はじめに
みなさんこんにちは。今年も残りわずかとなりましたが、マジックを楽しんでいますか?
2020年を振り返ってみると強力なカードが次々と登場し、それにともなって環境も目まぐるしく変化していきました。マジック界にとっては《激動》の1年といっていいでしょう。
また、社会情勢を鑑みてテーブルトップのイベントが軒並み中止や延期となりました。残念な気持ちはありますが、その分MOやMTGアリーナを活用したオンラインのイベントが充実していましたね。
さて、今回の連載ではPioneer Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Pioneer Challenge #12238079
コンボデッキが大活躍
2020年12月12日
- 1位 The Spy
- 2位 Sram Aura
- 3位 4C Omnath
- 4位 Mono Green Planeswalker
- 5位 Sram Aura
- 6位 Lotus Combo
- 7位 4C Omnath
- 8位 Jeskai Fires
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優勝したのは現環境を代表するコンボデッキ、The Spy(海外ではOops! All Spellsと呼ばれています)。ほかにはSram AuraやMono Green Planeswalker、4C Omnathなど自分の動きを相手に押しつけるタイプのデッキが上位に多く残りました。
デッキ紹介
Lotus Combo
《死の国からの脱出》が禁止になったものの、まだまだ健在のLotus Combo。The Spyと並んでパイオニアの有力なコンボデッキの1つであり、大会では安定して上位に入るなど一定の地位を確立しています。妨害手段の乏しいMono Green PlaneswalkerやNiv Lightのようなクロックが遅いミッドレンジは相性のいいマッチアップとなります。
《睡蓮の原野》とそれをコピーした《演劇の舞台》による大量マナを活かしてドロースペルを連打し、《願いのフェイ》か《首謀者の収得》から《全知》をサーチします。最終的にはゲーム外から《精霊龍、ウギン》や《副陽の接近》を手札に加えてゲームを終わらせます。
☆注目ポイント
《樹上の草食獣》や《遵法長、バラル》はコンボのためのサポートとして機能しつつ、Mono Black Aggroのようなパワー2のクリーチャーが主力のデッキに対してはブロッカーとして時間稼ぎに貢献します。《樹上の草食獣》は到達持ちなので、Spirits相手にも有能なブロッカーとなります。
《森の占術》はコンボの下準備である《睡蓮の原野》か《演劇の舞台》を探しだすことが大半ですが、アグロデッキとのマッチアップでは《爆発域》をサーチすることで除去としても使えます。
《睡蓮の原野》をアンタップできる《見えざる糸》と《砂時計の侍臣》はコンボのキーとなるスペルであり、《熟読》は5マナと重いもののマナとカードを同時に稼ぐことができます。コンボに必要なマナ(14マナ)が揃ったら《願いのフェイ》を「出来事」でプレイして《全知》をサーチしてきましょう。これによりすべてのスペルがマナを支払わずにプレイ可能となるため、サイドボードから勝ち手段を呼び込んで勝利となります。
Pioneer Challenge #12238083
環境のソリューションはSultai Control
2020年12月13日
- 1位 Sultai Reclamation Control
- 2位 Jeskai Fires
- 3位 Burn
- 4位 Sultai Reclamation
- 5位 4C Omnath
- 6位 4C Omnath
- 7位 Dimir Control
- 8位 Jeskai Fires
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優勝はカウンターを多数採用したコンボデッキに強いSultai Reclamationでした。
ビッグマナ系の4C Omnathはデッキパワーの高さもあってほとんど毎回上位に入るデッキです。
3位に入賞していたBurnは《大歓楽の幻霊》を採用しているため軽いスペルを多用するデッキにとっては脅威となり、コンボやコントロールに強いデッキになります。
デッキ紹介
Sultai Reclamation Control
《荒野の再生》がもたらすマナ・アドバンテージを活用して、隙を作らずに《サメ台風》や《タッサの介入》といったビッグスペルをプレイするコントロールデッキ。《発展/発破》が使えるTemurバージョンがポピュラーですが、Sultaiバージョンは軽量インスタント除去に恵まれているのでカウンターと相性が良く、高性能のスイーパー《影の評決》も魅力です。
インスタントスピードで動きやすくカウンターも多めなのでコントロールのなかでも、ほかのコントロールやコンボに強いアーキタイプです。
☆注目ポイント
Sultai Reclamationとカテゴライズされていますが、Temurほど《荒野の再生》に依存していないため採用枚数は2枚と少なめです。マナ・アドバンテージは《タッサの介入》や《薬術師の眼識》といったインスタントでカード・アドバンテージへと変換していきます。
