マジック名カード集 ~『トーメント』編~

晴れる屋メディアチーム

はじめに

みなさま、「名カード集」へようこそ。

この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。

今回は黒を大々的にフィーチャーした『トーメント』をご紹介しましょう。

『トーメント』ってどんなセット?

『トーメント』とは、2002年2月に発売されたオデッセイ・ブロックの2番目にあたる小型エキスパンション。セットの固有テーマに「黒」を掲げて、色配分を極端に黒へ偏在させています。その分対抗色である白と緑のカードは少なくなっており、カードプールが均一化するには『ジャッジメント』まで待つしかありませんでした。

野生の雑種犬日を浴びるルートワラ堂々巡り

キーワード能力に関しては、カードが捨てられたときに誘発する「マッドネス」が登場しました。自分で捨てても、相手に捨てられても誘発するこの能力は、本来支払うはずのマナコストよりも軽く使え、さらに自分のターンでしか唱えられないクリーチャー呪文がインスタントタイミングでプレイ可能になりました。《野生の雑種犬》で相手のターンに《日を浴びるルートワラ》を捨てて「マッドネス」でプレイ、なんてプレイは日常茶飯事だったのです。

狂気を操る者チェイナーイチョリッド渋面の溶岩使い

また、『トーメント』以降、プレミアム・カード(フォイル/foil)の封入率が上がっています。『ウルザズ・レガシー』より封入が始まったプレミアム・カードは100枚に1枚の割合でしたが、『トーメント』以降は70枚に1枚へと変更されたのです。コレクターには嬉しい変更でしたね。

『トーメント』の名カードたち

《陰謀団の貴重品室》

陰謀団の貴重品室

《陰謀団の貴重品室》

(2),(T):あなたがコントロールする沼1つにつき、(黒)を加える。

《暗黒の儀式》を失い遠ざかりりつつあった栄光の時代。黒に再びスポットライトを浴びせたのは間違いなく、この土地があったからこそ。

《陰謀団の貴重品室》は自身を含めて3枚の土地をタップすることで、沼の分だけ黒マナを生み出すマナブースト効果を持っています。最大限活用するにはなるべく多くの《沼》を並べる必要があるため、黒単色で構築することが望ましいカードです。幸いにして『トーメント』では黒が大々的にフィーチャーされ、黒単色のデッキ構築が可能となりました。

もぎとりナントゥーコの影

『トーメント』が加入したことでスタンダードに黒単コントロールが登場します。《無垢の血》《チェイナーの布告》といった単体除去と、沼の数を参照するリセット呪文《もぎとり》が加わりアグロデッキに強い構成となりました。《陰謀団の貴重品室》があることで多くのマナを使え、重いコントロールでありながら1ターンに複数の行動ができたのです。これによりマナが足りず相手のクリーチャーを撃ち漏らす心配もありませんでした。

相手の攻撃の手を止めた後は素早く《ナントゥーコの影》《ラクァタスのチャンピオン》といったフィニッシャーへと繋げます。特に《ナントゥーコの影》《陰謀団の貴重品室》との相性が良く、2マナのクリーチャーながら余ったマナを注ぎ込むだけで軽々と相手戦線を突破していきました。相手が戦場を再構築する前に、押し切ってしまえるだけの攻撃手段も持ち合わせていたのです。

ヨーグモスの墳墓、アーボーグ

最近の情報ですと、『モダンホライゾン2』での再録が発表されています。相性の良い《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》もあることから、もしかするとモダンでも黒単コントロールが復権するかもしれませんね。

《精神ヘドロ》

精神ヘドロ

《精神ヘドロ》

プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、あなたがコントロールする沼1つにつきカードを1枚捨てる。

『トーメント』以降の黒単コントロールを語る上で、もう1枚無視できないカードがあります。それは沼の分だけ手札を奪う《精神ヘドロ》です。5ターン目に唱えれば単純計算5枚の手札を奪うため、ミッドレンジやコントロールに対してはコレ1枚で勝負が決まってしまうことさえありました。

強迫

『トーメント』の猛プッシュを受け、スタンダードとブロック構築の両方で黒単コントロールは一大勢力となりました。当時のスタンダードには《対抗呪文》などの軽い打ち消し呪文がありましたが、それでも活躍できた背景にはピンポイントとアドバンテージの両方のタイプの手札破壊も持ち合わせていたためです。《強迫》で露払いした後は、《精神ヘドロ》で相手の手札を根こそぎにするだけ。たとえドローに長けた青であってもひとたまりもありません。

陰謀団の先手ブレイズ

黒単コントロールのミラーマッチでは《精神ヘドロ》を先にプレイする=勝ちとまでいわれ、「ヘドロゲー」という言葉まで生まれました。特にブロック構築ではその傾向が強く、先に《精神ヘドロ》へたどり着くためにマナを攻める《陰謀団の先手ブレイズ》《腐臭の地》が採用されたほどでした。先手5ターン目にキャストされる《精神ヘドロ》は悪夢以外の何者でもなく、ゲームを立て直すことは至難の業だったのです。

《尊大なワーム》

尊大なワーム

《尊大なワーム》

トランプル

マッドネス(2)(緑)(あなたがこのカードを捨てるなら、これを追放領域に捨てる。あなたがそうしたとき、マッドネス・コストでこれを唱えるか、これをあなたの墓地に置く。)

