Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/07/02)
今週末は最後のリーグウィークエンド!
やぁ!ハビエル・ドミンゲス/JavierDominguezだ。
今日はスタンダードとヒストリックについて、自分なりの考えを示そうと思う。この記事は最後のリーグウィークエンドのデッキリストが公開される前に書いているから、大会後はちょっと状況が変わっているかもしれない。
スタンダード
ここしばらく、スタンダードは《出現の根本原理》という1枚のカードを中心に発展してきている。
スゥルタイ根本原理
《出現の根本原理》を倒そうと、かつてディミーアローグや赤単が現れた。しかし、80枚のヨーリオンデッキは適応し、有利はつけられなくなっていった。その後、打ち消し呪文を詰め込んだイゼットドラゴンのような新しいデッキが数週間に渡って頭角を現したが、これまたスゥルタイが同じく適応するだけだった。
じゃあ、スゥルタイが最強なんじゃないかって?
それはちょっと違う。
まず、スタンダードの大会に出るプレイヤーは誰しもがスゥルタイ根本原理へのゲームプランを用意してくる。これは同時に、スゥルタイ根本原理に食われてきたスローなデッキはほとんど存在しないということでもある。大会で何度もスゥルタイに当たると予想がつくわけだからね。
その反面、スゥルタイを倒すにも大きな問題がある。スゥルタイがこちらのアーキタイプを意識して効果的なカードを採用してきた場合、相性を有利にすることはできない。だから、スゥルタイを使う側からすれば、どのマッチアップを意識するのか決断しなくてはならないんだ。
ちょっとスゥルタイのサンプルリストを見てみよう。
このリストでは、《魂の粉砕》を採用して《黄金架のドラゴン》を意識していることが伺える。そして同時に、《長老ガーガロス》を多く採用していることから、アグロデッキへの防御も怠っていない。
しかし、どこかで妥協点は生まれる。たとえば、このリストだと《エルズペスの悪夢》が1枚も入っていない。これはジェスカイサイクリングが隆盛したときに、その解答として採用されていたカードだ。《エルズペスの悪夢》がなければ、ジェスカイサイクリングとの相性に劇的に影響する。ディミーアローグや赤単などのマッチアップにも響くだろう。
環境のデッキに幅があるほど、スゥルタイ根本原理は全てに互角に戦えるだけの構成を見つけることが難しくなる。
青系デッキ
ジェスカイ変容はスタンダード最新鋭のデッキであり、《出現の根本原理》に強いカードが豊富に採用されている。
このデッキは見た目よりもはるかに強いデッキであり、似た構成をしているイゼットドラゴンの立場を奪い得るデッキだ。クリーチャーデッキを意識するなら《霜噛み》や《砕骨の巨人》を擁するイゼットドラゴンに軍配が上がるが、メタゲームが遅くなるのであれば《非実体化》などが強く使える。
ジェスカイ変容が継続して成功を収めているのは、どんな相手に対しても「変容」クリーチャーによって長期戦を制することができるからだと思う。つまり、スゥルタイを含め、全てのアーキタイはジェスカイ変容に対して攻める側に立たなくてはならないことが多い。
数週間に、『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップでトップ8に入賞したマッティ・クイスマ/Matti Kuismaがジェスカイ変容の網羅的なデッキガイドを書いている。さまざまなコンボやループを示した記事だ。
- 2021/06/11
- スタンダードのベストデッキ ~ジェスカイ変容~
- マッティ・クイスマ
赤系デッキ
スタンダードでトップクラスのクリーチャーデッキは、どれも赤を使っている。君のおかげだよ、《砕骨の巨人》。
スタンダードのクリーチャーデッキのなかで頂点に君臨しているのはナヤアドベンチャーだ。ナヤアドベンチャーが他を圧倒しているのは、イゼットドラゴンを食い物にしながらも、《長老ガーガロス》への有効な解答である《巨人落とし》を有しているからだ。
ほかの赤のデッキはこの緑の巨獣に手を焼く。《アクロス戦争》などで処理できるが、こういったカードはスゥルタイ側が《長老ガーガロス》を引いていないとお荷物になる。《巨人落とし》はそういった弱点をカバーしながらも、その他のマッチアップでも優秀なカードなんだ。
《長老ガーガロス》への解答を持っているとはいえ、ナヤアドベンチャーは依然としてスゥルタイ根本原理に苦戦する。少なくともスゥルタイが打ち消しを大量に積むようにならなければ、その相性は変わらないだろう。つまりここから言えることは……
バランスのとれたスタンダード
思うに、打ち消しデッキ(ジェスカイ変容/イゼットドラゴン)と赤系デッキ(ナヤアドベンチャー/赤単/グルール)がいることで、スゥルタイ根本原理にとって悩ましい板挟み状態を作り出している。一方のグループに有効なカードはもう一方のグループに対して極端に弱い。《神秘の論争》と《影の評決》で考えてみて欲しい。
青系デッキが勢力を伸ばしているようであれば、スゥルタイは《神秘の論争》の枚数を増やすだろうが、それは赤系デッキの立ち位置を良くする行為になる。この構図は『エルドレインの王権』や《出現の根本原理》などがローテーションするまでは大きく変わることはないと思う。でももしかしたら『フォーゴトン・レルム探訪』が全てを変えちゃうかもしれないね!
