超簡単にマナベース計算できちゃう早見表を作ってみた

富田 峻太郎





■ はじめに

 みなさんは、1ターン目に《強迫》をプレイするために必要な黒マナの枚数をご存知でしょうか?または、2ターン目に《意思の激突》を構えるには青マナはデッキに何枚必要なのでしょうか?


強迫意思の激突


 これはデッキを構築するために必要な前提知識ですが、意外と知られていません。もしあなたがこの問いに答えることができたとしても、「それでは3ターン目の《破滅の道》は?4ターン目の《集合した中隊》《衰滅》は?5ターン目の《龍王オジュタイ》は?」と続けて質問を投げかけられたなら、そのすべてに答えることは難しいと思われます。

 スタンダード環境のローテーションによって、《汚染された三角州》などの「フェッチランド」と《砂草原の城塞》のような「楔の3色土地」は消え去りました。好きな色マナを好きなだけ手にできた、「ゆとりなマナベース」の時代は終わりを告げたのです。


汚染された三角州砂草原の城塞


  そして現在。数多の土地の選択肢を前にして、「今の環境のマナベースは弱い。安心して自分で組めるデッキは2色だけだ」……こう結論づけてしまうプレイヤーも少なくはないでしょう。

 ですが、先ほどの質問の答えを知っていれば、必要最低限の色マナ枚数への理解があれば。現在のスタンダード環境でも自由なデッキ構築ができるはずなのです。


 そこで本記事では、みなさんの構築ライフを助けるために、先ほどの問いにすらすらと答えることができるようになる早見表を紹介します!

 この早見表を使いこなすと、

・このデッキにこの色のマナは何枚必要なのか?
・このデッキは想像通りに動くデッキなのか?

 といった悩みが解決できます。3色にとどまらず4色まで。「ゆとりなマナベース」の時代が終わった今だからこそ、みなさんの自由な発想を形にするため、多色の強力なカードを使ったデッキ構築のお手伝いをするために、本記事を執筆させていただきました。

 なお、本記事の主題は現行スタンダードですが、記事内で語られる図表や計算式は、モダンやレガシー環境でも役立つ内容になっています。また、記事の最後には40枚のリミテッド用、99枚の統率者戦用の図表も掲載しています。さらには、図表を制作するにあたっての確率計算の過程と、より厳密な演算データも用意しました。冒頭の問いに対して「そんなことは知ってるさ」と解答できた方は、その数字がどのように算出されたものなのか、あるいは本当に信用できるものなのかを改めて考えつつ、本記事を楽しんでいただけると幸いです。



■ 簡単便利な早見表!

 まずは冒頭の問いにお答えしましょう。はたして1ターン目に《強迫》をプレイし、2ターン目に《意思の激突》をプレイするためには、それぞれ何枚の色マナが必要なのでしょうか?

 この答えは、黒マナを14枚、青マナを12枚です。

 ちなみに、この数字はどのように計算されたものなのでしょうか?(※以下の点線内は読み飛ばしてしまっても問題ありません!)


たとえば60枚のデッキから1枚引いたとき、デッキに24枚入っている土地を引き当てる確率は24/60です。さて、ここで2枚目を引いたときに土地を引き当てる確率は24/59になるのでしょうか?答えは否。その理由は、1枚目を引いたときに土地を引き当てたケースを計算できていないからです。つまりこのような場合、『特定の枚数を引いた時点で土地を引いている確率』を求めるよりも、全事象から『特定の枚数を引いた時点で1枚も土地を引いていない確率』を引き算するほうが簡単なのです。これを余事象の確率といいます。

この考え方を使うと、「特定のターンに欲しいカードを引いている確率」を求めることができます。デッキ枚数をx、そのターンまでに引く枚数をy、デッキ内の欲しいカードの枚数をzとしたとき、計算式は【1-{(x-z)Cy/xCy}】というものになります。

ここから上の式の土地枚数zを変数として、それぞれ1ターン目7枚の場合の確率、2ターン目8枚の場合の確率といった具合に、何度も計算します。

そしてミクロ経済学における無差別曲線の理論に基づき、ここが妥協点、と言える土地枚数を算出すると、1ターン目に必要とされる場合は14枚、2ターン目の場合は12枚、となるわけです。


 はい、読み飛ばしていただけましたか?

