By Atsushi Ito
『マジック・オリジン』が発売し、プレイヤーたちが新しいデッキのアイデアを模索するなかで。
誰もが思いつくコンセプトながら、そのコンセプトをいち早く一線級のデッキへと完成させた男がいた。
平岡 拓 (埼玉)。
この第4期スタンダード神挑戦者決定戦でトップ8入賞と、フロックではないことを証明したそのデッキは何とエルフ。
早速製作者の平岡に話を聞いてみた。
--「平岡さんはどういった経緯でこのデッキを思いついたんでしょうか?」
平岡 「もともとモダンでエルフ中隊デッキを使っているので、『マジック・オリジン』で《群れのシャーマン》と《ドゥイネンの精鋭》を見たとき、『スタンダードでも作れないかな』と思ったのが始まりです」
--「ですがこのデッキは『エルフデッキ』と聞いて想像するような、全力でエルフを横に並べてロードなどで強化して殴るといったコンセプトではないですよね。それは何故なんでしょうか?」
平岡 「スタンダードにはモダンほど軽くて殴れるエルフやロードがいないんですよね。《ウルドのオベリスク》も弱いですし。でもそれに対し、EtB能力を持ったエルフの数は非常に多いなということに気付いたんです。それで《ティムールの剣歯虎》に行き着きました。《群れのシャーマン》を《ティムールの剣歯虎》で出し入れするだけで勝てるじゃないか、って」
--「ビートというよりはコンボに近い、ということですか。ですが『エルフデッキ』に《ティムールの剣歯虎》が4枚入っているというのはなかなか思いつかないところだと思います」
平岡 「引かないと勝てないんですよね。逆に《群れのシャーマン》と《ティムールの剣歯虎》のどちらかを引いていれば、足りない方を《召喚の調べ》で持ってくればいいので。あとは《神々の憤怒》や《悲哀まみれ》などの全体除去対策も兼ねていますね」
--「《骨読み》が入っているのも、エルフらしからぬところですが……」
平岡 「アドバンテージソースが欲しくて、最初は《集合した中隊》で試していたんですが、まわしていくうちに欲しいのは結局《群れのシャーマン》と《ティムールの剣歯虎》、それにそれらをサーチできる《召喚の調べ》だということに気づき、それらを探せる《骨読み》を採用しました」
--「メインに《思考囲い》というのもなかなか思い切った選択ですよね。あとは《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》が2枚入っているというのは、これはどういった理由からなんでしょうか?」
平岡 「《思考囲い》は、相手の手札を見ないと《ティムールの剣歯虎》が怖くてフルタップで出せなかったりしたので安全確認のために入れています。あとはメインで《精霊龍、ウギン》などが入ったデッキに耐性を付けたいというのもあります。《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》は、最後に《群れのシャーマン》を出し入れする際に黒マナが2つ以上必要になるので、それを補えるこのカードが強すぎるためですね。どうせ《沼》2枚ではキープしないので、重なったときのリスクは考慮しなくていいだろうと考えました」
--「サイドも特徴的なカードが何枚も入っていますよね。これらはそれぞれ何対策なんでしょうか?」
平岡 「《眼腐りの虐殺》と《破滅喚起の巨人》は主に赤単対策で、後者はもしかしたらいるかもと思って同型対策も兼ねています。《暴風》《高木の巨人》《命運の核心》はこのデッキが厳しい《雷破の執政》《嵐の息吹のドラゴン》ハメ対策ですね。《自然に帰れ》は《ニクスの星原》デッキ用で、今日実際に当たってこれのおかげで勝てました。《威圧の誇示》は《悪夢の織り手、アショク》用ですが、たまに《ティムールの剣歯虎》への《胆汁病》をかわしたりもできます」
--「なるほど。ところでこのデッキを使うにあたって、《衰滅》は怖くはなかったんでしょうか?」
平岡 「《衰滅》は環境にいないだろうと考えました。このカードで流れるのは《死霧の猛禽》と《クルフィックスの狩猟者》くらいで、前者はお察しですし、後者は《衰滅》を撃つ側も使いたいカードなので、いきなり環境が《衰滅》からスタートすることはないだろうと読んだんです。ですがもし今後エルフや赤単が増えたら、《衰滅》も強くなるかもしれませんね」
--「ありがとうございました」
エルフという名称に騙されがちだが、その実質は《ティムールの剣歯虎》と《群れのシャーマン》とのコンボデッキに近いとのこと。
《先祖の結集》デッキといい、『マジック・オリジン』入りスタンダードは、久しぶりにコンボの時代が到来するかもしれない。
5 《森》 4 《疾病の神殿》 4 《ジャングルのうろ穴》 4 《ラノワールの荒原》 2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 3 《ニクスの祭殿、ニクソス》 -土地(22)- 4 《エルフの神秘家》 4 《エルフの幻想家》 3 《ドゥイネンの精鋭》 2 《葉光らせ》 1 《森の女人像》 4 《群れのシャーマン》 4 《巨森の予見者、ニッサ》 1 《再利用の賢者》 4 《ティムールの剣歯虎》 1 《光り葉の将帥、ドゥイネン》 -クリーチャー(28)- |
4 《思考囲い》 4 《召喚の調べ》 2 《骨読み》 -呪文(10)- |
3 《眼腐りの虐殺》 2 《ガイアの復讐者》 2 《暴風》 2 《自然に帰れ》 1 《破滅喚起の巨人》 1 《高木の巨人》 1 《蔑み》 1 《威圧の誇示》 1 《骨読み》 1 《命運の核心》 -サイドボード(15)- |