リーグ残留とプロシーンの未来

Sebastian Pozzo

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2021/06/04)

逆転劇

今は、リーグに残るための重要なチャンスになるからがんばろうという気持ちになっている。ベストを尽くしたいし、リーグから脱落する結果になっても、懸命に戦ったよとは言いたいからね。

これは僕の記事、「2020年に得た教訓」から引用したものだ。当時、リーグウィークエンドで本調子を出せずにいた。大会の調整をしたり、大会で試合をするたびにライバルズリーグ脱落のストレスやプレッシャーに苛まれていた。

驚愕の逆転劇

それでもその荒波を乗り越え、リーグ最下位から脱出してライバルズリーグ残留できるまで状況を好転させられた。この成功の裏には自分でメンタルを管理できるようになったのが一因としてある。ただ、運命の分岐点で幸運が味方に付いたのも間違いないだろう。

では、何が変わったんだろうか?ウィザーズの組織化プレイに関する衝撃的な発表とか、変わったことはたくさんある。ひとつひとつ見ていこう。

逆転を支えた変化

第一の変化。それはライバルズリーグ脱落の可能性を受け入れたことだ。リーグメンバーのレベルはとても高いから、抜かりない準備やプレイングをしたとしても負けることはある。リーグが始まる当初、脱落するメンバーは少数だから残留できるだろうと高をくくっていた。だけど、実際に脱落の割合が低いとしても、その内の1人に入ってしまう可能性はある。それに、ライバルたちは精鋭たちばかりだから、負けたとしても恥でも何でもない。

戦いの覚悟

2つ目の変化。もし来年もライバルズリーグに残れたら、そのときはプレッシャーに悩まされるのではなく、この経験をもっと楽しもうと誓った。それが仮に調整時間の減少や敗北の増加につながったとしてもね。

それから、マジック以外の活動にも精を出したいと思うようにもなった。自分のエネルギーを充填できるほかの何かをしたかったんだ(ロックダウン下にあってはエネルギーを保つことは難しい。だけど維持するように努力するのはとても大切だ)。こういった心境の変化はすべてマジックへのモチベーションを高め、結果的に成績を上げるためだ。調整の時間は減るかもしれないけどね。

均衡の復元

そうして最後から2番目のリーグウィークエンドがやってくると、僕は調整に妥協を入れた。結果は振るわなかったものの(5-7)、崖っぷちで残留できる順位になった。このリーグウィークエンドの調整は理想的なものとは言えず、プレイ中の集中力も不足。まだ正しい心の持ち方をできていないという証拠だった。まだまだ工夫が必要だね!

残留メンバーの最後尾で最後のリーグウィークエンドを迎えようというころ、ウィザーズから大きな発表があった。その発表によれば、2022年の中頃にプロリーグ(MPLとライバルズリーグ)は終了し、今後はトッププレイヤーたちに年俸や大型大会への安定した招待を与えないとのことだった。

これについて僕の意見を詳しく伝えるつもりはない。コミュニティで散々語られていることだし、僕の考えもおおむねそれと一致している。リーグ制度はマジックというゲームをプロモーションするのに最高のシステムではなかった。そのトップ層に入るには険しい道のりがあり、その中間となるステップがなかったため、大多数のプレイヤーは腰を入れて取り組もうと思えなかったからだ。

議会の採決

“国際マジック:ザ・ギャリング連盟”と呼ぶべきものがないのも理解しておかねばならない。プレイヤーからなる委員会などはなく、マジックにとっての最善を決める投票をすることもない。

これは同時にウィザーズは自身の発表を任意のタイミングで取り下げられるということでもある。(やらないと思うけど)リーグが復活する可能性だってあるし、リーグ設立前のプロプレイヤーズ・クラブに似た制度を再建させる可能性もあるだろう。かつて年に6度のプロツアーを開催すると発表してから間もなく、その内の2回をキャンセルしたこともあった。だから本当に確かなことは何もない。

僕としては楽観的になることもなく、悲観的になることもないようにしている。期待し過ぎず、同時に競技マジックは死んでいないと捉えることが自分に一番合った考え方だ。

ストリクスヘイヴンの競技場

個人的な意見だけど、しっかりとした組織化プレイのシステムを作ることはウィザーズにとって大きなリターンを見込める投資だと思う。ウィザーズが納得し、機能するシステムは必ずあるはずだ。プロツアーというブランドは長きに渡って多くのプレイヤーをマジックに魅了させてきた。プロツアーと似たもの、あるいはそれ以上のものなくしてウィザーズに最善の結果がもたらされることはないだろう。

