今大会のTop8には2位の「ティムールミッドレンジ」を筆頭に、やや珍しいデッキたちが顔を揃えている。洗練され無駄のないデッキリストは魅力的だが、デッキビルダーの激しい主義主張が見え隠れするデッキリストもまた同じくらい輝いてみえる。
ここではTop8には届かなかったものの、独自のアイデアがキラリと光るちょっと珍しいデッキを2つ紹介しよう。
■ ナヤZOO
3 《森》 4 《山》 1 《平地》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《樹木茂る山麓》 4 《戦場の鍛冶場》 3 《マナの合流点》 -土地(23)- 4 《僧院の速槍》 3 《アクロスの英雄、キテオン》 3 《羊毛鬣のライオン》 2 《ケラル砦の修道院長》 2 《道の探求者》 4 《ゴブリンの熟練扇動者》 -クリーチャー(18)- | 4 《アタルカの命令》 4 《ドロモカの命令》 4 《ドラゴンの餌》 3 《稲妻の一撃》 4 《岩への繋ぎ止め》 -呪文(19)- |
2 《マグマのしぶき》 2 《アラシンの僧侶》 2 《垂直落下》 2 《焙り焼き》 2 《霊気のほころび》 2 《勇敢な姿勢》 2 《悲劇的な傲慢》 1 《ニクス毛の雄羊》 -サイドボード(15)- |
「Zoo」と呼ばれるデッキがある。その変わった名前の由来は、かつて《密林の猿人》など動物園でみるようなクリーチャーばかりで構築されていたからなのだが、現在では動物の有無とは別に緑赤白を基調とした軽いグッドスタッフは大体「Zoo」と括られている。《野生のナカティル》と《稲妻》が現役のモダンやレガシーでは時折耳にする名前だが、昨今のスタンダードではさっぱりだ。
そんな「Zoo」の不在を嘆いてか、スタンダード版の「Zoo」の作成に挑戦したものが上のリストである。
クリーチャー陣に目を通すと、《僧院の速槍》、《羊毛鬣のライオン》、《ゴブリンの熟練扇動者》と各マナ域の最高級の面々が揃っている。1ターン目の《僧院の速槍》から2ターン目《羊毛鬣のライオン》と繋げることは難しいが、《マナの合流点》と《戦場の鍛冶場》がその無茶な要求を可能な限り汲んでくれている。
その脇を固めるのも《アクロスの英雄、キテオン》や《ケラル砦の修道院長》といった優秀なクリーチャーばかり。まさに「Zoo」とでもいうべき豪華なラインナップだ。
また、目玉のクリーチャーだけでなく、呪文の構成も「スタンダード版《剣を鍬に》」こと《岩への繋ぎ止め》を筆頭に、各色の優良呪文で埋められている。
2種類の《命令/Command》をフルに採用している点は、このデッキならではとも言えるチャームポイントだ。《アタルカの命令》《ドロモカの命令》の両《命令/Command》ともに攻撃的なデッキの方向性と合っている。
《岩への繋ぎ止め》は、エンチャントを対策している《ドロモカの命令》の採用頻度が気になる一枚ではあるが、そのリスクがあっても尚活躍に期待できるほど圧倒的なコストパフォーマンスを持っている。流行の《搭載歩行機械》に強いことも追い風かもしれない。
「アブザンアグロ」や「緑白大変異」など緑白系のグッドスタッフは現在のスタンダード環境の一角を担っている強力なデッキタイプだ。それらの風変わりの亜種である「Zoo」にも活躍の機会は巡ってくる可能性は十分にある。
■ アブザン探査アグロ
4 《森》 2 《平地》 3 《吹きさらしの荒野》 4 《ラノワールの荒原》 4 《砂草原の城塞》 2 《豊潤の神殿》 1 《静寂の神殿》 1 《ジャングルのうろ穴》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(22)- 4 《サテュロスの道探し》 2 《羊毛鬣のライオン》 2 《ラクシャーサの死与え》 4 《包囲サイ》 4 《わめき騒ぐマンドリル》 2 《黄金牙、タシグル》 4 《グルマグのアンコウ》 -クリーチャー(22)- | 4 《ドロモカの命令》 4 《群れの結集》 3 《神々との融和》 3 《アブザンの魔除け》 2 《英雄の破滅》 -呪文(16)- | 2 《思考囲い》 2 《究極の価格》 2 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 2 《悲哀まみれ》 2 《再利用の賢者》 2 《衰滅》 1 《強迫》 1 《部族養い》 1 《残忍な切断》 -サイドボード(15)- |
緑黒白のアグロデッキの主力クリーチャーってなーんだ?
《包囲サイ》?他には?《先頭に立つもの、アナフェンザ》?
ぶっぶー!正解はー《わめき騒ぐマンドリル》でしたー!
……おっと石は投げないでほしい。このデッキの《わめき騒ぐマンドリル》ならば、本当に《先頭に立つもの、アナフェンザ》をも凌ぐ可能性をもっているのだ。
《サテュロスの道探し》などの力を借りて3ターン目に1~2マナ相当で登場することは当然として、《群れの結集》が次々と後続を用意しても、《先頭に立つもの、アナフェンザ》ではレジェンドルールに抵触してしまうところを難なく展開することができる。
《グルマグのアンコウ》に《わめき騒ぐマンドリル》、果てには《黄金牙、タシグル》まで採用していると、如何に墓地を肥やす呪文が多いとは言えども、いつかは「探査」の燃料は底をついてしまう。だが、その不安定さの裏側には、それらが1ターンに2体展開されるような爆発力が隠されている。
普通の「アブザンアグロ」がF1マシンならば、「アブザン探査アグロ」はさながらドラッグレーサーだ。たとえ綺麗にカーブを曲がれなくても、直線だけなら断然こちらが早い。リスクにリターンが見合っているかはともかくとして、デッキの最高速を一度でも味わえば病みつきになる一品だ。スリリングなゲームに飢えている人はどうぞご賞味あれ!