Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/4/29)
マジックの基盤
今回のテーマはあらゆるカードゲームの基礎……リソースです!
カードの力を最大限に引き出すには、リソースを効率的でありバランスのとれたものに組み上げる以上にいい方法はありません。マジックにおいては、リソースはマナと呼ばれ、土地と名づけられたカードから生み出されます。ケーキのレシピと同じで、マナが適量でなかったり色の配分が適切でなければ、呪文を唱えることはできず、まともにゲームをプレイできません。
はっきりと言ってしまいますが、マジック:ザ・ギャザリングは”世界初”の人気トレーディングカードゲームです。後発のトレーディングカードゲームはマジックの”成功したコンセプト”を参考にしようとしてきましたが、その多くはマナを生み出す土地というカードタイプを用意していません。
いくつか事例を見てみましょう。
妙に詳しいと思われたかもしれませんが……実はここに挙げたカードゲームは全てプレイしたことがあります!
このマナを生む土地カードというシステムこそマジック:ザ・ギャザリングの特質です。デッキを構築しようとするなら、その基盤となるマナベースを必ず考えなくてはなりません。
マナベースの構築プロセスは純粋な科学です。デッキ構築においては、デッキ内の全ての呪文を唱えられる確率を最大限まで高める理想のマナベースを組み上げていきます。
世の中には統計を使って適切なマナベースを導き出す”マジック博士”がいますが、マジックには広大なランダム性と複雑さがあり、統計が役に立つことはあってもそれだけでは十分ではありません。土地のなかには独特な能力を持っていたり、制約を持っているものがあります。そういった全ての要素を考慮したうえで、デッキを構築しなければならないのです。
この記事では、マジックの土地を10位までランク付けし、それぞれの強み・弱み、真の実力を発揮させる方法を解説していきます。
多色土地ランキング
1~5位
1位:フェッチランド
ご存知のとおり、マジックには5つの基本土地があります。フェッチランドは2種の基本土地をサーチできるだけなく、基本土地タイプを持つ多色土地もサーチ可能です。
下の環境になると、フェッチランドのサーチ対象が広がり、基本土地5種のうちの2つ、2色土地10種のうち7つ(デュアルランド、ショックランド、サイクリングランド)、3色土地10種のうち9つ(トライオームランド。まだ全色登場していません)までサーチできます。ほかに土地の選択肢は数あれど、デッキに必要な全色を揃えるにはフェッチランドは最高の土地です。
念のため言っておくと、デッキからカードをサーチする能力は非常に強力なものです。デッキ内の土地の数を減らすことで、その後に呪文を引ける確率を上げます。マジックにはライブラリートップを操作するカードがあり、それと組み合わせることでサーチ効果は一層強くなります。《渦まく知識》《森の知恵》《師範の占い独楽》……どれもフェッチランドのシャッフル効果によって価値が上がるカードですね。
ほかにもフェッチランドを意識して見事にデザインされているカードとして《クルフィックスの狩猟者》や《ムル・ダヤの巫女》があります。
基本土地のサーチは、《血染めの月》《大爆発の魔道士》《不毛の大地》といった土地攻めのカードへの対抗策にもなります。好きなタイミングで生け贄に捧げられますから、《広がりゆく海》や《石の雨》などのソーサリースピードの土地破壊も回避できます。
1ターン内に土地を戦場に出す回数を増やせるので、《水蓮のコブラ》《面晶体のカニ》《ステップのオオヤマネコ》などの「上陸」を複数回誘発させられます。生け贄に捧げる土地であるため、《フェイに呪われた王、コルヴォルド》や《波乱の悪魔》といったカードの効果を誘発できるシナジーもありますね。
さらに、フェッチランドは墓地に送られますから、《死儀礼のシャーマン》《タルモゴイフ》《聖遺の騎士》、あるいは《時を越えた探索》などの「探査」呪文を使いやすくしてくれます。《世界のるつぼ》や《レンと六番》で墓地から回収してもいいですね。
フェッチランドを使うことで、ちょっとかっこいいプレイもできますよ。(1)相手が《炎の中の過去》をプレイ。(2)フェッチランドを生け贄に捧げ、その効果が解決される前に打ち消し呪文で《炎の中の過去》をカウンター。(3)フェッチランドの効果はスタックに置いたまま、《外科的摘出》で《炎の中の過去》を追放する。こうすれば《炎の中の過去》を「フラッシュバック」させるタイミングを与えません。ソーサリータイミングでしか「フラッシュバック」できませんからね。
ライフ損失が唯一のデメリットですが、《死の影》や《スカイクレイブの災い魔》を使うデッキならば逆手に取ることもできます。
フェッチランドに一番効く対抗策はライブラリーサーチを封じる/ライブラリーサーチに制約をかけるカードです。例を挙げるならば、《レオニンの裁き人》《疑念の影》《締め付け》が該当します。そのほかにも、《真髄の針》や《抑制の場》でフェッチランドの効果を制限したり、《もみ消し》や《計略縛り》で”カウンター”することも可能です。
