◆総合勝率
順位 | 名前 | 総合成績 | 勝率 |
1位 | 高橋 優太 | 14勝7敗 | 67% |
2位 | 山本 賢太郎 | 13勝8敗 | 62% |
3位 | 瀧村 和幸 | 18勝12敗 | 60% |
4位 | 三原 槙仁 | 25勝20敗 | 56% |
5位 | 行弘 賢 | 25勝23敗 | 53% |
6位 | 渡辺 雄也 | 23勝22敗 | 52% |
7位 | 中村 肇 | 12勝12敗 | 50% |
7位 | 八十岡 翔太 | 9勝9敗 | 50% |
7位 | 和田 寛也 | 6勝6敗 | 50% |
10位 | 井川 良彦 | 13勝14敗 | 48% |
11位 | 市川 ユウキ | 14勝16敗 | 47% |
12位 | 津村 健志 | 15勝18敗 | 45% |
13位 | 松本 友樹 | 10勝14敗 | 42% |
14位 | 金 民守 | 1勝2敗 | 33% |
15位 | 中村 さら | 3勝9敗 | 25% |
16位 | 松原 一郎 | 3勝12敗 | 20% |
※取材班がいなかった日曜夜~月曜夜にかけての14th-17thドラフトの結果も含む
◆3-0アーキタイプまとめ
ドラフト | プレイヤー | アーキタイプ |
【1stドラフト】 | 渡辺 雄也 | 青緑 |
【2ndドラフト】 | 三原 槙仁 | 赤黒 |
【3rdドラフト】 | 山本 賢太郎 | 赤白 |
【4thドラフト】 | 山本 賢太郎 | 青赤 |
【5thドラフト】 | 瀧村 和幸 | 青白タッチ緑 |
【6thドラフト】 | 高橋 優太 | 緑白 |
【7thドラフト】 | 高橋 優太 | 緑黒 |
【8thドラフト】 | 三原 槙仁 | 白緑 |
【9thドラフト】 | 井川 良彦 | 緑黒 |
【10thドラフト】 | 行弘 賢 | 赤黒 |
【11thドラフト】 | 瀧村 和幸 | 緑黒タッチ青 |
【12thドラフト】 | 八十岡 翔太 | 赤白 |
【13thドラフト】 | 瀧村 和幸 | 青緑 |
◆2-0アーキタイプまとめ
緑黒:6回
赤黒:6回
赤白:4回
緑白:3回
青赤:3回
青緑:2回
白黒:1回
青白:1回
赤緑:0回
青黒:0回
赤黒:6回
赤白:4回
緑白:3回
青赤:3回
青緑:2回
白黒:1回
青白:1回
赤緑:0回
青黒:0回
◆ 『マジック・オリジン』と環境を支配する「高名」
リミテッド環境の性質は、新しい「キーワード能力」によって決まることが多い。
今回で言えば「高名」だ。
単体で十分なスペックを持ったクリーチャーが、条件を達成することにより自身のマナコストよりも1つか2つ上のマナ域相当のクリーチャーへとランクアップするこの能力が存在するせいで、後手の2~3ターン目、先手の3~4ターン目に相打ち用もしくは盤面を止める用のクリーチャーをプレイできないことに対して、大きなリスクが伴うのがこの環境だ。
このことは色の評価にも結び付く。「高名」クリーチャーは緑/白/赤にしか存在せず、また青や黒ではそれらと相打ちできるクリーチャーを用意するのが困難なことから、緑/白/赤がメインカラー、青/黒がサブカラーになりやすい。
それと同時に、「青黒」で強力なデッキを組むためには、「高名」に対抗するためにも、従来の環境のように単純な地上と飛行のダメージレースではなく、《スフィンクスの後見》のような軸をずらした勝ち手段が必要となる。これについては【3rdドラフト】、【5thドラフト】と再三「青黒」にチャレンジしては負け越した三原が実証している。
◆ 「師の教え」と「芸術家 (アーティスト)」
