Translated by Kohei Kido
(掲載日 2020/02/12)
はじめに
新しいセットが発売されたので今日の天気はアゾリウスコントロール日和です!
私はどんな環境であっても、とりあえずアゾリウスコントロールが最強のデッキに違いないという仮定から出発します。そして、それが間違いであることが判明するまでは信じ続けています。私が信じている処世訓でもあり、『カルドハイム』であろうともそれは揺らぐことがないのです。
『カルドハイム』では新しいアゾリウスカラーのプレインズウォーカーに加えて、アゾリウスコントロールの戦略とかみ合いそうな新能力が収録されています。「予顕」には、もはやアゾリウスコントロールと書いてあると言っていいでしょう。序盤にマナを払っておくことで、あとから試合を有利に進められるというのはロングゲームをするつもりのこのアーキタイプで歓迎すべき能力です。
「予顕」で使えそうなカードがパーマネントではないというのもあり、《空を放浪するもの、ヨーリオン》とは相性があまり良くありません。つまり今は伝統的な60枚のアゾリウスコントロールに立ち返る時なのかもしれませんね。
サンプルデッキリスト
4 《平地》
4 《連門の小道》
4 《啓蒙の神殿》
2 《アーデンベイル城》
2 《ヴァントレス城》
1 《廃墟の地》
-土地 (23)- 4 《スカイクレイブの亡霊》
2 《厚かましい借り手》
-クリーチャー (6)-
1 《ジュワー島の撹乱》
4 《襲来の予測》
4 《多元宇宙の警告》
4 《ドゥームスカール》
1 《エメリアの呼び声》
2 《メレティス誕生》
3 《エルズペス、死に打ち勝つ》
3 《サメ台風》
4 《ガラスの棺》
4 《ニコ・アリス》
-呪文 (31)-
『カルドハイム』の新カード
《ニコ・アリス》
《ニコ・アリス》は一風変わったプレインズウォーカーです。戦場に出たときに誘発する能力を持っていますが、それがスタックに乗っているタイミングで《取り除き》を打たれると忠誠度能力が使えずに悲しい気持ちになります。
《スフィンクスの啓示》や《老いたる者、ガドウィック》のように直接X枚ドローできる呪文と比べると破片トークンがX個得られるというのはおいしい話ではありません。でも「キッカー」能力持ちの3マナプレインズウォーカーだと思えばいいのかもしれないですね。3マナでも十分強いなら「キッカー」はちょっとしたおまけとして存在しているだけでうれしいはずです。
《ニコ・アリス》を3ターン目に出してうれしい場面は多いと考えています。あとで2マナ使えるタイミングさえあれば必ず1枚ドローできます。ときにはクリーチャーも除去できるでしょう。プラスの忠誠度能力で《厚かましい借り手》や《スカイクレイブの亡霊》を手札に戻せるのもいいですね。
《ドゥームスカール》
《ドゥームスカール》は歴代の《神の怒り》系カードの中でも強い部類です。3ターン目に《神の怒り》を打てるというのはかなり評価できます。4ターン目に全体除去をしても間に合っていないという試合はいくらでもあるのですから。序盤に「予顕」しておけばあとで全体除去をしたターンに他の呪文も唱えられます。たとえば5~6ターン目に全体除去をして打ち消し呪文を構える、なんて素敵ですね。
《多元宇宙の警告》
《多元宇宙の警告》はいい感じのドロー呪文ですね。4マナで《天才の片鱗》と同じ効果を発揮できます。「エネルギーカウンター」に用がなくてもデッキに入れられていたカードです。
でも《多元宇宙の警告》で本当に気に入っているのは《ドゥームスカール》との相乗効果です。2ターン目にカードを「予顕」すると対戦相手はそれが何なのか悩むことになります。展開するクリーチャーの数を増やすと《ドゥームスカール》を受けるかもしれません。でもクリーチャーを展開しないとクロックが遅くなって《多元宇宙の警告》でカードを引く猶予を与えてしまうかもしれないのです。
《襲来の予測》
《取り消し》系のカードの中ではそれなりに強い方だと言えそうです。とはいえ、これまで解説してきた3種類の「予顕」カードの中ではもっとも評価の低いカードです。ほとんどの場合ふつうに3マナで唱えそうですからね。