黒を使うメリットとして豊富な除去の選択肢があげられます。《致命的な一押し》や《無情な行動》、《突然の衰微》はすべてインスタントなので、カウンターを構えながら動くことが可能です。特に《突然の衰微》はこのデッキにとって厄介なプレインズウォーカーである《時を解す者、テフェリー》に対する絶対的な解答となります。
《絶滅の契機》や《影の評決》など赤よりもスイーパーの性能が優れているところもSultaiを使うメリットといえます。サイドボードの《永遠神の投入》は赤いアグロデッキに対して効果が大きく、除去とライフゲインと《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の「脱出」コストを一挙動で満たしてくれます。
今回のリストでは不採用になっていますが、環境の最優秀スペル《思考囲い》を使えるのもSultaiのメリットです。コンボやコントロールとのマッチアップをさらに有利なものとしてくれます。
メインボードだけで合計14枚ものカウンターを採用していることからもわかるとおり、このデッキの基本はインスタントタイミングでの行動となります。「サイクリング」付きの《検閲》やドロースペルとしても使える《タッサの介入》のおかげで、構えていたマナを無駄に費やすことも少なくなりました。《悪意ある妨害》は確定カウンターでありながら、「諜報」によって《時を越えた探索》のために墓地を肥やせるなかなか優秀なスペルです。
Pioneer Challenge #12240499
プロアクティブな環境
2020年12月19日
- 1位 Sram Aura
- 2位 Burn
- 3位 The Spy
- 4位 Burn
- 5位 Mono Black Aggro
- 6位 Simic Paradox Combo
- 7位 4C Omnath
- 8位 4C Omnath
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コントロールが結果を残していた前週のChallengeと大きく異なり、Sram AuraやBurn、The Spyなど能動的な戦略をとるデッキがプレイオフに多く進みました。
ビッグマナ系の4C Omnathは優勝こそ逃していますが、コンスタントに結果を残していることからもデッキパワーの高さがうかがえます。
デッキ紹介
4C Omnath
3 《島》
2 《山》
1 《平地》
4 《寓話の小道》
3 《進化する未開地》
4 《ラウグリンのトライオーム》
2 《ケトリアのトライオーム》
2 《繁殖池》
2 《踏み鳴らされる地》
2 《寺院の庭》
-土地 (29)- 4 《水蓮のコブラ》
1 《森の女人像》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《創造の座、オムナス》
-クリーチャー (13)-
現環境の代表的な《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と《創造の座、オムナス》を軸にしたデッキですが、モダンで活躍している4C Omnathとは異なります。パイオニアの4C Omnathはマナ加速や《創造の座、オムナス》の提供するマナ・アドバンテージを活かして、《僻境への脱出》や《発生の根本原理》といったパワフルなスペルで相手を圧倒するビッグマナ戦略です。
禁止となった当時のスタンダードのデッキと比べてもマナ基盤がアップデートされた以外はほとんど変わりません。最近のカードパワーには驚かされるばかりです。
このデッキの弱点は除去の薄さであり、アグロデッキとのマッチアップを苦手とします。しかし、ブン回れば相手の追随を許さず一方的な展開となります。欠点を補っても余りあるデッキパワーの高さこそがこの4C Omnathの魅力なのです。
☆注目ポイント
パイオニアでは優秀なプレインズウォーカー《時を解す者、テフェリー》が使えます。マナ加速からのビッグスペルが主な勝ち手段であるこのデッキにとってカウンターは天敵であり、常在型能力によってそれを無力化する《時を解す者、テフェリー》は重要なカードです。[+1]能力によって《発生の根本原理》などの強力なソーサリーをインスタントスピードでプレイできるようになるため、隙のないプレイが可能となります。
マナが大量に出るこのデッキならば、《水の帳の分離》を「覚醒」込みでプレイすることは容易です。追加のターンを得つつフィニッシャー級のクリーチャーを用意できる強力なスペルであり、過去のスタンダードのビッグマナで採用されていた実績があります。
Pioneer Challenge #12240503
古典的な青コントロールが優勝
2020年12月20日
- 1位 Azorius Control
- 2位 Lotus Combo
- 3位 Temur Reclamation Control
- 4位 Sultai Reclamation Control
- 5位 Sultai Reclamation Control
- 6位 Sram Aura
