はじめに
前回、記事を寄稿させていただいてからかなりの期間が空きました。「もう縁はないか…」と思わずにもいられませんでしたが、再びこうしてみなさんに記事をお届けする機会をいただけました。この貴重な機会に感謝しつつ、また最後までお付き合いいただければ幸いです。
本記事はヒストリック環境におけるパラドックスコンボのデッキガイドになります。パラドックスコンボは、ヒストリック環境に存在する数少ない実践級のコンボデッキですが、シェア率で言えばたいしたことはありません。しかし、その独特な動きからファンの多いデッキでもあり、私自身もこのデッキに魅了され使い込んできました。折角なので自分の得た知見を共有したいと思い、本記事を執筆するに至りました。
パラドックスコンボとは
パラドックスコンボとは、その名のとおり《パラドックス装置》を用いたコンボデッキです。《パラドックス装置》と《湖に潜む者、エムリー》or《大いなる創造者、カーン》(《祖先の像》)との組み合わせで呪文を半永久的に唱えることができるため、それによって瞬殺コンボを狙います。コンボ以外にも《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《湧き出る源、ジェガンサ》、《領事の旗艦、スカイソブリン》を使ったビートダウンプランも持ち合わせており、見た目以上に器用なデッキです。
性質上、どんな相手にも勝ちうるブンまわり力を持っており、特に除去の薄い・序盤の押し付けが弱いデッキ全般に強いです。しかし、クリーチャー・非クリーチャーをまんべんなく使ううえに墓地を利用したコンボデッキということで、サイド後は手札破壊/打ち消し/除去/墓地対策といったあらゆる対策に当たる(=サイド後に必ず弱体化する)弱点も持ち合わせています。
7 《森》
4 《繁殖池》
4 《植物の聖域》
-土地 (22)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《眷者の神童、キナン》
4 《湖に潜む者、エムリー》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (15)-
2 《萎れ》
1 《祖先の像》
1 《隕石ゴーレム》
1 《トーモッドの墓所》
1 《上天の呪文爆弾》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《聖域の門》
1 《霊気貯蔵器》
1 《パラドックス装置》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《王神の贈り物》
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-サイドボード (15)-
採用カード解説:メインボード
マナベース
枚数は22~23枚、色カウントは青と緑がそれぞれ15前後が一般的です。
《ラノワールのエルフ》や《精神石》、《モックス・アンバー》を考慮すると、この枚数でも十分な印象です。《森》の枠は《バーラ・ゲドの復活》や《絡みつく花面晶体》も候補に挙がりますが、《ラノワールのエルフ》の存在から初動の緑マナは可能な限りアンタップインできるものが好ましいです。
クリーチャー
《ラノワールのエルフ》
普通のマナクリーチャーではありますが、《キナン》や《パラドックス装置》が絡むと引き出せるマナが加速度的に増えるため、ほかのデッキよりも強く使えます。相棒の《ジェガンサ》を加えたり、《キナン》の起動能力にあてたりと、増えたマナの使い道は多く、単なるマナクリーチャーで終わらない強さがあります。
《湖に潜む者、エムリー》
典型的な“生き残れば勝ち”なクリーチャーです。単なるコンボパーツとしてだけでなく、リソース源としてみても強力です。ヒストリックには《精神石》《モックス・アンバー》《彩色の宝球》《上天の呪文爆弾》と、使いまわせるアーティファクトも十分にそろっています。
《眷者の神童、キナン》
