はじめに
みなさんこんにちは。
先週末はMOCSの予選やMOPTQなどモダンのイベントが充実していました。
今回の連載では、Modern Showcase QualifierとModern Super Qualifierの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Showcase Qualifier
新たな部族デッキ
2021年8月14日
- 1位 Elemental
- 2位 Counter Monkey
- 3位 Amulet Titan
- 4位 Boros Burn
- 5位 Rakdos Aggro
- 6位 Counter Monkey
- 7位 BLT Scapeshift
- 8位 Counter Monkey
優勝者にMOCS本戦への参加権が与えられるイベントです。Modern Showcase Challengeでプレイオフに入賞したプレイヤーが参加できる招待制のイベントだったため、極めてハイレベルなイベントでした。
人気のアーキタイプの一つであるCounter Monkeyが多く入賞しています。優勝したElementalsを含めてAmulet Titan、Boros Burn、《白日の下に》 Scapeshiftなど多種多様なアーキタイプが結果を残していました。
残念ながら公式にはこのイベントの結果は載っていませんでしたが、データが収集されていました。
デッキ紹介
Elementals
『モダンホライゾン2』から《激情》や《孤独》といったエレメンタル・インカーネーションサイクルが登場したことでアーキタイプとして成立した多色のエレメンタルデッキ。ピッチスペルとして使用できるこれらを活かした隙のない動きが特徴です。カードアドバンテージ、除去、ライフゲイン、置物対策、墓地対策と一通りそろったミッドレンジ寄りの構成です。
墓地や置物に依存しないのでアーティファクトや墓地対策系のサイドボードカードによる巻き添えを受けにくく、クリーチャーが主体のデッキでありながら《創造の座、オムナス》や《発現する浅瀬》、相手の除去を回避しつつ各クリーチャーのETB能力を使いまわす《儚い存在》などアドバンテージを取る手段が豊富です。
メインのクリーチャーがすべてエレメンタルで構成されているため、自然と《孤児護り、カヒーラ》を「相棒」にする条件を満たしており打点の強化に貢献します。
☆注目ポイント
《孤独》は《敏捷なこそ泥、ラガバン》など序盤の脅威を処理する手段になりつつ、中盤以降は《濁浪の執政》などに対処できる優秀な除去です。《儚い存在》との組み合わせが強力で最大で3体のクリーチャーを追放することができ、一方的なスイーパーのように機能します。《儚い存在》によってインカーネーションや《発現する浅瀬》《創造の座、オムナス》などの能力を再利用して相手とのアドバンテージの差を広げていきます。
《発現する浅瀬》はインカーネーションをピッチでプレイした際に失ったアドバンテージを回復させ、追加の土地を置くことで《創造の座、オムナス》の「上陸」を複数回誘発させるなどデッキのエンジンとなるカードです。《発現する浅瀬》の能力を利用することで、《炎族の先触れ》によってライブラリートップに置いたエレメンタルクリーチャーを手札に加えることもできます。各種インカーネーションエレメンタルを状況に応じてサーチすることで、さまざまなマッチアップに対応することができます。
サイドボードの《虚空の杯》は、「続唱」デッキを意識していることが分かります。《仕組まれた爆薬》はHammer TimeやTemur Footfallsなど複数のマッチアップで使えます。クリーチャーデッキですが速いデッキではないので、Tronなど土地コンボとのマッチアップ用に《大爆発の魔道士》が採用されています。
Modern Super Qualifier #12328672
「続唱」戦略が上位を支配する
2021年8月15日
- 1位 Living End
- 2位 Azorius Control
- 3位 Temur Footfalls
- 4位 Indomitable Creativity
- 5位 Hammer Time
