決勝: 宮薗 猛 (神奈川) vs. 藤井 秀和(千葉)

晴れる屋

By Atsushi Ito




 ヴィンテージは、マジックの歴史とともにあるフォーマットだ。

 1993年、マジック:ザ・ギャザリングというゲームが産声をあげた『アルファ』から、2016年の現在、『イニストラードを覆う影』に至るまで、20年以上の歴史をその身のうちに飲み込んでいる。

 その間にマジックを始めた人もいるだろう。やめてしまった人もいるだろう。だがマジックはそこにあり続けた。そしてそうである以上、マジックとともに歩んできたたくさんの人の歴史もまた、ヴィンテージとともに存在しているのだ。

 第6期ヴィンテージ神挑戦者決定戦。その決勝戦で相見えることとなった宮薗と藤井の2人も、マジックとともに歩んだ歴史を抱えている。

宮薗 「ヴィンテージは、北九州の小さなコミュニティで鍛えられました」

 そう語る宮薗は、つい1か月前にも【第6期レガシー神挑戦者決定戦】でトップ8に入賞していた。ヴィンテージで勝つための練習方法として「コミュニティを大切にする」と語る宮薗の姿からは、九州の地で得たものの大きさ、マジックをきっかけに知り合った友人たちとの強い絆がうかがえる。

 対する藤井も、このサイトに掲載されているだけでも2010年の【第2回晴れる屋×龍王戦カバレージ】の優勝や2011年の【第2回Hareruya Open Tournament】のトップ8など、レガシーの古豪としても活躍しているほか、プレイヤー以外にもジャッジとしての活動も行い、地域のMTGコミュニティを支えている。

 ともに背負うものがある。そんな2人の歴史は、ヴィンテージというフォーマットをプレイしていたからこそ交差したと言える。

 宮薗が青白赤の《僧院の導師》コントロールこと『メンター』、藤井が青緑黒の《ドルイドの誓い》コンボこと『オース』。デッキの相性では藤井が有利だが、勝負は始まってみるまで何が起こるかわからない。

 勝負に勝ち、「ヴィンテージ神」森田 侑への挑戦という新たな歴史を紡ぐのは、はたしてどちらになるのか。

 今再び、究極のフォーマットにおける決勝戦が開始した。






Game 1


 先手の藤井が《定業》から《Mox Emerald》プレイでエンドと、ヴィンテージにしては静かな立ち上がり。

 これに対し、後手ワンマリガンの宮薗はフェッチ起動→《Volcanic Island》から1ターン目にいきなり《Ancestral Recall》をプレイ!


Ancestral Recall


 《祖先の幻視》の元ネタともなった、パワー9の中でも最強との呼び声も高いこのカードにより、マリガンのアドバンテージ差を一瞬で穴埋めすることに成功した宮薗は、さらに《Mox Pearl》を置いてしっかりとディスカードを回避。そして返すターンも土地を置いてターンを終えるだけの藤井とは対照的に、早くも2ターン目に《ダク・フェイデン》を降臨させ、藤井の《Mox Emerald》を奪い去る。

 続いて藤井が引き込んだ《思案》《精神的つまづき》し、返しで3ターン目にもかかわらず到達した5マナから《僧院の導師》《ヴリンの神童、ジェイス》と展開すると、なおも《定業》すら《精神的つまづき》でカウンター。藤井の逆転の芽を、丁寧に摘み取っていく。



宮薗 猛


 一方、手札内容が芳しくない藤井は《僧院の導師》《ヴリンの神童、ジェイス》のいずれも対処することができず、やがて宮薗にターンが返ってきた。

 それは「《ヴリンの神童、ジェイス》が変身する」ということを意味する。これが決定打となった。





 宮薗は遠慮なく墓地の《Ancestral Recall》を再利用し、ヴィンテージを堪能しにいく。《ヴリンの神童、ジェイス》の能力起動と《ダク・フェイデン》の「+1」能力起動と合わせて、このターンなんと6ドロー3ディスカード

 さらに《定業》から《Time Walk》にたどり着いた宮薗は、続けて《噴出》《思案》とプレイ。抵抗できない藤井を尻目に悠々と追加ターンに入ると、《卓絶のナーセット》をプレイし、「+2」能力で《剣を鍬に》を手札に加える。

 モンク・トークンの総攻撃から《剣を鍬に》を自分のクリーチャーにプレイすると、このターン2度の果敢誘発だけでも、藤井のライフを削り切るには十分すぎた。


宮薗 1-0 藤井


藤井 《精神的つまづき》3枚か、がん刺さりしたなぁ」

 通常、『オース』は《精神的つまづき》がそこまで刺さるようなデッキではない。むしろ本来なら腐るはずの《精神的つまづき》を復旧のための《定業》《思案》に的確に打たれ、敗北に追い込まれてしまったという現状に、藤井は悪い予感が拭えないのかもしれない。

