はじめに
みなさんこんにちは。
いよいよ発売となった『カルドハイム』ですが、オンライン上では一足先に使用可能となり、構築フォーマットは早くも賑わいをみせています。スタンダードも例にもれず、有力なアーキタイプが見つかっています。
早速、『カルドハイム』環境のスタンダードをみていきましょう!
環境初期を定義するカード
まずは『カルドハイム』後の環境初期を定義している3枚のカードをご紹介します。《スカルドの決戦》と《ドゥームスカール》、そして《黄金架のドラゴン》です。
《スカルドの決戦》はボロスカラーの《僻境への脱出》であり、コストも4マナとよりアグロにフィットしたデザインとなっています。追加のセットランドはできない代わりに戦場のクリーチャーを強化することができるため、ダメ押しにもリカバリーにも使用できます。このカードをマナカーブの頂点に置きデッキ全体を軽く構築することで、もたらされるアドバンテージを最大限に活かしたいところですね。
では、コントロール側はどうでしょうか。こちらが手に入れたのは「予顕」により3マナのリセット呪文となった《ドゥームスカール》です。あの《神の怒り》が3マナでキャストできるとなれば、相手がどんなブン回りであっても致命傷を負う前にボードを掌握できるはず。「予顕」されたが最後、頭から消えることはないでしょう。
また、この「予顕」が曲者であり、裏向きでゲーム外へと追放するのでキャストされるまで何のカードかはわかりません。これによりアグロ側は《ドゥームスカール》を読んでダメージソースを温存すべきか、別のカードと考え押し切るために展開するべきか、出口のない二択を迫られることになるのです。特に青は《襲来の予測》《多元宇宙の警告》といった強力な「予顕」カードがあり、併せて使用される機会が増えてきそうです。
最後は脈々と続く赤の伝統である5マナドラゴン、《黄金架のドラゴン》です。過去には《雷口のヘルカイト》や《栄光をもたらすもの》といった突破力の高いドラゴンがデザインされてきましたので、それらに比べると《黄金架のドラゴン》は控えめに感じるかもしれません。
《黄金架のドラゴン》は相手のブロッカーを除去する効果はないものの、攻撃時や呪文の対象となるたびに宝物・トークンを生成し、自身が戦場にいる限り同トークンから2マナ生み出すことができます。これによりひとたび戦場に出ようものなら土地がタップアウトだとしても除去することが難しく、2マナ以下の打ち消しや保護呪文と組み合わせることで維持し続けることが可能なのです。これまでのドラゴンと違い除去に強くマナ加速にもなるため、インスタントの多いカラーや高コスト呪文を採用したデッキと相性が良さそうですね。
では、これから3枚のカードを中核に据えたデッキをみていくことにしましょう!
《スカルドの決戦》
ボロスアグロ
4 《山》
4 《針縁の小道》
4 《凱旋の神殿》
-土地 (20)- 4 《無私の救助犬》
4 《堕ちたる者の案内者》
4 《群れの番人》
4 《歴戦の神聖刃》
4 《義賊》
4 《砕骨の巨人》
2 《スカイクレイブの亡霊》
2 《黄金架のドラゴン》
-クリーチャー (28)-
まず紹介するのはアグロデッキの名手sandydogmtgが使用したボロスアグロです。白のクリーチャーをベースにしつつ、両方の色から優秀なクリーチャーを集めています。マナカーブに沿ってクリーチャーを展開していき、厄介なクリーチャーは《砕骨の巨人》と《スカイクレイブの亡霊》で除去し、2種類の装備品《スカイクレイブの大鎚》と《エンバレスの宝剣》による押し切りがあります。ここに《スカルドの決戦》が加わったこと明確なアドバンテージ源が確保され、高い攻撃力を有しながら柔軟なデッキに仕上がっています。
《堕ちたる者の案内者》は新たな1マナ域でありながら、同時に2ターン目の行動をも確保してくれるマナカーブの調整役です。黒の《囁く兵団》に近いクリーチャーですが、ほかの1マナ域と比べパワーが2と高く、アグロデッキの序盤を任せるに最適なクリーチャーとなっています。