- 7位 Sultai Reclamation Control
- 8位 Temur Reclamation Control
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土曜日に開催されたPioneer Challenge #12240499と結果は大きく異なり、Reclamation Controlがプレイオフの半数以上を占めました。
時間帯によるプレイヤー層の違いでメタゲームが異なったようで、ここ2週間を見る限り「土曜日のChallengeでは能動的な戦略」「日曜日のChallengeでは青いコントロール」が勝っていることは強く印象に残りました。
デッキ紹介
Azorius Control
4 《アゾリウスの魔除け》
4 《検閲》
2 《ドビンの拒否権》
4 《吸収》
1 《悪意ある妨害》
2 《至高の評決》
1 《残骸の漂着》
1 《エメリアの呼び声》
1 《海門修復》
3 《時を越えた探索》
1 《エルズペス、死に打ち勝つ》
3 《サメ台風》
3 《時を解す者、テフェリー》
3 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (37)-
3 《不可解な終焉》
2 《霊気の疾風》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
1 《悪斬の天使》
1 《黎明をもたらす者ライラ》
1 《拘留の宝球》
1 《魂標ランタン》
1 《太陽の宿敵、エルズペス》
-サイドボード (15)-
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》コントロールの海を泳ぎきり、優勝を収めたのは古典的な青白のコントロールでした。《吸収》や《至高の評決》で時間を稼ぎ、《時を越えた探索》で相手とアドバンテージ差をつけます。最終的に《ドミナリアの英雄、テフェリー》や《サメ台風》、時間をかけて《アーデンベイル城》のクリーチャー・トークンでゲームを決めます。
Azorius Controlというアーキタイプ自体はパイオニア発足以来常に一定数環境に存在するデッキでしたが、『テーロス還魂記』や『イコリア:巨獣の棲処』からの新戦力にも恵まれ、より強化されています。
☆注目ポイント
パイオニアはモダンやレガシーで禁止にされている《時を越えた探索》が使える数少ない構築フォーマットです。フェッチランドの種類が少なく、さらに軽いスペルの選択肢は限られていますが、《選択》や《検閲》をサイクリングして「探査」のために墓地を肥やしていきます。相手の脅威をカウンターしつつライフゲインできる《吸収》はBurnが多い現環境では優秀なスペルとなります。
このデッキを含めたさまざまな青いコントロールデッキにとって、《サメ台風》は必須カードとして定着しています。ゲーム序盤は「サイクリング」することで必要な土地やスイーパーを引き当てる助けとなり、中盤以降はプレインズウォーカーを守るブロッカーをインスタントスピードで生み出し、マナが余る終盤は有力なフィニッシャーとして機能する大変フレキシブルなカードです。
また、相手の《時を解す者、テフェリー》への牽制役としても最適です。カウンターされずに飛行クリーチャーに対するブロッカーを生成できるので、Spritsとの相性も改善されています。
Burnがメタゲームの一角を担う現環境において《エルズペス、死に打ち勝つ》はコストの重さが気になりますが、ミッドレンジが使用する《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や各種プレインズウォーカーに対する解答になります。アグロが幅を利かせている環境なので、《残骸の漂着》はメインから採用されています。
サイドボードの《悪斬の天使》や《黎明をもたらす者ライラ》からもBurnを意識していたことがわかります。墓地対策には《時を越えた探索》との相性を考慮して、《安らかなる眠り》よりも《魂標ランタン》が優先されています。
総括
パイオニアが公式フォーマットとして発表されてからわずか1年ですが、ほかの構築フォーマットと同様に環境は大きく変化していきました。
『イコリア:巨獣の棲処』では歴代屈指の強力なメカニズム「相棒」が登場し、《深海の破滅、ジャイルーダ》コンボや《空を放浪するもの、ヨーリオン》コントロール、《夢の巣のルールス》を「相棒」にしたアグロが環境を支配しました。結果的に「相棒」ルールは変更されましたが、現在でも活躍を続けています。
7月13日に《Oath of Nissa》が解禁されたことで、パイオニア最初期に活躍していたMono Green Planeswalkerが復権しました。その翌月には環境の主力デッキだったコンボパーツが軒並み禁止となり、別フォーマットといっていいほど変化しました。
来年にはMTGアリーナで実装される予定らしいので、そうなればさらに盛り上がることでしょう。
以上、USA Pioneer Express vol.15でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいパイオニアライフを!そしてみなさん、良いお年を!!