《パラドックス装置》の性質上、《ラノワールのエルフ》《モックス・アンバー》《精神石》といったマナ関連カードが多く採用されたパラドックスコンボにおいて、マナ増強の強さは最早語るまでもありません。
1ターン目《ラノワールのエルフ》→2ターン目《モックス・アンバー》+《キナン》からの《タミヨウ》or《カーン》のブン回りは、ヒストリックに存在するどのデッキでも追いつけないレベルの爆発力です。マナの伸びてきた終盤には、自身の起動型能力で《エムリー》や《ウーロ》を呼び出せたりと、序盤から終盤まで隙がありません。
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
直接コンボとは関係ないですが、単体のカードパワーを買って採用されています。《エムリー》や《タミヨウ》、そのほか大量のキャントリップつきのアーティファクトで墓地が肥えるため、最速3ターン目にも「脱出」することができます。《スカイソブリン》や《ジェガンサ》とともに殴りきるパターンもあり、コンボ一辺倒ではないこのデッキの強さを支えるクリーチャーです。
呪文
《モックス・アンバー》
《エムリー》や《キナン》との相性は抜群で、これらの組み合わせによる爆発的な展開がパラドックスコンボの強みです。伝説のアーティファクトであるため、重なるとマリガンと同義に思えるかもしれませんが、腐っても強い《水蓮の花びら》です。《パラドックス装置》の起爆としてもベストな0マナであるため、《カーン》用にサイドボードに用意するよりも、しっかりメインボードに4枚取ったほうがデッキには合っています。
《彩色の宝球》
先置きで《エムリー》のマナコストを軽減しつつ、必要がなくなればすぐに1ドローに変換できる点が強みです。《キナン》がいれば2マナ発生するため、この辺りの噛み合いのよさもポイントです。
《上天の呪文爆弾》
バウンスでの時間稼ぎが主な役割です。自分の《エムリー》を除去から守ったり、《エムリー》+《パラドックス装置》ループ時に《彩色の宝球》の代わりになったりと、地味ながらもデッキを支えるカードです。
《精神石》
マナの出る土地でないパーマネントなため、《キナン》で発生するマナが増えますし、《パラドックス装置》で起き上がります。設置してすぐに1マナ使える点も噛み合いがよく、手札の《彩色の宝球》や《上天の呪文爆弾》をすばやく掃けます。
《大いなる創造者、カーン》
専用のサイドボードを用意する必要があるものの、対応力に優れたプレインズウォーカーです。《パラドックス装置》《霊気貯蔵器》《祖先の像》などを持ってくるコンボパーツとしての役割に加えて、《スカイソブリン》による盤面制圧、《魔術遠眼鏡》《上天の呪文爆弾》による時間稼ぎなど、さまざまな使い道があります。
常在型能力によって相手の《魔女のかまど》や《モックス・アンバー》、食物・トークンや宝物・トークンが止まることから、ジャンド/ラクドスサクリファイスに有効、パラドックスコンボやケシスコンボには圧倒的な強さを誇ります。
《伝承の収集者、タミヨウ》
《永遠の証人》的な使い方でコンボパーツを拾うこともあれば、早期着地からの恒久的なリソース源としても活躍します。《ラノワールのエルフ》や《精神石》を経由して3ターン目に着地し、そのまま《ウーロ》とともに押し切る展開も多いです。忠誠度能力がリソースに関連する部分にしか影響がないため、対アグロには無力なことからもサイドアウト率は高いです。
《パラドックス装置》
デッキ名にもなっているコンボパーツです。単体では何もしないですが、《エムリー》との組み合わせで瞬殺カードに早変わりします。《ウーロ》や《スカイソブリン》が疑似警戒になったりと、ビートダウンプランになっても意外な活躍をみせてくれますが、活躍には必ずほかのカードが必要になるため、リソースのトレードが激しいデッキに対してはサイドアウトします。
採用カード解説:サイドボード
《湧き出る源、ジェガンサ》
相棒です。パラドックスコンボはマナは出るが手札に使えるカードないという状況に陥りやすく、相棒は積極的に手札に加えてプレイします。《ウーロ》や《キナン》、《タミヨウ》のように色マナを要求するカードが多いため、意外とマナ能力も活躍します。