 これを逐一計算するのはとても面倒で複雑です。真面目に読んでしまった人は、そもそも数式の中のCってなんじゃらほいと感じているかもしれません。とにかく、難しく、なにより面倒なのです!

 それでも「何ターン目までに何枚引くには、デッキに何枚入れる必要があるのか」を知りたい方は大勢いると思います。

 そこで、今回は先程の計算結果をまとめた早見表を用意しました!





 ざっと見て理解できる方もいらっしゃるとは思いますが、まずは簡単な使い方をいくつか紹介したいと思います。



■早見表の使い方 -基礎編-: デッキに入っている呪文をプレイするために必要なマナの数を知りたい

 MTGのマナベースの計算は「Xターン目にあるカードをプレイしたい」という目的から計算されます。

 上の《強迫》《意思の激突》の例で言うと、1ターン目に黒マナを1つ出すためにはデッキに14枚の黒マナが必要であり、2ターン目に青マナを1つ出すためにはデッキに12枚の青マナが必要となることから、デッキに必要な「青マナを出す土地」と「黒マナを出す土地」の枚数が割り出せます。

 ここで、以下の図の「〇で囲われている数字」が必要なマナの数に相当します。





 たとえば《強迫》《意思の激突》デッキならば、14個の黒マナと12個の青マナが最低限必要になる、ということがわかります。これなら14枚の《沼》と12枚の《島》、合計26枚の土地でも大丈夫そうですね。

 しかし、このデッキに《シルムガルの嘲笑》が入っているとすれば話は別です。2ターン目に青マナが2つ必要になるため、青マナはデッキに18枚も必要になってきます。

 この枚数も、早見表を見れば一目瞭然です。





 それでは《島》を18枚まで増やしましょう。するとデッキには早くも32枚もの土地が!

 さらに《シルムガルの嘲笑》を入れたことで《龍王オジュタイ》も入れてみたくなったので、続けて5ターン目に1枚の白マナも用意できるように土地を用意してみましょう。





 もうわかりますよね?ここ(〇の位置)です。これで《平地》も6枚投入して、《島》18枚、《沼》14枚、《平地》6枚で、すべての需要を満たすことができました。


 こんな具合に、ここまでで表の基本的な使い方については簡単にわかっていただけたかと思います。なので、次は表の応用的な使い方を見ていきましょう。

 ちなみにここまでの例ではデッキ内の土地の総枚数が38枚まで膨れ上がってしまっていますが、心配ありません。この後の土地の調整方法についても、記事の後半で紹介します。



■早見表の使い方 -応用編-: バトルランドをアンタップでプレイするための枚数を知りたい

 さて、この表の応用編として紹介するのは、《梢の眺望》などのバトルランドをアンタップでプレイするには何枚の基本地形が必要なのかを知る方法です。

 たとえば4ターン目に《梢の眺望》をアンタップでプレイしたい場合を考えてみましょう。

 これを満たす条件は、「3ターン目までに基本地形を2枚引いていること」です。したがって、「3ターン目までに特定のカードを2枚引くための枚数」分だけの基本地形がデッキに入っていれば、これを満たすことができます。





 つまり16枚ですね。ちなみにこの基本地形の枚数については、《進化する未開地》も基本地形1枚分として計算しても大丈夫です。

 他にも、たとえば同様に5ターン目に《梢の眺望》をアンタップでプレイしたいなら、「4ターン目までに特定のカードを2枚引くための枚数」を数えればいいことになりますから、〇の1マス下、15枚あれば問題ありません。

