Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/04/05)
『カルドハイム』チャンピオンシップ9位
やぁみんな。マルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalhoだ。
今日は『カルドハイム』チャンピオンシップに向けた調整とその結果を報告しよう(もう知ってるかもしれないけど、タイブレイカーで9位に終わった)。
辛い結果ではあったけど、自分のパフォーマンスは良かったし、調整の成果もしっかりと表れていたと思うよ。
デッキ選択
『カルドハイム』スプリットでは「ラテン・ヒート・クルー」というチームで調整していた。ポルトガル・スペイン・アルゼンチンのプレイヤーにブラジルの一匹狼であるパトリック・フェルナンデス/Patrick Fernandesが加わったチームだ(でも彼はもうポルトガル人みたいなものだから、ポルトガル・スペイン・アルゼンチンのチームと言っても過言じゃないだろうね)。
チーム一丸となり、『カルドハイム』チャンピオンシップへの取り組み方を考えた。結果、ヒストリックのベストデッキを見つけることに時間を重点的に使うべきだということになった。スタンダードはすでに環境が固まっているから、すべてのデッキについて各マッチアップの戦い方を把握していればいい(これは簡単なことではないけど、できないわけじゃない)。
調整をしていくうちに、スタンダードのデッキ候補は4つに絞られた。
チームのなかには白単ウィニーで”メタゲーム”をしかけようというメンバーがいて、自分も本気で白単を使うことを検討した。だけど、「赤単との相性はそこまで良くないし、マルシオは赤単が白単に対して持つ優位性を活かしきれていない」という友人のティアゴ・サポリート/Thiago Sapporitoの言葉に納得させられた。
他方、ヒストリックはありとあらゆるデッキを組んで試した。ハビエル・ドミンゲス/JavierDominguezは早々にサイクリングデッキを見出し、かなり気に入っている様子だった。毎日のようにサイクリングで試合に取り組み、小さなダイアモンドを丹念に磨き上げていっていた。
チームの予想ではジャンドがメタゲームの4割を占めると考えられていた。これはかなり大きい数字だ。だからサイクリングを使うのであれば、この「環境の恐怖」に有利に戦える構成にする必要がある。もっとも、サイクリング以外のデッキを選ぶにしても同じことが言えるんだけどね。
さて、それでチームの注目は以下のデッキに集まることになった。
これらのデッキが高い使用率になるだろうと結論づけていた。その後、アゾリウスコントロールは(毎度恒例だけど)多くのマッチアップで1ゲーム目に弱く、サイド後に力が発揮されることも判明。チームで作り上げたアゾリウスコントロールは早々に崩れ落ちていった。Magic Onlineのアカウント名であるDoomswitchとしてよく知られているジョアン・モレイラ/João Moreiraの助けもあり、コントロールを使うのであれば《世界を揺るがす者、ニッサ》や《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》を使えるバントカラーのほうが圧倒的に良いことがわかった。
調整過程で過小評価してしまったのはオルゾフオーラだった。チーム謹製のオルゾフオーラはジャンドフードや《忘れられた神々の僧侶》を4枚搭載したジャンドサクリファイスに勝てず、まさかメタゲームの2番手にくるとは考えていなかった。《忘れられた神々の僧侶》がないジャンドであっても、オーラは不利だろうと思う。だけど……この考えが間違っているのかもしれない。こういった経緯があってサイクリングのようなデッキを選んだわけだけど、これは悪い選択だった。オーラとの相性が本当に良くないからね!
やはり自分の心の中にはいつもミッドレンジデッキがいるのかもしれない。しばらく使用してこなかったけど、ジャンドフードは自分のスタイルにしっくりくるものだった。1枚1枚のカードが強いし、何より《墓掘りの檻》や《安らかなる眠り》といった対策があまり効かない。《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》だけは例外だけど、その他の対策に関してはそう苦労することなく対応していける。
《金のガチョウ》と《パンくずの道標》のコンボは尽きることのないリソースを供給してくれる。また、新戦力である《古き神々への拘束》は《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》、プレインズウォーカー、相手が突きつけてくるあらゆる問題を解決するカードであり、デッキとのかみ合わせがとても良い。そして…あのドラゴン(《フェイに呪われた王、コルヴォルド》)についてはもう語るまでもないだろう。この”小型”クリーチャーを出せば、相手は1~2ターンしか生きられなくなる。本当にとんでもないカードだよ!
こういった考えがあって、(NASAの統計では)99%ぐらいジャンドフードを選択する気になっていた。だけど、問題だったのはミラー/ジャンドカンパニーに対する有効なプラン、グルールを筆頭としたアグロデッキに負けないプランを見つけることだった。すると頭の上に電球が浮かび、あるカードを閃いた……《アクロス戦争》だ!