《霊気の疾風》《萎れ》
パラドックスコンボは《カーン》用にサイドボードの枠を取られるため、入れ替え用のカードは最低限しか取れません。とはいえ、メインボードの大幅な入れ替えはかえって弱体化するため、枚数が取れない点に関してはほとんど気にしなくてよいです。今回紹介したリストのように、4~5枚程度を対策の対策用に用意できれば十分です。
《大いなる創造者、カーン》用のサイドボード
あまり取り過ぎても限定的な状況でしか使えないため、9~10枚の必要最低限だけ用意するのがよいです。
プレイガイド
ループパターン
本項ではループパターンについて解説します。パラドックスコンボには2つのループパターンが存在します。ビートダウンプランはあくまでサブプランで、基本的にこの2種類のループパターンを目指します。
1. 《湖に潜む者、エムリー》+《パラドックス装置》
ベーシックなパターンです。
《パラドックス装置》が設置された状態で《エムリー》で墓地のアーティファクトを唱えると、それをトリガーに《パラドックス装置》が誘発します。それによって《エムリー》がアンタップ状態になるため、再び起動能力が使用可能になります。
この状態で《モックス・アンバー》《精神石》《ラノワールのエルフ》のようなマナ関連カードがあれば無限マナに、《彩色の宝球》《上天の呪文爆弾》があれば無限ドローになります。最終的に《カーン》から持ってきた《霊気貯蔵器》を設置し、無限ストームからの無限ダメージを与えて勝利します。
2. 《大いなる創造者、カーン》+《パラドックス装置》
《湖に潜む者、エムリー》を使わないパターンです。
一番簡単な条件は《パラドックス装置》が設置された状態で、4マナ以上のマナ関連のカードが含まれていればループ開始です。
《カーン》を唱える(4マナ起きる)→《カーン》で持ってきた《祖先の像》を唱える(4マナ起きる)→《祖先の像》で《祖先の像》を戻す→再び《祖先の像》を唱える(4マナ起きる)……と、これで無限にストームカウントを稼げます。
十分なストームカウントが貯まったら、《祖先の像》で《カーン》を戻す→《カーン》を唱える(4マナ起きる)→《カーン》で持ってきた《霊気貯蔵器》を唱える(4マナ起きる)→適当なカードを唱える(4マナ起きる+《霊気貯蔵器》のライフゲインが誘発)→《霊気貯蔵器》の起動能力で勝利します。
また、スタート時点で十分な土地が並んでいればマナ関連カードが4マナ分存在しなくても、《聖域の門》+1マナのクリーチャー(《ラノワールのエルフ》か《エムリー》)+2マナ以上(《聖域の門》の起動+1マナクリーチャーを唱えるためのマナコスト)のマナ関連カードでループが可能です。
このループは墓地を経由しないため《漁る軟泥》《墓掘りの檻》《虚空の力線》の上からでも勝てますし、《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》の影響も受けません。下準備さえ整っていれば《カーン》単体からでもループがスタートします。しかし、《カーン》(+《パラドックス装置》《祖先の像》を唱えるためのマナ)+4マナ以上が出るマナ関連カード(+《パラドックス装置》の起爆用カード)が必要なため、《エムリー》に比べると下準備が圧倒的に大変です。
基本は(1)の《エムリー》でのループを狙いつつ、墓地対策された場合や《エムリー》が定着しない場合に(2)の《カーン》でのループに狙いを切り替えます。
考え方
本項ではパラドックスコンボの考え方について解説します。パラドックスコンボを扱うにあたって、特に気をつけておくべき基本的な考え方を3つ挙げておきます。
キープ/マリガンを恐れない
パラドックスコンボは序盤の爆発力に特化したコンボデッキです。そのため、「xxが1枚あれば…」といった初手をよく配られます。そういった“リスクに見合ったリターンがある”初手をキープすることを恐れないでください。
