020年はモダンにとっても変化が多い年でした。
今年に入って早々に3種類のカードが禁止カード入りになりました。歴代最強のプレインズウォーカーである《王冠泥棒、オーコ》は、採用率の高さから環境の多様性を損なっていたため登場間もなく禁止カードに。そして、長年フェアデッキ好きの宿敵的な存在であったTronにも、《マイコシンスの格子》が禁止にされる形でテコ入れが入りました。長年モダンを定義するカードとしてAffinity、Lantern Control、Urzaなど、様々なデッキの主要パーツとして活躍していた《オパールのモックス》が禁止カード入りしたのは強く印象に残りましたね。
その後もAmulet Titanなど土地コンボが環境を支配したため、3月にデッキの安定性を支えていた《むかしむかし》が禁止に。
『イコリア:巨獣の棲処』では歴代屈指の強力なメカニズムを持つ「相棒」が登場し、ほかの構築フォーマットと同様に《夢の巣のルールス》と《空を放浪するもの、ヨーリオン》を使ったデッキが環境を支配しました。その結果、「相棒」のルールは変更されることになります。
「相棒」のルールが変更後、環境で高い勝率を維持していたSnow ControlやUrzaなど多色ミッドレンジを弱体化させるために《アーカムの天測儀》が禁止カードに指定されます。これを最後に禁止カードが出ることがなくなり、『ゼンディカーの夜明け』から登場した《スカイクレイブの亡霊/Skyclave Apparition》や両面カードによってほかのデッキも強化された結果、環境は多様性を取り戻しました。
このように大変動を繰り返した2020年のモダン環境ですが、来年はどうなるのでしょうか。
USA Modern Express vol. 50は以上になります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!