このカードはグルールなどのアグロデッキに対して求められていた解答でありながら、《パンくずの道標》の効果で手札に加えられ、なおかつ《魔女のかまど》や《悲哀の徘徊者》で奪ったクリーチャーを生け贄に捧げるというお馴染みのシナジーも有している。対アグロではMVPのカードだ。
ほかに検討していたのは《恋煩いの野獣》だ。グルールは5/5のクリーチャーを簡単には対処できないし、カードパワーそのものも高い(スタンダードをプレイしている人ならわかるだろう)。とはいえ、サイドボードの枠は無限にあるわけじゃないから《アクロス戦争》を2枚入れるだけに留めることになった。
こうしてヒストリックの調整は完了したが、次は環境の立ち位置が良いスタンダードのデッキを探さなくてはならない。さっき4つのデッキを挙げたけど、結局選択肢に残ったのはハビエルのティムールアドベンチャーと赤単だった。結論から言えば、赤単を選ぶことにした。ティムールアドベンチャーについては、マナベースを好きになれなかった。試合をしているとたまに敵が2人いるんじゃないかと思うほどだったんだ(対戦相手とマナベース)。
それでもティムールアドベンチャーのリストを大幅に改善できたと思う。たとえば《アールンドの天啓》は1枚も入れなかった。ティムールアドベンチャーはすでにデッキパワーが高かったしカードアドバンテージ源もあった。だから《アールンドの天啓》を入れることでデッキをさらに重くしてしまうことが有利に働くとは思えなかったんだ。それに《アールンドの天啓》は弱いときは本当に弱い。マナベースの問題に関しては、結局「”弱い《極楽鳥》“を使おう」というハビエルの説得に応じることになった。《ヤスペラの歩哨》だ!
確かにリミテッドは好きだけど、そんな自分からしても《ヤスペラの歩哨》はやりすぎだ!”あの”ハビエル・ドミンゲスとチームを組むというのは本当に大変だよ……。意見をぶつけ合うことも多いけど、結局いつも完成度の高いリストに仕上がっていると思う。良い関係を築けているからこそ、調整もゲームの理解も捗るんだろうね。
こうしてチームはおおよそ以下のように分かれた。
チームのデッキリスト
さて、じゃあみんなが2番目に喜びそうなパートに入ろう。チームが持ち込んだ4つのデッキリストだ!
スタンダード
ティムールアドベンチャー
赤単アグロ
ヒストリック
ボロスサイクリング
ジャンドフード
俺はスタンダードで赤単を、ヒストリックでジャンドフードを選択している。
大会レポート
簡単に大会を振り返っていこう。これが終わったらみんなお待ちかねの……サイドボードガイドだ!
Day1:スタンダード
1回戦:スゥルタイコントロール
《出現の根本原理》のないスゥルタイコントロールとの対戦で大会が始まった。唱えれば勝てる切り札が入っていないため、通常のスゥルタイに比べれば楽に戦える。それでも拮抗した良い試合になったが、2-1で初戦を白星で飾ることができた。
通算成績:1-0
2回戦:ジェスカイサイクリング
これは赤単が有利なマッチアップだ。軽い呪文が多いし、《エンバレスの宝剣》が4枚ある!この装備品をジェスカイサイクリングはどうしようもできない。相手の構成は《稲妻》を放つ《アイレンクラッグの紅蓮術師》が入っていたため、《レッドキャップの乱闘》を数枚サイドインした。
実際にこれを引き当てることができたから、良いサイドボーディングだったと思う。相手が「サイクリング」による《稲妻》で《砕骨の巨人》を除去しようというときに、対応して《レッドキャップの乱闘》を打ち込み、返しのターンで《エンバレスの宝剣》をキャストできたんだ。グッドゲーム。
通算成績:2-0
3回戦:ティムールアドベンチャー
ダイスに委ねられるマッチアップ。ティムールアドベンチャーの動きが鈍かったり、マナベースが理想的でないときは有利になる。この試合は3ゲーム通して勝つことができた!赤単万歳!
通算成績:3-0
3試合を消化し、今度はヒストリックに入っていく。3-0できたのは本当に嬉しかったし、トップ8に向けて良い滑り出しになった。
Day1:ヒストリック
4回戦:ジャンドフード
1ゲーム目は勝ち、2ゲーム目は負けとあっさりゲームが終わった。3ゲーム目、《思考囲い》で手札を確認すると《波乱の悪魔》以外に大したものはなく、《波乱の悪魔》を捨てさせた。すると4ターン後、相手の戦場には《波乱の悪魔》が3体も!!!
