Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/04/21)
真のコントロール、帰ってこい!
新セットの時期。つまり、スタンダードでコントロールが活躍する時期がやってきました(私の願望かもしれませんが)。
スタンダードの最強コントロールデッキといえば、最近はスゥルタイ根本原理のようです。しかし、私から言わせればランプとコントロールのハイブリッドデッキだと思います。
いずれにせよ、『ストリクスヘイヴン:魔法学院』がスゥルタイ根本原理にどんな新戦力をもたらすのか、そしてアゾリウス/エスパーコントロールを復権させるカードがあるのか、見ていくことにしましょう。私にとってはアゾリウス/エスパーこそ真のコントロールですからね。
スゥルタイ根本原理向けのカード寸評
《ひらめきの瞬間》
スゥルタイコントロールにとって可能性のあるカードではないでしょうか。コントロールが望むものを多く叶えてくれます。《出現の根本原理》へのマナ加速。インスタントだから相手のターンに打ち消しと除去を構えられる。そしてランプデッキにありがちなマナフラッドの防止。
気になることがあるとすれば、こういったことが本当に上手く機能し、現状のスゥルタイコントロールの枠に割って入れるのかです。その答えはまだわかりませんが、《多元宇宙の警告》の良きライバルになると思いますよ。
《悪意の熟達》
黒を含むならどんなデッキでも強く使えそうな除去ですね。2点回復がなくなった《ヴラスカの侮辱》、あるいは相手に1ドロー与える代わりに3マナ以上を除去できるようになった《取り除き》といった感じでしょうか。モードを選べる柔軟性があるので《ヴラスカの侮辱》よりは明らかに上だと思います。《ヴラスカの侮辱》よりも少ないマナで唱えられる選択肢がありますし、それを選べば結果的に2点よりもはるかに多くのライフを守ってくれるでしょうからね。
しかし現スタンダードにおける《取り除き》と《無情な行動》と比べるとどうでしょうか?メリットを挙げるなら、《鍛冶で鍛えられしアナックス》に加えて「脱出」カード、《星界の騙し屋、ティボルト》など幅広く綺麗に対処できます。また、唱えた時点でほぼ即ゲームエンドになる《出現の根本原理》を狙うデッキであれば、1ドローされてしまう点はほとんど気になりません。
反対に弱い面を挙げてみると、その1ドローによって《出現の根本原理》への打ち消し呪文や、いずれ対処しなくてはならない脅威を引かれると最悪です。ですから、このデメリットが一層際立つのはおそらくディミーアローグ戦でしょう。そもそも《取り除き》や《無情な行動》で万能に解答できますし、追加のドローもさせたくありません。
メリットとデメリットを挙げましたが、《悪意の熟達》はスタンダードで頻繁に見かけるカードになると予想します。もしかしたら下の環境でも通用するかもしれません。《覆いを割く者、ナーセット》の常在型能力と相性が良いですしね。
《複数の選択》
最悪でも2マナでドローに変換できますので、スタンダードで多少使われる可能性はあると思います。2マナのドローは最高とは言えないですが、弱すぎることもないでしょう。全モードによるキャストが効果抜群な場面もあるはずです。
《抜き打ち試験》
構築戦のコントロールにとって、「履修」のなかで一番魅力的なのは《抜き打ち試験》ではないでしょうか。手札に加える「講義」が有効なカードであれば、《抜き打ち試験》はインスタントスピードの3マナ2ドロー相当になります。良いコストパフォーマンスですね。
残念なのは、ほとんどの状況で「講義」呪文がカード1枚相当の価値を持たなさそうだということですね。《封印突破法》は《解呪》対象となるものがあれば良さそうですが、ないほうが多いでしょう。《アルカイックの教え》も条件を満たせれば良いものの、コントロールを使うならそう頻繁にありそうな状況ではありません。《過去対面法》は困ったときのプレインズウォーカー除去になりますが、最近のスタンダードは奇妙なほどプレインズウォーカーが少ないんですよね。
