はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
先週は『ストリクスヘイヴン:魔法学院』によって大幅に強化されたデッキをご紹介しました。特に《精鋭呪文縛り》が加わった白系のアグロは、相手の除去に対する妨害を得たことになり、これまで以上にダメージクロックを継続できるようになっています。白系アグロの躍進はどこまで続くのでしょうか。
今回は『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップへの参加権利をかけた$5K Strixhaven Championship Qualifierの大会結果を振り返っていきます。
先週末の注目デッキは?
まずは先週末の注目デッキを確認していきましょう!
ラクドスサクリファイスは対戦相手のクリーチャーを奪い、それを生け贄に捧げて処理しながら何かしらのアドバンテージに変換していくアーキタイプ。《初子さらい》をはじめとしたコントロール奪取呪文により軽量アグロに強く、また、アンチスゥルタイ筆頭のディミーアローグに対しては《死の飢えのタイタン、クロクサ》で対抗します。
スゥルタイ根本原理のようなより重くアドバンテージ獲得手段の多いコントロールデッキを苦手としますが、アグロデッキが中心となる環境初期には適したデッキといえます。『ストリクスヘイヴン:魔法学院』での強化ポイントをみていきましょう。
最大の収穫は《禁忌の調査》の獲得でしょう。ラクドスサクリファイスは相手の手札を攻めたりボードコントロールは得意なものの、ドローソースが乏しく、さらに攻撃手段がクリーチャーの戦闘ダメージしかないため、一度不利になるとジリ貧になってしまいました。《禁忌の調査》はこれまでなかった大量ドローが見込めるカードであり、ブロック時やリセット呪文に対応してプレイしていきたいところです。ただし、その代償としてライフを支払わなければならず、押された場面ではやや使いにくいカードになっています。
その弱点をカバーすべく採用されたのが《想起の拠点》です。《禁忌の調査》のライフ損失を補うとともに、戦闘に頼らない新たな勝ち手段になっています。たとえ小粒のクリーチャーしか並んでいない戦場であっても一方的にライフを吸い取り、手札を循環させて戦力補充が可能です。この2枚が織りなすシナジーは膠着した状況を打開できる手段であると同時に、プレイヤー限定ながら《波乱の悪魔》を彷彿とさせるダメージ量を誘発します。
デッキは大幅にシェイプアップされ、定番だった墓地を肥やす《ぬかるみのトリトン》と《ティマレット、死者を呼び出す》が抜け、《ひきつり目》と《禁じられた友情》といったより軽いクリーチャーが増えています。《禁忌の調査》と《想起の拠点》の効果を最大化するためにも素早くクリーチャーの数を並べることが重要であり、1枚で複数生成できるカードが評価されているのです。
《ひきつり目》が「履修」してくる「講義」は4種類あり、複数体のクリーチャーを並べる《害獣召喚学》、特定パーマネント対策の《壊死放出法》と《ご破算》、そして強化呪文の《拡張解剖学》になります。《拡張解剖学》はどのマッチアップで使用するのか興味深いところです。
残るサイドボードには苦手とするスゥルタイ根本原理対策に大部分が割かれ、《強迫》に加えて《乱動する渦》が3枚も採用されています。クリーチャーのサイズが小さく《出現の根本原理》前にライフを削りきることは難しいため、《出現の根本原理》自体を封じてしまうのです。
$5K Strixhaven Championship Qualifier
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Lukas Dusek | スゥルタイ根本原理 |
準優勝 | Julian Felix Flury | 4色クラリオン |
トップ4 | 森山 真秀 | ラクドスサクリファイス |
トップ4 | Maxim Salmin | 緑単アグロ |
トップ8 | Mateus de Carvalho | ティムールワープ |
トップ8 | Bilbo Baggins | ナヤアドベンチャー |
トップ8 | Maksim Kopylovich | ティムールルーカ |
