はじめに
みなさんこんにちは。
『モダンホライゾン2』がMOで実装されて約4週間が経ち、環境の全貌が明らかになってきました。強力なカードが多数収録された『モダンホライゾン2』は、既存のデッキを強化するとともに新しいデッキを多数生み出し、モダンの環境をシェイクアップさせることに貢献しました。
また、先週末には2021 Magic Online Champions Showcase Season 1(以下、MOCS)が開催され、オンラインの厳しい予選を勝ち抜いた強豪プレイヤーのプレイングを観戦することができました。
さて、今回の連載ではModern ChallengeとMOCSの結果を見ていきたいと思います。
Modern Challenge #12309177
環境最高のカード《ウルザの物語》
2021年6月26日
- 1位 Grixis Asmo
- 2位 Jeskai Stoneblade
- 3位 Grixis Asmo
- 4位 Amulet Titan
- 5位 Izzet Prowess
- 6位 Amulet Titan
- 7位 Eldrazi Tron
- 8位 Mardu Shadow
トップ8のデッキリストはこちら
『モダンホライゾン2』でもっとも壊れたカードの一枚とされている《ウルザの物語》を活用したAmulet Titanと、各種《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》を使ったデッキが結果を残し続けています。
ほかにはトップレアである《敏捷なこそ泥、ラガバン》を採用したJeskai StonebladeやIzzet Delver、Mardu Shadowといったさまざまなデッキが活躍しています。
同じ1マナクリーチャーの《ドラゴンの怒りの媒介者》も、Izzet ProwessやIzzet Delver、Mardu Shadowなど、軽いスペルを多用するアグロデッキの主力クリーチャーとして使われていました。
デッキ紹介
Grixis Asmo
『モダンホライゾン2』の新カードを活用したデッキの中で現在もっとも人気のあるデッキの一つ、《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》を搭載したデッキです。《地獄料理書》を使うことからUrza’s Kitchenとも呼ばれています。
このアーキタイプはバリエーションが豊富で、最初は《大釜の使い魔》+《魔女のかまど》の食物シナジーを重視したものが結果を残していましたが、研究が進むにつれて《湖に潜む者、エムリー》と《最高工匠卿、ウルザ》を搭載したUrzaデッキに組み込むのがベストだということが分かってきました。
Urzaはかつてモダン環境を支配していましたが、デッキの主要パーツだった《オパールのモックス》が禁止になったことで弱体化を強いられ、トップメタから姿を消していました。ですが、《最高工匠卿、ウルザ》との組み合わせが強力な《地獄料理書》という新たな食物エンジンを獲得したことで復権を果たしました。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》を加えた青赤バージョンも結果を残していましたが、ハンデスと除去によってよりコントロールに寄せることができる青黒バージョンが最近は主流になっています。Grixisカラーにすることで《黄鉄の呪文爆弾》や《削剥》といったカードも使えるようになり、色が増えることで《仕組まれた爆薬》で対処できるパーマネントの範囲も広がります。
☆注目ポイント
《地獄料理書》は《楕円競走の無謀者》と組み合わせることで環境屈指の凶悪なエンジンへと変わります。《地獄料理書》の起動コストとして《楕円競走の無謀者》を捨てることで手札を減らさずに食物・トークンを1つ生成することができます。毎ターン提供される食物と《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》の組み合わせは、クリーチャーを主体とするデッキにとって脅威となります。
《ウルザの物語》のⅢ章の能力によってデッキ内のアーティファクトを状況に応じてサーチできます。Ⅱ章の能力で構築物トークンを生成できるので、《影槍》をサーチしてトークンに装備させる動きが強力です。アーティファクトを多用するこのデッキの構築物トークンのサイズは相手にとっては相当なプレッシャーになります。
