はじめに
みなさま、「名カード集」へようこそ。
この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。
今回は強力なドロースペルが初登場した『アイスエイジ』をご紹介しましょう。
『アイスエイジ』ってどんなセット?
『アイスエイジ』とは、1995年6月に発売されたエキスパンションであり、収録枚数は383種類。氷河期を意味するセットであるため、シンボルマークには”雪の結晶”が描かれています。また、同セットは大型エキスパンション+小型エキスパンションからなるブロック制が導入された初めてのエキスパンションであります。
ブロックの特徴として、後世まで続くメカニズムが初登場しています。『カルドハイム』にも再録されている基本氷雪土地やカードを1枚引く効果を意味するキャントリップはその代表格といえるでしょう。多色カードの収録も多く、スタンダードで長きに渡りマナ基盤を支えるダメージランドもこのエキスパンションが初出となっています。
(T):(◇)を加える。
(T):(白)か(青)を加える。《アダーカー荒原》はあなたに1点のダメージを与える。
『アイスエイジ』の名カードたち
《ネクロポーテンス》
あなたのドロー・ステップを飛ばす。
あなたがカードを捨てるたび、あなたの墓地にあるそのカードを追放する。
1点のライフを支払う:あなたのライブラリーの一番上のカードを裏向きのまま追放する。あなたの次の終了ステップの開始時に、そのカードをあなたの手札に加える。
かつてトーナメントを席巻し、「ネクロの夏」と呼ばれる現象を引き起こす元凶となったカード、それが《ネクロポーテンス》です。説明不要の超強力ドローカードであり、スタンダードにとどまらずあらゆるフォーマットで活躍していたため、このカード1枚の解説だけで紙面を埋めてしまうほど。すでにCard Digでも語られているので、この時代を代表する1枚として簡潔に述べていきます。
《ネクロポーテンス》の強さ、それはこのカードがもたらす戦略の多様性、つまりは組み込めるアーキタイプの多さに尽きると思います。「ライフ1点がカード1枚」へと変換されるその効果はラグこそあるものの、わずか3マナのエンチャントがもたらす効果とは思えません。マナコストは軽く、代表的なマナ加速呪文である《暗黒の儀式》との相性が抜群となっているのです。
これにより黒の小型クリーチャー擁するアグロデッキであるネクロウィニー、1対1交換を続ければ《ネクロポーテンス》のドロー分有利となるコントロール、ネクロディスク、コンボデッキをみればネクロドネイトやペブルスといったコンボパーツを集めるための手段として採用されてきました。「殴る」「守る」「必殺」と戦略は異なれど、黒濃いめのあらゆるデッキにフィットした、あるいはデッキ自体を《ネクロポーテンス》へとフィットさせたほどのカードなのです。
《暗黒の儀式》の存在を考えると、《ネクロポーテンス》のマナコストが1マナ多ければまったく違った評価になっていたことでしょう。
《渦まく知識》
カードを3枚引き、その後あなたの手札からカードを2枚、あなたのライブラリーの一番上に望む順番で置く。
『アイスエイジ』にはもう1枚、マジックを代表するカードがあります。それが《渦まく知識》です。エターナル環境において、現在も活躍を続けるドロースペルは氷河時代に生まれたのです。こちらも語りきれないほどの歴史があるため、Card Digと合わせてご覧ください。
わずか1マナで3枚までカードを掘り進められる破格の効果であり、序盤の土地事故防止、後半の必要牌の獲得に大きく貢献してくれます。のちの《思案》や《定業》など1マナのドローカードは数多くデザインされましたが、そのすべての祖にして絶対的な存在。それが《渦まく知識》なのです。
手札の枚数こそ増えませんが、不要牌をライブラリーへと積み込んでリシャッフル手段と組み合わせることで手札の質を大きく向上してくれます。これはほかのカードには真似できない芸当であり、初期には《Thawing Glaciers》、エクステンデッド時代には《衝動》や《直観》、エターナルではフェッチランドなどと組み合わせて使用されています。
逆に、特定のカードをライブラリートップに置くことに着目した使い方もあります。デルバー系ではデッキの名を冠した《秘密を掘り下げる者》の変身に、ミラクルでは「奇跡」誘発を補助する役割を担っているのです。青いデッキに安定性をもたらす縁の下の力持ちでありながら、ゲームプランをも支えるカードでもあるのです。
