マジック名カード集 ~『ジャッジメント』編~

晴れる屋メディアチーム

はじめに

みなさま、「名カード集」へようこそ。

この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。

今回は白と緑の勢力拡大となった『ジャッジメント』をご紹介しましょう。

『ジャッジメント』ってどんなセット?

『ジャッジメント』とは、2002年5月に発売された全143種類の小型エキスパンション。オデッセイ・ブロックの最後を飾るエキスパンションであり、ひとつ前の黒偏重だった『トーメント』とのバランスを取るため、白と緑のカードが多く収録されています。

ミラーリの目覚め狩猟場藪跳ねアヌーリッド幻影のニショーバ

このセットには合計4枚の多色カードがありますが、そのすべてが白緑であり、どれもトーナメントで活躍した実績を持っています《ミラーリの目覚め》は有り余るマナを武器に《正義の命令》《狡猾な願い》を使い回すウェイクで、《狩猟場》は「スレッショルド」することでクリーチャーをただで出せるため、《神秘の蛇》と組み合わせて使用されました。

《藪跳ねアヌーリッド》は「マッドネス」やインカーネーションの起点となり、優れたサイズと除去に強いことを武器に白緑系アグロを環境デッキへと押し上げます。《幻影のニショーバ》はマナコストがかなり重く通常のデッキでは使いにくいカードでしたが、アグロ戦略への解答としてリアニメイトデッキに居場所を見つけました。

死せる願い
黄金の願い狡猾な願い燃え立つ願い生ける願い

新メカニズムは、サイドボードからカードを手札に加えられる願いサイクル、墓地にあることで効果を発揮するインカーネーション、ダメージに耐性を持つ幻影です。特に願いサイクルは、サイドボードにサーチ先を複数用意するウィッシュボード戦略を可能とし、デッキの対応力が飛躍的に向上しました。

森を護る者

また、オーレ・ラーデ/Olle Rade選手(現マジック・プロツアー殿堂)がマジックのトッププレイヤーのみを招待しておこなわれるお祭りイベント、インビテーショナルを優勝し、デザインしたのが《森を護る者》です。イラストには蜘蛛に乗るオーレ選手が描かれていますが、これはプロツアーコロンバス96優勝時に使用していたバグバインドを意識してのこと。能力が地味なこともあり発売当時はあまり活躍できませんでしたが、現在は《暗黒の深部》デッキやクリーチャーによるコンボデッキにその姿をみることができます。

『ジャッジメント』の名カードたち

《狡猾な願い》

狡猾な願い

《狡猾な願い》

あなたは、ゲームの外部にあるあなたがオーナーであるインスタント・カード1枚を選び、そのカードを公開し、あなたの手札に加えてもよい。《狡猾な願い》を追放する。

サイドボードからインスタントを手札に加えることができる願いサイクルの青バージョン。このカードが登場したことでサイドボードに選択肢を増やし状況に応じて必要なカードを選択するウィッシュボード戦略が確立されました。3マナとややマナコストが気になりますが、これ自身とサーチ先がインスタントのため、相手の動きに瞬時に対応できる柔軟さが魅力です。

サイカトグFact or Fictionミラーリの目覚め一瞬の平和

登場当初から激動サイカトグに採用され、覇権を支えました。以前はミラーマッチで有効な《枯渇》をメインボードに採用することもありましたが、《狡猾な願い》あれば必要に応じてサイドボードから手札に加えるだけで良いのです。これによりアグロデッキなどとマッチアップした際も無駄カードがなくなりました。

ローテーション後はウェイクなどのコントロールデッキで幅広く採用されました。かつてはサイドボードに加えて追放領域におかれたカードも選択できたため、墓地から追放したカードや「フラッシュバック」の使い回しも可能でした。《狡猾な願い》から導かれる《一瞬の平和》はアグロデッキにとっては悪夢でしかなく、《ミラーリ》があれば《狡猾な願い》自体をコピーすることで、願いの連鎖が実現したのです。いずれのデッキも世界選手権を制したデッキであり、青の強い時代を支えたカードといえるでしょう。

