はじめに
みなさんこんにちは。Hareruya Prosの藤江 竜三です。平日は市議会で働き、リーグ・ウィークエンドなどの夜の大会のときは子どもを寝かしつけながら一緒に寝て、夜にむくりと起きて戦い始めるお父さんプレイヤーです。
先週末に『カルドハイム』リーグ・ウィークエンド(2月)があり、激闘の末、7勝をあげることができました。
そこで今回は同大会で使用した相棒、ナヤフューリーについて解説していきたいと思います。
リーグ・ウィークエンドまでのメタゲームとデッキ選択
『カルドハイム』発売後、イゼットテンポなどさまざまなデッキが生まれましたが、一躍注目を浴びたのが《出現の根本原理》でした。このデッキは《出現の根本原理》から《アールンドの天啓》や《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》、《星界の騙し屋、ティボルト》などの脅威を、一度にキャストしてくるデッキです。
その後、スゥルタイを倒すために赤単や白単といった速いアグロデッキが流行りました。メタゲームが固まったところでそれらを倒すために選んだのが、このナヤフューリーなのです。
ナヤフューリー
このデッキは《スカルドの決戦》と《エッジウォールの亭主》でアドバンテージを稼ぎつつ、《恋煩いの野獣》《砕骨の巨人》といった「出来事」カードで盤面を作っていきます。
その後、機を見計らって《黄金架のドラゴン》と《憤激解放》で一撃必殺を狙っていきます。デッキ相性についてざっくりといいますと、スゥルタイ根本原理とグルールアドベンチャー、白単/赤単アグロに有利であり、ティムールワープやサイクリング、ディミーアローグは厳しい相手となります。
一撃必殺の極意
このデッキの一撃必殺コンボにはいくつかパターンがあるので、その一部を紹介していきます。
《スカルドの決戦》パターン
《スカルドの決戦》がII章のときに、《黄金架のドラゴン》と《憤激解放》×2で24点パンチとなります。4ターン目に《スカルドの決戦》をキャストしておけば、5ターン目に決まる最速コンボです。
ダメージを増やして必殺技へと昇華するポイントは、《スカルドの決戦》がII章のときに打点を伸ばすプレイをどれだけ知っているかにかかっています。《砕骨の巨人》やサイドインした《火の予言》を、あえて自分の《黄金架のドラゴン》へキャストすることがあるのです。
たとえば、《砕骨の巨人》《火の予言》《セジーリの防護》《憤激解放》を順次キャストしていきます。対象にとるたびに宝物・トークンが生成されるので、最後の《憤激解放》解決前に、プレイヤーへ2枚目の《砕骨の巨人》をキャストすればピッタリ20点に届きます(9/9→18/9+2点)。
パワー5以上パターン
意外と忘れられがちなのは《恋煩いの野獣》がブロックされなかった時点で《憤激解放》を打ってパワーを倍化し、戦闘終了後に《カズールの憤怒》で投げ飛ばせば20点入ることです。
ナヤフューリーを使う際は、頭の体操がてらどうやったら最大ダメージが出せるか考えてみてください。また、序盤に土地として置いた《カズールの憤怒》は《群れの番人》で手札に戻して呪文として打てることも大切なポイントになります。
採用カード解説
ここからはデッキについて詳しくみていきましょう。
メインボード
《黄金架のドラゴン》
このデッキのフィニッシャーであり、中心となるカード。回避能力があるため単体でも十分なダメージクロックとなりますが、できるだけコンボを狙いたいところです。自身を対象にとる2マナ以下の呪文は無限にチェインしますので、《スカルドの決戦》がある状況で呪文を連打して、一気にパワーを上げていきます。
《スカルドの決戦》
このカードのために白をタッチしています。順調に土地を伸ばして4ターン目にプレイしたくなりますが、できれば5ターン目にプレイするのがベストです。5ターン目にプレイすれば、次のターンに《黄金架のドラゴン》を召喚しつつ《カズールの憤怒》もキャストできるので、一撃必殺になる可能性が劇的に上がります。マナが多いほうがプレイできるカードの枚数が格段に増えるので、土地も+1/+1カウンターも無駄になりません。