逆に「土地があるから」「プレイできるカードがあるから」と中途半端な手札をキープしたところで、ゲームには勝てません。これについては後述の「プレイガイド:マリガン基準」で詳しく解説します。
ゴールから逆算する
コンボデッキには明確なゴールがいくつか設定されています。その複数のゴールから逆算して、いま自分が行うべきプレイを考えてください。
なんとなくリソースが約束されている《ウーロ》を唱えても、勝ちに近づくとは限りません。《エムリー》の展開を諦めて《ジェガンサ》を手札に加えるのが正しい場合もあります。
いま自分がループに向かっているのか、であれば《エムリー》と《カーン》のどちらを大切に使うのか、そもそもコンボではなくビートダウンに向かっているのか。それによって《上天の呪文爆弾》の使うべきモードも変わりますし、当然《タミヨウ》《カーン》で拾うカードも変わってきます。
何度も述べていますが、「なんとなく」でプレイしていても勝てません。パラドックスコンボは単体では使い道のないような弱いカードの集合体ですので、それがより顕著です。
殴れるときに殴る
パラドックスコンボはコンボデッキながらも、《ウーロ》や《スカイソブリン》によるクリーチャー制圧のプランも存在します。《キナン》や《エムリー》といったクリーチャーはかなりの確率で除去を踏むので、《ウーロ》が悠々と殴りきるゲームは頻発します。
そして、いざ殴り始めたときに相手のライフが20と18では大違いです。6点で殴ることが多いため、その2点差は1ターンに繋がります。「コンボデッキだしまあいいや」と適当にならず、ダメージが通せるときにはせっせと殴りましょう。
マリガン基準
本項ではマリガン基準について解説します。パラドックスコンボはカード単体でのキープ/マリガンを判断するのではなく、カード同士の繋がりで判断することが多いです。そのため、いくつかのケースを例に挙げつつ、その考え方について掘り下げていきます。
Case1
キープします。初動最強の《ラノワールのエルフ》から、次のターンには残りの手札をすべて掃けるロケットスタートです。《エムリー》の落下や以降のドローで《カーン》や《パラドックス装置》が見えれば一瞬で勝ちうる手札です。このように序盤で大きく動ける(マナが伸びる、脅威となるパーマネントが展開できる)手札を優先してキープ基準として考えます。
Case2
キープします。《エムリー》こそないものの、2ターン目に《カーン》の確定した最強クラスの手札です。《カーン》から《パラドックス装置》を加えればそれだけで無限ループも見えてきますし、単純に3ターン目の《スカイソブリン》が構えているだけでも、たいていのデッキでは太刀打ちできません。[Case1]同様、初動の圧倒的な展開で相手との差をつけるのがパラドックスコンボの強みです。
Case3
キープします。[Case1][Case2]には劣るものの、2ターン目の《エムリー》が確定している手札はキープ寄りで考えます。《エムリー》はリソース源としても優秀ですし、《ウーロ》のような追加の脅威を呼ぶ役割もあります。そのため、もっともキープに寄与するクリーチャーです。
Case4
マリガンします。パラドックスコンボは初動が命のコンボデッキです。ある程度の長期戦にも耐えられますが、デッキとしての強みはその圧倒的な初速にあります。初動が《ウーロ》かつ後続も《カーン》では繋がりが弱く、典型的な「ゲームをしてる雰囲気が出ているが一切勝ちに繋がらない」手札です。
Case5
キープします。土地が詰まるリスクはあるものの、マナ関連カードは十分そろっています。2ターン目の《湖に潜む者、エムリー》は確定していますし、何より土地を引いたときのリターンが大きいです。パラドックスコンボは土地を絞っている関係上、このような初手が配られがちですが、この手の土地の少ない手札はキープ寄りで考えたほうがよいです。
Case6
マリガンします。[Case5]は「土地を引かなくても《エムリー》が確定している」「土地を引いたときには圧倒的なスピードで展開が見込める」と、リスクを取ってキープする価値のある手札でしたが、これは「1枚目の土地を引かないとゲームにならない」ので明らかにリスクのほうが大きいです。マリガン後ならまだしも、いくらなんでも土地0枚の手札はキープしません。