そのほかの「講義」呪文は構築戦に耐えるスペックではないですが、サイドボードにたくさん詰め込めば柔軟に選択することができるようになり、カードパワーの低さをカバーできるかもしれません。問題はサイドボードの枠を大きく食ってしまうことですね。BO1向けなのかも?もっとも、最近の変更でBO1もサイドボードの枠が7枚になってしまいましたけどね。
《現地調査》
こちらも《抜き打ち試験》と同様の問題を抱えているうえ、《耕作》と直接的なライバルになっています。たいていの場合、《耕作》のほうが便利でしょうね。
《オニキス教授》
6マナのプレインズウォーカーは相当高いスペックが求められます。《オニキス教授》は[+1]でドロー、[-3]で除去、[-8]で奥義というよくあるものであり、5マナ相当のプレインズウォーカーであるように思えます。追加されている「魔技」能力は盤面に残れば強いでしょうが、プレインズウォーカーというのは生き残れば強力であるのが普通です。《オニキス教授》は盤面に出てすぐに大きなアドバンテージを得られそうにもありません。
《謎の賢者、カズミナ》
プラスの忠誠度能力がないプレインズウォーカーに[+2]能力を与えられるのは素晴らしいですね。悔やまれるのは、今のスタンダードにそういったプレインズウォーカーがいないこと。彼らがいるフォーマットであれば《謎の賢者、カズミナ》より強いアクションがあるでしょう。
デッキリスト:スゥルタイ根本原理
ここまでの寸評を踏まえ、『ストリクスヘイヴン』発売後はこのスゥルタイコントロールを試そうと考えています。
アゾリウス/エスパーの新戦力は?
スゥルタイについて言及してきましたが、スゥルタイコントロール以外で強そうなカードをいくつか取り上げておきましょう。
《消失の詩句》
非常に質の高い除去であり、現スタンダード環境のほとんどの脅威に触ることができます。しかし、エスパーコントロールを復権させるほどのカードなのでしょうか?
アグロデッキに強いのは間違いないでしょう。ただ、昨今のエスパーが抱える根本的な問題を解決していません。つまり、3色のコントロールを使うのに7マナで勝てる呪文を使わない理由はあるのか?ということです。スゥルタイは終盤戦により強く、直接対決をした場合にはそれが余計に際立ちます。とはいえ、《消失の詩句》はどこかで使わないのが惜しいほど強いカードに思えますね。
《壊滅の熟達》
かなりポテンシャルが高いと思います。旧型の《次元の浄化》をアゾリウスコントロールで使った経験がありますが、《壊滅の熟達》のほうが明らかに強いはずです。2マナ軽減のためにパーマネントを2つバウンスさせてしまうのは決して安くない代償ですが、ここで重要なのは《次元の浄化》を手札に抱えたまま負けてしまう状況をこのカードなら生き残れるという点です。
《空の粉砕》はスタンダードでそこそこ使われており、このカードも相手に1枚ドローを献上することがよくある全体除去。《壊滅の熟達》のほうが有効な場面もあり得そうです。自分や相手がどれだけクリーチャーでも土地でもないパーマネントを並べるかによって使い分けることになるでしょう。
《才能の試験》
とうとう《出現の根本原理》の悩みから解放されるときが来た!と言えるかもしれません。ただ、現実的に考えるとスタンダードで採用するには用途が狭すぎると思います。より幅広い対応ができる《否認》や《神秘の論争》よりも《才能の試験》を優先させる理由を見つけるのは難しいでしょう。
ただ、今のスタンダードにはインスタント・ソーサリーがある程度活躍していますから、望むのであればサイドボードに枠を設けてみるのも良いかもしれませんね。
おわりに
『ストリクスヘイヴン:魔法学院』にコントロール向けの優秀なカードが収録されているのは間違いありません。セット全体のパワーは構築目線では非常に高いとは言えませんが、コントロールの未来を占ううえでそれは悪いことではないのかもしれませんね。
グレゴリー・オレンジ (Twitter)