ライブラリーの上15枚から《波乱の悪魔》を4枚も引いてきたんだから、ちょっとフラストレーションが溜まったね。運がいいときもあるし、そうでないときもある。マジックはそういうものだから、受け入れないとダメだね。どうってことないさ……。
通算成績:3-1
5回戦:アゾリウスコントロール
ダイスに勝ったうえ、《金のガチョウ》と《パンくずの道標》のコンボを1ゲーム目と3ゲーム目に決められた。大量のカードアドバンテージを得ることができたから、もう負けないなと思ったね。さぁ、この調子でいこう!
通算成績:4-1
6回戦:ティムールアドベンチャー
そう、あの《幸運のクローバー》が帰ってきた。彼のリストを見て、かなり相性が良いと思った……2連敗するまでは!1ゲーム目はマナフラッドして全く動けなかったし、2ゲーム目はひどいマナスクリューだったんだ。なんとかもがいてみたけど、無駄な抵抗だったね。このラウンドは本当に辛かったよ。
通算成績:4-2
7回戦:ジャンドフード
初日の最後は、再びのミラーマッチだった。引きが強かったから、2ゲームをすぐに連取できたね。《戦争の犠牲》を打ったら相手は再起不能になっていた。
通算成績:5-2
初日の結果は5-2。最高とも言えないし、最悪とも言えない。2日目はまたスタンダードに戻るけど、絶好調の赤単だから自信はあったね!
Day2:スタンダード
8回戦:ティムールアドベンチャー
1ゲーム目はあっさり勝てたけど、2ゲーム目は……それはもう……感情の起伏が激しい試合だった!後手で土地2枚の手札をキープしたんだけど、3枚目の土地が詰まっているところに相手は5ターン目に《長老ガーガロス》を出してきた。これはもう終わったと思ったけど、返しのターンで土地を引き、ブロックに回した《熱烈な勇者》の先制攻撃 +《霜噛み》+《砕骨の巨人》で《長老ガーガロス》を落とすことができた。
しかし、そのターンに相手は2枚目の《長老ガーガロス》を展開。手札に《アクロス戦争》があったから4枚目の土地をここで引かなくちゃいけなかったけど……そう、この願いが通じた。土地を引けたんだ。《長老ガーガロス》を奪い、《エンバレスの宝剣》を装備させた。これで相手のライフは2になり、3枚目の《砕骨の巨人》でピッタリ削りきった!
通算成績:6-2
このマッチに勝つと、今日の自分は天に味方されていると思った。デッキの調子も良いし、スタンダードは7-0だ。ゾーンに入っている感覚があったね。相手の動きをよく読めていたし、まるで悟空の「身勝手の極意」みたいだったよ。
9回戦:赤単アグロ
最初のゲームは土地3枚の手札をキープし、4枚目の土地が来なくてあっさりと負けた。だけどサイド後は流れが来ていたね!相手よりドローが強く、スムーズに2・3ゲーム目を取ることができた。
通算成績:7-2
10回戦:スゥルタイ根本原理
今回の赤単で負けたのは、このラウンドが最初で最後だった。負けたゲームは《出現の根本原理》を早いターン打たれてしまい、ほとんどなす術がなかった。1ゲーム目は除去を合間に挟みながら、5ターン目に《出現の根本原理》を唱えられた。3ゲーム目は《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》と除去を交えながら7ターン目にキャストされたね。どうしようもなかったけど、スタンダード全勝記録はここで途絶えてしまった。
通算成績:7-3
11回戦:白単アグロ(ヨーリオン)
あまり見かけないデッキだ。きっとアグロ向けの白いカードを全部使いたくて、そうしたら《空を放浪するもの、ヨーリオン》も「相棒」として採用すれば良いんじゃないかと思ったんだろうね。
1ゲーム目、相手はワンマリガン後に土地1枚の手札をキープしたようで、そこからリカバリーできていなかった。2ゲーム目はこちらがしばらくマナスクリューしたものの、苦しいなかでも良いプレイングができたことが功を奏したと思う。最終的に《アクロス戦争》で巻き返せたんだ!
通算成績:8-3
これでヒストリックへと突入する。トップ8に入るには3-1か4-0が必要だろう。厳しい戦いになりそうだ!
Day2:ヒストリック
12回戦:アゾリウスコントロール
これ以上ない最悪のスタートだった。特筆すべきことは1・2ゲーム目ともにできず、速攻で負けた。
通算成績:8-4
この敗戦から、できるだけリーグポイントを多く稼ぐことに目を向け始めた。ジャンドフードではあまり勝てていなかったからね。だけどここで集中力を再び最大限まで戻そうと努めた。狙うはリーグポイントと賞金……さぁいこう!