ほかのサーチ先としては《上天の呪文爆弾》が挙げられます。バウンス能力は相手クリーチャー以外にも自軍の《思考の監視者》をバウンスして再利用するという使い方もできます。《上天の呪文爆弾》を《湖に潜む者、エムリー》で使いまわすことでアドバンテージを稼ぐことが可能です。
サイド後は相手も《石のような静寂》や《安らかなる眠り》といった対策カードを投入してきます。サイドに忍ばせてある《ボーラスの工作員、テゼレット》の[+1]能力は、アーティファクトを多用するこのデッキではヒット率も高く手札を補充できます。アーティファクトを5/5にする[-1]能力や本体ドレインの[-4]能力は《石のような静寂》の影響を受けることがなく、有用な追加のフィニッシャーといえます。
Jeskai Stoneblade
トップメタではないものの『モダンホライゾン2』がMOで実装された直後に開催されたModern Challengeを制して以来、ほぼ毎回Modern Challengeの上位で見られるようになったJeskai Stoneblade。《敏捷なこそ泥、ラガバン》を採用していることからJeskai Monkeybladeとも呼ばれています。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《石鍛冶の神秘家》といった効率的な脅威を除去とカウンターでバックアップする動きは相手を問わず強力で、極端に不利なマッチが少ないのが特徴です。
☆注目ポイント
Izzet Delverなどアグロデッキに採用されていることが多い《敏捷なこそ泥、ラガバン》ですが、このクリーチャーの本当の強さは効率的な妨害スペルによるサポートのあるミッドレンジで発揮されます。攻撃を通すことができればマナとカードアドバンテージの両方を得ることができ、脅威を展開しつつカウンターや妨害スペルを構えやすくなります。
Stonebladeは装備品やプレインズウォーカなど強力なアクションが多い分マナを多く必要とするため、《敏捷なこそ泥、ラガバン》の提供するマナアドバンテージはより重要なものとなります。余談になりますが、《敏捷なこそ泥、ラガバン》が3枚のみの採用なのはMOのカードレンタルサービスのManatraderの在庫の関係で本来なら4枚採用だったそうです。
《虹色の終焉》はモダン最高の除去の一つになりつつあります。ソーサリースピードの除去ですが1マナのクリーチャーに対しては相手に追加のマナを与えてしまう《流刑への道》よりも使いやすくなります。
《虚空の杯》《霊気の薬瓶》《精力の護符》《レンと六番》など青白系のコントロールにとっては対処が難しかったパーマネントにも触れる優秀なスペルです。《地獄料理書》など低マナ域のアーティファクトを多用するデッキが台頭してきているのもこのスペルが優先される理由の一つです。覚えておきたい点として《敏捷なこそ泥、ラガバン》の宝物トークンによって4色から5色目のマナも出せるので4-5マナのパーマネントも処理できます。
《カルドラの完成体》は《殴打頭蓋》よりも圧倒的に速いクロックで、《石鍛冶の神秘家》に対する除去が少ないコンボデッキなどに対して特に強さを発揮します。破壊不能なため一度場に出てしまえば対処されにくく《殴打頭蓋》よりも優先してサーチすることがあります。
Magic Online Champions Showcase
新環境のモダンを踏み鳴らすサイ
2021年6月26日
- 1位 Temur Footfalls
- 2位 Mardu Shadow
- 3位 Izzet Prowess
- 4位 4C Footfalls
- 5位 Izzet Prowess
- 6位 4C Footfalls
- 7位 Rakdos Aggro
- 8位 Izzet Prowess
トップ8のデッキリストはこちら
先週末はMOCSが開催されました。厳しい予選を勝ち抜いた8名のプレイヤーのみが参加できるイベントなだけあり、ハイレベルで見ごたえのあるマッチの連続でした。
『モダンホライゾン2』ドラフトと3ラウンドのモダンという極めて小規模なサンプルサイズのイベントでしたが、トッププレイヤーが選択したデッキリストはどれも洗練されていました。