トップ8 | sandydogmtg | 赤単アグロ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者200名で開催された$5K Strixhaven Championship Qualifierはスゥルタイ根本原理を使用したLukas Dusek選手の優勝となりました。トップ8には7つのアーキタイプが入っていますが、内半数はアドベンチャーエンジンを搭載したものであり、このシステムがいかに強力なものであるか改めて証明されました。スゥルタイ根本原理を除く7つのデッキはクリーチャーをベースにしたアグロ~ミッドレンジであり、トップ8をみるにラクドスサクリファイスはメタゲームに合致した選択だったようです。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 | トップ16 |
---|---|---|
スゥルタイ根本原理 | 48 | 3 |
ディミーアローグ | 22 | 0 |
ナヤクラリオン | 19 | 3 |
ティムールアドベンチャー | 18 | 2 |
赤単アグロ | 16 | 2 |
ジェスカイサイクリング | 11 | 0 |
イゼットテンポ | 9 | 1 |
グルールアドベンチャー | 9 | 0 |
ラクドスサクリファイス | 7 | 1 |
その他 | 41 | 4 |
合計 | 200 | 16 |
決勝ラウンド(トップ16以上)にはスゥルタイ根本原理とナヤ/ティムールのアドベンチャー系が多く残った反面、ディミーアローグは1名も残ることができませんでした。使用者数が2番手ながら、です。得意とするスゥルタイ根本原理、青軸のアドベンチャーデッキはそこそこいたものの、必要以上に意識されていたのが原因でしょう。トップ16以内の赤いデッキには漏れなく《アゴナスの雄牛》が採用されていたのですから。
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スゥルタイ根本原理
スゥルタイ根本原理はマナ加速と除去呪文を組み合わせて、《出現の根本原理》への到達を目指すデッキ。今回の構築はマナベース強化と汎用性の高いカードは複数枚、用途が限られていたり《出現の根本原理》から持って来るべきカードは1枚と非常に綺麗にまとまっています。
前回紹介したリストには《クアンドリクスの栽培者》が採用されていましたが、《ひらめきの瞬間》に代わっています。戦場はノーガードになりますがドローできる分次のターンの選択肢が増え、インスタントであるため相手の裏をかいてマナを増やすことが可能になります。特にミラーマッチでは手札とマナ双方が重要であり、《ひらめきの瞬間》は1枚でその条件を満たしています。
現状9枚目以降のマナ加速はアグロデッキに強い《クアンドリクスの栽培者》か、コントロール戦を意識した《ひらめきの瞬間》の2択になりますが、カード間に優劣はないため、メタゲームに合わせた方を選択すべきです。
《オニキス教授》は《嘘の神、ヴァルキー》に続く《出現の根本原理》からプレイできる2種類目のプレインズウォーカーであり、カードアドバンテージとクリーチャー除去、奥義とバランス良く能力を持っています。やや重めのプレインズウォーカーのためボードコントロールが確立するまで活躍できませんが、コントロールマッチならば別です。着地した瞬間からアドバンテージを稼ぐことができ、時間経過とともにその差は開いていきます。
さらに忘れてはならないのは、常在型能力として「魔技」を持っていること。黒らしくライフドレインであり、これにより中盤以降無駄になるマナ加速などにも使い道が生まれたのです。ライフ回復手段の乏しいミラーマッチでは2点もバカにならず、《アールンドの天啓》や《海門修復》と合わせれば一気にライフを詰められます。
サイドボードで目を引くのはジェスカイサイクリングをメタった《真っ白》。リソース獲得手段の乏しいサイクリングデッキの手札を攻めつつ、墓地を一掃することで《天頂の閃光》を封じます。ボードさえ制圧すれば《天頂の閃光》頼みとなるため、あとは《エルズペスの悪夢》、《才能の試験》と組み合わせてゲームに蓋をするのみです。
4色クラリオン
前環境では一点突破を目指すナヤフューリーに対するアンチデッキとなったナヤクラリオン。《エッジウォールの亭主》《スカルドの決戦》の2枚にバックアップされた《クラリオンのスピリット》が延々とクリーチャートークンを並べ、攻防に活躍します。全体的にクリーチャーは小粒ですが、《スカルドの決戦》がリソース補充とサイズアップを兼ねるため、英雄譚さえ引ければほかのデッキに引けを取りません。《巨人落とし》のおかげでアドベンチャー系統のなかでもっともクリーチャー戦に強いアーキタイプになります。