 これがどういうことなのかというと、表の使い方を知っていれば、「この枚数の基本地形を用意できるならばバトルランドを優先し、用意できなければダメージランドを優先する」というように、土地の選択で迷ったときにきちんとした判断を下すこともできるということです。


 このように早見表は、土地の必要枚数を割り出すだけでなく、「このターンまでに、この種別のカードが欲しい」という計算にも役立ちます。

 コントロールデッキが序盤を凌ぐために必要な軽量除去の枚数、ビートダウンデッキの1~2マナ域に必要な枚数、リアニメイトや『マッドネス』におけるディスカード手段の枚数などなど……。この表を使えば、デッキに必要な枚数が簡単にわかります。デッキ構築の際には、この早見表の応用した使い方を考えてみましょう!


 それでは早見表の使い方もわかったことですし、ここからは試しにサンプルデッキの土地配分を考えてみましょう。まずは土地配分の考え方から紹介します。もちろん早見表も使うので、ちょこちょこと見直しつつお願いします。



■ 土地配分の考え方 -基礎編-

 どの土地を何枚入れるべきなのか。誰しも一度は悩む土地配分ですが、以下のような手順で考えていきます。


◆ 土地配分を考えるときの手順

1. デッキの「呪文部分だけのリスト」を用意する
2. リストと早見表を使い、「デッキに必要な色マナの数」を数える
3. 土地の優先度に従い、必要な色マナを用意できるまで各種の特殊地形を加える
4. 1~3の工程で問題が生じたら1に戻って呪文を調整する


 この工程を経ることで、デッキに必要な土地配分がわかります

 たとえば前節の《強迫》《意思の激突》だけのデッキを例にマナベースを考えていきましょう(工程1)。これらの呪文を運用するために必要なマナは、「1ターン目に《強迫》」「2ターン目に《意思の激突》」をプレイしたいということと早見表を照らし合わせ、黒が14枚と青が12枚だとわかりました(工程2)

 そこで、まずは基本地形でまかなおうと《沼》を14枚と《島》を12枚加えてみますが、しかし土地のためのスペースは最大でも24枚しか用意しておらず、現状の26枚では超過してしまった、とします。


詰まった河口


 その場合、《詰まった河口》の採用を検討してみます(工程3)。2色のデッキでは《詰まった河口》を1~2ターン目にアンタップでプレイできるだけの《沼》《島》を確保できるので、4枚採用しました。《詰まった河口》からは黒と青両方の色マナが生まれるため、《詰まった河口》4枚から得られる「黒マナ4枚青マナ4枚」を必要なマナ数から引くと……


黒マナ: 14-4=10
青マナ: 12-4=8


 《詰まった河口》4枚分を引いた20枚の土地用のスペースを使って、黒マナ10枚と青マナ8枚を用意すれば、デッキには十分な量のマナが供給されるということがわかりました。つまり、《沼》を10枚、《島》を8枚採用してもまだ2枚の土地スペースが余る計算になります。だいぶ余裕のある土地配分を用意することができたようです。


 なんとなく手順は見えてきましたか?それではいよいよ土地配分の応用編です。



■ 土地配分の考え方-応用編-

 今回の応用編では具体的な例として、このデッキの土地配分を考えてみましょう。


◆ 工程1: デッキリストの準備



「サンプルデッキ」

25 土地

-土地 (25)-

4 《鎖鳴らし》
4 《次元潜入者》
4 《空中生成エルドラージ》
4 《反射魔道士》
4 《雷破の執政》
4 《龍王オジュタイ》
3 《氷瀑の執政》

-クリーチャー (27)-
4 《龍詞の咆哮》
4 《シルムガルの嘲笑》

-呪文 (8)-
hareruya



 これは現行スタンダードにおいてマナベースの構築が厳しいだろうといわれる「ジェスカイドラゴン」のデッキリストです。青青赤赤白となかなかに土地が忙しそうですが、はたしてこのデッキは現実的なデッキなのでしょうか?