《日を浴びるルートワラ》と並び、「マッドネス」クリーチャーを代表する1枚の《尊大なワーム》。手札から唱えると5マナ4/4とやや控えめなサイズですが、「マッドネス」することでインスタントタイミングでプレイ可能な3マナクリーチャーへと破格の性能へと早変わりします。自分の戦場に《野生の雑種犬》などの共鳴者(能動的に手札をすてる能力を持つパーマネント)さえいれば、環境に蔓延る《獣群の呼び声》を一方的に打ち取り、除去呪文をかいくぐって相手エンドフェイズに現れることも可能でした。

野生の雑種犬マーフォークの物あさり日を浴びるルートワラ堂々巡り

スタンダードでは青緑マッドネスの主力アタッカーとして、ローテーション落ちするまで使われ続けました。《野生の雑種犬》《アクアミーバ》《マーフォークの物あさり》で能動的に「捨てる」体制を作ることで、《尊大なワーム》は実に都合良く登場したのです。同アーキタイプは「マッドネス」を攻防の両拠点に置いた構築であり、使いやすく、さらにコモンやアンコモンが中心だったためカードが揃えやすくなっていました。

《綿密な分析》

綿密な分析

《綿密な分析》

プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを2枚引く。

フラッシュバック ― (1)(青), 3点のライフを支払う。(あなたはあなたの墓地から、このカードをこれのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後、これを追放する。)

《霊感》をソーサリーにする代わりに「フラッシュバック」を付けたのが《綿密な分析》です。インスタントタイミングでの行動を得意とする青にあって、4マナとやや重いドロー呪文はあまり噛み合っているようには見えませんが、打ち消されたり捨てられたとしてもアドバンテージを稼げることから、コントロールマッチ、特に青いコントロールデッキを想定してのアドバンテージ源として重宝されました。たとえ表裏両面が打ち消されようとも、差し引きで相手は2枚のカードを失ったことになります。何とも不平等なカードといえますね。

サイカトグ野生の雑種犬ミラーリの目覚め

サイカトグ、青緑マッドネス、ウェイク。スタンダードの青いデッキであれば、《綿密な分析》は必ず採用されていました。青緑マッドネスのようなテンポで押すアーキタイプにとってこのカードは、共鳴者で捨て「フラッシュバック」することで軽く唱えらるため、展開を阻害せずにアドバンテージを稼げる呪文となったのです。

直観物静かな思索

手札からプレイしても十分ですが、ほかのカードと組み合わせればより効率よくアドバンテージを稼ぐことができます。スタンダードでは《物静かな思索》、旧エクステンデッドでは《直観》といったパートナーがおり、1枚のサーチ呪文が6~8枚のカードへと変換可能でした。

ただし、「フラッシュバック」の多用には注意が必要です。コストにマナのほかにライフも要求されるためです。カードを引きたいがあまり、うっかりライフ3で「フラッシュバック」してしまっては元も子もないですからね。

《壊滅的な夢》

壊滅的な夢

《壊滅的な夢》

《壊滅的な夢》を唱えるための追加コストとして、カードをX枚、無作為に選んで捨てる。

各プレイヤーは土地をX枚生け贄に捧げる。《壊滅的な夢》は、各クリーチャーにそれぞれX点のダメージを与える。

手札を捨てた分だけ何かしらの効果を発揮する夢サイクル。赤の《壊滅的な夢》土地とクリーチャーを除去する、調節可能な《燎原の火》となっています。手札を犠牲にするもののわずか2マナで戦場を一掃できるため、アグロ戦略に対して相性が良いカードといえます。問題はリカバリー手段ですが、無作為に捨てなければいけないため、土地やドローだけを厳選して残すことは不可能でした。

壌土からの生命樹木茂る山麓平穏な茂み

《壊滅的な夢》の持つ問題点を解決し、攻防の軸としたのが旧エクステンデッドのアグロロームです。土台となったのは、フェッチランドと「サイクリング」ランドを《壌土からの生命》で循環させるロームエンジンであり、これにより墓地を対策されない限り延々とアドバンテージを稼ぐことができました。

壊滅的な夢土を食うもの

《壌土からの生命》で得たアドバンテージは《壊滅的な夢》のコストへと当てられ、同時に《土を食うもの》を育てる餌にもなりました。相手のクリーチャーと土地を流すとともに、巨大なクロックを用意することで復旧までの時間を与えません。たとえばお互いの戦場に土地が3枚ずつあり、さらに自分の戦場に《土を食うもの》、墓地に土地が2枚ある状態で《壊滅的な夢》をX=3でプレイしてみます。すると3枚ずつ土地を生け贄に捧げるので《土を食うもの》が8/8まで育ちます。わずか3パン、《剣を鍬に》のない世界では巻き返しのしようもありません。

仮に《土を食うもの》が除去された場合でもご安心を。こちらは《壌土からの生命》があるため相手よりも復旧が早く、追加の《土を食うもの》《突撃の地鳴り》など次の攻撃手段を引き込めば良いのです。わずか2枚の土地さえ引ければ、あとは延々と《壌土からの生命》で回り続けるのですから。

まだある名カード

さて、『トーメント』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。

もっと『トーメント』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!

次回の「名カード集」では、『ジャッジメント』をお届けいたします。

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