白や赤の軽量アグロデッキの常ですが、クリーチャーのほとんどが2マナ以下となっており、中盤以降手札は枯渇気味となります。「出来事」「誇示」、装備品とマナの使い道が複数あるため土地の引き過ぎ(以下、マナフラッド)には強い構築ですが、さらに《スカルドの決戦》を採用したことでアドバンテージ源のみならず、追加ダメージソースまで獲得しています。
ここで注目したいのは《群れの番人》です。パワー3と2マナクリーチャーとしては十分な打点を誇り、白系のクリーチャーデッキでは以前から《スカイクレイブの亡霊》とのコンボ要因となっていました。前記のコンボに加えて、このデッキでは《スカルドの決戦》を使い回せるのです。これにより短期決戦に特化しただけアグロでありながら、リソース勝負でもコントロールやミッドレンジと引けを取らないアーキタイプに仕上がっています。
ナヤアドベンチャー
2 《山》
1 《平地》
4 《寓話の小道》
4 《枝重なる小道》
4 《岩山被りの小道》
3 《針縁の小道》
-土地 (22)- 4 《エッジウォールの亭主》
2 《巨人落とし》
4 《山火事の精霊》
2 《エンバレスの盾割り》
2 《漁る軟泥》
4 《砕骨の巨人》
4 《カザンドゥのマンモス》
4 《恋煩いの野獣》
-クリーチャー (26)-
前環境を代表するアグロデッキのアドバンテージエンジンであった《エッジウォールの亭主》《グレートヘンジ》。それは新環境でも変わりはないようでグルールアドベンチャーの姿がちらほらとみえますが、ここで紹介するのはアドベンチャーエンジンに《スカルドの決戦》までプラスしたナヤアドベンチャーです。
デッキのベースはグルールアドベンチャーであり、白をタッチしたことで新たな「出来事」クリーチャー《巨人落とし》を採用しています。緑に強いカードですが、呪文だけでなくクリーチャー本体も優秀であり、《エッジウォールの亭主》のドロー要因だけで終わらず、タッパーとして攻防に活躍してくれるのです。呪文/土地の両面カード(以下、スペルランド)まで含めるとデッキの半分近くが土地となっているので、マナの使い道には困りません。
グルールアドベンチャーをベースにしたデッキには《エッジウォールの亭主》と《グレートヘンジ》の二大アドバンテージ源が採用されていますが、《スカルドの決戦》が優れているのは単体で機能する点です。ゲーム中盤のリソースが枯渇しきっていない状況ではどのカードにも差異はありませんが、トップデッキを加味した消耗戦となれば話は変わってきます。
《エッジウォールの亭主》と《グレートヘンジ》はほかにクリーチャーが必要であり、さらに付け加えるならば《グレートヘンジ》に至ってはキャストするにも多少の制限があります。対して《スカルドの決戦》はキャストした瞬間からアドバンテージを生み出してくれるので、単体で盤面構築が可能となっているのです。
先ほどのボロスアグロと比べると3マナ域が増えてマナカーブが高めのため、一見すると《スカルドの決戦》で追放されたカードを使いきれないと思われるかもしれません。しかし、ボロスよりも土地が伸びるデッキであり、クリーチャーよりもコストの軽い「出来事」として使用する選択肢もあるので無駄になりにくくなっています。
《スカルドの決戦》が加わったことで、さらに攻め手が増えたアドベンチャーデッキ。メタゲームに応じてカード選択を変える柔軟さも持ち合わせているため、今後のデッキ構成にも注目です。
《ドゥームスカール》
白単コントロール
2 《アーデンベイル城》
3 《這い回るやせ地》
3 《光輝の泉》
2 《不詳の安息地》
-土地 (20)- 4 《スカイクレイブの亡霊》
4 《真面目な身代わり》
1 《軍団の天使》
-クリーチャー (9)-
2 《シュタルンハイムの解放》
4 《ドゥームスカール》
4 《エメリアの呼び声》
4 《オンドゥの転置》
4 《メレティス誕生》
3 《エルズペス、死に打ち勝つ》
3 《精神迷わせの秘本》
2 《スカイクレイブの秘宝》
3 《精霊龍、ウギン》