13回戦:ラクドスアルカニスト
1ゲーム目はあまりにもマナフラッドしたから、どんな角度からでも負けるだろうと思っていたけど、相手もかなり運に見放されていた。40枚ぐらいライブラリーを削ったのに、3枚ある《死の飢えのタイタン、クロクサ》を1枚も墓地に落せなかったんだ。そうしてなんとか1ゲーム目を拾うことができた。
2戦目、こちらは見違えるような引きの良さになり、相手はマナスクリューに陥っていたため、まともな勝負になっていなかったね。これでリーグポイントを1点上積みできた!!!!
通算成績:9-4
14回戦:5色ニヴ
最悪のマッチアップだと思った。勝てるとすれば運が味方に付くか、相手のマナベースが思うように機能しないことを祈るかだろう。そこで俺は相手のマナベースをできるだけ覚えておき、積極的に《冷鉄の心臓》を壊すように意識した。この戦略は良かったものの、1ゲーム目はあっさりとやられた。
2ゲーム目は比較的簡単に取れ、3ゲーム目は少しリスクをとって土地1枚、《金のガチョウ》2枚、その他に有効なカードを含む手札をキープした。2枚目の土地が詰まったときは終わりを予感したが、相手も《冷鉄の心臓》に続いて置く土地がない。その後に自分は2枚目の土地を見つけ、《古き神々への拘束》は相手の白マナを潰して3ゲーム目に蓋をする値千金のカードとなった。結局相手は白マナ源を引けず、リソース差でこちらが圧倒することができた。
通算成績:10-4
この時点で、次勝てばトップ8、負ければ9位というバブルマッチになるだろうと思っていた。
15回戦:ゴブリン
最終ラウンドは全てが上手く機能していた。《金のガチョウ》と《パンくずの道標》のコンボあり、《魔女のかまど》《波乱の悪魔》《大釜の使い魔》ありの理想的な手札で余裕の勝利だった。あとは祈るだけ……。
通算成績:11-4
少し調べながらスタンディングを見てみると、トップ8に入るには熊谷 陸がアンドリュー・クネオ/Andrew Cuneoに勝つ必要があることに気づいた。そしてその条件は達成されず……9位に終わった。
残念だったけど、大会の調整は上手く行ったと思うし、仲間にも感謝している。リーグポイントを3点も積み重ねることができ、自動的に世界選手権と次期MPLが確定するリーグ内4位も見える良いポジションにつけた。世界王者になれるチャンスがまた巡ってくるかもしれない!
サイドボードガイド(赤単アグロ)
ここまで記事を読んでくれたみんなに、とっておきのご褒美をあげよう。赤単とジャンドフードのサイドボードガイドだ。
スゥルタイ根本原理
対 スゥルタイ根本原理
ナヤクラリオン
対 ナヤクラリオン
ティムールアドベンチャー
対 ティムールアドベンチャー
白単アグロ
対 白単アグロ
ディミーアローグ
対 ディミーアローグ
ジェスカイサイクリング(《アイレンクラッグの紅蓮術師》型)
対 ジェスカイサイクリング
《アイレンクラッグの紅蓮術師》が入っていないバージョンにはサイドの入れ替えなし。
赤単アグロ
対 赤単アグロ
サイドボードガイド(ジャンドフード)
アゾリウスコントロール
対 アゾリウスコントロール
グルールアグロ
対 グルールアグロ
先行の場合は《パンくずの道標》を1~2枚残しても良い。その場合は《大釜の使い魔》を1枚サイドアウトして《漁る軟泥》はサイドインしない。《墓掘りの檻》はあまり効かないが、相手がサイドインしてくると思うなら《古き神々への拘束》を1~2枚残すのも手だ。その場合も《大釜の使い魔》と《漁る軟泥》の枚数を同様に調整しよう。
オルゾフオーラ
対 オルゾフオーラ
《大釜の使い魔》を4枚とも残すのであれば《パンくずの道標》は1枚だけサイドアウトする形でも良い。《寓話の小道》を減らしているのは、サイド後のマナカーブが劇的に低くなるからだ。土地を1枚減らすことでマナフラッドしないようにする。《パンくずの道標》もサイドアウトする関係もあって、マナフラッド耐性は低下しているしね。
ジャンドカンパニー
対 ジャンドカンパニー
ジャンドフード
対 ジャンドフード
ゴブリン
対 ゴブリン
エルフ
対 エルフ
おわりに
今回の記事も楽しんでくれたかな?次回の記事では「世界選手権の権利を獲得したよ!」と言えるようにしたいね。
みんなに最高の運が回ってきますように。それから良いトップデッキもね!
じゃあ健康には気をつけて!またね!
マルシオ・カルヴァリョ (Twitter)