Translated by Kouhei Kido
(掲載日 2021/01/15)
はじめに
正直に言えば、私が今一番楽しんでいるフォーマットはヒストリックです。ヒストリックになじみのないプレイヤーもいるとは思いますが、この記事はそういったプレイヤーが今のヒストリックについて知るための記事です。ヒストリックはMTGアリーナのみに存在しているフォーマットです。禁止リストを除いて、MTGアリーナに存在しているカードはすべて使えます。
禁止カード
一時停止カード
ヒストリックのプレミアイベント
さて、ヒストリックのカードプールが分かったところで、ヒストリックが産声を上げてから今までに開かれたプレミアイベントについて見ていきましょう。あまり数は多くありませんが、それぞれが重要な大会です。
2020ミシックインビテーショナル:2020年9月10~13日
この大会がヒストリックで開催された記念すべき最初のプレミアイベントで、ヒストリック単独で開催された唯一のものでもあります。
見てわかるように、ゴブリンが大差でもっとも流行ったデッキになりました。2つの型(赤単とラクドス)を合わせると大会参加者の3分の1がゴブリンを使うことを選択しています。『Jumpstart』で《上流階級のゴブリン、マクサス》が登場してから、1枚でゲームに勝てるヒストリックで最強の脅威として定着していたので、予想されている事態ではありました。
スゥルタイ(16.9%)とジャンド(13.8%)がゴブリンの次に多く使われたデッキで、ほかにも多種多様なデッキが使用されていましたが、メタゲーム上の割合は少ないものでした。
トップ8
入賞数 | アーキタイプ |
---|---|
4 | ジャンド(3 サクリファイス型/1 《ボーラスの城塞》型) |
1 | スゥルタイ |
1 | 黒単《王神の贈り物》 |
1 | 赤単ゴブリン |
1 | ラクドスアルカニスト |
大会での勝率とトップ8に入賞したデッキを見る限り、ラクドス型よりも赤単のゴブリンのほうが良い成績を残しました。大会でもっとも使われたデッキだったにもかかわらず、トップ8に1人しか残らなかったのは、少しがっかりする結果だったともいえるでしょう。
それに対してジャンドは、もっとも勝てるデッキだっただけでなく、トップ8の半分をジャンドにすることに成功しました。しかし、セス・マンフィールド/Seth Manfieldはこれらのデッキを選ぶことなく、トップ8で唯一スゥルタイを使用し、優勝を手にしたのです。
2020年シーズン・グランドファイナル:2020年10月9~11日
ヒストリックで開催された2回目のプレミアイベントはグランドファイナルでした。しかし、ひとつ前の大会とは異なり、ヒストリックとスタンダードの2つのフォーマットを使う大会で、トップ8はスタンダードで行われました。間違いなく変わった大会だったとは言えるでしょう。また、32人の選手しか招待されないので、規模としては小さくデッキの種類も少ないです。《創造の座、オムナス》をヒストリックのプレミアイベントで使用できる唯一の大会でもありました。大会が終わった翌日には、一時停止カード入りしましたからね。
参加者の3分の1が禁止される前に《創造の座、オムナス》を使う贅沢を味わうことを選びました。凶悪なオムナスランプです。ジャンドとスゥルタイ(タッチ白)が2番目と3番目に使われるデッキとなり、ゴブリンは前回の大会で結果を残せなかったために使用者は1人に留まりました。
『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップ:2020年12月4~6日
2020年最後のプレミアイベントもスタンダードとヒストリックで開催されました。ただし、今回優勝者を決めるフォーマットはスタンダードではなくヒストリックです。大会メタゲームに特に驚くような点はなく、3大デッキはスゥルタイ/4色ミッドレンジ・ジャンド/ラクドスサクリファイス・ゴブリンでした。今回はジャンドが30%を占め、もっとも使用されるデッキになりました。スゥルタイも28%と迫る勢いで、割合は下がりますが3番目は12%が使用したゴブリンです。
疑いようもなく、今のヒストリックを象徴するのはこの3つのデッキだと言えるでしょう。ヒストリックの大会に参加するなら、この3つのデッキとたくさん対戦する覚悟が必要です。
トップ8
入賞数 | アーキタイプ |
---|---|
4 | 4色ミッドレンジ |
2 | スゥルタイ |
1 | 赤単ゴブリン |
1 | アゾリウスコントロール |
今回はスゥルタイ/4色ミッドレンジがもっとも成功したデッキになりました。さまざまなデッキに対する勝率もよかっただけでなく、トップ8にも6人進出しました。一方で今回奮わなかったのはジャンド/ラクドスサクリファイスでしょう。一番使用されたデッキであるにもかかわらず、トップ8に1人も残らなかったのですから最初の大会のゴブリンよりもひどい結果です。
大会の優勝者は、アゾリウスコントロールを使用したブラッド・バークレイ/Brad Barclay選手で、フォーマットの3大巨頭に対して周到に準備されたデッキでした。
可能性のある3つのデッキ
ここまでフォーマットとしてのヒストリックの歴史をひも解いてきました。将来的に禁止がなければ、ジャンド/ラクドスサクリファイス・スゥルタイ/4色ミッドレンジ・ゴブリンの3デッキはティアー1に座り続けると予想します。しかしながら、フォーマットにもっと多様性が生まれる希望は残されています。ヒストリックの上位デッキと肩を並べられるのではないかというデッキが3つあると思っています。