- 6位 Temur Footfalls
- 7位 Living End
- 8位 Boros Burn
トップ8のデッキリストはこちら
先週末にMOで開催されたPTQはLiving End、Crashing Footfallsといった「続唱」デッキがプレイオフの半数を占めていました。『モダンホライゾン2』で再録された《断片無き工作員》によって大幅に強化されたアーキタイプで、現在はHammer Timeに次いでもっとも安定した成績を残しています。
WATOO(Guillaume Wafo-Tapa)がお得意のコントロールで準優勝しています。デッキよりもプレイヤーの強さによるところも大きかったと思いますが、最近はあまり活躍の機会に恵まれなかったコントロールなだけに要注目です。
デッキ紹介
Living End
『モダンホライゾン2』で再録された《断片無き工作員》をフィーチャーした「続唱」デッキの一つ。Living Endはモダンに長い間存在し続けたデッキですが、『モダンホライゾン2』から登場したカードによって大幅に強化されてトップメタの仲間入りを果たしました。
デッキの基本的な動きは変わらず、「サイクリング」持ちのクリーチャーカードを「サイクリング」して墓地にクリーチャーを貯めて、3ターン目に《断片無き工作員》や《暴力的な突発》から《死せる生》をプレイします。相手の場を更地にしたあとに墓地に落としたクリーチャーをリアニメイトをして圧倒的な場を構築します。
墓地に依存する戦略なので《虚空の力線》や《安らかなる眠り》といった相手の墓地対策を対処する必要があるため、サイドボードの半数近くが置物を処理できるカードに割かれています。このデッキが結果を残すことができた理由の一つとして、最近は《安らかなる眠り》の枠に《ヴェクの聖別者》が採用されているなど墓地に対するマークがそれほど厳しくなかったことも挙げられます。今後は多くのデッキがより効果のある墓地対策カードを用意してくることが予想されるので、《活性の力》や《基盤砕き》といったカードの重要性が増します。
☆注目ポイント
《悲嘆》は『モダンホライゾン2』から登場した新戦力で、《死せる生》をプレイする前にカウンターなどを落とすことで安全にコンボを決めることができます。「想起」でプレイすることで墓地に落ちるので、《死せる生》でリアニメイトでき再度ハンデスすることが可能です。
『モダンホライゾン2』以外のセットからもこのデッキの強化に貢献しているカードがあります。《波起こし》はサイクリング持ちのクリーチャーではありませんが、2マナを支払って手札から捨てることで疑似ドローができるので、実質強化版のサイクリングとして機能します。
《厚かましい借り手》は「続唱」の邪魔をすることなく、《虚空の杯》など厄介な置物に触れる貴重なカードの1枚です。
優秀な青いカードが増えたことで《否定の力》を無理なく運用することができるようになりました。このデッキの天敵である《虚空の杯》や《時を解す者、テフェリー》対策はもちろんのこと、相手のターンに《暴力的な突発》から《死せる生》をインスタントスピードでプレイした際に相手のカウンターに応戦することができるのでコンボが決まりやすくなります。
Azorius Control
マジック・プロツアー殿堂でコントロールのエキスパートであるGuillaume Wafo-Tapa氏は、今大会でも環境にマッチしたコントロールを持ち込み見事に予選通過を果たしました。
デッキの構成は《虚空の杯》がメインから採用されているなど現在のモダンのメタに合わせた調整がされていますが、カウンターや除去、スイーパー、プレインズウォーカーとそろった古典的な青白コントロールです。
☆注目ポイント
『モダンホライゾン2』から《対抗呪文》が再録されたことによってパーミッションが強化されています。《大魔導師の魔除け》や《謎めいた命令》といった青マナを多く必要とするスペルを多用するため、フィルターランドの《秘教の門》も2枚採られています。
カウンターを構えつつ隙を作らずにクリーチャーを展開することができる《サメ台風》は、プレインズウォーカーを守る手段になり「サイクリング」なのでカウンターに耐性があるためコントロール同型で有用な勝ち手段になります。