たとえば《中和》よりも強いのかは疑問符が付きます。でも奇襲性の高さは評価できますね。「予顕」カードが多く入っていれば入っているほど、対戦相手にとっては予想が難しくなります。いい感じのアゾリウスコントロールには《取り消し》系の呪文は入っているものです。どうせ入れるならこれを入れてもいいはずです。
《シュタルンハイムの解放》
《シュタルンハイムの解放》はあまりいい「予顕」カードには見えませんね。天使トークンを生成したかったとしても《シュタルンハイムの解放》を使うくらいなら《エメリアの呼び声》の枚数を増やすでしょう。どちらも2つの使い方ができるカードですが、天使と土地の2択であった方が天使と天使の2択よりも柔軟に使えます。さらに言えば天使が2体欲しいならどちらも7マナですね。
《アールンドの天啓》
《シュタルンハイムの解放》よりは《アールンドの天啓》に可能性を感じます。追加ターンを得られるだけのマナがあれば、追加ターンを有効活用できなくてもとりあえず2体の鳥トークンは得られます。でもデッキに重いカードを入れるなら、使えずに敗北する可能性が低くなるので《サメ台風》のような柔軟性のあるカードを採用したいですね。
《イストフェルの門》
《天才の記念像》もスタンダードで採用されたことがあるカードでしたが、アゾリウスのデッキで使うなら《イストフェルの門》は純粋にそれよりも強いカードです。
ただ問題は現在使える他の「マナ能力以外の能力を持つ土地」が当時よりも強くそれと競合していることです。白マナを出すタップインランドという意味では《アーデンベイル城》と《エメリアの呼び声》と競合しています。どちらもアンタップインできる上に強力な能力を持っています。《メレティス誕生》をデッキに入れるなら基本土地の《平地》もデッキに入れたいので、《イストフェルの門》を入れる枠が残っていないように思えます。
《鴉の警告》
これは私が担当したプレビューカードでした!《鴉の警告》も多少の可能性があるイカしたカードです。《ニコ・アリス》のように変わった能力が組み合わされていて、それらを合算したときに構築級の強さを持っているとは言い切れないかもしれません。
全ての能力を有効活用できれば悪くはないかもしれませんが、それでもすごく強いということはないでしょう。第2章でカードを引けなかったら悲しい気持ちになるでしょうね。《空を放浪するもの、ヨーリオン》でブリンクできるという上振れは存在していますが、ブリンクするカードとして入れるなら戦場に残り続ける《太陽の神のお告げ》よりも強いと言えるのかは疑わしいと言えるでしょう。
《彫像の伝承》
少し強い《ジェイスの創意》というのは好きなコンセプトです。ただ構築級であることはほとんどないジャンルのカードでもあります。近頃は5マナを使うなら相当な仕事をしてくれないといけません。
余ったマナをうまく使ってくれる《多元宇宙の警告》や《サメ台風》のようなカードよりも優先して使うカードだとは思えません。《精神迷わせの秘本》ですらマナがたくさん余っていない状況でも多少仕事をしてくれるので《彫像の伝承》よりは強いドロースペルだと言えそうです。
《万物の姿、オルヴァール》
2ターン目に相手が《死の飢えのタイタン、クロクサ》を使っているならこのカードを捨てられたら素敵ですね。でもアゾリウスコントロールデッキでふつうに唱えることを考えるとこのカードで面白いことをするのは困難です。
おわりに
話をまとめるとアゾリウスコントロールが使えるカードにはけっこう強いものが揃っています。いいアゾリウスコントロールを組むために必要な材料は揃っていると言っていいでしょう。
《ガラスの棺》《スカイクレイブの亡霊》《厚かましい借り手》のように強い除去もあります。《多元宇宙の警告》もいいドロースペルに見えますね。
《サメ台風》《エルズペス、死に打ち勝つ》《ニコ・アリス》のようにゲームを自分の側に引き寄せられる強力な脅威も存在しています。
今後のメタゲームに向けてそれらを正しいバランスで入れたデッキを組めるかどうかというところが腕の見せ所ですね!
グレゴリー・オレンジ (Twitter)