《憤激解放》《カズールの憤怒》
このデッキのキーパーツです。《憤激解放》は相手のクリーチャーに打って《巨人落とし》で除去するという小技があります。《カズールの憤怒》はプレイヤーだけではなく、クリーチャーを除去するのにも使います。《朱地洞の族長、トーブラン》のような絶対に倒さなくてはならないクリーチャーを出された際は、考えてみてください。
《猛り狂い》
今回のお試し枠です。サイクリングが増えていたので、フェアリー・トークンを突破するカードとして採用しました。《憤激解放》と違って倍々にはならないので複数は入りませんが、1枚ならばお勧めのカードです。タフネスが増えるのも偉大。
サイドボード
《赦免のアルコン》
白単アグロ相手にはこれがないと勝てません。プロテクション(白)のため除去できる手段は限られており、出たら超有利になります。白単アグロは少し減るだろうと思い3枚にしましたが、3マッチ以上当たる予測なら4枚にしたほうがいいでしょう。
《レッドキャップの乱闘》
赤単アグロのクリーチャーや《黄金架のドラゴン》をテンポ良く潰すのに入れました。対象をとらずに《黄金架のドラゴン》を対処できる《巻き添え》と悩みましたが、赤単アグロとローグを天秤にかけてこちらにしました。
《運命の神、クローティス》
ローグやスゥルタイ、そしてサイクリング相手になくてはならない凄いやつです。実際にリーグ・ウィークエンドでは、これのおかげで何とかサイクリングに勝てました。
《乱動する渦》
スゥルタイ根本原理対策です。相手のサイドボードに《長老ガーガロス》が4枚ある場合は《出現の根本原理》を全抜きしてくることもあるので、入れない選択もあります。入れる入れないよりも、サイドボードにあることが重要なのです。
ほかの候補となるカード
今回は採用しなかったものの、メインやサイドボードで検討の余地があるカードになります。
メインボード
《リムロックの騎士》は2マナ域ながらパンチ力が高く、「出来事」もデッキにかみ合っています。《ひっかく鉤爪》は打点がさらに倍!!!!
サイドボード
《トーモッドの墓所》はサイクリングの《天頂の閃光》対策にお勧めです。0マナなのでいつでもキャストでき、置いておくだけでかなりのプレッシャーとなります。《ドラニスの判事》はミラーマッチやティムールワープと戦う際にあると良いクリーチャーです。
《巻き添え》はミラーマッチの対《黄金架のドラゴン》には最強の1枚。ただし、今後ティムールワープが増えると《厚かましい借り手》や鳥・トークンが邪魔となるので、価値が下がるかもしれません。
サイドボードガイド
白単アグロ
対 白単アグロ
《スカルドの決戦》を使いアドバンテージを稼ぎつつ、《赦免のアルコン》を引くことを祈りましょう。メイン戦は一撃必殺を決めたいマッチアップです。相手のサイドボードに《ドラニスの判事》が多い場合は、《レッドキャップの乱闘》をさらに1枚入れても良いかもしれません。
赤単アグロ
対 赤単アグロ
サイドボードに《アクロス戦争》を用意しておけば、もっと楽に戦えそうです。《朱地洞の族長、トーブラン》と《エンバレスの宝剣》には気をつけていきましょう。
スゥルタイ根本原理
対 スゥルタイ根本原理
時間が経てばたつほど、相手が有利になっていきます。マナに余裕ができるとコンボを決めるのも難しくなってしまうので、とにかく早く倒してください。
グルールアドベンチャー
対 グルールアドベンチャー
タップアウトで動きがちなデッキのため、一撃必殺を決めやすい相手です。サイドボード後は、《巻き添え》に十分注意しましょう。
ミラーマッチ
対 ミラーマッチ
当然ながらうまく一撃必殺を決めたほうが勝ちます。妨害手段のなかでは、除去しつつ戦闘参加を防ぐ《巨人落とし》が重要です。
ティムールワープ
対 ティムールワープ
できれば相手が《アールンドの天啓》を打つ前に勝負を決めたいところです。《セジーリの防護》は相手の鳥・トークンや《厚かましい借り手》をかわす重要なカードとなります。大切に使ってください。《猛り狂い》のトランプルも刺さるはずです。
リーグ・ウィークエンドを終えて
今回の勝因