《虚空の杯》がメインから採用されているため、《選択》や《流刑への道》といった1マナのスペルは不採用となっています。X=1でプレイすることによってCounter MonkeyやHammer Timeなど1マナスペルを多用するデッキを機能不全に陥らせることができます。X=0で置くことで「続唱」デッキの「待機」スペルをシャットアウトすることも可能です。
《広がりゆく海》は《ウルザの物語》に対して2マナの《石の雨》として機能します。フィルターランドと相性の悪い《廃墟の地》を採用する余裕がないため、土地コンボに対する妨害手段は重要となります。
《虹色の終焉》は青白にとって処理が困難だった《レンと六番》を対処できる優秀なスペルです。《虚空の杯》をX=1で置いているときはXの値を調整することを忘れないようにしたいですね。「続唱」デッキやCounter Monkeyなど、現環境の多数のマッチアップで有用な《時を解す者、テフェリー》は当然メインからフル搭載されています。
Temur Footfalls
「続唱」スペルから《衝撃の足音》を高速プレイしてビートダウンするTemur Footfalls。
「続唱」を軸にした戦略で問題となってくるのが、デッキ構築の制限で《断片無き工作員》や《暴力的な突発》から確実に《衝撃の足音》をプレイするために3マナ域以上でデッキを構築する必要があります。《激情》のようなピッチでプレイできるインカーネーション、《厚かましい借り手》や《砕骨の巨人》といった「出来事」、《火/氷》など分割カードを活用していきます。
コンボデッキのLiving Endと異なり除去が多めでミッドレンジ寄りの構成となっており、《衝撃の足音》以外にもクリーチャーによるアグロプランが取りやすいので《虚空の杯》など対策カードにもある程度までの耐性があります。
☆注目ポイント
《死亡/退場》や《火/氷》といった分割スペルは、「続唱」の邪魔をしない主要な妨害スペルになります。特に《火/氷》は序盤を凌ぎつつ、《激情》や《否定の力》をピッチでプレイするコストにもなるので便利です。
「当事者」カードは軽い妨害として機能しつつ勝ち手段にもなるフレキシブルさが強みで、構築における制限というこのデッキの弱点をカバーしています。《厚かましい借り手》は《虚空の杯》など厄介な置物やクリーチャーをバウンスして、《衝撃の足音》をプレイするまでの時間を稼ぎます。《砕骨の巨人》は環境の多くのクリーチャーを除去することができ、本体も3マナ4/3とクロックとしても優秀です。
Hammer Timeに対して装備品とクリーチャーを同時に処理できる《プリズマリの命令》は、最近メインから採用されるようになりました。時間を稼ぎつつ《虚空の杯》を対処したりと大変フレキシブルなスペルで、ルーターモードも「続唱」スペルなどキーカードを探し出すことに貢献します。
同型やCounter Monkey、コントロールとのマッチアップで活躍する《時を解す者、テフェリー》や追加の「続唱」スペルの《献身的な嘆願》のために白をタッチしたバージョンも見られますが、3色のTemurバージョンはサイドに《血染めの月》を採用する余裕があります。4色バージョンや多色コントロール、Elementalsや土地コンボなどさまざまなマッチアップで使えます。
総括
一時期は《ウルザの物語》や《敏捷なこそ泥、ラガバン》など一部のカードが強すぎるのではないかと懸念する声もあった『モダンホライゾン2』ですが、環境が進むにつれてElementalsやTemur Footfallsなど新たなアーキタイプを成立し、Living Endなど旧環境でマイナーだったアーキタイプを強化するなど環境の多様化にも貢献しています。
『モダンホライゾン2』がリリースされて2ヶ月以上が経った現在でも、『モダンホライゾン』がリリースされた直後に環境を支配したHogaakのようなデッキは存在せず、TronやBurnといった古くから存在するデッキも活躍しているなど、現在のモダンはバランスが取れた良環境と言えます。
以上、USA Modern Express vol.61でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!