準決勝: 伊藤 裕道(兵庫) vs. Menendian Stephen(アメリカ)

晴れる屋

By Atsushi Ito


 スタンダードプレイヤーにとっての最高峰の舞台はやはりプロツアーということになるのだろうが、ヴィンテージプレイヤーにとって最も権威ある大会といえば、Vintage Championshipがそれにあたる。

 そして今回、「アジア圏でVintage Championshipのような大会を開催したい」という思いで開かれたAsia Vintage Championshipの準決勝に勝ち上がったのは、さすがというべきか、Vintage Championshipに縁のある2人だった。

 2009年の優勝者である伊藤と、2007年の優勝者であり他にも2度のトップ8経験があるMenendianだ。

 伊藤はキャラクターどおりの「MUD」、《噴出》マスターことMenendianも「メンター」で思想を貫いている。

 ともにヴィンテージの頂点を極めた経験がある者同士の、ハイレベルな戦いが幕を開ける。






Game 1


 先手1ターン目に《Library of Alexandria》スタートのMenendianに対し、伊藤は《Mishra's Workshop》から《アメジストのとげ》を設置する立ち上がり。さらにそのままMenendianが《Library of Alexandria》を起動してから土地を置いてターンを返すと、伊藤は続けて《磁器の軍団兵》をクロックとして送り出す。

 対し、土地が詰まっているMenendianは《Mox Ruby》を設置してマナを伸ばしにいくが、続く《磁石のゴーレム》こそ何とか《Force of Will》するものの、《不毛の大地》《Tundra》を割られてしまい、《アメジストのとげ》の制約から抜け出すことができない。


Mishra's Workshopアメジストのとげ磁器の軍団兵


 この隙に《磁器の軍団兵》が3点を刻みつつ、2枚目の《Mishra's Workshop》からX=3の《搭載歩行機械》がプレイされると、とても《ダク・フェイデン》をプレイできるようなマナ域までたどり着けていないMenendianは非常に苦しい。

 さらにどうにか《稲妻》《磁器の軍団兵》は処理するものの、続く《不毛の大地》《Library of Alexandria》も割られてしまう。

 ダメ押しに《露天鉱床》《島》までも割られてしまうと、襲い掛かる機械の兵隊たちを前に、Menendianは成す術なくカードを畳むしかなかった。


伊藤 1-0 Menendian



Game 2


 ヴィンテージにおいて先手というのは、他のフォーマットと比べて絶大なアドバンテージとなる。Moxenの存在によって1ターン目から埋めがたいマナ差が付きかねないからだ。

 そしてこの2ゲーム目においてMenendianは、まさしくそのヴィンテージの真髄を見せつけた。

 すなわち、1ターン目《Black Lotus》からの《僧院の導師》


Black Lotus僧院の導師


 さらにMox2枚と《露天鉱床》を並べて《磁器の軍団兵》をプレイしつつ、《四肢切断》で対処しにかかる伊藤にMenendianは《Force of Will》を突きつける。

 だが伊藤も《Black Lotus》から《ファイレクシアの破棄者》《電結の荒廃者》を展開すると、続くターンには2体目の《ファイレクシアの破棄者》をプレイして《ダク・フェイデン》を封じつつ、果敢に殴りにいく。

 それでも、土地が詰まっており《露天鉱床》の睨みでフェッチが切れなかったMenendianも、ここで《露天鉱床》を引き込み、《若き紅蓮術士》を送り出す。

 対する伊藤も《アメジストのとげ》を設置するが、自分もマナが詰まっており、《電結の荒廃者》だけで戦線を支えている状況。

 こうなるとどちらが先に土地を引くかの勝負だ。

 ライフは8対8。互いに決め手に欠けるこの状況で、先に膠着状態から抜け出したのはMenendianだった。

 フェッチを引いたMenendianは《アメジストのとげ》にも構わず「探査」で墓地を「8枚」追放すると、《宝船の巡航》をプレイ。Moxを引き込むと、《僧院の導師》《若き紅蓮術士》のおかげでこのターン一気に膨れ上がった戦線を用い、一息に伊藤を押しつぶした。


伊藤 1-1 Menendian



Game 3


 今度は伊藤が先手の利を生かし、《Mishra's Workshop》から《搭載歩行機械》を展開していく。デッキに1枚しか入れられないはずの《Black Lotus》と同程度の爆発力を、4枚入った《Mishra's Workshop》から安定して発揮できるのが「MUD」というデッキの強みだ。

 だがMenendianも《思案》から《Mox Pearl》《Black Lotus》と展開してマナ拘束の憂いをひとまずなくすと、伊藤が続けて送り出した《磁石のゴーレム》もきっちり《稲妻》で処理し、《定業》で手札を整える。

 しかし、伊藤の攻めはなおも止まらない。

 《電結の荒廃者》《磁石のゴーレム》と送り出すと、《搭載歩行機械》まで並んだ難しい盤面を前に、《鋳塊かじり》《破壊放題》と抱えたMenendianは思索に沈む。


搭載歩行機械電結の荒廃者鋳塊かじり破壊放題


 それでもやがて《破壊放題》で盤面を薙ぎ払うことを選択するのだが、伊藤は対応して《電結の荒廃者》のカウンターを《搭載歩行機械》に移し替え、1/1の飛行機械トークンを4体生み出す。うち1体は《鋳塊かじり》で処理したMenendianだったが、3点クロックが重くのしかかる。

 しかも伊藤はもはや手札がないにもかかわらず、ライブラリトップから次々と的確な後続を引き寄せていく。《磁器の軍団兵》が追加されると、Menendianもようやく《若き紅蓮術士》を送り出して対抗するが、先制攻撃を持つ3/1は容易には止まらない。

 その間にも空から3点ずつ受け続けていたMenendianは、《神秘の教示者》から《Ancestral Recall》を打ってはみるものの、引き込んだ《剣を鍬に》だけでは複数体の飛行トークンを止めきることはかなわないのだった。


伊藤 2-1 Menendian



Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする

この記事内で掲載されたカード