By Atsushi Ito
モダンのPPTQシーズンも終盤だが、『マジック・オリジン』がモダンにどのような影響を与えたかについては、あまり取沙汰されていないように思われる。
そんな中で、スタンダードでも大活躍しているとある『マジック・オリジン』のカードをピックアップし、古来より連綿と受け継がれながらもモダンでは決してメジャーとは言いがたかった黒単に、息を吹き込んだ男がいた。
中野 彰教 (神奈川)。
ここでは予選ラウンドを6-0-2と無敗で駆け抜けた彼に、その最新テクニックについてインタビューしてみた。
--「中野さんはデッキの土地をβの《沼》に揃えていらっしゃることからして、相当な黒単フリークとお見受けしますが、このモダンの黒単というのはいつごろから使い始めたんでしょうか?」
中野 「去年の【グランプリ・神戸14】のあたりですね。そのころは緑をタッチしていたり、《ファイレクシアの闘技場》や《アスフォデルの灰色商人》も入っていましたが、デッキ全体が重すぎたので、最近では《深淵の迫害者》をマナカーブのトップに据えた形にしています」
--「そんな中野さんの黒単が、『マジック・オリジン』で足りなかった最後のピースを得て、大幅に強化されたとのことですが」
中野 「そうですね。実際この《搭載歩行機械》というカードは、黒単にとっての福音だと思います」
--「確かにスタンダードでは大暴れしているこのカードですが、モダンでも活躍するとは思いませんでした。しかし、どうして黒単にフィットしたんでしょうか?」
中野 「もともと黒単というのは、3マナ域に《ゲラルフの伝書使》と《ヴェールのリリアナ》、4マナ域に《ファイレクシアの抹消者》と《深淵の迫害者》というエース級のカードを抱えておきながら、とにかく2マナ域が不安定だったんですよね。これまでは《群れネズミ》《苦花》《恐血鬼》、はたまた《ストロームガルドの十字軍》なんてものまで検討するくらいには、まともな2マナ域に恵まれていなかったんです」
--「その唯一の欠点を《搭載歩行機械》が穴埋めしてくれた、と」
中野 「ですね。親和相手に《刻まれた勇者》を止める役割を果たしたり、ジャンドの《ヴェールのリリアナ》に耐性が付いたりと、環境に対してこのカードが強い理由は様々あるのですが、何よりもともとの黒単のコンセプトにぴったり合致したというのが大きいです」
--「コンセプト……と言いますと?」
中野 「何といっても《迫撃鞘》と相性が良いというのがあります。《深淵の迫害者》を使う以上、それを処理する手段も必要になりますが、《迫撃鞘》は2マナ域かつその役割も兼ねていてカードパワーは低いながらも外せなかったところ、《搭載歩行機械》を採用することで必要悪だった《迫撃鞘》がなくてはならないカードとして光り輝くようになったわけです」
--「確かに《搭載歩行機械》が能動的に分裂できるようになるのは非常に強力ですね」
中野 「あとはトップデッキして強いカードというのも重要です。黒単は如何せんドローがなくスクリュー・フラッドに対して無防備なのが悩みの種ですが、《搭載歩行機械》は序盤のカードでありながら終盤のカードとしても機能するので、フラッド耐性を付けてくれるんですよね」
--「そう聞くと《搭載歩行機械》は黒単が長年追い求めていたパーツであることは確かなようですが、そもそもモダンにおいて黒単というのは通用するのでしょうか?」
中野 「意外と戦えますね。立ち位置的には、手札破壊とクリーチャー除去を主体にしているので、ジャンドと似たような感じかと思います。双子に強いのはもちろん、ジャンド同型に対しても、こちらの生物は軒並み太い上に除去耐性があったりするので、かなり有利に立ち回れます。バーンに対しても、ジャンドと違ってライフが20点スタートなのでクリーチャーを適宜除去しつつ《ヴェールのリリアナ》で締め上げるなどすれば結構生き延びられます。ただトロンやアミュレットブルームはさすがに厳しいですね」
--「なるほど。最後に、中野さんは黒単のどういった部分に魅力を感じているのでしょうか?」
中野 「僕はデーモンが特に好きなんですが、悪くて強いやつらって、やっぱり格好良いじゃないですか。それもあって、黒という色自体が昔から大好きなんですよね」
--「ありがとうございました」
『マジック・オリジン』は意外な角度でモダンに影響をもたらしていた。
漢気溢れる黒単に、ぜひチャレンジしてみて欲しい。
24 《沼》 -土地(24)- 4 《搭載歩行機械》 4 《ゲラルフの伝書使》 4 《深淵の迫害者》 4 《ファイレクシアの抹消者》 -クリーチャー(16)- |
4 《コジレックの審問》 3 《思考囲い》 4 《夜の犠牲》 2 《喉首狙い》 3 《迫撃鞘》 4 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(20)- |
4 《大爆発の魔道士》 3 《悲哀まみれ》 2 《見栄え損ない》 2 《苦花》 2 《真髄の針》 2 《墓掘りの檻》 -サイドボード(15)- |