 まずは先ほどの手順に習い、用意したデッキリストが求めている色マナの数を数えてみましょう。



◆ 工程2: デッキに必要な色マナを計算する


 このデッキの理想的な動きは以下のものです。




 《シルムガルの嘲笑》は2マナのカードですが、このデッキが打ち消したいカードは対戦相手の重い呪文なので、4ターン目以降のプレイを想定しています。この一連の行動を想定して、早見表を参考に、デッキが要求している色マナの数を割り出しましょう。





2ターン目: 青1/赤1    → 青12枚/赤12枚
3ターン目: 青1/赤1/白1 → 青9枚/赤9枚/白9枚
4ターン目: 青2/赤2/白1 → 青15枚/赤15枚/白7枚
5ターン目: 青2/赤2/白1 → 青13枚/赤13枚/白6枚


 左が要求する色マナシンボル、右がデッキに要求される色マナの枚数です。当然ながらそれぞれの色に要求される枚数の最大値を参照します。すると、このデッキでは最終的に、


青マナ: 15枚
赤マナ: 15枚
白マナ: 9枚


 以上の色マナソースが必要とされることがわかりました。それでは要求された色マナを供給できるように土地を投入していきましょう。土地のために用意された25枚のスペースを使って、合計39の色マナを供給することが目的です。



◆ 工程3: 優先順位に従って、土地を加える


 いよいよ土地を投入していくわけですが、現行スタンダード環境には採用すべき土地に優先順位が設けられています。


◆ 現行スタンダードの土地の優先順位

1. 《進化する未開地》
2. 基本地形 (《島》など)
3. ダメージランド (《戦場の鍛冶場》など) やバトルランド (《窪み渓谷》など)
4. ミシュラランド (《風切る泥沼》など) やシャドウランド (《港町》など)


 デッキの色が減るほどに《進化する未開地》の優先順位は下がりますが、基本的には、この優先順位に従って土地を投入していきます。

《精霊龍の安息地》などの特殊な土地については、話がややこしくなるので今回は省略します。



1. 《進化する未開地》


進化する未開地


 《進化する未開地》は現行スタンダード環境で唯一3色以上のマナにアクセスできる多色土地です。疑似的な基本地形でもあるため、バトルランドのアンタップ条件の助けになることも大きな魅力になります。まずは《進化する未開地》とともに、必要最低限の基本地形を投入してみましょう。


◆ 現在の土地スペース

4 《進化する未開地》
2 《島》
2 《山》
1 《平地》


 「ジェスカイドラゴン」は青マナと赤マナを2つずつ要求するため、必要最低限の基本地形の枚数も《島》《山》は2枚ずつ用意しました。《平地》は白マナを1つしか要求しないデッキなので1枚で問題ないでしょう。


◆ デッキに必要な色マナ

青マナ: 15枚-5=10枚
赤マナ: 15枚-5=10枚
白マナ: 9枚-4=5枚


 《進化する未開地》と最低限の基本地形を投入した結果、以上のように必要な色マナを供給することとなりました。

 ここで注意しなければならないことは、《進化する未開地》4枚と《島》 (《山》) 2枚を投入したのに、色マナの供給量を5枚相当のものにしたことです。これは《進化する未開地》は、一度持ってきた土地を変更できないため、1枚の《進化する未開地》が実質的に複数の色マナを供給することが難しいからです。そのため、《進化する未開地》4枚=各色の色マナ3枚、程度に留めることが賢明です。



2. 基本地形


島山平地


 現行スタンダード環境においては、《梢の眺望》などのバトルランドのアンタップ率を高めるためにも、あらゆるデッキに可能な限りの基本地形が投入されるべきです。そして、この段階で考えるべきことがあります。それはデッキにはあと何枚の基本地形を採用するスペースが残されているのかです。