-呪文 (31)-
2 《巨人落とし》
2 《悪斬の天使》
2 《ヘリオッドの介入》
2 《太陽の神のお告げ》
2 《魂標ランタン》
1 《エルズペス、死に打ち勝つ》
1 《精霊龍、ウギン》
-サイドボード (15)-
《ドゥームスカール》が公開されて以来、世のコントロール使いはこのカードを使えることを指折り数えていたことでしょう。Michael Rooks選手はボードコントロールに特化した白単色のコントロールを構築して、Jaffer’s Cheese Emporium Openを制しました。
《真面目な身代わり》と《スカイクレイブの秘宝》でマナ加速しながら、ボードをクリアにし、《精霊龍、ウギン》を目指していきます。アグロ~ミッドレンジを狙った単体/全体除去に溢れています。また、単色であるがゆえに土地周りの自由度が高く、ダメージソースとなるカードが7枚採用されており、ソーサリータイミングでしか動けないデッキには強烈なプレッシャーとなりそうです。
白を代表する除去呪文の嵐。クリーチャーのみならずパーマネント対策も厚く取られているため、隙はありません。唯一の弱点はインスタントでの干渉手段がないため、《エンバレスの宝剣》や速攻クリーチャーによる押し切りです。赤系統のデッキと対戦する際は、リセットタイミングをシビアに見極める必要がありそうですね。
白ベースのコントロールといえばアドバンテージ獲得手段が乏しいのが常ですが、万能カード《精神迷わせの秘本》に加え、《栄光の探究》が採用されています。このカード単体はアドバンテージを生み出しませんが、サーチ先には《精霊龍、ウギン》や《エルズペス、死に打ち勝つ》が控えています。土地が必要なときは《冠雪の平地》や《不詳の安息地》をサーチできるので、見た目以上に器用なカードとなっています。
フィニッシャーには《シュタルンハイムの解放》が採用されています。使いやすくなった《エメリアの呼び声》であり、「予顕」していれば複数の天使・トークンを届けてくれます。白単ゆえに手札を一気に増やすことは難しいものの、《シュタルンハイムの解放》に加えて《軍団の天使》や《エメリアの呼び声》など1枚で複数のクリーチャーを展開できるカードを駆使してリソース勝負を仕掛けます。ボードコントロール後はこれらのカードを駆使してダメージソースを用意し、相手の対処手段が間に合わないうち押し切ってしまうのです。
前環境には《空を放浪するもの、ヨーリオン》が束ねるアゾリウス/ディミーア、そしてスタックスと多色のコントロールが多く存在していました。ですが環境初期だからこそ干渉できる領域の広い多色ではなく、ボードコントロールに主眼を置いた白単こそが最適なコントロールデッキとなったようです。
《黄金架のドラゴン》
イゼットフラッシュ
3 《冠雪の山》
4 《寓話の小道》
3 《移り変わるフィヨルド》
4 《河川滑りの小道》
3 《不詳の安息地》
-土地 (24)- 4 《砕骨の巨人》
4 《厚かましい借り手》
4 《黄金架のドラゴン》
-クリーチャー (12)-
《黄金架のドラゴン》を得たことでこれまで以上にテンポ面での優位を得たのがイゼットフラッシュです。以前は《スプライトのドラゴン》《謎変化》で序盤からダメージを稼いで押し切るデッキでしたが、マナカーブを後ろにズラしてやや重めの構成となりました。《スプライトのドラゴン》と違い、いつ引いてもサイズが担保されたクリーチャーとなっています。
《黄金架のドラゴン》は瞬速持ちではありませんが、呪文の対象になるたびに宝物・トークンを生成し、自身が戦場にいる限り同トークンから2マナ生み出すことができます。これにより2マナ以下の呪文で守ることが可能であり、瞬速と同様に隙なく戦えます。《黄金架のドラゴン》を最大限に活かすべく、以前よりも打ち消しやドロー呪文などコントロール要素が増えているのです。
このデッキの基本は2マナの呪文でゲームスピードをコントロールし、隙をみてクロックを用意することにあります。2マナには限定的な打ち消し呪文ばかりですが、《襲来の予測》は対象に制限がありません。コストは3マナとなりますが、「予顕」によりほかの打ち消し呪文と同じ2マナでキャスト可能となっています。
