はじめに
みなさま、「名カード集」へようこそ。
この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。
今回はクリーチャーのみで構成された『レギオン』をご紹介しましょう。
『レギオン』ってどんなセット?
『レギオン』とは、2003年2月に発売されたオンスロート・ブロック最初の小型エキスパンション。マジック史上初めてとなる収録カードすべてがクリーチャーのエキスパンションです。インスタントやソーサリーがないことでリミテッドなどの戦闘が単調になったのでは思われるかもしれませんが、「変異」に工夫が凝らしてあります。《スカークの匪賊》のように表になった際に特定の効果を誘発する「変異」がデザインされたのです。これによりオンスロートブロックのリミテッドはより複雑に、面白くなりました。
構築レベルの強力な新キーワード能力も登場しています。《ティムールの激闘》に代表される二段攻撃が登場したのもこのエキスパンションからでした。2度ダメージの入る《岩片の精霊》と《尾根の頂の猛禽》には衝撃を受けました。
種族をフィーチャーしたオンスロート・ブロックですが、『レギオン』には『オンスロート』にはいなかった懐かしのクリーチャー・タイプが収録されています。同族間で能力を共有するスリヴァーの復活です。テンペスト・ブロックのスリヴァーと比較するとやや重いデザインとなっていますが、15枚もの新しいスリヴァーの登場にファンは心をくすぐられました。
『レギオン』の名カードたち
《つつき這い虫》
速攻
ゴブリンを1体生け贄に捧げる:《つつき這い虫》は、ターン終了時まで+2/+2の修整を受けるとともにトランプルを得る。
《つつき這い虫》はゴブリンを生け贄に捧げることで一時的に強化される戦闘に特化したクリーチャー。速攻があるためライフを詰めるのに適しており、タップアウトならばよくよくブロックを検討しないと大ダメージを受けてしまいます。特に『スカージ』で登場した《包囲攻撃の司令官》とのシナジーは素晴らしく、これ1枚で最大+8/+8の修正を受けられます。
オンスロート・ブロックで優秀なゴブリンが多数登場したことで、さまざまなバリエーションのゴブリンデッキが構築されることになり、トーナメントでも結果を残しました。それにともなってメタゲームも変化し、白系のコントロールデッキは極端にゴブリンに強い《銀騎士》を採用し始めます。大半のゴブリンのタフネスは2以下であり、《銀騎士》は《神の怒り》までの時間稼ぎとして最適なクリーチャーだったのです。
しかし、《つつき這い虫》はトランプルによりプロテクション(赤)の上から強引にダメージを与え、《神の怒り》の返しにキャストできればかなりのプレッシャーとなりました。後続のゴブリンを生け贄に捧げるだけで強化できるため、次のターンの展開次第では一撃でライフを削りきることも可能だったのです。手札にインスタントが少なければこれ1体のために再度《神の怒り》をキャストせざるを得ない、そんな状況すらも演出してくれました。
《ワイアウッドの養虫人》
他にトークンでないエルフが戦場に出るたび、緑の1/1の昆虫クリーチャー・トークンを1体生成してもよい。
《ワイアウッドの養虫人》はエルフを召喚するたびにただでクリーチャー・トークンを生成してくれるため、序盤に出せば瞬く間に戦場を埋め尽くしてくれます。こうして集まったクリーチャー・トークンは《召喚の調べ》のコストにあてて行動回数を増やしたり、《孔蹄のビヒモス》や《鏡の精体》で強化するのに使われました。
2008年のエクステンデッドでは、2ターン目から爆発的にエルフを展開する親和エルフが大流行し、その年のプロツアーではトップ4を独占するほどになりました。このデッキは《イラクサの歩哨》と《遺産のドルイド》を組み合わせてマナを確保し、《垣間見る自然》で手札を補充し続けるもの。ここに《ワイアウッドの養虫人》を挟み込めば、途切れることのない手札を背景に延々とクリーチャー・トークンが生成されたのです。
《萎縮した卑劣漢》
(1):墓地にあるカード1枚を対象とし、それを追放する。
《萎縮した卑劣漢》は墓地対策の代表格であり、《漁る軟泥》や《死儀礼のシャーマン》が登場するまではさまざまなデッキで採用されました。唯一ダブルシンボルがネックになりましたが、タップが不要でマナの続く限り能力を起動できるため使い勝手が良く、黒がタッチでない限りは常に候補に上がるほどだったのです。
現在、“優秀な”墓地対策と限定したとしても選択肢は多岐に渡ります。サーチ可能でダメージソースにもなる《漁る軟泥》と《死儀礼のシャーマン》、初手にあればただでプレイできる《虚空の力線》、どのデッキでも採用できて手札も減らない《大祖始の遺産》などなど。
今でこそ墓地対策はいくつもの選択肢がありますが、《萎縮した卑劣漢》以前には数えるほどしかありませんでした。しかも恒久的な墓地対策となるとかなり悠長な《ファイレクシアの炉》までさかのぼらなくてはなりません。《萎縮した卑劣漢》は速攻性が高く、隙を作らず、それでいて恒久的な墓地対策だったのです。
《意志を曲げる者》
変異(1)(青)(あなたはこのカードを、(3)で2/2クリーチャーとして裏向きに唱えてもよい。これの変異コストで、これをいつでも表向きにしてもよい。)
《意志を曲げる者》が表向きになったとき、単一の対象を持つ呪文か能力1つを対象とし、その対象を変更する。
『レギオン』はクリーチャーしか収録されていませんが、「変異」の一部には表にする際に誘発型能力を持つ一種の呪文のような役割をするものがいます。《意志を曲げる者》はその1枚であり、呪文に加えて能力の対象までも変更できるかなり特殊なクリーチャーです。除去や強化呪文の対象を自分の都合のいいように変えられるため、わずか2マナで戦況を大きく変える存在でした。
この《意志を曲げる者》の厄介なところは本来対象の変更が難しい、起動型能力や誘発型能力の対象までも変更できる部分にあります。《戦慄をなす者ヴィザラ》のようなリミテッドにおけるゲームエンドクリーチャーでさえ対処できてしまうのです。しかも「変異」の多いオンスロート・ブロックではほかの「変異」に擬態でき、どれが《意志を曲げる者》かわかりません。警戒しようにも表になるまでは戦場に出ているのかすら不明なのです。
《種子生まれの詩神》
他のプレイヤーのアンタップ・ステップに、あなたがコントロールするすべてのパーマネントをアンタップする。
《種子生まれの詩神》は相手の各ターンにもパーマネントがアンタップするようになるルール破りのクリーチャー。プレイヤーの数だけアンタップ・ステップを得ることができるため、統率者戦ではその効果は飛躍的に向上します。この効果を最大限に発揮するためには、インスタントや瞬速、もしくは起動型能力にタップを含むクリーチャーやアーティファクトと組み合わせる必要があります。
タップをコストに持つ起動型能力を探すと、《獣相のシャーマン》や《貿易風ライダー》が見つかりました。どちらも繰り返し使うほど有利となる能力です。前者はクリーチャーを使ったコンボを揃えるのに最適ですし、後者は対戦相手の足を止めてくれます。さらには土地もアンタップするため、呪文もプレイし放題。「バイバック」を繰り返し使ったり、重いインスタントを隙なく使用できるようになりますね。
まだある名カード
さて、『レギオン』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。
もっと『レギオン』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!
次回の「名カード集」では、『スカージ』をお届けいたします。