Case7
キープします。《キナン》や《エムリー》のようにコンボの核となるカードはないものの、《ラノワールのエルフ》や《精神石》からの《タミヨウ》は十分なプレッシャーになります。《タミヨウ》はその忠誠度能力でコンボパーツを探せるだけでなく、[+1]能力で《ウーロ》を落とすこともあるため、それ単体でプランになります。
サイドボーディング&マッチアップガイド
本項ではサイドボーディング&マッチアップガイドについて解説します。基本的にリスト公開を前提としていますので、ラダーなどのリスト非公開制で参考にする場合は相手のプレイしたカードから判断し変更を加えてください。
スゥルタイミッドレンジ
vs. スゥルタイミッドレンジ
(《虚空の力線》が入っていた場合は、《モックス・アンバー》2枚を抜き、《萎れ》を2枚入れてください)
メイン戦:微有利
《成長のらせん》からの《世界を揺るがす者、ニッサ》や《ハイドロイド混成体》、《サメ台風》や《ウーロ》といった遅めの押しつけはあまり関係なく、《思考囲い》や《取り除き》、《物語の終わり》のような妨害をどの程度引かれるかの勝負になります。
そのため、妨害の薄いメイン戦はサイド後に比べてやりやすく、微有利な認識です。メイン戦は《絶滅の契機》や《肉儀場の叫び》といった全体除去をあまり気にせずに《眷者の神童、キナン》や《湖に潜む者、エムリー》は積極的に並べ、脅威の連打を意識します。
サイド後:五分
《成長のらせん》《ハイドロイド混成体》《サメ台風》のような影響力の低いカードが、《否認》《無情な行動》《漁る軟泥》といったクリティカルなカードに差し替えられるため、メイン戦に比べると厳しい戦いになります。
相手はコンボを阻害できないような手札をキープするこはないため、序盤からコンボが決まることはほとんどありません。手札破壊や除去、打ち消しなどで序盤から多くのカードがトレードされるため、トレード後に浮きやすい《パラドックス装置》はすべてサイドアウトし、サイドイン次第では《モックス・アンバー》も減らします。
コンボを狙いつつも、相手の妨害次第では《カーン》からの《スカイソブリン》や《王神の贈り物》を使った盤面制圧に切り替えます。ゲームの推移に注視しつつ、いま自分がどのプランに向かっているのか/どこで見切りをつけるかを臨機応変に判断してください。
ゴブリン
vs. ゴブリン
(《虚空の力線》が入っていた場合は、《タミヨウ》と《ウーロ》を追加で1枚づつ抜き、《萎れ》を2枚入れてください)
メイン戦:微有利
先手では明確に有利、後手は相手次第で総じて五分~微有利という印象です。速度勝負にはなるものの、ゴブリン側にたいした除去が入っていないことが多いため、《キナン》のマナ加速や《エムリー》+《パラドックス装置》のコンボをほぼ妨害されず、ほかの相手に比べると3~4キルは比較的決まりやすいです。
逆にゴブリン側はビートダウンでライフを詰めつつ《上流階級のゴブリン、マクサス》での致死量の捲りが絶対の条件なので、パラドックスコンボ側に比べると条件が厳しい点も有利な要素です。
サイド後:微有利
サイド後に追加される脅威の中でもっとも厳しいのが《ゴブリンの損壊名手》ですが、枚数は少ないことが多く、《ゴブリンの女看守》で探される分には見てからの対応も可能です。《削剥》のような除去はこちらの脅威に対処するために自らの展開をパスしており、あまり効果的ではないので気にしなくてよいです。
グルールアグロ
vs. グルールアグロ
(《墓掘りの檻》が入っていた場合は、《ウーロ》を2枚抜き、《萎れ》を2枚入れます)
メイン戦:微不利
先手で五分、後手で不利なので総じて微不利という印象です。ゲームの主導権を握った側がそのまま押し切る展開が多く、パラドックスコンボ側が序盤から《キナン》《エムリー》《ウーロ》で押し切るか、グルールアグロ側が《炎樹族の使者》を絡めた大量展開で削り切るかの戦いになりやすいです。なので、負けた側は「どうすればよかったのか…」という気持ちに陥りやすいですが、そういうものだと割り切ったほうがよいです。