今大会で印象に残ったのはAmulet TitanやAsmoといった《ウルザの物語》を使ったデッキが不在だったことです。《ウルザの物語》というカードの強さは広く知られており、Modern Challengeなどで結果を残し目立っていたことからマークが厳しくなると予想していたのか、今大会に参加したプレイヤーは《ウルザの物語》を倒す側に回ることが最善の選択だと考えたようです。
デッキ紹介
Izzet Prowess
旧環境でもトップメタの一角として結果を残し続けていたIzzet Prowessは、『モダンホライゾン2』登場後の環境でも変わらず活躍しています。もともと強かったProwessでしたが、新戦力が入りさらに強化されています。
《僧院の速槍》を始めとした1マナの効率的なクロックと、《稲妻》や《魔力変》、《ミシュラのガラクタ》などによって相手のライフを素早く削ります。軽いクリーチャーと直接火力の組み合わせは半端な除去や妨害でしのぎきることは困難です。
☆注目ポイント
《表現の反復》は軽いスペルを多用するこのデッキに合ったスペルで、このカードのおかげで攻めが途切れにくくなっています。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》など現環境にはタフネス1のクリーチャーが多数存在するため、それらを除去しつつ果敢クリーチャーを強化する《溶岩の投げ矢》はこのデッキのもっとも効率的なスペルの一つになります。
《ドラゴンの怒りの媒介者》は《スプライトのドラゴン》に代わるこのデッキの新たな主力クリーチャーで、果敢と同様にクリーチャーでないスペルをプレイした際に能力が誘発するので「昂揚」の条件を満たすのも容易です。《邪悪な熱気》は「昂揚」の条件を満たすことで《タルモゴイフ》など高タフネスのクリーチャーもわずか1マナで処理することができます。プレインズウォーカーにも当たるので無駄になりにくく、メタによってはメインからでも十分に使える火力スペルです。
Mardu Shadow
Grixis、Jund、Rakdosなどバリエーションが豊富なDeath’s Shadowは旧環境でも活躍していたモダンを代表するアーキタイプの一つです。
Francisco選手が選択したMardu Shadowは、旧環境の《イーオスのレインジャー長》などが採用されたバージョンと異なり、Rakdosに白をタッチしたものになっています。
☆注目ポイント
《ドラゴンの怒りの媒介者》はIzzet Prowessと同様にドローの質を上げることができ、このデッキでは墓地に落としたクリーチャーや《炎の印章》などを「相棒」の《夢の巣のルールス》で再利用することもできます。《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《ドラゴンの怒りの媒介者》といった優秀な1マナの脅威が加入したことで、《死の影》戦略にフォーカスする必要性が薄れたため、《通りの悪霊》のように積極的にライフを減らす手段は不採用になっています。
《虹色の終焉》は、環境の多くのクリーチャーやこのデッキにとって厄介となる《虚空の杯》など置物にも対応できる大変フレキシブルな除去スペルです。このスペルのためだけでも白を使う価値は十分にあります。
《ダウスィーの虚空歩き》は2マナで回避能力持ちのパワー3と中々のスペックで墓地対策としても機能します。Dredgeなど高速の墓地コンボに対しては少し遅くなりますが、《ドラゴンの怒りの媒介者》などの「昂揚」や《濁浪の執政》の「探査」、コントロールの《瞬唱の魔道士》などを妨害する手段としては十分な性能です。
このクリーチャーの目玉は、何といっても《ダウスィーの虚空歩き》によって追放したカードをマナコストを支払うことなくプレイできる能力です。《思考囲い》で落とした(追放)カードを利用することができ、墓地に落ちた《ダウスィーの虚空歩き》は《夢の巣のルールス》によって再利用することもできます。
Temur Footfalls
今大会見事に優勝を果たした日本人ストリーマーの市川 ユウキ選手が選択したデッキはTemur Footfallsでした。
『モダンホライゾン2』に《断片無き工作員》が再録されたことで登場した新しいアーキタイプで、《断片無き工作員》や《暴力的な突発》といった「続唱」スペルによって《衝撃の足音》をプレイし場を制圧します。