 だが過ぎた事象は過ぎた事象だ。振り切るように藤井はサイドボードに手を伸ばす。


Game 2


 互いにセットフェッチでエンド。ヴィンテージにしては恐ろしく静かな1ターン目だ。

 だが藤井がエンド前に《吸血の教示者》をプレイすると、これを宮薗がカウンターできなかったことで、ゲームは急転直下の展開を迎える。





 藤井の先手2ターン目のアクションは《Black Lotus》からの《実物提示教育》。そしてこれが通るや《全知》が設置される。宮薗も《僧院の導師》を送り出すが、もはや大勢に影響はない。

 なぜなら藤井は続けて、優先権を渡さずに《時を越えた探索》をプレイ。そしてめくった7枚には、すべての解答が眠っていた。


Time Walkドルイドの誓い


 《Time Walk》、加えて《ドルイドの誓い》

 《グリセルブランド》《引き裂かれし永劫、エムラクール》か、いずれにせよ追加ターン中に致命的なクリーチャーが降臨することが確定した宮薗は、追加ターンを待たずして、すなわち後手2ターン目のドローすらも見ることなく、カードを畳んだ。


宮薗 1-1 藤井



Game 3


 《Tundra》から《渦まく知識》で手札を整える宮薗に対し、藤井は《Tropical Island》《Mox Jet》から後手1ターン目に《ドルイドの誓い》を設置しにいく。

 これを放置してはクリーチャーが展開できない宮薗は、まずは《Mox Emerald》から《ダク・フェイデン》をプレイするが、これは藤井の《Force of Will》で阻まれる。


摩耗+損耗Mox Jetドルイドの誓い


 しかしこれによって藤井のカウンターを使わせた宮薗は、《摩耗+損耗》を「融合」でプレイ。《Mox Jet》《ドルイドの誓い》の両方を叩き割ることに成功する。

 だが、《定業》《思案》で二の矢を番いにいく藤井と、《僧院の導師》を降臨させる宮薗。藤井のコンボと宮薗のクロック、スピード勝負が始まる……と、思われた矢先。

 わずか1ターンで態勢を立て直した藤井が、《Mox Sapphire》から《実物提示教育》をプレイ!

 宮薗にカウンターはない。だがその代わり、《グリセルブランド》に合わせて2体目の《僧院の導師》を着地させる。


グリセルブランド僧院の導師僧院の導師


 藤井はここでターンを渡せば恐ろしい量のモンクトークンを生み出されてしまうと判断したか、まず7ドロー。そして《Black Lotus》を引き当てると、《突然の衰微》で2体の《僧院の導師》のうちの1体を除去しにいく。





 宮薗はスタックで《噴出》、モンクトークンを忘れ形見とする。ライフ11点の藤井はここでターンエンド。ターンが返ってくれば《グリセルブランド》による蹂躙劇が始まりそう、というところ。

 この局面で、返す宮薗がプレイしたのは《Time Walk》



藤井 秀和


藤井 「サイドボード確認します」

 ここでターンを渡せば致命的なカードを引く機会を与えてしまう。ここが勝負どころ、そう考えた藤井はスタックで《グリセルブランド》の能力で7ドロー、ライフを残り4点としながらも《赤霊破》をきっちり引き込むことに成功すると、立っていた《Mox Ruby》から《Time Walk》をカウンター。

宮薗 「……ターンエンド」

 宮薗はこれも打ち消すことができず、ついに《グリセルブランド》の攻撃をその身に受けてしまう。

 そして第2メイン。藤井が《Demonic Tutor》をプレイすると、続けて公開されたのは当然《Time Walk》!追加ターンの攻撃で、宮薗のライフは4点。対し藤井が18点まで回復する。

 だが藤井も決め手は引けておらず、《突然の衰微》《精神を刻む者、ジェイス》でモンクトークンの数を減らすだけにとどまる。

 これが宮薗のラストターン。果敢持ちのトークン3体で18点は、すなわち5回もの呪文のプレイが必要だ。

 とはいえ、《噴出》をキーパーツとする『メンター』ならあながち不可能とも言い切れない。とにかくまずは何らかのドローソースを引き込みたい。宮薗はライブラリトップに手を伸ばし、そのカードを見て。

 そして。

 右手を差し出したのだった。


宮薗 1-2 藤井





第6期ヴィンテージ神挑戦者決定戦、優勝は藤井 秀和(千葉)!


おめでとう!!




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