ゲームレンジが後ろにズレたことで、アドバンテージ獲得手段が採用されています。《多元宇宙の警告》は単なるドローソースではなく、「予顕」することで《襲来の予測》と誤認させることができます。もちろんその効果は《天才の片鱗》と同じ非常に強力なカードであり、隙なく手札を補充してくれます。
条件付きながら1マナ3点という破格のテンポ除去を得たことで、後手でもゲームコントロールしやすくなりました。特に《霜噛み》と2マナの打ち消し呪文の組み合わせで相手の2ターン分の動きを捌くことができ、主導権を握る助けとなります。タフネス3のラインには《空飛ぶ思考盗み》《砕骨の巨人》《鍛冶で鍛えられしアナックス》《軍団の天使》などがあり、大きくテンポをとることが可能です。
《霜噛み》の効果を最大限発揮するためにマナベースを氷雪土地に寄せる必要がありますが、2色の氷雪土地である《移り変わるフィヨルド》を得たことで条件を満たしやすくなっています。《不詳の安息地》は氷雪土地でありながらダメージソースとしても機能し、このデッキでは最後のダメ押しとなるカードです。
ティムールランプ
イゼットフラッシュでは《黄金架のドラゴン》のクロックスピードと防御能力を活かした構築となっていましたが、マナ加速に着目したデッキも誕生していました。《発生の根本原理》と《精霊龍、ウギン》を目指すティムールランプです。
《獲物貫き、オボシュ》を採用したミッドレンジタイプの「オボシュランプ」と違い、純正なティムールランプはマナを伸ばすことを主眼に置いたためボード展開が遅く、少量の除去や打ち消し呪文で守りながら《発生の根本原理》と《精霊龍、ウギン》の高速展開から巻き返しを狙ったデッキとなっていました。
このデッキではジャンプアップの中間地点に《黄金架のドラゴン》を配置することで、盤面へアクションを起こしながらマナを伸ばすことに成功しています。攻防の要となり、相手の除去の対象となれば宝物・トークンが生成され、次のセットランドと併せてちょうど《発生の根本原理》がキャスト可能となるのです。
《ジュワー島の撹乱》《火の予言》《乱動への突入》と2マナ以下の呪文が複数あるため、場合によっては《黄金架のドラゴン》を守ったり、ボードへ干渉することも可能です。
サイドボードにはコントロールに強い《星界の大蛇、コーマ》が採用されています。打ち消されず、一度海蛇・トークンが生成され始めると除去することが難しいクリーチャーとなっています。《エルズペス、死に打ち勝つ》を苦手としていますが、起動型能力により土地をタップすることができるので、相手の白マナが少ない場合はアップキープに縛っていきましょう。
直近の大会結果
簡易的ですが、オンライン上でリリースされた1月29日から2月2日までの大会結果(最低参加人数16人以上、スイスドロー4回戦以上)をまとめてみました。
新デッキでは《スカルドの決戦》を使用したアグロデッキとイゼットフラッシュを筆頭に、白系コントロール(スタックス含む)、ランプ系と続きます。ディミーアローグや緑単フード、グルールアドベンチャーといった前環境に続いて活躍しているデッキもあるようです。
おわりに
今回は『カルドハイム』リリース初週なので、新たに誕生したアーキタイプや構造が変化したデッキを中心にご紹介してきました。MTGアリーナのモバイル版がリリースされたことで、これまで以上にスタンダード環境は目まぐるしく変化していきそうです。
今週末には$5K Kaldheim Championship Qualifierが控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。
なお、2021年2月5日(金)より最新エキスパンション『カルドハイム』が発売となっております!下記のリンクより『カルドハイム』の商品ページへ繋がっておりますので、ぜひ、ご活用ください!!