このような前提から、一歩先に進んだドラフトを展開したのは高橋 優太と瀧村 和幸であった。
高橋が提唱したのはマナカーブの優位性だった。
序盤から緑白を多くピックしていた高橋は、「高名」を巡る攻防を一番多く体験した結果、「高名」が最も高いパフォーマンスを発揮するのはクリーチャーのマナカーブが整ったデッキにおいてである、したがってこの環境では基本的にマナカーブを重視すべきという結論にたどり着く。
この高橋の理論は合宿の中盤で高橋が辞去して以降、「師の教え」として渡辺や行弘に受け継がれ、合宿で久しぶりの0-3を経験するなど序盤に苦戦していた彼らの勝率が向上するきっかけの1つとなった。
またクリーチャーのマナカーブを追求した結果、薄くなりがちな緑の3マナ域においてブロッカーとアタッカーを兼ねる (ブロッカーとならない点で《屑肌のドレイク》とは大きく価値が異なる) 《果樹園の霊魂》と、黒では数少ないアグロデッキと噛み合うパーツである《死橋のシャーマン》に見た目以上の価値を見出していたのは、先見の明があったと言うべきだろう。
一方、「高名」とは全く別のアプローチをとったのが瀧村だ。
「芸術家 (アーティスト)」瀧村のピックは極めてコンセプトに特化しており、「アーキタイプの軸となるカード」を他の人よりも2手~3手ほど早い段階でピックする点に特徴がある。
そんな瀧村が注目したのは「エルフ」シナジーだった。
《群れのシャーマン》《森の伝書使》《節くれ根の罠師》といったカードは、そのカードパワーの高さにもかかわらず、ただ「その色をやっている」というだけのプレイヤーではピックしにくい (し、それゆえにカットもされにくい) カードとなっている。
つまり、卓内に自分しか「エルフ」をやっているプレイヤーがいない場合、24パックから出現したこれらのアンコモンは、全て自分が回収することができる確率が高いのだ。
アンコモンやレアの枚数はデッキのカードパワーを大きく左右する。だからこそ通常強力なアンコモンはカットされやすい傾向にある。
自分の色のカードがないパックに《つむじ風のならず者》がいたらカットしたくなるだろう。だがそれがもし《森の伝書使》だったら?多くの人はスルーするのではないか。だが、それは「エルフ」をやっている瀧村にとっては《つむじ風のならず者》と同等かそれ以上のベストカードとなる。
瀧村は「エルフ安」を見越し、《群れのシャーマン》《森の伝書使》《節くれ根の罠師》といったカードを極めて早くピックするようにしていた。
その結果出来上がった芸術的な作品が、【4thドラフト】の「エルフ上陸ライブラリーアウト」や【6thドラフト】の「神エルフ」ということだ。
きちんとアンコモンまでピックできた「エルフ」デッキのシナジーは、ダメージレースを凌駕するほどのテンポやアドバンテージを易々ともたらすため、「高名」デッキに対しても十分対抗できる。
この環境のコモンには「エルフ」が意外と多く、またそのほとんどがEtB能力持ちであるため、《死の円舞曲》との相性も良い。カードの出にも左右されるが、毎回卓に一人は「エルフ」ベースのデッキが出来てもおかしくはないことには留意すべきだろう。
◆ そしてプロツアー『マジック・オリジン』へ
「高名」は非常に強力だが、それは前提に過ぎない。
プロツアーのドラフト、特に2日目のテーブルともなれば、各人のピックは必然的にそれを織り込んだものとなる。
また「高名」を生かす側も、高橋のようにより洗練された戦略が必要となるはずだ。
プロツアーではたして彼らがどんなピックを見せるのか。そしてそれは世界のプレイヤーたちとどのように異なるのか。
来週末のプロツアー『マジック・オリジン』を楽しみに待つとしよう。
それでは、10月の『戦乱のゼンディカー』でまた会おう。