競技マジックに身を置く者にとって、プロツアーは憧れの舞台だ。
高額な賞金、海外のトッププロとの対戦、放送を通じて数万人が試合の模様を目撃するフィーチャーエリア……そして何より、その最高峰の舞台に自分が立っているのだという事実から湧き上がる高揚感。
そういった体験の数々は一度味わえば病みつきになり、だからこそ一度でもプロツアーに行ったことがあるプレイヤーは、何としてでも再びプロツアーに行きたいと思い、厳しい予選へと身を投じていく。
3年前、アイルランドのダブリンで開催された【プロツアー『テーロス』】にPTQを突破して参加したことがある高橋もその一人だ。
東田「プロツアー、経験者なんですか……」
高橋「もう昔の話ですよ」
一方、いまだプロツアーという舞台を知らない東田にとっては、プロツアーに参加したことがあるというそれだけでも十分脅威に感じられるのだろう。まして決勝戦ということもあり、緊張した面持ちが隠せない。
しかし相手が誰であるとしても。
プロツアーへの道を切り開けるとしたら、決勝まで勝ち上がることができた今この瞬間に、もう一勝だけ積み重ねるのが一番の早道であることは確かなのだ。
【トップ8プロフィール】では「あなたにとってプロツアーとは?」という質問に対し「家族旅行」と割り切った返答を返した東田だが、予備予選の決勝戦まで勝ち上がれる実力を持っているのだから、自分がどこまでやれるのか、試してみたくないはずがないだろう。
だからプロツアーに行ったことがあるかないかという差があるだけで、2人の抱える思いは実質的には等しい。
憧れの舞台に、行くために。
まずはそのための第一歩。地域予選への参加権利を獲得するための決勝戦が、いま始まった。
Game 1
スイスラウンド1位で先手を選択した「白緑トークン」の東田が、マリガンスタートながらも3ターン目に《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》を送り出す。対し「バント人間カンパニー」の高橋が初動《反射魔道士》で応えると、東田に4枚目の土地はなく、《森の代言者》を出して防御を固める。
だが高橋はこの隙に《ドロモカの命令》で《森の代言者》を打ち取ると、さらに《薄暮見の徴募兵》を送り出し、《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》に対してプレッシャーをかける。
高橋 一弥 |
一方まだ4枚目の土地は引けたもののタップインだった東田は再び《森の代言者》でエンド。返す高橋もこのターンは3/4となった《反射魔道士》のみのアタックで植物トークンを排除するにとどまるが、《進化する未開地》をセットしつつ4マナを立たせてのターンエンドは、嫌でも「あの呪文」を想起させる構えだ。
それでもようやく4マナを確保した東田は果敢に《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を送り出し、植物トークン/騎士・同盟者トークン/《森の代言者》という布陣でターンを返すのだが、エンド前に予定調和の《集合した中隊》がプレイされると、飛び出たクリーチャーを見て苦笑が漏れる。
高橋が公開したのは《サリアの副官》が2体!
プロプレイヤー・渡辺 雄也がデザインしたこの「バント人間カンパニー」というデッキにおいて、最も勝敗を左右するのは「《集合した中隊》で《サリアの副官》がめくれるかどうか」と言われている。そこにおいて2体を一挙に呼び出すというのは、ぶん回りオブぶん回りと言って差し支えないだろう。裏面に変身していた《爪の群れの咆哮者》にはカウンターは載らないものの、5/6、3/3、3/3、3/3という盤面が一気にできあがる。
そしてそのまま自分のターンに入った高橋が迷わず《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》へのフルアタックを敢行すると、東田はやむなく《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》を見捨てざるをえない。
それでも東田はここで手札に《大天使アヴァシン》を抱えており、5枚目の土地さえ引き込めれば形勢逆転も見込めるというところなのだが、そんなときに限ってドローは2枚目の《大天使アヴァシン》。
どうせ落とされるならと《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を「-4」能力で紋章に変換、さらに《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》をプレイして「-2」能力を起動、サイズで対抗しようとするのだが。
この局面で高橋の手札には2枚目の《集合した中隊》!
そして傍目から見ても勢いに乗っている高橋が3枚目の《サリアの副官》に加えて《変位エルドラージ》を公開すると、トークンと《森の代言者》を吹き飛ばしてのフルアタックは一撃16点。
土地の詰まっている東田に、この局面を打開する解答があるはずもなかった。
高橋 1-0 東田
Game 2
マリガンスタートから3ターン目《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》と1ゲーム目の展開をなぞる東田に対し、高橋は後手2ターン目に《ラムホルトの平和主義者》、そして3ターン目には《白蘭の騎士》をプレイしてから《ドロモカの命令》で植物トークンを排除しつつの4点アタック。《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》を即座に落とすという、1ゲーム目以上のぶん回りを見せる。
続けて東田は「X=2」の《搭載歩行機械》を出すが、4/4と2/2先制攻撃は止まっていない。攻撃を通すしかないが、高橋はまたも4マナを立たせてターンを返す。
ここで東田は待っていてもジリ貧となるだけと判断したか、一計を案じる。《搭載歩行機械》を唐突にレッドゾーンに向かわせたのだ。
この誘いに高橋が乗って《集合した中隊》をプレイしたならば、第2メインに《次元の激高》が盤面を薙ぎ払うというところ……なのだが、しかし高橋は冷静にこれをスルー。こうなると東田はエンド前《集合した中隊》からの大打撃を許容できないため自ら《次元の激高》を打たざるをえないが、これを《否認》でキャッチされてしまう。
東田 哲明 |
痛烈な7点アタックののちに再びマナをフルオープンでターンを返す高橋に対し、東田はRaphael Levyがグランプリを制したテクニックである《炎呼び、チャンドラ》を《ニッサの誓い》の力で呼び出すが、5/5の《ラムホルトの解体者》を流すことができないため、「-2」で《白蘭の騎士》だけ除去しつつ《搭載歩行機械》を自滅させてブロッカーを確保しにかかる。
だが高橋がエンド前に《集合した中隊》から《変位エルドラージ》《反射魔道士》を公開すると、2体の飛行機械トークンは瞬く間に排除され、そのまま東田のライフも一息に消し飛ばされてしまった。
高橋 2-0 東田
プロツアー『カラデシュ』予備予選、優勝は高橋 一弥(東京)!
おめでとう!!
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