By Kouhei Yamashita
『マジック・オリジン』発売である。
ということは『テーロス』ブロックと『基本セット2015』がスタンダードで使えるのはあと3ヶ月弱であり、多くのエキスパンションが使える現在のスタンダード環境はもはや定義されているとも言えるだろう。
果たして『マジック・オリジン』は環境を変えるのか?
神に挑むべく集まった174人の、その最後まで残った8人は各々それぞれにその問いに答えをくれた。
安田のデッキはスゥルタイ《悪魔の契約》コントロール。
《クルフィックスの狩猟者》+《棲み家の防御者》+《死霧の猛禽》というもはや見飽きた感もある緑の標準装備。
だがそこに添えられている禍々しいエンチャントこそがこのデッキの核だ。
【プラチナプロの市川ユウキ氏がマジックオリジンの最注目カードにも挙げている】禁忌のエンチャント、安田はさっそくこれを使ったデッキを仕上げてきているようだ。
市川プロはデッキに5~8枚程度の《悪魔の契約》を処理できるカードを入れたいと語っているが、このデッキにはきっちり4枚ずつの《スゥルタイの魔除け》と《シルムガルの命令》が用意されている。
一方平岡が用意してきたのは緑黒のエルフデッキ。
『基本セット2015』の《ウルドのオベリスク》が最注目されていることからもわかるように、『マジック・オリジン』では部族シナジーが強くフィーチャーされている。
セットから与えられたテーマとはいえ、それをしっかりデッキとして形にしているのは素晴らしい。
なお平岡のデッキは、今大会の注目デッキとしてインタビューしているのでそちらの記事もご覧いただきたい。
・Deck Tech: 平岡 拓の「エルフ信心」
http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/1410
Game 1
平岡 拓 |
タップイン土地を重ねる緩やかなスタートから《死霧の猛禽》という立ち上がり。
続くターンに2体目の《死霧の猛禽》を重ね、攻め気を見せる。
対する平岡の場は《エルフの神秘家》、《巨森の予見者、ニッサ》とやや頼りなく見えるが、《群れのシャーマン》が登場すると安田のライフを大きく減らす。
タイトなダメージレースが展開されそうだ。
しかし安田は土地が3枚で止まってしまう。
土地が十分に並ぶまでゲームを長引かせたい安田は2体のうち1体をブロッカーとして立たせる。
対する平岡は《思考囲い》を放ち、安田が3枚の土地から使える唯一の呪文である《スゥルタイの魔除け》を叩き落とすと《召喚の調べ》から《ティムールの剣歯虎》を呼び込み、攻め手とする。
「破壊不能」能力のため《死霧の猛禽》がチャンプブロックになってしまうのを嫌った安田は攻撃を受け、ライフは15から11へ。
ようやく5マナに届いた安田が《シルムガルの命令》で《ティムールの剣歯虎》を除去する頃には、《群れのシャーマン》を手札に戻して最期の役目を終えていた。
平岡がエルフを戦場に加えた上で、先ほど戻した《群れのシャーマン》をプレイ、さらに手札に持っていた2体目を示すと安田は潔く戦場を片付けた。
平岡 1-0 安田
さて、安田のサイドボードには2枚の《衰滅》と4枚の《悲哀まみれ》が取られている。
速いデッキをかなり強く意識してきているようだ。
エルフの大量展開が大きなリスクとなるようでは《群れのシャーマン》も先ほどのような活躍は難しいのではないだろうか。
Game 2
安田 昌幸 |
3ターン目、《クルフィックスの狩猟者》を出すとさっそく《衰滅》が顔を見せる。
だが《衰滅》こそ手中に入れたものの、平岡の場は貧弱な《エルフの神秘家》と《エルフの幻想家》2体。
とても自分の《クルフィックスの狩猟者》を犠牲にしてまで除去する対象ではない。
結果、《クルフィックスの狩猟者》と《衰滅》を抱えたまま土地を立ててターンを返す安田。
そこに1ゲーム目同様突き刺さる《思考囲い》!
《衰滅》を恐れる必要がなくなった平岡は《巨森の予見者、ニッサ》、《エルフの神秘家》と重ねる。
苦しい安田の次なる手はデッキのキーカードである《悪魔の契約》。
死に至るまでに大きな有利を得られるこの契約に望みを託す。
これを放置すると長期戦が不利になってしまう平岡は、《召喚の調べ》からの《再利用の賢者》で的確に処理する。
そして十分に溜まったエルフの力を得た《群れのシャーマン》で安田のライフを22から14に一気に削る。
さらに続くターンには8体全てのエルフを安田に向かわせる。
うち2体は《クルフィックスの狩猟者》と《黄金牙、タシグル》に止められたが、多くの全体除去をサイドボードしている安田には効果的なアタックではないだろうか。
その後安田が再び《衰滅》を手に入れた頃、平岡の場には反転した《精霊信者の賢人、ニッサ》がおり、またしても打ちづらい戦場になっていた。
せめてこれが《悲哀まみれ》であれば《クルフィックスの狩猟者》が巻き添えになることはないのだが・・・
《精霊信者の賢人、ニッサ》が立て続けに《骨読み》を平岡にもたらすと、もはやアドバンテージの差は埋まらない。
溢れんばかりの手札を抱えた平岡は《ニクスの祭殿、ニクソス》を絡めた大量のマナから一気に《ティムールの剣歯虎》《群れのシャーマン》と重ね、最後まで《衰滅》を打てない安田のライフを削り切った。
平岡 2-0 安田
素早くエルフを展開した1ゲーム目と、長期戦を粘り強く戦った2ゲーム目で異なる表情を見せる平岡のデッキが印象的だった。
安田の《悪魔の契約》を効果的に働かせないなど、対応力の高い《召喚の調べ》というカードに支えられた部分も大きいだろう。
『テーロス』ブロック+『基本セット2015』と『マジック・オリジン』の共存、この贅沢な時間は本当にわずかである。
ぜひ多くのプレイヤーがこの貴重な3ヶ月弱を満喫してくれることを願っている。