《幻影のケンタウロス》

幻影のケンタウロス

《幻影のケンタウロス》

プロテクション(黒)

《幻影のケンタウロス》は、その上に+1/+1カウンターが3個置かれた状態で戦場に出る。

《幻影のケンタウロス》にダメージが与えられる場合、そのすべてのダメージを軽減する。《幻影のケンタウロス》の上から+1/+1カウンターを1個取り除く。

《幻影のケンタウロス》は強力なダメージ軽減効果を持ち、高い打点と《サイカトグ》に強いプロテクション(黒)を付与された当時のメタゲームを反映したデザイン。火力と戦闘に強く、攻守に優れたクリーチャーといえます。+1/+1カウンターを取り除けなくてもダメージは軽減されるため、同時に収録された《象の導き》をエンチャントすれば、事実上地上の突破は不可能となってしまいます。

サイカトグ恐ろしい死

当時のスタンダードは不動の王者である《サイカトグ》をいかにして倒すかに躍起になっていました。高速展開が武器のアグロデッキであろうとも、《サイカトグ》が着地した瞬間に突破は難しくとなってしまいます。《嘘か真か》《綿密な分析》にバックアップされたエイトグは、火力も戦闘ダメージも耐え、逆に相手の喉元へ刃を突きつける存在だったのです。

《幻影のケンタウロス》は赤緑や白緑などの攻撃的なデッキに採用されました。《サイカトグ》を無視してライフを詰められることに加えて、《恐ろしい死》などの黒除去にも耐性があり、一度着地すれば除去するのは至難の業。クリーチャーが並びやすいアグロデッキには《チェイナーの布告》の効果は薄く、《幻影のケンタウロス》は着地すればそのまま完走できるほどでした。

《金切るときの声》

金切るときの声

《金切るときの声》

飛行を持つ白の1/1の鳥・クリーチャー・トークンを2体生成する。

フラッシュバック―あなたがコントロールしていてアンタップ状態の白のクリーチャー3体をタップする。(あなたはあなたの墓地から、このカードをこれのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後、これを追放する。)

《急報》に代表される白得意の複数のクリーチャー生成呪文。4マナで2体と聞くと控えめに感じるかもしれませんが、「フラッシュバック」があるため4体生成できます。何よりも「フラッシュバック」コストにマナが不必要なため、展開力は加速度的に上がります。なんせ3ターン目までにクリーチャーを1体用意できれば、《金切るときの声》1枚で5体までクリーチャーは増えるのですから。あとは《聖餐式》《栄光の頌歌》といった全体強化呪文と組み合わせるだけとなります。

聖餐式物静かな思索

通常の白単アグロにも採用されましたが、オデッセイ・ブロック構築では「フラッシュバック」に焦点を当てた構築がされました。パニッシャー・ホワイトと呼ばれるタッチ青の白ウィニーは、クリーチャーを展開しつつ《聖餐式》で強化するデッキです。この青の部分に《物静かな思索》が採用されたことで《金切るときの声》を確実に用意でき、さらにトークンがトークンを呼ぶことで「フラッシュバック」が連鎖するようになっていました。

《起源》

起源

《起源》

あなたのアップキープの開始時に、《起源》があなたの墓地にある場合、あなたの墓地からクリーチャー・カード1枚を対象とする。あなたは(2)(緑)を支払ってもよい。そうしたなら、それをあなたの手札に戻す。

墓地にいることで特定の効果を発揮するインカーネーション。《起源》は緑を含む3マナでクリーチャーを回収でき、消耗戦に強いアドバンテージエンジンとなりました。『オデッセイ』期のスタンダードには《入念な研究》《野生の雑種犬》など墓地にカードを置くことは容易であり、中盤以降のマナの使い道になるため、クリーチャー主体のデッキに採用されました。