 基本地形がいくら強力とはいえ、それ自体は1枚につき1つの色マナしかデッキに供給してくれません。そのため、残りの土地スペースをすべて基本地形で埋めてしまうと、デッキに必要な色マナが供給されないので、構築不可能なデッキとなってしまうのです。

 この「ジェスカイドラゴン」は、残り16枚の土地スペースを使って25個の色マナを供給する必要があります。ここで1枚でも多くの基本地形を投入したいと考える場合、このデッキには追加で7枚の基本地形を採用できるみたいです。《島》3枚《山》2枚《平地》2枚を追加してみましょう。


◆ 現在の土地スペース

4 《進化する未開地》
5 《島》
4 《山》
3 《平地》


◆ デッキに必要な色マナ

青マナ: 10枚-3=7枚
赤マナ: 10枚-2=8枚
白マナ: 5枚-2=3枚


 となります。

 ここでのポイントは、可能な限り均等に、特定の土地で固めないようにすることです。これは同じ土地を重ねて引いてしまった際のリスクをケアするためです。詳しくは後述します。



3. バトルランド以下の土地


大草原の川シヴの浅瀬戦場の鍛冶場


 ここで一つ重要なことを説明します。

 それは重ね引きのリスクをケアすることです。たとえば4色のデッキで赤以外の4色をそれぞれ2個ずつ要求するデッキがあったとします。このデッキに投入できる土地の枚数が4枚だったときに、以下の2つの土地の組み合わせのどちらが優れているでしょうか?




 どちらも4枚で供給する色マナの数は同じですが、この答えは例2です。

 例1の組み合わせでは《梢の眺望》*2や《窪み渓谷》*2の組み合わせを引いてしまったときに2色しか供給できない可能性があるからです。一方、例2では2枚の土地のいかなる組み合わせにおいても3色のマナを供給できますね。同じ数の色マナを供給できるのであれば、よりリスクの小さな組み合わせを選択するべきでしょう。

 このような理由からできるだけ土地の種類を散らすことは、多色のデッキを構築する上で重要なテクニックになるのです。

 ということを前提に、「ジェスカイドラゴン」にも投入できる多色地形を1枚ずつ入れてみましょう。この時の優先順位は、先に紹介したようにバトルランドとダメージランドです。


◆ 現在の土地スペース

4 《進化する未開地》
5 《島》
4 《山》
3 《平地》
1 《大草原の川》
1 《戦場の鍛冶場》
1 《シヴの浅瀬》


◆ デッキに必要な色マナ

青マナ: 7枚-2=5枚
赤マナ: 8枚-2=6枚
白マナ: 3枚-2=1枚


 さあ、あとは組み合わせのパズルです。6枚の土地スペースを残していながら、デッキは赤マナを6枚要求しているため、そのパターンは1つしかありません。


◆ 現在の土地スペース

4 《進化する未開地》
5 《島》
4 《山》
3 《平地》
1 《大草原の川》
2 《戦場の鍛冶場》
4 《シヴの浅瀬》
2 《高地の湖》


◆ デッキに必要な色マナ

青マナ: 5枚-5=0 ☆クリア!
赤マナ: 6枚-6=0 ☆クリア!
白マナ: 1枚-1=0 ☆クリア!


 これでひとまずデッキに供給する色マナの数は満たせました!それでは最後の調整をはじめましょう。



4. ミシュラランド


さまよう噴気孔鋭い突端


 さて、最後にミシュラランドを置き換えていきましょう。ミシュラランドは、クリーチャー化する強力な効果を除けばただのタップインの土地に過ぎません。土地の優先順位においては、タップインの土地は最後に投入を検討される最弱の選択肢です。このことからミシュラランドの投入は土地配分の最終段階で検討すべきことだとわかります。