今回このデッキを使用するにあたって相当練習を積みました。それにより《スカルドの決戦》を置いているときに「リーサルになっているのか、いないのか」「次のターンも含めてどれくらいのダメージが狙えそうか」という感覚が磨かれました。特に苦手なサイクリング戦では1点を詰め切れなければ負けていた試合が多かったので、練習が活きた結果だと思います。
今大会の試合は個人配信にてアーカイブとして残っているので、ぜひ見てください。ナヤフューリーを使おうと思っている方は参考になるかと思います。
練習はしっかりできたものの試合慣れしていないので、今回も1試合目は緊張で心臓がはちきれんばかりでした。しかし、上手く勝つことができたので波にのれ、その後は落ち着いてプレイすることができました。合間合間に深呼吸をしたのが良かったのだと思います。緊張しがちの方は、よかったら騙されたと思ってやってみてください。
また、盤面を見て「この試合勝てる!」と思っても一歩立ち止まって、冷静になることが大切です。プッチ神父のごとく『素数を数えて落ち着いて』ください。1番ミスりやすい瞬間です。今回勝ちを確信してから少なくとも2回ミスしており、内1回はゲームにも負けてしまいました。
負けたマッチはローグとティムールワープになります。前者は打ち消し呪文を含めた干渉手段が多く、上空から小刻みにダメージを刻んでくる単純に厳しい相手です。後者についてはローグ以上に勝つのが困難だと思います。デッキパワーが高いこともあり、ティムールワープは今後のスタンダードの中心になるのではないでしょうか。
今後のメタゲームとラダー用構築
#MTGLeagueWeekend Winrate matrix
— MTG Data (@mtg_data) March 1, 2021
Data compilation by @jpball5 pic.twitter.com/3yDD2fzPuX
今後のメタゲームをこの表から予想するに、ティムールワープがメタゲームの中心になる可能性が高そうです。しかし、このデッキは土地の置き方やライフの詰め方に選択肢が多く、扱うのが難しいデッキです。実は私もデッキ提出期限の1日前にポテンシャルの高さに気づきまわしたのですが、上手く扱えないと判断したほどです。とはいえ、見かけることは増えるので対策を練りましょう。
最後に、ラダー用に調整したナヤフューリーを載せたいと思います。
2 《山》
1 《森》
3 《寓話の小道》
4 《枝重なる小道》
4 《岩山被りの小道》
4 《針縁の小道》
-土地 (20)- 4 《エッジウォールの亭主》
4 《巨人落とし》
3 《群れの番人》
4 《砕骨の巨人》
4 《恋煩いの野獣》
4 《黄金架のドラゴン》
-クリーチャー (23)-
2 《赦免のアルコン》
2 《レッドキャップの乱闘》
2 《乱動する渦》
1 《ドラニスの判事》
1 《灰のフェニックス》
1 《運命の神、クローティス》
1 《アゴナスの雄牛》
1 《アクロス戦争》
1 《トーモッドの墓所》
-サイドボード (15)-
メインボードに《ひっかく鉤爪》を加えて、一撃必殺の成功率を上げています。サイドボードにはサイクリング対策の《トーモッドの墓所》、ラダーに多い赤単アグロ用の《アクロス戦争》、そしてティムールワープやミラーマッチで活躍が期待される《ドラニスの判事》を採用しています。
おわりに
最初のリーグ・ウィークエンドで1勝しかできなかったときは、「ここは魔界だ。人間では勝てない」という気持ちになりましたが、その後に少しずつ勝ち星を重ねていき、4回目にして「もしかしたら何とかなるかもしれない」というところまでこぎ着けました。
次の大きな戦いは『カルドハイム』チャンピオンシップであり、スタンダートとヒストリックを計15試合も行います。この戦いで9勝以上の勝ち星をあげて、少しでも順位を上げていければと思います。
今回のリーグウィークエンドでも妻や子供たちの協力があり、デッキ調整や練習時間を作ってくれたこと、応援してくれたことに感謝しています。そして、調整に付き合いアドバイスをくれた仲間、応援してくださったみなさん、この記事を読んでくれたみなさんに感謝します。それでは!