では、このウィザーズの発表は最後のリーグウィークエンドを迎える僕にどんな影響を与えたのだろうか?モチベーションが下がったという人もいるだろうけど、僕は肩の荷が下りた想いだった。自分で自分にプレッシャーをかけてきたのは、ライバルズリーグに加わる道のりが険しく、脱落したらいずれまた僕はライバルズリーグに入りたいと思ってしまうだろうと考えていたからだ。

何年も続くリーグのために戦っているのではなく、あと1年しかないリーグのために戦っているんだと思えるようになったことで気持ちが大きく楽になった。もしリーグから脱落したとしても、リーグ後の新時代でゼロからのスタートを切れる機会になっていただろう。

安らぎ

残留を懸けたリーグウィークエンド

そうは言っても、残留の可能性がある以上諦めることはしたくない。最後のひと踏ん張りをして、最後のリーグウィークエンドの調整に当たった。大会前の順位は最下位であり、残留するには最低でも7-5、場合によっては8-4しなくてはならないという予想だった。

天頂の閃光

スタンダードはジェスカイサイクリングを選択することにした。これまで使い込んできたデッキだったし、警戒されていなければ非常に良い選択肢だと思ったからだ。

弧光のフェニックス

ヒストリックはその安定性を買ってイゼットフェニックスを選択。この場を借りてハビエル・ドミンゲス/JavierDominguezには感謝したい。彼がイゼットフェニックスでミシックチャンピオンシップトップ8に入賞したときに得られた知見を授かれたし、キャリアのピークを迎える前にレガシーグランプリを優勝した経験から《渦まく知識》の使い方も教えてもらえた。

信じられないことに、結果は両フォーマットともに5-1を達成。脱落圏内から脱しただけでなく、今年のガントレットも視野に入ってきた。厳しい状況のなかで健闘できたことをとても嬉しく思うよ。

『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップ

この記事は『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップの2日前に執筆している。今回の調整はもっと軽く行い、プロプレイヤーとチームを組むのではなく、参加資格を持った友人のアルゼンチンプレイヤーたちをサポートすることにした。とは言っても、自分も勝ちを諦めるつもりはなかった。今回選択した2つのデッキはこれだ。

デッキリスト:スゥルタイ根本原理

スゥルタイ根本原理

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スタンダードは友人であるマウロ・サッソ/Mauro Sassoのリストを使わせてもらうことにした。彼はスゥルタイをずっと使ってきたプレイヤーであり、自分のデッキ選択に大きな自信を持っていた。

デッキリスト:イゼットフェニックス

リーグウィークエンドから継続してイゼットフェニックスを選択した。《汚れた契約》コンボだけ苦手で、あのデッキは禁止されても存在し得るものだった(ナーフされたと言ったほうが良いかもしれない。もっとも《タッサの神託者》の代わりに《神秘を操る者、ジェイス》を使う人がいるかわからなかったけどね)。

リーグウィークエンドのときから若干の変更は加えているけど、ほとんど同じだ。《表現の反復》のすごさにはつくづく驚かされるよ

イゼットフェニックス

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スゥルタイ根本原理もイゼットフェニックスも強く警戒されているし、最大勢力になるだろうと思っていた。それを踏まえても、この2つのデッキは強力で相手を跳ねのける力がある。対策されても恐れることはないと思っていたよ。

今シーズンの残る期間では、競技への意欲を再燃させて、全身全霊でガントレットに挑むつもりだ。その結果として最後となるMPLメンバーに入ったり、世界選手権に参加できたら最高だろう。

おわりに

今日はここまでにしよう。今回はマジックのメンタル面と自分の心の持ちようを関連付けて解説してきた(特にゲームそのものとの関連)。競技レベルがどんなものであれ、こういうことはとても大切だと思う。それが初めて大型大会の権利を狙うようなときであってもね。

セバスティアン・ポッツォ(Twitter)

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Sebastian Pozzo 2016-2017シーズンの「スタンダード・マスター」を獲得し、アルゼンチン人として初めての世界選手権出場を決めたゴールドレベル・プロプレイヤー。 その称号の通り、構築フォーマットを得意とし、特に優れたデッキを選択する慧眼を持つ。プロツアー『破滅の刻』でも大本命の『ラムナプレッド』を使用して、見事に『スタンダード・マスター』となった。 チームメイトでもあり同じアルゼンチンを代表するプレイヤーでもあるLuis Salvattoと共に、Hareruya Prosに加入。 Sebastian Pozzoの記事はこちら