ヒストリック
他方、ヒストリックは大きく変わり続けている。《タッサの神託者》が禁止になり、数週間前には《時間のねじれ》に別れを告げた。《ヴェロマカス・ロアホールド》を使ったジェスカイターンは実質的に組めなくなっている。
ジェスカイターンはおそらくヒストリックのベストデッキだった。だからこそ、このデッキが去ったことで新たな風景が広がった。
僅差で2番手につけていたのがイゼットフェニックスだった。だから、最初はこのデッキが環境を支配するだろうと思ったが、今のところその様子はない。
こうなったひとつの理由は、イゼットフェニックスにとって問題になり得るデッキが多く環境にいるからだ。具体的には、《ニヴ=ミゼット再誕》デッキ、オーラ、ジェスカイコントロールなどであり、これらのアーキタイプを選択するプレイヤーは非常に多い。それから、イゼットフェニックスに比較的弱いデッキ、グルールなどが減ってきているのも理由のひとつだろう。
《渦まく知識》
ヒストリックの最強カードは《渦まく知識》だと思う。《渦まく知識》を一番うまく使えるデッキこそが、ヒストリック最強のデッキだ。
だけど、それは必ずしもイゼットフェニックスではない。《不屈の独創力》から《滝の賢者》と《蝗の神》のコンボを決めたり、シンプルに《星界の大蛇、コーマ》を出したりするデッキも存在している。
例を示そう。
こういったコンボデッキは《渦まく知識》の強みをさらに引き出すことができる。ライブラリートップに置きたいカードがあるからね。
個人的にヒストリックのベストデッキになるんじゃないかと思っているのは、ジェスカイコントロールだ。環境に存在するほぼ全ての脅威に対して効率的な解答を用意できる、対応力の高いデッキだからね。
こういうデッキはトッププレイヤーのもとでパフォーマンスを発揮することが多いから、より洗練された構成のジェスカイコントロールがリーグウィークエンドで大活躍しても驚きではない。ジェスカイにはいくつか弱点があるけど、メタゲームが確立されていれば解決できないものはほとんどない。
そのひとつが《アダントの先兵》だ。
アグロ
現時点で、《アダントの先兵》はアグロが提示できる最強の脅威のひとつになっている。オーラが強い理由でもあるね。だけど、受動的なデッキは《アダントの先兵》に対応する構成もできると思うから、これからオーラを選ぶときは立ち位置を慎重に検討しなくてはならないだろう。
安定性が高いクリーチャーデッキとして、セレズニアカンパニーも存在する。ジェスカイには弱いものの、イゼットフェニックスに互角に戦えて、そのほかのデッキに対しては能動的なプランをとることができる。青を含めないデッキとしてはベストな選択肢だと思うよ。
5色ニヴ
自分にとって大きな疑問符がついているデッキが5色ニヴだ。
《表現の反復》と《思考囲い》を駆使する良いデッキだ。イゼットフェニックスに対して有利に戦い、消耗戦を好むデッキにも渡り合うことができ、ヒストリックの強力なデッキのひとつとなっている。
だけど、クリーチャーデッキに対してはかなり弱いように感じた。タップランドは大きな痛手になるし、《湖での水難》は2ターン目には機能しない。
ポテンシャルの高いアーキタイプであり、まだ成功の形は見えていないけど、クリーチャーデッキに強い構成が実は存在していて、総合的に素晴らしいデッキに仕上がる可能性はあると思っている。
おわりに
スタンダードとヒストリックに対する自分の考えはこんなところだ。マジックはデッキ同士がお互いに適応しようとしてメタゲームが変化し続けるのが本当に素晴らしいと思う。
リーグウィークエンドで誰かが環境を揺るがすような新しいデッキを持ってきてくれるか、今から楽しみでしかたないよ!