《衝撃の足音》を確実に「続唱」からプレイするために、2マナ以下のスペルをデッキにいれることができませんが、《砕骨の巨人》や《厚かましい借り手》といった「出来事」クリーチャーやピッチスペルの《否定の力》や《緻密》といったカードで補っています。
☆注目ポイント
《砕骨の巨人》《厚かましい借り手》《火/氷》はこのデッキの主な妨害手段になります。効率性の面では1-2マナ域のスペルよりも劣りますが、どれも「続唱」の邪魔をせずに時間を稼いでくれる便利なカードです。『モダンホライゾン2』に再録されてモダンでも使えるようになった《火/氷》は攻守に渡って活躍するフレキシブルなスペルで、「続唱」との相性の関係で低マナ域のスペルを採用できないこのデッキでは重宝します。
《緻密》はカウンターではないので《魂の洞窟》からプレイされた呪文にも効果があります。《否定の力》や《謎めいた命令》などと上手く使い分けていきたいところです。
サイドボードは《活性の力》《虚空の力線》《血染めの月》など3マナ域以上の特定の戦略に劇的に効果のあるものが厳選されています。特にAmulet Titanなど特殊地形に依存したデッキに刺さる《血染めの月》を無理なく運用できるのが3色のTemurバージョンの強みです。
Modern Challenge #12309183
環境のアグロデッキを支える1マナクリーチャー
2021年6月27日
- 1位 Hammer Time
- 2位 Izzet Murktide
- 3位 Rakdos Aggro
- 4位 Dimir Asmo
- 5位 Izzet Murktide
- 6位 4C Elemental
- 7位 Izzet Prowess
- 8位 Rakdos Aggro
トップ8のデッキリストはこちら
《ドラゴンの怒りの媒介者》と《敏捷なこそ泥、ラガバン》のペアは現環境のアグロの主力として定着しています。今大会でもこの2体のクリーチャーを使った青赤や赤黒のアグロが結果を残していました。
Izzet MurktideはIzzet Dleverから《秘密を掘り下げる者》が抜けたバージョンで、『モダンホライゾン2』がリリースされた当初《ドラゴンの怒りの媒介者》が《秘密を掘り下げる者》の地位を脅かすと一部では話題でしたが現実になりました。
デッキ紹介
Rakdos Aggro
旧環境でも《死の飢えのタイタン、クロクサ》を使ったRakdosは存在しましたが、ミッドレンジ寄りで緑抜きのJund的な立ち位置でした。
『モダンホライゾン2』から強力な低マナ域のクリーチャーが多数登場したことでよりアグロに寄せています。
軽いクリーチャーをハンデスや除去、妨害でサポートしていき墓地から「脱出」してくる《死の飢えのタイタン、クロクサ》やカードアドバンテージを提供し続ける《闇の腹心》のおかげでロングゲームにも強い構成となっています。
☆注目ポイント
《ドラゴンの怒りの媒介者》と《敏捷なこそ泥、ラガバン》のペアが登場したことで低マナ域が強化されてよりアグロ寄りの構成になりました。《ドラゴンの怒りの媒介者》の能力によって墓地のカードが増えるので《死の飢えのタイタン、クロクサ》を「脱出」させやすくなります。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》は伝説のクリーチャーなので、《血に染まりし城砦、真火》や《死の溜まる地、死蔵》といった土地の恩恵も受けられます。《敏捷なこそ泥、ラガバン》にとってブロッカーは厄介なので、回避能力をつける《死の溜まる地、死蔵》は特に重要です。
総括
AsmoやAmulet Titan、Hammer Timeなど《ウルザの物語》を活用したデッキが多数結果を残しています。
《ウルザの物語》が強すぎるのではないかと懸念される声もありますが、『モダンホライゾン2』には強力なカードが多数収録されておりJeskai Stoneblade、Izzet Delver、Izzet Prowess、Mardu Shadow、Temur Footfallなど現環境ではさまざまなデッキが活躍しています。
以上、USA Modern Express vol.59でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!