新加入の《精鋭呪文縛り》はこのデッキに不足していたメインボードから採用できる干渉手段です。ボードコントロールに特化していた分《出現の根本原理》や《アールンドの天啓》などへの対抗策が乏しく、クリーチャーもほとんどが3マナ以下のため《影の評決》という致命的な弱点がありました。
《精鋭呪文縛り》は相手のビッグスペルや全体除去を遅らせると同時に、手札を確認することでどう攻めるべきか見極める根拠となるのです。キーカードである《クラリオンのスピリット》が安全に着地できるか否かを知るだけでも十分なリターンとなりますね。
もう一点忘れてはならないのがサイドボードの《神秘の論争》です。「出来事」や《スカルドの決戦》を絡めてボードを作った後は、《出現の根本原理》に対する解答をチラつかせて相手を牽制しつつ、一気に押し切ってしまいます。
若干マナベースに手を加えるだけの最小限のリスクで、「シングルシンボルかつ1マナ」の対抗策を手に入れたことになります。《否認》と比べると《影の評決》をはじめとした除去呪文こそ打ち消しにくいものの、クロックを用意しながら妨害するこのデッキにおいて1マナと2マナには天と地ほどの差があります。対象を《出現の根本原理》と《アールンドの天啓》のみにすることで構えるターンも絞り込める《神秘の論争》に軍配が上がったようです。
赤単アグロ
赤単アグロの名手として知られるsandydogmtg選手は期待を裏切らずやはり赤単アグロを持ち込み、トップ8まで進みました。決勝ラウンドには得意とするディミーアローグがおらず、やや苦しい戦いとなったようです。
新顔《講堂の監視者》は足の速い1マナ域のクリーチャーであり、《熱烈な勇者》と同じく召喚と同時にダメージを刻んでいけます。8枚だった1マナ域を10枚にしたことでこれまで以上に序盤から安定して展開できるようになり、さらに《リムロックの騎士》や《霜噛み》と合わせてマナを無駄にすることなく動けるように構築されています。何よりも《朱地洞の族長、トーブラン》、《エンバレスの宝剣》といった数を並べることで効果が高くなるエンドカードがあるため、軽い優良クリーチャーを採用するに越したことはありません。
突破力はないため相手の戦場にクリーチャーが並んでしまうと自身は攻撃にはいけませんが、ほかのクリーチャーのサポートとなる能力を有しています。クリーチャーのブロックを禁じる起動型能力は、除去呪文ではなくブロッカーを立たせた相手に手痛い一撃をお見舞いさせ、除去されない限り毎ターン起動することができるのです。速攻があるためすぐに能力が起動でき、中盤以降は呪文のように機能します。
直近の大会結果
5月5日から5月11日までのMOを中心とした大会結果になります。たった1週間ですが、オンライン大会のためメタゲームの変化は早くなっています。まずはアグロデッキを食うかたちでラクドスサクリファイスが現れ、GW期間中の全Standard Preliminaryで入賞。ダメージソースがクリーチャーのみの単色アグロは非常に厳しく、軸の違う勝ち手段やアドバンテージが稼げるカード、もしくは重く強力なカードが必要になります。
仮想敵がラクドスサクリファイスになったことで、週末が近づくにつれて別の2つのアーキタイプの入賞数が増えていきます。飛び道具を持つジェスカイサイクリングとミッドレンジが好物なスゥルタイ根本原理です。特に5月8日のStandard Challengeではラクドスサクリファイスが完全に抑え込まれ、サイクリングとスゥルタイが4つずつ入賞。最終的にジェスカイサイクリングの優勝となりました。
しかし、これで終わらないのがメタゲームの妙。スゥルタイ根本原理が勝ち過ぎたため、ディミーアローグが復権を果たします。5月9日のStandard Challengeではスゥルタイ根本原理をディミーアローグが狙い、その恩恵に預りラクドスサクリファイスも複数入賞しているのです。スゥルタイ根本原理とディミーアローグ、ラクドスサクリファイスの追いかけっこはいつまで続くのでしょうか?
おわりに
メタゲームはスゥルタイ根本原理を中心に形成されていますがアグロデッキが数多く存在しているため、今回のラクドスサクリファイスのように間隙を縫って活躍するデッキもまだまだありそうです。特に勝ちきれなかったサイクリングデッキとディミーアローグはコンセプトがしっかりしているため、メタゲームから切ることはできません。動向に注目していきましょう。
今週末には『ストリクスヘイヴン』リーグ・ウィークエンドが控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。