生ける願いけちな贈り物適者生存

《起源》は消耗戦に強いカードながら、回収コストを考えると複数枚は引きたくないカードです。そこでどのデッキもいかにして《起源》を用意するかに工夫を凝らしました。スタンダードでは《生ける願い》を採用することでサイドボードに1枚確保しながら、ほかのクリーチャーの選択肢もとれる柔軟な構築となりました。

カードプールが広がった旧エクステンデッドやレガシーでは、より強力なサーチカードがあります。《けちな贈り物》《適者生存》《起源》と一緒に複数のクリーチャーを探し出し、墓地に落とすことまでできたのです。《破滅的な行為》で戦場をコントロールし、《桜族の長老》《永遠の証人》でリソースを稼ぐけちマルカには最適なカードアドバンテージ獲得手段となりました。

《縫合グール》

縫合グール

《縫合グール》

トランプル

《縫合グール》が戦場に出るに際し、あなたの墓地にあるクリーチャー・カードを望む枚数だけ追放する。

《縫合グール》のパワーはその追放されたカードのパワーの合計に等しく、タフネスはそれらのタフネスの合計に等しい。

マナコストは7マナと重く、しかもトリプルシンボル。サイズを上げるにも墓地にクリーチャーが必要とひと手間かかり、かなり使いにくいクリーチャーです。スタンダードではまったくいいとこなしのレアでしたが、旧エクステンデッドではいくつもの瞬殺型リアニメイトコンボのフィニッシャーとなりました。

生き埋めKrosan Cloudscraper縫合グール死体のダンス

アングリーハーミット2にはじまり、アングリーグールやセファリッド・ブレックファーストへと続くコンボの系譜。いずれのデッキも墓地にクリーチャーを落とし、《死体のダンス》などで《縫合グール》を釣り上げて、一撃のもとに切り伏せます

《生き埋め》はこれ1枚で《クローサの雲掻き獣》2枚と《縫合グール》を墓地に用意できるため、あとは《死体のダンス》で釣り上げるのみ。わずか2枚でトランプル持ちの26/26クリーチャーを生成し、しかも速攻付き。《モックス・ダイアモンド》によるマナ加速と手札破壊の《強迫》があったことで、耐えるのは難しいコンボとなりました。

今も現役の『ジャッジメント』カード

溶岩の投げ矢溶岩の投げ矢

《溶岩の投げ矢》

クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。《溶岩の投げ矢》はそれに1点のダメージを与える。

フラッシュバック―山1つを生け贄に捧げる。(あなたはあなたの墓地から、このカードをこれのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後、これを追放する。)

昨今のカードパワーの上昇により現在の環境でかつての名カードたちの活躍は難しくなっています。ですが、なかには現在も構築フォーマットでその存在感を示しているカードもあるのです。『ジャッジメント』では《溶岩の投げ矢》がまさにそれに該当します。

《溶岩の投げ矢》は小型クリーチャーの多い環境に強いカードであり、旧エクステンデッド時代に活躍しました。クリーチャーの質が上がり、コンボやコントロールの多いレガシーではその姿はみませんが、『モダンホライゾン』に再録されたことをきっかけにトーナメントシーンへと帰ってきたのです。

僧院の速槍損魂魔道士スプライトのドラゴン

モダンでの使用が可能になったことで、ひとつのデッキが大幅に強化されました。それこそが非クリーチャー呪文を唱えることで瞬間的にサイズが上がる果敢デッキです。《溶岩の投げ矢》はタフネス1を咎めるメタカードから、《僧院の速槍》《損魂魔道士》の打点を爆発的に上昇させる起爆剤となりました。「フラッシュバック」はマナがかからないためほかの呪文と相性が良く、中盤以降は《獲物貫き、オボシュ》と組み合わせて《稲妻》へと変わります

まだある名カード

さて、『ジャッジメント』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。

もっと『ジャッジメント』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!

次回の「名カード集」では、『オンスロート』をお届けいたします。

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