晴れる屋協賛 学生選手権・春 第4回戦: 重田 惟純(千葉) vs. 社本 拓己(東京)

晴れる屋

By Daisuke Kawasaki





 グランプリ・東京がはじめて開催された1997年。その同シーズンに開催されたアジア太平洋選手権98。中村 聡が使用するスパイクの誓いデッキと、「日本三大地雷」のひとり笹沼 希予志のパンデモノートによるオリジナルデッキ同士の決勝戦としていまだ語り継がれる伝説のイベントのひとつである。

 その併催イベントとして開催されたのが「ジャパン・ジュニア・オープン」。日本で開催された最初のジュニアイベントである。

 その後、日本独自の学生向けイベントとして「高校生選手権」が開催され、日本選手権2007王者にして、歴代日本王者を集めたプレミアイベント「バトル・オブ・チャンピオン」優勝者の北山 雅也を始め、最近ではTeam Cygamesのメンバーとして活躍中の覚前 輝也に至るまで、後にプロツアーシーンで活躍するプロを輩出した。

 若いプレイヤーのためのイベントがあり、そこで結果を残したことが自身となって、マジックへのモチベーションが高まる。ジュニアイベントは、まさしくそのためにあるべきであり、そして、このグランプリ・東京2016の会場で、再び学生選手権が開催された。

 グランプリ初日の併催であることと、近年のマジックプレイヤーの高年齢化を反映してか、参加人数は振るわなかったものの、若いプレイヤーの熱意の伝わる大会となった。

 そして、その最終戦。

 ここまで唯一の全勝としてこの席に座るのが、白単人間を使用する重田 惟純(千葉)

 対するのは、バントカンパニーを使用する社本 拓己(東京)

 重田が勝利すれば、文句なしの全勝優勝であるし、社本も、ここで勝利することで優勝の可能性がある。むしろ、全勝者を倒さなければ優勝の可能性はないわけで、自力優勝の可能性を唯一作れる立場だと言えるだろう。

 この対戦に勝利し、歴史と伝統あるジュニアのタイトルと青春の思い出を持ち帰るのは、果たしてどちらか。






Game 1


 先手は社本。1ターン目に《森》をセットした返しに、重田は《スレイベンの検査官》をプレイ、さらに2ターン目には《アクロスの英雄、キテオン》《ドラゴンを狩る者》を召喚する。
 
 この攻撃をなんとか防ぐべく《進化する未開地》をセットしつつ《棲み家の防御者》を表向きにプレイした社本だが、これは《石の宣告》で対処されてしまい、《アクロスの英雄、キテオン》の変身を許してしまう。



社本 拓己


 社本は《反射魔道士》《ドラゴンを狩る者》を手札に戻しつつブロッカーを用意し、重田の勢いを止めようかと思うのだが、重田は《歴戦の戦士、ギデオン/Gideon, Battle-Forged》をクリーチャー化してアタックしつつ、《勇者の選定師》《スレイベンの検査官》と展開し、動きを止める気配はない。

 《巨森の予見者、ニッサ》を召喚する社本に対して、重田が《サリアの副官》。そして、2/3となった2体の《スレイベンの検査官》と《歴戦の戦士、ギデオン/Gideon, Battle-Forged》がアタックすると、《巨森の予見者、ニッサ》《スレイベンの検査官》を止めても、社本の残りライフは3。

 マナをセットしてターンを終えた社本に対して、ダメ押しに《白蘭の騎士》《アクロスの英雄、キテオン》を召喚した末に、全軍アタックを宣言する重田。

 対して、社本は《集合した中隊》に全てをかけるが……めくれた《森の代言者》《薄暮見の徴募兵》ではもう1ターンを稼ぐこともできないのだった。


重田 1-0 社本



Game 2


 先手の社本がマリガンしたのに対して、重田はキープを宣言。そして、1ターン目に《探検隊の特使》をプレイする。

 だが、今度は社本も1ターン目の《進化する未開地》から、2ターン目に《ヴリンの神童、ジェイス》をプレイ。さらに、これが除去されない。重田は《サリアの副官》をプレイし、アタックしてターンを返す。さらに、社本は《大草原の川》をセットしつつ、《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》の能力で確実にマナを確保していく。

 そして、重田の《白蘭の騎士》召喚に対して、《ドロモカの命令》《ヴリンの神童、ジェイス》に使用して、《サリアの副官》を除去する。一方の重田も、《絹包み》を使用して、《ヴリンの神童、ジェイス》を追放することに成功する。



重田 惟純


 《反射魔道士》で+1/+1カウンターの載った 《探検隊の特使》を手札に戻すが、重田は《白蘭の騎士》《グリフの加護》をエンチャントし、攻め手を緩めない。さらに《アクロスの英雄、キテオン》を追加する。

 続くターンに、社本はアクションなくターンを返す。ここで重田は にさらに《グリフの加護》をエンチャントすると、《アクロスの英雄、キテオン》と2体の《グリフの加護》を受けたクリーチャーでアタックする。

 《アクロスの英雄、キテオン》《反射魔道士》でブロックした後に、《ドロモカの命令》《反射魔道士》をサイズアップしつつ、エンチャント除去を試みる社本。だが、《アクロスの英雄、キテオン》が破壊不能を得た上で、変身してしまう。

 続くターンのアタックこそ、《歴戦の戦士、ギデオン/Gideon, Battle-Forged》を《跳ねる混成体》でタップして凌いだ社本だったが、これでライフは6。

 《空中生成エルドラージ》を召喚した社本だったが、このブロッカーへと《停滞の罠》がプレイされると、残るライフを守り切ることはできないのだった。


重田 2-0 社本



 文句なしの全勝優勝を決めた重田は、対戦終了後に「優勝したら黒いプレインズウォーカーもらえるんですよね?」と聞いた。なにせ、学生にとっては、雲上のカードだ。いや、通常のプレインズウォーカーでも、高校生が揃えるのは大変だろう。

社本 「ジェイスとか高いですよね……今回のデッキも借り物ですし……」

 と、高校生らしい会話を繰り広げるふたり。気になって、社本に「今回の大会のためにデッキを借りてきたのか?」とたずねねてみると、意外な返事が。

社本 「今年、高校3年で、受験なので一度マジックから離れるためにカードを全部売っちゃったんですが、その後にこの大会があることを聞いて……」

重田 「あ、僕も今年で受験なので、最後の大会と思ってでたんですよ」

 学生選手権の最終戦を戦った若い二人は、しばらくマジックを離れるという。

 受験や、就職。人生の転機で、マジックから距離を置いた経験があるプレイヤーは多いだろう。それくらいマジックは魅力的すぎるゲームで、若くて夢中になりやすい時期に「ついで」で遊ぶのは難しいものなのだ。

重田 「マジックに戻ってくるために、ちゃんと受験をしたいから、マジックを離れるんです」

 冒頭で述べた、98年の「ジャパン・ジュニア・オープン」。その大会をカウンター・オースで優勝した小林 健二は、マジックから離れていた時期もあったが、このグランプリ・東京の会場に、本戦に出場するわけでもなく「赤黒吸血鬼作ったんですよ」なんて言いながら遊びにきている。

重田 「本戦にも誘われたんですけど……学生選手権にでれるのって、今年までだから、こっちに参加したんです。グランプリ本戦は、また、いつでもでれるじゃないですか」

 青春の思い出となる趣味があることは幸せで、その趣味を大人になっても続けられることは、もっと幸せだ。





 おめでとう、重田 惟純!学生選手権チャンピオン!



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