サイド後:微不利
相性は特に変わりません。序盤からクリーチャーを展開される関係上、出すタイミングのない《タミヨウ》はサイドアウト候補です。《墓掘りの檻》が入ってくる場合がありますが、その場合は代わりに《集合した中隊》が抜けるので、《墓掘りの檻》分のリソース損を突いた《スカイソブリン》による制圧が有効です。
ジャンド/ラクドスサクリファイス
vs. ジャンド/ラクドスサクリファイス
(《虚空の力線》が入っている場合は、《パラドックス装置》と《タミヨウ》を1枚づつ抜き、《萎れ》を2枚入れます)
メイン戦:微不利
《初子さらい》《戦慄衆の解体者》《忘れられた神々の僧侶》《波乱の悪魔》などの戦場に触るカードが多く、これらを重ねて引かれると手も足も出ません。とはいえ、コンボ自体は戦闘を介さないことから《魔女の使い魔》+《魔女のかまど》の組み合わせや《真夜中の死神》《悲哀の徘徊者》はまったく苦にならないため、相手側の展開によってはさほど苦労せずに勝てるパターンもあります。
《戦慄衆の解体者》《忘れられた神々の僧侶》に対しては《エムリー》+《上天の呪文爆弾》のループで返せるため、不利ながらも意外となんとかなる印象です。
サイド後:微不利
相性はたいして変わりません。やることも変わりません。《ウーロ》は《初子さらい》によって奪われるリスクが大きいため、減らしておいたほうが無難です。よく《再利用の賢者》《削剥》がサイドインされますが、マナを使って展開を放棄しながら対象に取るカードはおおむね0~2マナなので、ほとんど損をしていません。《上天の呪文爆弾》や《精神石》はスタックで回避できるパターンもあるので、むしろプレイされたらラッキー程度に考えてよいです。
ラクドスアルカニスト
vs. ラクドスアルカニスト
(《虚空の力線》が入っていた場合は、追加で《ウーロ》1枚と《モックス・アンバー》を抜き、《萎れ》を2枚入れます)
メイン戦:微有利
ラクドスアルカニストはシナジーの強固なデッキで、《思考囲い》《戦慄衆の秘儀術師》といった妨害のキーとなるカードを中心に引かれると簡単に負けますが、それ以外のパターン(《若き紅蓮術士》の絡んだ面展開や《死の飢えのタイタン、クロクサ》+《村の儀式》によるリソース勝負)をあまり苦にしないため、総じて微有利という認識です。
動きはほとんどが墓地依存なため、《トーモッドの墓所》を《エムリー》や《カーン》で使いまわすことを意識して立ち回ります。コンボ勝ち/殴り勝ちのどちらも有り得るので、どちらに向かうのかは臨機応変に判断してください。
サイド後:微有利
サイド後も相性や立ち回りに変化はないですが、リソースの削り合いがより顕著になるので、除去や手札破壊の後に浮きやすい《パラドックス装置》はサイドアウトします。
オルゾフオーラ
vs. オルゾフオーラ
(《墓掘りの檻》が入っていた場合は、追加で《タミヨウ》を2枚抜き、《萎れ》を2枚入れます)
メイン戦:微有利
クリーチャー+エンチャントを用いた戦略の都合上、《上天の呪文爆弾》による妨害が有効で、《エムリー》との組み合わせで半永久的に耐えられます。《上天の呪文爆弾》は無色でプロテクションを貫通するため、《命の恵みのアルセイド》や《セジーリの防護》を無視できる点もポイントです。
サイド後:五分
《思考囲い》《ヘリオッドの神罰》《ぬかるみの捕縛》といった手札破壊や除去が追加されて、《エムリー》《キナン》が定着しづらくなるため、メイン戦に比べると厳しい戦いになります。特に《ぬかるみの捕縛》は《夢の巣のルールス》で使いまわされると一切クリーチャーが定着しなくなるため、すばやいゲームの決着が求められます。
とはいえ、こちら妨害しつつクリーチャーを並べつつオーラも引きつつ…といった動きは非常に要求が高く、それらをマリガンで探すとなるとこちらの脅威の連打に対応できなくなるため、あっさりコンボが決まって終わる展開も多いです。