 現行スタンダードにおいて、ミシュラランドが攻撃する必要が求められる最速のタイミングはおそらく6ターン目でしょう。ミシュラランドはタップインランドなので、6ターン目に攻撃するためには5ターン目までに場に出す必要があります。つまり、「5ターン目のシングルシンボル」に必要な枚数以上投入されていれば良いのです。





 その枚数は早見表を見ればパッとわかります。そう、6枚ですね。このことから、現行スタンダードにおいては、可能であれば6枚のミシュラランドの投入が理想とされることがわかります。

 今回の「ジェスカイドラゴン」の土地を見ていくと、《高地の湖》《さまよう噴気孔》に置き換えるのは当然としても、《シヴの浅瀬》《戦場の鍛冶場》は、それぞれ何枚ずつ置き換えるべきなのでしょうか?ミシュラランドを採用したい枚数は最大で6枚。今回は試しにすべて置き換えてしまいましょう。

 しかし、ここでタップインランドの枚数の問題が浮上します。ここでもしミシュラランドを6枚投入すると、タップインランドは《進化する未開地》を合わせて10枚になってしまいます。タップインランドが許容される枚数は、デッキのマナカーブにおいてそれを置くことが許されるターンがどれほどあるかで判断されます。このデッキの場合は3マナの呪文が少ないので、1ターン目と3ターン目にはタップインランドを置く余裕はありそうです。

 ただ、4ターン目までに2枚以上のアンタップインの土地をひく必要があるため、デッキに十分な枚数のアンタップインの土地が投入されているかを調べましょう。





 4ターン目までに2枚引くために必要な枚数は、早見表によると15枚です。土地の総数は25枚なので、10枚のタップインランドを採用しても問題なく条件を満たすことがわかりました。これで気分よくミシュラランドを6枚投入できます!




 これで無事に完成です!これにより、最初に紹介したスペル構成でも十分デッキとして成り立つということがわかったかと思います。



◆ 工程4: 工程1~3で失敗したら工程1に戻る


 今回の例ではうまくいきましたが、いずれかの工程においてマナベースの構築が不可能だと明らかになってしまうことがあります。そんなときは呪文のリストを調整してマナベースへの負担を和らげることで解決できます。たとえば《シルムガルの嘲笑》のための青マナの供給が厳しければ、それを《意思の激突》に妥協して青マナの必要供給量を減らすことも立派な戦略です。

 また、逆にマナの供給に余裕があると分かれば、必要なマナの条件を厳しくすることも一つの手です。マナ事故するリスクは増すため、あくまでもリスクとリターンが見合うことが前提にはありますが、マナベースの限界に迫ることで見えるものもありそうです。



■ 終わりに

 『イニストラードを覆う影』以降のスタンダード環境においてマナベースが厳しくなったことは事実です。しかし、だからといっても3色や4色のデッキが組めないことはありません

 現代マジックは、結局のところ、強いカードが強いのです。雑に強いカードを色を気にせず放り込み、マナベースの構築が可能ならば回してみせる。不可能ならば少し冷静になって呪文の構築を見直す。

 そうして3色や4色のデッキを0から構築し、育てていくことはとても楽しいと思います。どこぞのプラモデルのアニメではありませんが、デッキはもっと自由な発想で組んでいいのです!

 これを機に、みなさんが楽しいデッキ構築を行えることを!



追加資料1

以下はリミテッド (デッキ枚数40枚) と統率者 (デッキ枚数100枚) の場合の必要マナ数の表になります。


・リミテッド (デッキ枚数40枚) の場合





・統率者 (デッキ枚数100枚) の場合






追加資料2

 本記事執筆における裏付けとなる資料です。必要な方は、以下リンクからダウンロードとしてご確認ください。

【計算に使用した公式】【エクセルの関数データ】
【60枚の構築デッキのマナバランスと土地枚数】
【40枚のリミテッドデッキのマナバランスと土地枚数】
【99枚の統率者デッキのマナバランスと土地枚数】



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