アゾリウスコントロール
1 《霊気の疾風》
1 《軽蔑的な一撃》
4 《吸収》
4 《神の怒り》
3 《不可解な終焉》
1 《アズカンタの探索》
4 《排斥》
4 《サメ台風》
2 《墓掘りの檻》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (34)-
直近の大会で優勝したアーキタイプです。アゾリウスコントロールは、ヒストリックで同アーキタイプが成立するのに必要なカードがそろっていることを証明しました。環境に存在するデッキだと認識された現在、ほかのデッキが調整して適応できるのかはまだ判明していません。
たとえば、最近スゥルタイはアゾリウスとのマッチアップで不要な《致命的な一押し》の枚数を減らして《覆いを割く者、ナーセット》に対処できる《取り除き》を採用し始めています。新しい変化に適応できるのかどうかが、このデッキにとっての新たな課題となります。相手の動きに合わせるとても受動的なデッキですから、大会のメタゲームに対してしっかり準備ができていれば結果はついてくることでしょう。
《パラドックス装置》コンボ
『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップでスゥルタイ《パラドックス装置》コンボが生まれました。カイ・ブッディ/Kai Buddeとヨエル・ラーション/Joel Larssonによって製作されたデッキです。無限マナによって勝利するデッキで、《眷者の神童、キナン》《パラドックス装置》《湖に潜む者、エムリー》によってデッキを引ききります。
誕生以来デッキは大きく進化していて、まず以下の2つの変更が加えられました。
最新のデッキリストでは、《僻境への脱出》のために赤が追加されています。デッキがやろうとしていることと合致しているので、いい選択だと思っています。もしこのデッキを使いたいなら、こういうデッキリストから始めてみてはどうでしょうか。
4 《繁殖池》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《植物の聖域》
4 《河川滑りの小道》
2 《尖塔断の運河》
-土地 (20)- 4 《ラノワールのエルフ》
3 《金のガチョウ》
4 《眷者の神童、キナン》
4 《湖に潜む者、エムリー》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (18)-
1 《物語の終わり》
1 《萎れ》
1 《祖先の像》
1 《隕石ゴーレム》
1 《モックス・アンバー》
1 《上天の呪文爆弾》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《聖域の門》
1 《霊気貯蔵器》
1 《金粉の水蓮》
1 《パラドックス装置》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《王神の贈り物》
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-サイドボード (15)-
ラクドスアルカニスト
私がヒストリックでお気に入りのデッキです。チームメイトとともにミシックインビテーショナルで使ったデッキでもあり、ルイス・サルヴァット/Luis Salvattoは3位に入賞しました。しばらく前には、パトリック・フェルナンデス/Patrick Fernandesがこのデッキを使ってSCG Tour Online $5K Kaldheim Championship Qualifier #6という大会で優勝し、『カルドハイム』チャンピオンシップへの参加権を勝ち取ったのです。彼のデッキリストは大好きですが、少しメインデッキとサイドボードを調節してこのデッキリストになりました。
3 《山》
4 《血の墓所》
3 《寓話の小道》
4 《竜髑髏の山頂》
1 《ロークスワイン城》
-土地 (21)- 4 《縫い師への供給者》
4 《戦慄衆の秘儀術師》
4 《死の飢えのタイタン、クロクサ》
3 《若き紅蓮術士》
2 《スカイクレイブの災い魔》
-クリーチャー (17)-
2 《強迫》
2 《致命的な一押し》
2 《魔女の復讐》
2 《ひっかき爪》
1 《アングラスの暴力》
1 《大群への給餌》
1 《魔性》
1 《夢の巣のルールス》
-サイドボード (15)-
《スカイクレイブの災い魔》については自信が持てないところです。私にとっては期待に応えてくれていないカードで、1枚あるいは2枚ともデッキから抜いてしまうのもそう遠くない話かもしれません。近ごろはあまり墓地対策をしていない人が多いので、このデッキの強力なシナジーを最大限に活かすことも容易です。人々が《安らかなる眠り》や《虚空の力線》の採用枚数を増やし始めたら、サイドボードの《大群への給餌》を増やすべきです。
おわりに
今日の記事はここまでです!マジックの競技フォーマットであるヒストリックにとっての最初の年の様子と、近い将来に活躍するかもしれないデッキについて解説させてもらいました。ヒストリックをまだやったことがない人は、試しにやってみることをおすすめしたいです。これからも存在し続けるフォーマットですからね。
この記事が読者のみなさんの役に立つことを祈っています。感想や提案も大歓迎です。それではまた次回!