アゾリウスコントロール
vs. アゾリウスコントロール
メイン戦:微有利
メインから《墓掘りの檻》が採用されていることが多いですが、それ込みでも有利に立ち回れます。意外に思われるかもしれませんが、序盤の《ラノワールのエルフ》《精神石》《モックス・アンバー》《キナン》で行動回数に差がつくので、打ち消しの上から脅威を通しやすいのです。《カーン》か《タミヨウ》が通れば《墓掘りの檻》の上からでも十分戦えます。
サイド後:微有利
サイド後の追加されるカードはメインボードのカードと似たような除去や打ち消し、もしくは《墓掘りの檻》が追加されるのみで、大筋は変わりません。最速でコンボに向かうことはほとんどないため《パラドックス装置》はサイドアウトし、重なったときにリスクになる《モックス・アンバー》も減らします。
パラドックスコンボ
サイドボーディングしません。
メイン戦:茶番
先手が勝ちます。駆け引きはほとんどありません。特に《カーン》のインパクトは凄まじく、出された側は《モックス・アンバー》《精神石》《彩色の宝球》《上天の呪文爆弾》が止まり、まともにカードもプレイできません。すばやく右上の設定ボタンから投了を選択し、次のゲームでよい初手が来るように祈りを捧げます。
サイド後:茶番
結局は《カーン》を巡るゲームなので、《霊気の疾風》や《萎れ》は入れないほうがよいです。仮に《否認》や《物語の終わり》があったとしても、2マナを構えたターンを別の行動に当てられるだけなので、同様に入れないほうがいいでしょう。《焦熱の竜火》や《ゴブリンのクレーター掘り》などの後出し対処も同様で、結局は対処するターンにほかの行動ができないのでイマイチです。
唯一、《儀礼的拒否》のようなピンポイント対策だけは効果があるので、環境にパラドックスコンボが蔓延るようなら考慮の余地があります。現状、その未来はなさそうですが……
TIPS
本項では各カードのTIPSを紹介します。
《モックス・アンバー》関連
0マナだからといって適当に設置するのではなく、必ず意志を持って設置する・しないを判断してください。必要になるまで設置しないのがセオリーですが、たとえば初手に《エムリー》×2枚と《モックス・アンバー》があり、《思考囲い》をプレイされた際に《モックス・アンバー》が抜かれそうな場合は、先に設置しておくことで手札破壊から逃がすパターンは考えられます。ほかにも《スレイベンの守護者、サリア》や《刻み角》などの後で唱えると不自由になる場合も、先に設置しておいたほうがよいです。
戦場に伝説のクリーチャーがいない場合でも、《ウーロ》の死亡誘発に対応してマナを出すことができます。なので、《ウーロ》を唱える際にも先に設置しておいたほうがよいです。ちなみにMTGアリーナでは、フルコントロールモードでないと《ウーロ》の死亡時に優先権が来ない=マナを出すタイミングがないので、注意が必要です。
《彩色の宝球》関連
マナ能力なので、唱えるに際してこのカードを生け贄に捧げてマナを出すことができます。詳細は《エムリー》の項で解説します。
《眷者の神童、キナン》関連
《ジェガンサ》の起動型能力でマナを出す際にも追加で1マナが出ます。このとき発生する1マナは、好きな色マナが選べるうえに《ジェガンサ》の制約(色マナにしか使えない)に掛かりません。
《湖に潜む者、エムリー》関連
呪文を唱える際、マナコストの決定→マナの支払いの順番になるので、《彩色の宝球》が置いてあるときにはマナコストが軽減された状態で唱えながらその支払いは《彩色の宝球》を使うことができます。
例として、戦場にアンタップ状態の《精神石》と《彩色の宝球》、手札に《エムリー》がある状況を想定します。
見かけは青マナがありませんが、《彩色の宝球》で《精神石》の無色マナをフィルターできる状況です。このとき、アーティファクトが2つ並んでいるため《エムリー》のマナコストは1です。なので、1マナで《エムリー》を唱える→マナの支払いは《彩色の宝球》を利用して色マナをフィルターする、ということが可能なのです。先に《彩色の宝球》を砕いて青マナを確保する必要はありません。