要するに、フェッチランドはマナ基盤を整える以上の役割があります。シナジーを形成したり、相手のアクションに介入したりできるのです。こういった点がフェッチランドをマジックの歴代最高の土地に押し上げています。モダン・レガシー・ヴィンテージ・統率者戦といったフォーマットの主役です。一方、パイオニアでは禁止されています。
2位:デュアルランド
デュアルランドはシンプルであるがゆえに、非常に強力な土地となっています。2色を供給すると同時に、2つの基本土地タイプを持つためフェッチランドでサーチすることができるのです。無条件でアンタップインする点もこの土地の評価を上げる一因となっています。
3色デッキを使う場合は、必ずしもデュアルランドが望む色を供給してくれるとは限りません(たとえば、《Bayou》が2枚あって《渦まく知識》が手札にあるような状況)。とはいえ、基本土地と比べれば、デッキ内の呪文を唱えられる確率は上がるでしょう。1ターン目に《Underground Sea》から《渦まく知識》、2ターン目に《トーラックへの賛歌》といった動きも可能で、土地として効率的です。
純粋な”基本土地ではないので、《不毛の大地》や《血染めの月》に弱くなっています。《窒息》や《野火》などの土地対策に当たったときも、基本土地タイプを持つことが裏目に出ますね。
デュアルランドは再録禁止カードに指定されているので、希少かつ高価になっています。マジックの歴史を紡いできたカードであり、トレーディングカードのなかでも象徴的な1枚となっています。主戦場はレガシーやヴィンテージといったエターナルフォーマット、統率者戦。歴史の浅いフォーマットでは使用できません。
3位:ショックランド
統率者戦などですでにデュアルランドを最大枚数採用している場合、あるいはモダンやパイオニアといったデュアルランドが使用できないフォーマットの場合、選択肢に上がるのがショックランドです。レガシーにおける《死の影》デッキなどではデュアルランドよりもショックランドのほうがデッキに合っているということがありましたが、それは希なケースです。
フェッチランドからサーチすることができますが、アンタップインするには2点払わないといけないため、むやみやたらに枚数を増やすことはできません。《ゴブリンの先達》で攻撃してくる相手に対しては、1ターン目に2点払ってまで《血清の幻視》を本当に唱えるべきなのか慎重に考えるべきでしょう。
2点払うという行為が”ブラフ“として使えることもあります。相手に何かインスタントカードを持っているんじゃないかと誤認させるわけですね。2点を犠牲にしたからには何かを構えていると信じこませるのです。
4位:キャノピーランド
マジックを遊んでいると、土地を引きすぎてしまうという問題に直面します。呪文が必要なときに自身をドローに変換できるキャノピーランドは、この問題の解決策として有効です。
キャノピーランドが効果的なのは、モダンの人間やバーンのようにマナカーブの低いデッキです。ゲーム全体を通して呪文をドローできるようにし、ガス欠状態を回避させてくれます。いわゆるマナフラッドの確率を下げる構築をするには便利なカードですね。
マナを出そうとすると否が応でもライフが減りますので、基本的に遅いデッキよりも、手札を素早く空にできるマナカーブの低い高速デッキでおすすめのカードです。高速デッキはいち早く相手を倒すことを狙いとしていますから、デッキ内の強力な呪文に必要な色マナを出しつつもマナを無駄にしない効率的なマナソースが必要になります。
ドローに変換して墓地に送れば、「探査」コストに充てたり、《レンと六番》や《壌土からの生命》で回収してカードアドバンテージに還元することができます。
5位:小道ランド
これは私が”ひいき”にしている土地です。小道ランドは新世代の2色土地であり、個人的にとても信頼して使えています。特に気に入っているのは、《湿った墓》などとは違ってライフを失うことなく、1ターン目に《選択》か《致命的な一押し》を唱えることができる点です。序盤の序盤からアグロデッキを妨害しなくてはいけないときにとても便利ですね。
1ターン目に《選択》、2ターン目に《才気ある霊基体》といった動きはとれませんが、それを踏まえたカード選択をしていれば小道ランドは使い勝手が良いです。必要なときに必要な色マナを供給することで、土地事故の機会を減らしてくれるでしょう。初手の安定度を大きく高め、マリガンの確率を下げてくれます。
6位:ダメージランド
アンタップイン土地であるため、必要なときに色マナを生み出す力があります。マナが伸びた終盤になれば無色マナ源として使うことで、ライフ損失も抑えることが可能です。逆に言えば、ダメージランドの枚数を増やし過ぎてしまうと、ほかの種類の土地から色マナを出す機会が減るため、ダメージランドから受けるライフも大きくなります。遅いデッキ相手はなら大したことはありませんが、赤単バーンと当たったときは勝敗に影響しかねません。
基本的にダメージランドはコントロールよりもアグロ向けの土地ですが、ダメージランドの採用枚数やデッキ内の色シンボルの濃さによって評価は変わります(忘れないでくださいね、適切なマナベースを構築することが全てですからね!)