《嵐の束縛》
(2),カードを1枚無作為に選んで捨てる:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。《嵐の束縛》はそれに2点のダメージを与える。
手札のカードすべてを2マナの《ショック》へと置き換えるエンチャント。アグロデッキのダメ押し用の直接火力になり、特にマナフラッド受けや中盤以降に引いた小型クリーチャーの再利用先として優れた効果を発揮しました。”無作為”に捨てるため有効牌を捨ててしまう可能性もありますが、必要なカードを使いきった後など使用するタイミングを選べば問題ありません。
黎明期の赤緑アグロ、ステロイドではライフを詰めるピッタリのカードとなりました。なかでもプロツアーコロンバス96ではバグバインドと呼ばれる昆虫クリーチャーと《嵐の束縛》を組み合わせたステロイドが優勝しております。
使用者だったOlle Rade選手(現マジック・プロツアー殿堂)はインビテーショナル(世界中のトッププレイヤーを集めて開催されるマジック最高峰のお祭りイベント)でも優勝しており、《森を護る者》としてカード化されています。同カードイラストは蜘蛛に乗るOlle Rade選手が描かれていますが、それはこのバグバインドをモチーフにしているのです。
ほかには直接火力に特化したコンボデッキでも採用されました。《吠えたける鉱山》でコストを補充するヴァイスエイジや《適者生存》で《ゴブリンの太守スクイー》をかき集めるスクイーバインドなどです。小型クリーチャーはひとたまりもないため捨てるコスト面の問題さえ解決できれば、戦場をコントロールする強力なカードとなったのです。
《紅蓮破》
以下から1つを選ぶ。
呪文1つを対象とする。それが青なら、それを打ち消す。
パーマネント1つを対象とする。それが青なら、それを破壊する。
エターナル環境のサイドボードの定番、赤い打ち消し呪文《紅蓮破》はここで生まれました。マナコストが軽く、シンプルにして強力な効果は打ち消し合戦に強いため、青が環境に多いときなどはメインボードから採用される1枚となっています。
以前は打ち消しばかりに焦点が当てられていましたが、近年はプレインズウォーカーの登場によりパーマネント対策としても重要な意味を持つようになりました。打ち消し呪文でありながら、あとで引いたときは戦場にいる《精神を刻む者、ジェイス》や《王冠泥棒、オーコ》、《時を解す者、テフェリー》への解答となるのです。
宿命のライバルである《水流破》とともに、マジックでは欠かせない対策カードの1枚といえるでしょう。
《道化の帽子》
「(2),(T),《道化の帽子》を生け贄に捧げる:プレイヤー1人を対象とする。あなたはそのプレイヤーのライブラリーからカードを3枚探し、それらを追放する。そのプレイヤーは、自分のライブラリーを切り直す。」
最後に紹介するのは《道化の帽子》。『アイスエイジ』の名を聞いて、このカードを思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。というのも、《道化の帽子》は『アイスエイジ』のパッケージイラストの1つになっているのです。このピエロ、一目見たら忘れないほど強烈な印象を受けますね。
印象的なイラストに加えて、効果もこれまでにないものでした。史上初のライブラリー破壊カードであり、コンボやフィニッシャーの少ないパーミッションスタイルのデッキに対しては致命的なカードとなったのです。
マナコストは4マナとやや重く、クリーチャーの質が低かった当時でさえ決して使いやすいカードではなかったはずです。ですが、その効果は除去や打ち消し呪文以外で相手の勝ち手段そ直接対処できるという甘美の響があり、このカードに引き寄せられたプレイヤーも少なくなかったのではないでしょうか。
まだある名カード
さて、『アイスエイジ』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。
もっと『アイスエイジ』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!
次回の「名カード集」では、『アライアンス』をお届けいたします。