ちなみにMTGアリーナでは、上記の状況であれば《エムリー》を唱えようとするとオートタップで勝手に支払いしてくれるので問題ないですが、ほかに土地や色マナの出る《モックス・アンバー》がアンタップで存在すると、そちらを優先してマナが支払われるので注意が必要です。
《大いなる創造者、カーン》関連
[-2]の忠誠度能力はサイドボードからだけでなく、追放されたアーティファクトも手札に加えることができます。《トーモッドの墓所》や《スカイソブリン》はマッチアップによってはコンボを狙う以上に大切なカードになるので、これらを使いまわす機会は多いです。能動的に追放する方法は《ウーロ》がベストですが、《トーモッドの墓所》で自分を対象に取ることでも可能です。ただし、追放してしまうと《エムリー》の能力で墓地からは拾えなくなるので注意が必要です。
[+1]の忠誠度能力は相手のアーティファクトを対象に取ることができます。《モックス・アンバー》や宝物・トークンなどのマナコストを持たないものはそのまま破壊できますし、3マナ以下のアーティファクトであればクリーチャー化させる→《スカイソブリン》でダメージを与えて破壊することもできます。また、機体を対象に取ると無人(?)で動かすこともできます。その際のステータスは《カーン》の能力が優先されるため、たとえば《スカイソブリン》であれば5/5になります。
《パラドックス装置》関連
手札に十分な呪文があれば《ヘリオッドの神罰》を強引に突破することが可能です。対オルゾフオーラでは頻発するので、常に意識してください。
おまけ:『カルドハイム』によるアップデート
最後に『カルドハイム』からパラドックスコンボでも使えそうなカードをいくつかピックアップしてみました。
《樹皮路の小道》/《潮水路の小道》
待望の青緑の両面土地です。パラドックスコンボは2色でありながらも色カウントがシビアなため、このカードの登場を待ち望んでいました。青カウントを減らさずに初手に《ラノワールのエルフ》をプレイできる確率が上がるため、純粋な強化になります。
《樹の神、エシカ》/《虹色の橋》
伝説のマナクリーチャーなので、《パラドックス装置》や《モックス・アンバー》との噛み合いがよいです。《キナン》とは特に相性がよく、《キナン》をマナクリーチャー化させて自身の能力で2マナ発生させたり、《樹の神、エシカ》自身が非人間なので《キナン》の能力で呼ぶことができます。
《エシカの戦車》
《カーン》用のサイドボードで活躍が期待できるアーティファクトです。設置するだけで壁が2体並ぶので、《カーン》を守りやすくなります。特に考えずに雑に強そうです。取りあえず試してみたいです。
4 《島》
4 《繁殖池》
4 《樹皮路の小道》
4 《植物の聖域》
-土地 (22)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《眷者の神童、キナン》
4 《湖に潜む者、エムリー》
2 《樹の神、エシカ》
2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (16)-
2 《萎れ》
1 《祖先の像》
1 《隕石ゴーレム》
1 《トーモッドの墓所》
1 《上天の呪文爆弾》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《聖域の門》
1 《霊気貯蔵器》
1 《エシカの戦車》
1 《パラドックス装置》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《王神の贈り物》
-サイドボード (15)-
おわりに
パラドックスコンボのデッキガイドは以上になります。
パラドックスコンボは中毒性のあるデッキで、いざ使い始めると無限に時間を取られてしまいます。ソースは私です。そんな魅力的(?)なパラドックスコンボの良さが、本記事を読んでいただいた方に少しでも伝わったのなら幸いです。
次は『カルドハイム』環境でお会いしましょう!
増田 勝仁