無色マナが出るため、《難題の予見者》や《現実を砕くもの》などのエルドラージクリーチャーを唱えるのにも便利です。
7位:チェックランド
1ターン目こそタップインになってしまいますが、マナベースをチェックランド用に構成しておけば2ターン目にはほぼ文句なしの土地になります。その力を存分に引き出すには、ほかの種類の土地とうまく組み合わせてやる必要があります。トライオームランド、ショックランド、デュアルランドはチェックランドの使いやすさを高めますが、チェックランドを増やし過ぎると予想以上にタップインになってしまうでしょう。1ターン目から積極的に呪文を唱えないデッキではチェックランドの弱みは軽減されます。
この土地を使うのであれば、アンタップインに必要な基本土地タイプを持つ土地の適正な枚数を見つけなければなりません。枚数を間違えてしまえば、ぎこちないマナベースになってしまい、マリガンや最悪の場合は敗北につながるおそれもあります。
8位:フィルターランド
この土地は使いやすさにブレがあります。フィルターランドだけでは色マナを出すことができないため、多すぎる構成は好ましくありません。たとえば、《秘教の門》が2枚あっても無色マナが2つ出るだけです。また、1ターン目においても色マナは出ず、《地盤の際》に代表される無色土地や”3色目”の基本土地が隣にあっても無色マナのみしか出ません。たとえば《沼》、《不毛の大地》、《秘教の門》2枚と並んでも望むように色マナは出せないので、フィルターランドを採用するときは気をつけてくださいね。
もうひとつのデメリットも厄介で、土地を2枚同時にタップせねばなりません。つまり、《島》《秘教の門》《血清の幻視》《流刑への道》が手札にあっても、自分のターン韻《血清の幻視》、相手のターンに《流刑への道》という動きがとれないのです。
無色マナが少ない2色デッキであれば使いやすさは飛躍的に上がります。1ターン目に《島》から《血清の幻視》、2ターン目に《秘教の門》から《ルーンの光輪》という流れができるのはフィルターランドの強みです。《鏡割りのキキジキ》《謎めいた命令》《パルン、ニヴ=ミゼット》のように色拘束の厳しいカードは《滝の断崖》で一層唱えやすくなるでしょう。
9位:ミシュラランド
このランキングで初の確定タップイン土地です。ミシュラランドごとでカードパワーはまちまちで、そのいくつかは頭一つ抜けています。上位3つはおそらく《怒り狂う山峡》《天界の列柱》《忍び寄るタール坑》であり、以前まではモダンで大きな存在感を示していました。
活躍できたのは、ミシュラランドが土地でありながらメインの勝ち筋になり得たからです。アゾリウスコントロールは全てをカウンターした後、《天界の列柱》だけで勝っていた時期もあります。好きなタイミングでアタッカーになるミシュラランドは、潜在的なダメージ源としてプレインズウォーカーへの有効な対抗策にもなりました。
10位:トライオームランド
ランキングで2枚目のタップイン土地。トライオームはとても独特なデザインです。異なる3色を生み出せる土地はどんなデッキでも非常に便利かつ強力です。タップインであるため採用枚数を増やしすぎるのはよくありませんが、《溢れかえる岸辺》から赤と緑のマナ(《ケトリアのトライオーム》)をサーチできる選択肢が取れるのは本当に素晴らしいですね!
おわりに
多色土地はこれからも新規収録/再録されていくことでしょう。こういった土地がなければ多様性は生まれませんからね。もし基本土地しかなかったとすれば、デッキ構築はかなり難しいものだったはずです。
今回ご紹介した土地のなかには近い将来にスタンダードで再録されるものもあるでしょう。多色土地は私たちが愛するゲームの本質的な部分ですから、集めて手元に置いておくのが良いのではないかと私は思います。
ではまた次回お会いしましょう。
ジェレミー・デザーニ (Twitter)